有価証券報告書-第60期(2022/04/01-2023/03/31)

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2023/06/28 12:00
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当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
(1) 経営成績
当連結会計年度(2022年4月1日から2023年3月31日まで)におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染症対策と社会経済活動の両立が進行しましたが、一方で、不安定な国際情勢や原材料・エネルギー価格の高騰と急激な円安を背景に、幅広い品目で消費者物価が上昇しており、国内経済の先行きは不透明な状況が続いております。
このような状況の中、当社グループでは、2023年3月期を抜本的な構造改革の年として、2022年2月14日公表の「事業ポートフォリオの転換に関するお知らせ」に記載のとおり、当社アパレル事業の大幅縮小による多額の赤字の解消と、不動産事業の拡大による安定的な収益基盤の確保を柱とする全社的な事業構造改革に取り組んでまいりました。
アパレル事業の縮小につきましては、全国に展開する208店舗を閉鎖する計画に沿って2022年5月から順次閉鎖を実行し、2023年2月末日までに全店舗の閉鎖を完了させました。同時に閉店セール及びEC販路を活用した在庫の徹底消化にも取り組んでまいりました。
本社人員体制のスリム化につきましては、事業縮小によるブランドの絞り込み、業務範囲の見直し等を推し進め、2023年2月末日までに2022年2月時点の人員数に対し約65%のスリム化を実施いたしました。
一方、不動産事業の拡大につきましては、2022年2月14日及び同年4月1日に公表いたしましたとおり、4月1日付で全国に約70の収益物件を所有する株式会社キムラタンエステートの株式取得が完了し、子会社化とともに不動産部門を設置し管理・運営体制の強化を実施いたしました。
当連結会計年度の売上高は、前年同期比16.3%減の35億47百万円となりました。事業ポートフォリオ転換により不動産事業が大幅拡大となりましたが、アパレル事業につきましては店舗販売が既存ベースでは堅調な推移となったものの、店舗数の減少及び2023年1月30日に公表いたしました「(開示事項の変更)子会社の事業縮小の中止並びに子会社に対する債権放棄及び子会社の異動を伴う株式譲渡に関するお知らせ」に記載のとおり、2023年2月1日付で子会社中西株式会社の株式譲渡を行い同社が連結の範囲から除外となったことにより事業全体では減収となりました。
売上総利益率は、アパレル事業において、円安の進行よるコスト増に加え、持越し在庫の完全消化を優先課題として、閉店セールでの値引率を大幅に深め徹底消化を図った結果、前年同期に対し11.0ポイント減の31.4%となり、売上総利益額は前年同期比38.0%減の11億13百万円となりました。
販売費及び一般管理費につきましては、不動産事業の拡大に伴う経費の純増と、不動産事業のM&Aに伴う株式取得関連費用1億49百万円や後記のシンジケートローン契約に伴う登記費用30百万円等の一時費用の計上、のれんの償却額等が増加要因となりましたが、一方でアパレル事業の経費については、店舗閉鎖や本社スリム化など事業の縮小による人件費の減少、店舗家賃の減少等により大幅減となったことから、全社ベースでは前年同期比22.2%減の18億38百万円となりました。
以上の結果、当連結会計年度の営業損失は、在庫一掃に向けた粗利益率の大幅低下に加え、前掲の一時費用の負担が重く、7億24百万円(前年同期は営業損失5億64百万円)となりました。経常損失は、急激な円安の進行により為替差損28百万円を計上したことや、2022年9月22日付「シンジケートローン契約締結に関するお知らせ」において公表のシンジケートローン契約締結に伴うアレンジメントフィー等の借入手数料1億49百万円の計上等により10億37百万円(前年同期は経常損失6億9百万円)となりました。
加えて、前掲のとおり2023年2月1日付で子会社中西株式会社の全株式を譲渡いたしましたが、同社に対する貸付金の一部免除を含む関係会社株式売却損52百万円及び2023年2月22日付で公表の「債権の取立不能又は取立遅延のおそれに関するお知らせ」に記載のとおり当社が物流倉庫を賃借していた取引先の破産手続開始決定により当該取引先に対する敷金返還請求権39百万円について貸倒引当金を計上したこと等により親会社株主に帰属する当期純損失は11億34百万円(前年同期は当期純損失8億92百万円)となりました。
セグメントごとの経営成績は、次のとおりであります。
なお、当連結会計年度より、報告セグメントの名称および区分を変更しており、以下の前連結会計年度との比較・分析は変更後の区分に基づいて記載しております。詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表 注記事項(セグメント情報等) セグメント情報」の「3.報告セグメントの変更等に関する事項」をご参照ください。
アパレル事業
