有価証券報告書-第79期(平成30年4月1日-平成31年3月31日)

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2019/06/26 13:59
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156項目
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の概要並びに経営者
の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりです。
なお、文中において将来に関する事項が含まれていますが、当連結会計年度末現在において、当社グループが判
断したものです。
(1) 経営成績
当連結会計年度は、米国と中国の貿易摩擦による影響が拡大し、中国経済の減速が見込まれるものの、米国経済が着実に成長し、日本及びユーロ圏も緩やかな景気回復が続き、世界経済全体は堅調に推移しました。為替相場は、通商問題の動向などで先行きが不透明な状況でありましたが、ドル円為替相場は、対米ドル円レート105円台後半から114円台前半の範囲で概ね円安傾向に推移しました。
航空輸送業界では、格安航空会社(LCC)の攻勢による競争の激化が続いている一方、世界的な航空需要の拡大により、大手エアラインは新規運航路線の獲得や客室サービスの向上、LCCへの参画など様々な戦略を打ち出しています。航空機メーカーでは、航空機需要の高まりを背景に、ボーイング、エアバス共に2018年の納入機数は過去最高を更新しており、一部機種の増産計画や燃費効率の向上を目指した新機種の開発が進むなど航空機市場は引き続き堅調に推移すると見込まれています。又、両社によるリージョナル機メーカーの戦略的買収が行われるなど歴史的な再編が進んでいます。
こうしたなか当社グループでは、航空機内装品等製造関連においては、生産効率改善に努めると共に、ボーイング777X型機向けラバトリーの開発を進めました。又、同型機向けギャレーについても大手エアラインより受注し開発に着手しました。
航空機シート等製造関連においては、KLMオランダ航空向けスタンダード・シートの受注に続き、更なる受注拡大に努めると共に、生産効率改善とコスト削減の取組みを行いました。又、大手エアライン向けファースト・クラス・シートの出荷を開始しました。
航空機器等製造関連においては、生産性改善の取組みを進めると共に、航空機エンジン部品の生産量増加への取組みを進めました。又、これまで培った金属加工技術を生かし、内装品やシートの部品の内製化に着手しました。
航空機整備等関連においては、飛行安全の確保と品質向上の取組みを継続すると共に、各種サービスの充実と収益改善の取組みを進めました。又、航空機整備の事業領域拡大のため、ANAグループのMRO Japan㈱への資本参加を行いました。
この結果、当連結会計年度の経営成績は、売上高 84,068百万円(前期比 6,276百万円増)、営業利益 4,321百万円(前期比 144百万円減)、経常利益 3,290百万円(前期比 213百万円減)、親会社株主に帰属する当期純利益 1,910百万円(前期比 229百万円増)となりました。
なお、当連結会計年度末に次期以降の完成工事に対する工事損失引当金を 3,781百万円計上しております。この工事損失引当金による期間損益への影響は、当第4四半期連結会計期間において売上原価 842百万円の増加(第3四半期連結会計期間末の工事損失引当金は 2,938百万円)、又、当連結会計年度においては売上原価 1,714百万円の増加(前連結会計年度末の工事損失引当金は 2,066百万円)となりました。
販売費及び一般管理費は、試験研究費の増加、販売手数料の増加などにより 9,321百万円(前期比 633百万円増)となりました。
営業外損益は、為替差益の増加がありましたが、支払補償費の計上などにより、 1,030百万円の損(前期は、 962百万円の損)となりました。
特別損益は、品質関連損失及び固定資産処分損などにより、 263百万円の損(前期は、 49百万円の損)となりました。
なお、2019年3月26日に公表いたしました当社及び当社の生産委託先である㈱宮崎ジャムコにおける不適切な検査については、本不適切検査判明後、直ちに安全性の確認及び即時措置を講じ、お客様へ陳謝すると共に製品品質及び安全性に関わる直接的な影響がないことの説明を行い、ご理解を頂いているところです。又、社内に品質業務改善チームの設置を行うと共に、当社と利害関係のない第三者による特別調査委員会を設置し、原因の究明と再発防止策の妥当性検証のためグループ会社を含めた調査を進めております。
当社グループでは、この度の品質事象を重く受け止め、品質第一に対する意識の変革に取り組むと共に、徹底した原因分析に基づいた是正・再発防止対策等に鋭意取り組んでまいります。
セグメント別の業績は次のとおりです。
[航空機内装品等製造関連]
当事業では、ボーイングが開発中の777X型機への移行の端境期により現行の777型機向けギャレーの出荷量減少の影響を受けましたが、客室改修用キットやスペアパーツ販売の増加、エアバスA350型機向け後部ギャレーの出荷、777X型機の飛行試験用ラバトリーの出荷などにより、前期に比べ売上高は増加しました。一方、経常利益については、売上高増加の影響があったものの、777型機向けギャレーの出荷量減少、一部プログラムの初期コストの増加などによる原価増、販売費及び一般管理費の増加などの影響を受けました。
この結果、航空機内装品等製造関連は、売上高 56,869百万円(前期比 5,876百万円増)、経常利益 6,113百万円(前期比 680百万円減)となりました。
[航空機シート等製造関連]
当事業では、一部工事の出荷が翌期以降に繰り延べられたことなどにより、前期に比べ売上高は減少しました。又、経常損益については、一部プログラムのコスト増加などによる原価増、試験研究費の増加や支払補償費の計上の影響があったものの、生産効率改善による採算性の向上や前期における一部プログラムの初期コスト増加による影響の反動などにより前期に比べ改善しました。
この結果、航空機シート等製造関連は、売上高 12,175百万円(前期比 308百万円減)、経常損失 3,143百万円(前期は、経常損失 3,641百万円)となりました。
[航空機器等製造関連]
当事業では、熱交換器等装備品の出荷が納期変更などにより減少したものの、航空機エンジン部品の出荷量が増加したことにより、前期に比べ売上高は増加しました。一方、経常利益については、生産効率の改善に努めたものの、熱交換器等装備品の出荷量減少の影響を受けたことなどにより減少しました。
この結果、航空機器等製造関連は、売上高 6,597百万円(前期比 284百万円増)、経常利益 110百万円(前期比 105百万円減)となりました。
[航空機整備等関連]
当事業では、機体整備の完成工事が減少したものの、装備品整備が堅調に推移したことにより、前期に比べ売上高は増加しました。又、経常利益については、売上高の増加に加え、採算性向上の取組みにより増加しました。
この結果、航空機整備等関連は、売上高 8,426百万円(前期比 423百万円増)、経常利益 210百万円(前期比 70百万円増)となりました。
[その他]
その他の区分には、連結子会社の㈱オレンジジャムコの事業を含んでおり、航空機内装品等製造関連の補助作業等セグメント間の内部取引が中心でした。
この結果、その他の区分では、売上高 0百万円(前期比 0百万円増)、経常損失 0百万円(前期は、経常損失 4百万円)となりました。
生産、受注及び販売の実績は、次のとおりであります。
① 生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称金額(千円)前年同期比(%)
航空機内装品等製造関連60,724,87510.0
航空機シート等製造関連13,754,5205.1
航空機器等製造関連7,013,97114.8
航空機整備等関連8,302,8651.0
その他36115.2
合計89,796,2698.7

