有価証券報告書-第81期(令和2年4月1日-令和3年3月31日)

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2021/06/25 13:04
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154項目
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の概要並びに経営者
の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりです。
なお、文中において将来に関する事項が含まれていますが、当連結会計年度末現在において、当社グループが判
断したものです。
(1) 経営成績
当連結会計年度は、世界的な新型コロナウイルス感染症(以下、感染症)拡大の影響による移動制限や経済活動の停滞などにより、各国経済は深刻な影響を受けました。その後、感染症のワクチン接種が開始されましたが、依然として感染症収束の兆しが見えないことから経済回復には厳しい状況が続いています。このようななかで、世界的な株高の影響もあり、ドル円為替相場は対米ドル円レート102円台を底に110円台まで円安方向へ進みました。
航空輸送業界では、感染症の世界的拡大の影響でかつてない規模の減便や運休などにより経営環境は大きく悪化しており、各エアラインは大幅な人員削減を余儀なくされています。経済活動の再開に合わせて、様々な感染対策をとったうえで国内線需要は少しずつ回復してきているものの、国際線需要については引き続き厳しい状況が続いています。又、航空機メーカーにおいても、航空需要の急激な落ち込みにより、ボーイング、エアバス共に大幅な減産が実施される状況になりました。 感染症の収束時期が不明な状況下、当社グループでは、当面は厳しい経営環境が続くものと想定し、将来の航空需要回復に備え、全社レベルで業務プロセスの改革、生産体制の効率化を推進し、品質と収益力の向上を目指すと共に、人員及び経費の削減、投資抑制、拠点整理、在庫削減等の経営の効率化を行いました。又、感染防止対策を徹底すると共に、在宅勤務、シフト勤務の導入、職場における作業エリアの分散など接触率の低減に努め、急激な仕事量減少については一時帰休やグループ外出向などにより臨機応変に対処しました。
航空機内装品等製造関連・航空機シート等製造関連においては、航空需要の急激な落ち込みに対応するため、生産計画の緊急見直しを行うと共に、生産拠点の再編を行いました。又、お客様が航空機に搭乗する際に抱く不安を少しでも解消できるように、清潔で衛生的なキャビン作りのための製品開発にも取り組みました。受注高は、航空需要の急激な落ち込みから航空機メーカーの大幅な減産が実施されたことや、エアラインからの受注の一部延期やキャンセルにより、前期に比較して大きく下回る結果となりましたが、1月以降には、ワクチン接種の効果が確認されたことから、エアラインから感染症拡大の収束を見込んだ引き合いや受注が増加しています。
航空機器等製造関連においては、生産性改善の取組みを進めると共に、これまで培った加工技術を生かし、内装品関連を始めとした部品の内製化を進めました。又、熱可塑CFRPを活用した航空機用軽量機体部材の開発を進めています。 航空機整備等関連においては、飛行安全の確保と品質向上の取組みを継続すると共に、エアライン、官公庁向け整備の受注に努め、安定した収益を上げることのできる事業基盤の構築を目指しました。 この結果、当連結会計年度の経営成績は、売上高 50,058百万円(前期比 41,477百万円減)、営業損失 10,902百万円(前期は、営業利益 1,807百万円)、経常損失 11,756百万円(前期は、経常利益 1,178百万円)、親会社株主に帰属する当期純損失 13,585百万円(前期は、親会社株主に帰属する当期純利益 605百万円)となりました。
なお、当連結会計年度末に次期以降の完成工事に対する工事損失引当金を 4,102百万円計上しています。この工事損失引当金による期間損益への影響は、当第4四半期連結会計期間において売上原価 778百万円の減少(第3四半期連結累計期間末の工事損失引当金は 4,881百万円)、又、当連結会計年度においては売上原価 494百万円の増加(前連結会計年度末の工事損失引当金は 3,607百万円)となりました。
グループ全体の販売費及び一般管理費、営業外損益、特別損益の状況は次のとおりです。
販売費及び一般管理費は、人件費、保証工事費、試験研究費、販売手数料の減少などにより 6,801百万円(前期比 1,835百万円減)となりました。 営業外損益は、前連結会計年度末よりも為替相場が円高で推移し為替差損が増加したことなどにより 853百万円の損(前期は、629百万円の損)となりました。 特別損益は、航空機内装品等製造関連、航空機シート等製造関連及び航空機整備等関連において、顧客との契約上の補償条項に基づき協議を重ねた結果、損害補償費として 2,612百万円を計上したことに加え、航空機内装品等製造関連において、一部製品の補修・交換に係る費用として製品保証引当金繰入額 1,166百万円を計上しました。又、感染症関連としては、一時帰休による雇用調整助成金等の助成金収入 1,094百万円を計上しましたが、一時帰休による固定費等の操業費用を新型コロナウイルス感染症関連損失として 1,771百万円計上しています。更に、感染症拡大による航空需要の低迷から事業規模の適正化を図るため、生産拠点の整理集約などに関連して発生した退職者の割増退職金 461百万円を計上したことなどにより、4,980百万円の損(前期は、279百万円の損)となりました。
セグメント別の業績は次のとおりです。
[航空機内装品等製造関連] 当事業では、感染症拡大による影響で航空機メーカーは減産や生産スケジュール変更を余儀なくされたことから、ギャレー及びラバトリーの出荷が減少したことなどに加え、航空機の運航が減少したことにより、エアライン向けの客室改修用キットやスペアパーツ販売が減少し、前期に比べ売上高は減少しました。又、経常損益については、売上高減少などにより経常損失となりました。 この結果、航空機内装品等製造関連は、売上高 31,108百万円(前期比 29,970百万円減)、経常損失 8,073百万円(前期は、経常利益 3,107百万円)となりました。 [航空機シート等製造関連] 当事業では、感染症拡大による影響で一部プログラムの出荷が翌期に繰り延べられたことや顧客による一部キャンセルなどにより、前期に比べ売上高は減少しました。又、経常損益については、売上高減少などにより経常損失となりました。 この結果、航空機シート等製造関連は、売上高 8,090百万円(前期比 7,903百万円減)、経常損失 3,593百万円(前期は、経常損失 2,499百万円)となりました。 [航空機器等製造関連] 当事業では、感染症拡大による影響で航空機メーカーは減産や生産スケジュールの変更を余儀なくされたことから、民間航空機向け製品の炭素繊維構造部材や航空機エンジン部品の出荷が減少し、前期に比べ売上高は減少しました。又、経常損益については、売上高減少などにより経常損失となりました。 この結果、航空機器等製造関連は、売上高 4,330百万円(前期比 2,002百万円減)、経常損失 394百万円(前期は、経常利益 6百万円)となりました。 [航空機整備等関連] 当事業では、機体整備においては一部プログラムの出荷が翌期に繰り延べられたこと、装備品整備においては感染症拡大による影響でエアラインからのホイール、ブレーキなどの受注が減少したことにより、前期に比べ売上高は減少しました。又、経常利益については、売上高減少などにより前期に比べ減少しました。 この結果、航空機整備等関連は、売上高 6,528百万円(前期比 1,600百万円減)、経常利益 304百万円(前期比 263百万円減)となりました。 [その他] その他の区分には、連結子会社の株式会社オレンジジャムコの事業を含んでおり、航空機内装品等製造関連の補助作業等セグメント間の内部取引が中心です。 その他の区分では、売上高 0百万円(前期比 0百万円減)、経常利益 0百万円(前期は、経常損失 4百万円)となりました。