当連結会計年度において、インショップ及び直営店208店舗の閉鎖を実施するとともに閉店セールにおける在庫品の徹底消化に注力してまいりました。結果、実店舗での販売は、行動制限の緩和、新型コロナウイルス感染症の影響の低減により年度を通じて堅調に推移し、閉店セールにおいては、値ごろ感を訴求した売場展開、販売動向に合わせた売価変更等を行い前年同期の倍以上の販売推移となったことにより、既存店ベースの売上高は、前年同期比27.6%増となりました。店舗数については、前掲のとおりインショップ及び直営店208店舗の閉鎖を実施し、当期末の店舗数はアウトレット2店舗を含む9店舗となりました。
ネット通販につきましては、実店舗での閉店セールにおいて在庫の徹底消化を図ったことから、ネットでは価格訴求型の販売促進の抑制、送料無料キャンペーンの休止など収益性の向上に努めたことやブランド絞り込みにより販売アイテム数が減少した影響で、売上高は前年同期比40.3%減となりました。
卸業態については、大手量販専門店との取り組みが進行しましたが、一部得意先においては追加受注が低調となり、また前掲のとおり2023年2月1日付で子会社中西が連結の範囲から除外となったことにより、当期の売上高は前年同期比32.0%減となりました。
以上の結果、当期におけるアパレル事業の売上高は、前年同期比35.3%減の26億34百万円となりました。セグメント利益については、6億38百万円の損失(前年同期は5億16百万円の損失)となり、持越し在庫の完全消化に向けて値引率を深め販売強化を図ったことにより赤字幅は拡大する結果となりましたが、店舗閉鎖、本社スリム化による固定費削減が進み、在庫消化も計画を上回るなど、事業黒字化に向けた構造改革が進捗する結果となりました。
不動産事業
不動産事業については今後の収益の柱事業と位置付け、当連結会計年度の期首においてM&Aによる株式会社キムラタンエステートの子会社化と不動産部門の設置、運営・管理体制の整備を行い、不動産事業を本格的に開始いたしました。
当連結会計年度においては、物件ごとに異なる顧客ニーズへの対応力強化による稼働率の向上と、徹底した効率化による管理コストの最小化を課題に掲げ、物件ごとの詳細な現状分析や戦略立案を行ってまいりました。その結果、年度を通じて安定的に利益を確保しており、柱事業として全社的な事業構造改革に貢献しております。期末にはさらなる収益力の向上を目指して、管理業務の一部の内製化にも取り組んでまいりました。
以上の結果、当期の不動産事業の売上高は7億99百万円となりセグメント利益は1億20百万円となりました。
その他事業
その他事業である保育園事業においては、当期は事業収益の改善を課題として園児の募集に注力し、充足率の向上を目指してまいりました。しかしながら、出生数が減少する環境下で、質の高い保育を安定的に提供するためには当社のような少数園での運営体制には限界があり、運営施設数が多くノウハウがより豊富な事業体に運営を移管することが望ましいと考えられることから、2023年1月30日付で保育事業の事業譲渡を決定し、2023年4月1日付で事業譲渡が完了いたしました。
ウェアラブルIoT事業においては、引き続き導入園の拡大に向けて保育博への出展等の営業強化に注力するとともに、午睡中の見守りに特化した「おひるねバンド」型の新製品“cocolin lite”の開発に取り組んでまいりました。“cocolin lite”では、午睡中の姿勢の変化の誤検知が限りなくゼロであるウェアラブルならではの特長をそのままに、リスクの高い午睡時の体動変化の検知に特化することで、着脱が容易であるメリットを付加することにより、幅広く保育施設のニーズに対応しながら導入園の拡大を目指してまいります。
以上の結果、当期におけるその他事業の売上高は、前年同期比9.9%増の1億14百万円となり、セグメント利益は55百万円の損失(前年同期は86百万円の損失)となりました。
以上のとおり、当連結会計年度を抜本的な構造改革の年と位置付け、ポートフォリオ転換に向けた施策に取り組んでまいりました。業績は減収、赤字拡大と非常に厳しいものとなりましたが、構造改革は計画どおりに進捗し年度末までに完了させることができました。今後、2024年3月期の単年度の黒字化と将来的な成長と安定的な財務基盤の構築を実現し、企業価値の回復と向上に努めてまいる所存であります。
生産、受注及び販売の実績は、次のとおりであります。
① 生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称生産高(千円)前年同期比(%)
アパレル事業1,207,40952.3
不動産事業
その他事業2,47625.6
合計1,209,88652.2

(注)1 金額は、製造原価及び仕入価額であります。
2 不動産事業は生産を行っておりません。
② 受注実績
当社は受注生産を行っておりません。
③ 販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称販売高(千円)前年同期比(%)
アパレル事業2,634,50364.7
不動産事業799,4521,224.5
その他事業114,042109.9
合計3,547,99883.7

(注) 1 主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合