(注) 1 セグメント間取引については、相殺消去しております。
2 金額は、販売価格で記載しております。
3 上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
② 受注実績
当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称受注高(千円)前年同期比(%)受注残高(千円)前年同期比(%)
航空機内装品等製造関連57,859,926△7.471,526,8201.4
航空機シート等製造関連11,195,13029.728,876,334△3.3
航空機器等製造関連7,071,12053.45,938,1608.7
航空機整備等関連8,773,709△2.83,347,13811.6
その他36115.2--
合計84,899,9220.2109,688,4530.8

(注) 1 金額は、販売価格で記載しております。
2 上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
③ 販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称金額(千円)前年同期比(%)
航空機内装品等製造関連56,869,08111.5
航空機シート等製造関連12,175,486△2.5
航空機器等製造関連6,597,3124.5
航空機整備等関連8,426,2525.3
その他36115.2
合計84,068,1688.1

(注) 1 セグメント間取引については、相殺消去しております。
2 上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
3 主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売高に対する割合
相手先前連結会計年度当連結会計年度
販売高(千円)割合(%)販売高(千円)割合(%)
MITSUBISHI
INTERNATIONAL CORP.
28,553,72536.730,529,09236.3
ITOCHU
Singapore Pte, Ltd.
13,948,05217.98,971,30710.7