生産実績、受注高及び販売実績は、新型コロナウイルス感染症拡大による影響で、航空機メーカーによる減産や生産スケジュールの変更により受注や出荷が減少したことに加え、航空機の運航が減少したことによりエアラインからの受注やエアライン向けの出荷が減少したことなどから各事業において前期比減少しました。
生産、受注及び販売の実績は、次のとおりであります。
① 生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称金額(千円)前年同期比(%)
航空機内装品等製造関連27,994,133△55.2
航空機シート等製造関連6,301,501△53.7
航空機器等製造関連3,843,721△32.0
航空機整備等関連7,100,890△19.9
その他5△90.5
合計45,240,252△50.1

(注) 1 セグメント間取引については、相殺消去しております。
2 金額は、販売価格で記載しております。
3 上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
② 受注実績
当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称受注高(千円)前年同期比(%)受注残高(千円)前年同期比(%)
航空機内装品等製造関連9,814,889△81.040,722,837△34.3
航空機シート等製造関連2,904,254△60.415,021,214△25.7
航空機器等製造関連3,601,130△25.73,722,756△16.4
航空機整備等関連7,249,154△14.74,440,37219.4
その他5△90.5--
合計23,569,434△67.463,907,181△29.3

(注) 1 金額は、販売価格で記載しております。
2 上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
③ 販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称金額(千円)前年同期比(%)
航空機内装品等製造関連31,108,073△49.1
航空機シート等製造関連8,090,920△49.4
航空機器等製造関連4,330,379△31.6
航空機整備等関連6,528,918△19.7
その他5△90.5
合計50,058,297△45.3

(注) 1 セグメント間取引については、相殺消去しております。
2 上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
3 主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売高に対する割合
相手先前連結会計年度当連結会計年度
販売高(千円)割合(%)販売高(千円)割合(%)
MITSUBISHI
INTERNATIONAL CORP.
35,420,27938.716,291,12032.5
ITOCHU
Singapore Pte, Ltd.
5,701,7076.27,011,97314.0


(2) 財政状態
当連結会計年度末の資産合計は 101,236百万円となり、前連結会計年度末に比べ 18,947百万円減少しました。内、流動資産については、受取手形及び売掛金の減少(前期末比 10,806百万円減)、仕掛品の減少(前期末比 4,448百万円減)、現金及び預金の減少(前期末比 3,415百万円減)等により流動資産合計で前連結会計年度末に比べ 20,799百万円減少しました。又、固定資産については、当連結会計年度の投資案件が比較的少なかったことから有形固定資産の減少(前期末比 983百万円減)、無形固定資産の減少(前期末比 306百万円減)等がありましたが、投資その他の資産の増加(前期末比 3,142百万円増)により固定資産合計で前連結会計年度末に比べ 1,851百万円増加しました。 負債合計は 84,719百万円となり、前連結会計年度末に比べ 5,091百万円減少しました。主な要因は、短期借入金の増加(前期末比 11,731百万円増)等がありましたが、支払手形及び買掛金の減少(前期末比 7,667百万円減)、電子記録債務の減少(前期末比 6,068百万円減)、前受金の減少(前期末比 3,127百万円減)、賞与引当金の減少(前期末比 1,366百万円減)等によるものです。 純資産合計は 16,517百万円となり、前連結会計年度末に比べ 13,856百万円減少しました。主な要因は、親会社株主に帰属する当期純損失や配当金の支払などによる利益剰余金の減少(前期末比 14,122百万円減)等によるものです。この結果、自己資本比率は16.0%となりました。