相手先前連結会計年度当連結会計年度
販売高(千円)割合(%)販売高(千円)割合(%)
イオンリテール㈱848,79220.0467,81513.2


(2) 財政状態
(流動資産)
当連結会計年度末における流動資産は、前連結会計年度末と比べ20億52百万円減少し、4億9百万円となりました。アパレル事業縮小に伴い実施した店舗の閉店セールによる在庫の消化、保有する全株式の譲渡による中西株式会社の連結除外により、売掛金が4億62百万円、商品及び製品が10億3百万円と、それぞれ減少しました。加えて不動産事業拡大のためのM&A等を含めて現金及び預金が5億49百万円減少したことが主な要因であります。
(固定資産)
当連結会計年度末における固定資産は、前連結会計年度末と比べ70億94百万円増加し、72億19百万円となりました。期首に株式会社キムラタンエステートの株式を取得し完全子会社化したことに伴い、収益不動産が増加したことにより、有形固定資産が66億79百万円、無形固定資産が4億79百万円増加したことが主な要因であります。
(流動負債)
当連結会計年度末における流動負債は、前連結会計年度末と比べ10億58百万円減少し、8億90百万円となりました。前掲のアパレル事業の縮小と中西株式会社の連結除外による支払手形及び買掛金の減少3億39百万円、事業構造改革完了に伴う事業構造改革引当金の減少1億99百万円、返済等による短期借入金の減少4億6百万円が主な要因であります。
(固定負債)
当連結会計年度末における固定負債は、前連結会計年度末と比べ60億51百万円増加し、65億70百万円となりました。不動産事業拡大に向けた株式会社キムラタンエステートのM&Aによる取得のために金融機関より調達等により長期借入金が56億31百万円増加したこと、加えて、取得した土地、建物の資産評価等による繰延税金負債3億64百万円の増加がその主な要因であります。
(純資産)
当連結会計年度末における純資産は、前連結会計年度末と比べ、48百万円増加し1億68百万円となりました。主な増加要因は、2022年6月3日開催の取締役会決議及び2023年3月10日開催の取締役会決議に基づく新株式の発行(DES)による資本金及び資本剰余金の増加10億9百万円と、第16回新株予約権の権利行使(94,000個)による増加1億73百万円であります。主な減少要因は親会社株主に帰属する当期純損失11億34百万円であります
以上の結果、自己資本比率は、前連結会計年度末の3.8%から2.0%となりました。
(3) キャッシュ・フロー
当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)は、55百万円と前年同期と比べ4億13百万円(88.2%)の減少となりました。
営業活動によるキャッシュ・フローは、37百万円の支出(前連結会計年度は2億72百万円の支出)となりました。税金等調整前当期純損失11億40百万円と前期に対し赤字拡大となりましたが、減価償却費2億25百万円、売上債権の減少4億11百万円、棚卸資産の減少8億21百万円等の要因により、営業キャッシュ・フローは、前期に対し2億34百万円の改善となりました。
投資活動によるキャッシュ・フローは、13億66百万円の支出(前連結会計年度は6億47百万円の収入)となりました。不動産事業の拡大に向けた株式会社キムラタンエステートの株式取得による支出19億56百万が主な支出であり、一部の物件売却による収入5億円が主な収入となりました。
財務活動によるキャッシュ・フローは、9億91百万円の収入(前連結会計年度は2億76百万円の支出)となりました。主な増減要因は、短期借入金の純増6億68百万円、長期借入れによる収入62億16百万円、長期借入金の返済57億85百万円です。
当社グループの資本の財源及び資金の流動性について、運転資金需要の主なものは製品仕入、人件費や家賃等の営業費用であり、営業活動によるキャッシュ・フロー及び金融機関からの借入金によって充当しております。また、NET通販にかかるシステムの設備投資資金については、借入金に加え、第三者割当増資や新株予約権行使により調達しております。
当社グループは、取引金融機関との緊密な関係維持に努めており、定期的に業績改善に向けた取組み状況等に関する協議を継続しつつ、状況を判断しながら第三者割当増資や新株予約権の発行を行うなど、安定的で機動的な資金調達の維持向上に努めております。
(4) 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表作成にあたり、見積りが必要な事項につきましては、一定の会計基準の範囲内にて合理的な基準に基づき、会計上の見積りを行っております。これらの見積りについては、過去の実績等を勘案して合理的に判断しておりますが、見積りには不確実性が伴うことから、実際はこれらと結果が異なる場合があります。
詳細につきましては、「第5 経理の状況 1.連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載しております。
なお、新たな感染症の発生やこれに伴う顧客の動向、市場に与える影響等を予想することは極めて困難ではありますが、連結財務諸表作成時において入手可能な情報に基づき会計上の見積りを行っております。