(2) 財政状態
当連結会計年度末の資産合計は 102,980百万円となり、前連結会計年度末に比べ 8,523百万円増加しました。内、流動資産については、仕掛品の増加(前期比 3,272百万円増)、現金及び預金の増加(前期比 1,988百万円増)、商品及び製品の増加(前期比 1,525百万円増)、原材料及び貯蔵品の増加(前期比 1,270百万円増)等により流動資産合計で前連結会計年度末に比べ 7,890百万円増加しました。又、固定資産については、繰延税金資産の増加(前期比 728百万円増)、航空機内装品やシート製造のための金型購入などの投資を進めた結果、固定資産合計で前連結会計年度末に比べ 632百万円増加しました。
負債合計は 72,265百万円となり、前連結会計年度末に比べ 7,362百万円増加しました。主な要因は、借入金の減少(前期比 4,235百万円減)等がありましたが、前受金の増加(前期比 4,624百万円増)、工事損失引当金の増加(前期比 1,714百万円増)、電子記録債務の増加(前期比 1,448百万円増)、支払手形及び買掛金の増加(前期比 1,301百万円増)等によるものです。
純資産合計は 30,715百万円となり、前連結会計年度末に比べ 1,161百万円増加しました。主な要因は、利益剰余金の増加(前期比 1,374百万円増)等によるものです。この結果、自己資本比率は29.3%となりました。
セグメントごとの資産は、次のとおりです。
[航空機内装品等製造関連]
当連結会計年度末のセグメント資産は、前連結会計年度末と比べて4,534百万円増加し、61,166百万円となりました。当事業では、A350型向け後部ギャレー等の仕掛品増加などにより前期比増加いたしました。
[航空機シート等製造関連]
当連結会計年度末のセグメント資産は、前連結会計年度末と比べて2,947百万円増加し、21,525百万円となりました。当事業では、シートの開発による仕掛品増加などにより前期比増加いたしました。
[航空機器等製造関連]
当連結会計年度末のセグメント資産は、前連結会計年度末と比べて660百万円増加し、11,079百万円となりました。当事業では、年度末にかけて製品出荷が進み売掛金が増加したことなどから前期比増加いたしました。
[航空機整備等関連]
当連結会計年度末のセグメント資産は、前連結会計年度末と比べて397百万円増加し、9,176百万円となりました。当事業では、年度末にかけて製品出荷が進み売掛金が増加したことなどから前期比増加いたしました。
(3) キャッシュ・フロー
当連結会計年度末における現金及び現金同等物の増減は、以下に記載のキャッシュ・フローにより、前連結会計年度末に比べ 1,646百万円増加しました。
[営業活動によるキャッシュ・フロー]
当連結会計年度における営業活動によるキャッシュ・フローは、 9,365百万円のキャッシュ・インフローとなり、前連結会計年度に比べ 5,393百万円収入が増加しました。これは、仕入債務の増加、工事損失引当金の増加、前受金の増加による収入の増加等によるものです。
[投資活動によるキャッシュ・フロー]
当連結会計年度における投資活動によるキャッシュ・フローは、 1,944百万円のキャッシュ・アウトフローとなり、前連結会計年度に比べ 866百万円支出が減少しました。これは、MRO Japan㈱への資本参加による支出がありましたが、定期預金の減額、投資有価証券の売却による収入等によるものです。
[財務活動によるキャッシュ・フロー]
当連結会計年度における財務活動によるキャッシュ・フローは、 5,828百万円のキャッシュ・アウトフローとなり、前連結会計年度に比べ 5,367百万円支出が増加しました。これは、金融機関からの借入金による収入に比べて、借入金の返済による支出が上回ったこと及び配当金の支払等によるものです。
(資本の財源及び資金の流動性)
当社グループの事業活動における運転資金需要の主なものは、各事業の受注工事における製品開発、部品材料調達、試験研究活動などがあります。設備投資資金については、航空機内装品及び航空機シート関連の主力製品であるギャレー、ラバトリー、シート製造に係る金型、各事業の生産工場の改修および施設設備の更新、業務効率向上のためのIT関連のシステムの導入等があります。また、試験研究活動については、航空機シート等製造関連において新型スタンダード・シートの開発、航空機内装品等製造関連において次世代軽量材料の研究、次世代キャビンの研究、先端技術を適用するための基礎研究などを進めると共に、航空機器等製造関連では、炭素繊維構造部材の新たな成形方法の研究等があります。
当社グループの事業活動に必要な資金を安定的に確保するため、内部資金の活用、金融機関からの借入により資金調達を行っております。
なお、当連結会計年度末の借入金残高は 23,404百万円となりました。資金調達コストの低減に努めるため、売掛債権の早期回収を図るために流動化を活用しております。
(4) 主な経営指標
当社グループは、技術と品質のジャムコとして顧客からの信頼を獲得し続けることを使命として、技術力の向上、品質への取り組み強化、企業文化の再構築、人財育成を始めとする経営課題に取り組み、環境の変化を上回るスピード感と積極的な行動力の発揮により、基盤整備の一環である業務プロセスの改革/合理化を強力に推し進め、新たな成長期とすべく経営課題へ取り組み、世界に誇れるジャムコとなることを中期経営方針に掲げ、経営指標を売上高経常利益率 7%以上、総資産経常利益率 7%以上と設定し、毎期継続してこの目標を達成するために種々の施策に取組んでまいります。又、自己資本比率など安全性指標についても、中期的な視野に立ち、その改善に向けて取り組んでまいります。
当連結会計年度は、売上高経常利益率 3.9%、総資産経常利益率 3.3%、自己資本比率 29.3%、自己資本利益率 6.5%となりました。これらの経営指標の最近の推移は次のとおりです。
2017年3月期2018年3月期2019年3月期
売上高経常利益率1.6%4.5%3.9%
総資産経常利益率(ROA)1.4%3.7%3.3%
自己資本比率29.4%30.4%29.3%
自己資本利益率(ROE)3.7%6.0%6.5%

※売上高経常利益率:経常利益/売上高、総資産経常利益率(ROA):経常利益/総資産、自己資本比率:自己資本/総資本、自己資本利益率(ROE):親会社株主に帰属する当期純利益/自己資本
(注) 1.各指標はいずれも連結ベースの財務数値により計算しています。
2.総資産経常利益率の算定における総資産は(期首総資産+期末総資産)/2で計算しています。
3.自己資本利益率の算定における自己資本は(期首自己資本+期末自己資本)/2で計算しています。