セグメントごとの資産は、次のとおりです。
[航空機内装品等製造関連]
当連結会計年度末のセグメント資産は、前連結会計年度末と比べて 12,756百万円減少し、 66,892百万円となりました。当事業では、新型コロナウイルス感染症拡大による影響で、航空機メーカーは減産や生産スケジュール変更を余儀なくされたことに加え、航空機の運航が減少したことによりエアライン向けの売上高が急減し、売掛金が減少したことなどから前期比減少いたしました。
[航空機シート等製造関連]
当連結会計年度末のセグメント資産は、前連結会計年度末と比べて 5,591百万円減少し、 14,862百万円となりました。当事業では、新型コロナウイルス感染症拡大による影響で、一部キャンセルなどにより売上高が急減し、売掛金が減少したことや発注計画の見直しにより棚卸資産が減少したことなどにより前期比減少いたしました。
[航空機器等製造関連]
当連結会計年度末のセグメント資産は、前連結会計年度末と比べて 1,509百万円減少し、 8,851百万円となりました。当事業では、新型コロナウイルス感染症拡大による影響で、民間航空機向け製品の炭素繊維構造部材や航空機エンジン部品の出荷が減少したことなどにより、売掛金が減少したことなどから前期比減少いたしました。
[航空機整備等関連]
当連結会計年度末のセグメント資産は、前連結会計年度末と比べて 908百万円増加し、 10,592百万円となりました。当事業では、新型コロナウイルス感染症拡大による影響で、装備品整備においてはエアラインからのホイール、ブレーキなどの受注が減少しましたが、機体整備においては次年度に出荷予定の一部プログラムにより棚卸資産が増加したことなどから前期比増加いたしました。
(3) キャッシュ・フロー
当連結会計年度末における現金及び現金同等物は、以下に記載のキャッシュ・フローにより、前連結会計年度末に比べ 3,220百万円減少しました。 [営業活動によるキャッシュ・フロー] 当連結会計年度における営業活動によるキャッシュ・フローは、 11,615百万円のキャッシュ・アウトフローとなり、前連結会計年度に比べ 329百万円支出が増加しました。これは、売上債権の回収による増加がありましたが、税金等調整前当期純利益の減少等によるものです。 [投資活動によるキャッシュ・フロー] 当連結会計年度における投資活動によるキャッシュ・フローは、 1,104百万円のキャッシュ・アウトフローとなり、前連結会計年度に比べ 1,466百万円支出が減少しました。これは、有形固定資産の取得による支出等が減少したこと等によるものです。 [財務活動によるキャッシュ・フロー] 当連結会計年度における財務活動によるキャッシュ・フローは、 9,581百万円のキャッシュ・インフローとなり、前連結会計年度に比べ 7,372百万円収入が減少しました。
(資本の財源及び資金の流動性)
当社グループの事業活動における運転資金需要の主なものは、各事業の受注工事における製品開発、部品材料調達、試験研究活動などがあります。設備投資資金については、航空機内装品及び航空機シート関連の主力製品であるギャレー、ラバトリー、シート製造に係る金型、各事業の生産工場の改修および施設設備の更新、業務効率向上のためのIT関連のシステムの導入等があります。また、試験研究活動については、航空機シート等製造関連において標準型プラットフォームを活用した次期プレミアム・シートの開発、航空機内装品等製造関連において次世代軽量材料の研究、次世代キャビンの研究、先端技術を適用するための基礎研究などを進めると共に、航空機器等製造関連では、炭素繊維構造部材の新たな成形方法の研究等があります。
当社グループの事業活動に必要な資金を安定的に確保するため、内部資金の活用、金融機関からの借入により資金調達を行っております。
なお、当連結会計年度末の借入金残高は、利益が大きく減少したことなどから 11,031百万円増加し、52,118百万円となりました。今後、棚卸資産の削減が進むことにより借入金残高は減少する見込みです。また、資金調達コストの低減に努め、売掛債権の早期回収を図るために流動化を活用しております。
(4) 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表を作成するにあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。
連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しております。

