有価証券報告書-第29期(令和2年4月1日-令和3年3月31日)

【提出】
2021/06/30 10:07
【資料】
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【項目】
143項目
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般的に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたって、見積りが必要になる事項につきましては、合理的な基準に基づき、会計上の見積りを行っております。詳細については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項 重要な会計上の見積り」に記載のとおりであります。文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
(1) 財政状態及び経営成績等の状況
調剤薬局業界においては、新型コロナウイルスの感染拡大による患者さまの医療機関への受診控え及び医療機関の外来診療の抑制により受付回数減少の影響を受ける等厳しい状況が続いております。また、2020年9月に施行された「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律等の一部を改正する法律」(改正薬機法)によりオンライン服薬指導が全国で実施可能となる他、服薬期間中のフォローアップが義務化される等、新しい生活様式への対応が求められております。
当社グループではこのような激変した社会においても患者さまにいちばん近い会社であり続けるため、新型コロナウイルスから患者さま・従業員を守る経営を最優先してまいりました。全社戦略についてはウィズコロナの時代の中で中期目標を実現するために、事業ポートフォリオの再構築を行い、「規模の拡大」「利益の最大化」「デジタル化」に全事業一体となって取り組みました。
保険薬局事業においては、オンライン服薬指導への対応として、調剤薬局窓口支援システム「Pharms(ファームス)」をはじめとした複数のオンライン服薬指導支援システムをグループ薬局全店舗に導入を進めております。
また、現在積極的に販売促進活動を行っているオゾン除菌・脱臭器「AIR BUSTER(エアバスター)」は好調に推移し、販売計画を前倒しで達成する見込みとなりました。さらに、小型で軽量な「AIR CUBE(エアキューブ)」「スペースくりんLOOP(ループ)」等の新たなオゾン関連商品の取り扱いを開始する等、感染症拡大防止に資する商品の普及を通じて、地域の皆さまの安心・安全な暮らしを支えてまいります。
医療関連事業においては、CSO事業と医薬品製造販売事業が順調に推移いたしました。成長分野である医療関連事業を拡大していくことで、営業利益に占める割合を高め、総合ヘルスケアカンパニーへと前進するための安定した基盤を構築してまいります。
当社グループでは、認知度向上による患者さま・お客さまの増加や、質の高いサービスを提供することによって定着化へ繋げるために、ブランディング戦略の一環として、商業施設への大型看板の設置や阪神甲子園球場への企業ロゴの掲出、薬剤師の活躍を描いたフジテレビドラマ「アンサング・シンデレラ 病院薬剤師の処方箋」の番組連動CMの放映を行いました。
このような環境のもと、当連結会計年度における当社グループ連結業績は、売上高161,832百万円(前年同期比 2.2%減少)、営業利益7,364百万円(前年同期比4.8%減少)、経常利益7,403百万円(前年同期比7.7%減少)、親会社株主に帰属する当期純利益は3,365百万円(前年同期比17.3%減少)となりました。また、EBITDAについては、12,035百万円(前年同期比2.6%減少)となりました。
セグメント別の財政状態及び経営成績は、次のとおりであります。なお、当連結会計年度より、「BPO事業」としていた報告セグメント名称を「医療関連事業」に変更しております。この変更はセグメント名称の変更であり、セグメント情報に与える影響はありません。
a. 保険薬局事業
保険薬局事業の事業戦略については、M&Aや新規出店による規模の拡大、コスト構造改革による利益の最大化、次世代薬局等のデジタル化に取り組みました。
当連結会計年度において、出店状況は、新規出店16店舗、事業譲受5店舗、子会社化による取得13店舗の計34店舗増加した一方、閉店16店舗、事業譲渡12店舗の計28店舗減少した結果、当事業全体で店舗数は811店舗となりました。今後も付加価値の高い薬局を展開していくためにM&A基準の厳格化等、戦略的出店による規模の拡大を図ってまいります。
新型コロナウイルス感染症による業績への影響を最小限にするための取り組みとして、コスト適正化プロジェクトによる、外部環境の変化に柔軟に対応できる強靭な企業体質への変革を進めてまいりました。その結果、残業の減少や、経費の適正化など着実な成果を上げております。
薬局運営においては、クオール薬局恵比寿店に自動薬剤ピッキング装置「ドラッグステーション」や、オープン型宅配便ロッカー「PUDO(プドー)ステーション」、遠隔操作ロボット「newme(ニューミー)」といった最新鋭の技術を導入した他、ナチュラルローソンクオール薬局豊洲三丁目店においては、QRコードを使うことで非対面・非接触でお薬の受け取りを可能にするロッカーを導入する等、次世代薬局のモデルを構築いたしました。