(5) 主な経営指標
当社グループは、技術と品質のジャムコとして顧客からの信頼を獲得し続けることを使命として、技術力の向上、品質への取り組み強化、企業文化の再構築、人財育成を始めとする経営課題に取り組み、環境の変化を上回るスピード感と積極的な行動力の発揮により、基盤整備の一環である業務プロセスの改革/合理化を強力に推し進め、新たな成長期とすべく経営課題へ取り組み、世界に誇れるジャムコとなることを中期経営方針に掲げ、経営指標を売上高経常利益率 7%以上、総資産経常利益率 7%以上と設定し、毎期継続してこの目標を達成するために種々の施策に取組んでまいります。又、自己資本比率など安全性指標についても、中期的な視野に立ち、その改善に向けて取り組んでまいります。
当連結会計年度は、売上高経常利益率 △23.5%、総資産経常利益率 △10.6%、自己資本比率 16.0%、自己資本利益率 △59.0%となりました。これらの経営指標の最近の推移は次のとおりです。
2019年3月期2020年3月期2021年3月期
売上高経常利益率3.9%1.3%△23.5%
総資産経常利益率(ROA)3.3%1.1%△10.6%
自己資本比率29.3%24.8%16.0%
自己資本利益率(ROE)6.5%2.0%△59.0%

※売上高経常利益率:経常利益/売上高、総資産経常利益率(ROA):経常利益/総資産、自己資本比率:自己資本/総資本、自己資本利益率(ROE):親会社株主に帰属する当期純利益/自己資本
(注) 1.各指標はいずれも連結ベースの財務数値により計算しています。
2.総資産経常利益率の算定における総資産は(期首総資産+期末総資産)/2で計算しています。
3.自己資本利益率の算定における自己資本は(期首自己資本+期末自己資本)/2で計算しています。