また、薬局事業の新たな柱として在宅・施設調剤の推進を図っております。個々の患者さまに寄り添った医療を提供することにより、患者さまに安心して頼っていただける薬局を確立してまいります。
業績につきましては、処方の長期化による処方箋単価の上昇や、マスク・除菌消臭水等の感染予防商品の売上が増加した一方で、新型コロナウイルス感染症による受付回数の減少とそれに伴う技術料収入の減少等により減収減益となりましたが、国の求めるかかりつけ薬局・健康サポート薬局としての機能向上を進めるとともに、後発医薬品調剤体制加算や地域支援体制加算の取得店舗数を着実に伸ばしてまいりました。なお、健康サポート薬局の認定数は当連結会計年度末時点で154店舗となりました。
その結果、売上高は148,722百万円(前年同期比2.9%減少)、営業利益は6,478百万円(前年同期比10.7%減少)となりました。
なお、グループ内取引の経営管理料を除いた後の営業利益は、8,074百万円(前年同期比2.3%減少)となります。
また、当連結会計年度末の資産合計は、87,717百万円となり、前連結会計年度末から3,788百万円減少しております。
当社グループの属する保険薬局業界においては、調剤報酬・薬価改定が行われ、調剤報酬及び薬価の点数、金額等が変更になった場合や関連する法令が改正された場合等において、業績等に影響を及ぼす可能性があります。
詳細については、「第2 事業の状況 2 事業等のリスク」に記載のとおりであります。
b. 医療関連事業
CSO事業においては、社内認定制度を設けている他、領域別の研修やEラーニングを行う等、医療現場から求められるCMRの育成に注力いたしました。今後も引き続き専門性の高いCMRや製薬企業への営業力等を強みに、ウィズコロナの時代に適した施策を提案してまいります。
紹介派遣事業においては、医療関連事業の中核であるアポプラスステーション株式会社の紹介派遣事業をアポプラスキャリア株式会社として分社化しており、2020年10月1日より事業を開始いたしました。職種増加と業界内シェア拡大を進めるとともに、新たに事業承継支援やコスト削減支援といった、提供するサービスの拡充による売上増加に取り組んでまいりました。
医薬品製造販売事業においては、当社保険薬局での自社製品の販売促進及び大手提携製薬企業との共同プロモーション、治験薬の取り扱いにより収益改善を実現しました。また、工場への設備投資、専門人財の採用や組織再編等、製薬企業としての機能強化も継続しており、受託製造をはじめとした事業の拡大に取り組みました。加えて、医薬品の品質管理と安定供給体制のため、製造工程や環境の確認を行いました。今後も人為的ミスの発生防止や不正を発生させない仕組みづくりによって、品質管理の意識向上に努めてまいります。
その結果、売上高は13,109百万円(前年同期比7.2%増加)、営業利益は1,350百万円(前年同期比0.4%増加)となりました。
なお、グループ内取引の経営管理料を除いた後の営業利益は、1,476百万円(前年同期比2.0%増加)となります。
また、当連結会計年度末の資産合計は、10,899百万円となり、前連結会計年度末から1,243百万円減少しております。
当社グループが行う医療関連事業の運営においては、法令による規制を受けており、各都道府県等の許可・登録・指定・免許を受けることができない場合や関連する法令に違反した場合、または法令が改正された場合等において、業績等に影響を及ぼす可能性があります。
詳細については、「第2 事業の状況 2 事業等のリスク」に記載のとおりであります。
※EBITDA=営業利益+減価償却費+のれん償却額
※CSO:Contract Sales Organizationの略
※CMR:Contract Medical Representativeの略
(2) 販売、処方箋応需の実績
a. 販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称金額(百万円)構成比(%)前年同期比(%)
保険薬局事業薬剤に係る収入104,97064.9%△2.0%
調剤技術に係る収入31,86119.7%△6.3%
一般薬等売上11,8907.3%△1.6%
小計148,72291.9%△2.9%
医療関連事業(注)213,1098.1%7.2%
合計161,832100.0%△2.2%

(注) 1.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
2.当連結会計年度より、「BPO事業」としていた報告セグメント名称を「医療関連事業」に変更
しております。この変更はセグメント名称の変更であり、セグメント情報に与える影響はありま
せん。
b. 処方箋応需実績
当連結会計年度における保険薬局事業の処方箋応需実績は、次のとおりであります。
処方箋応需枚数(千枚)前年同期比(%)
13,369△9.8

(3)キャッシュ・フロー
当連結会計年度におけるキャッシュ・フローは、営業活動によるキャッシュ・フローが12,912百万円の収入、投資活動によるキャッシュ・フローが3,065百万円の支出、財務活動によるキャッシュ・フローが6,114百万円の支出となりました。この結果、当連結会計年度の現金及び現金同等物の期末残高は、前連結会計年度末に比べ3,732百万円増加し19,498百万円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
税金等調整前当期純利益6,895百万円及び売上債権の減少額4,680百万円等により、12,912百万円の収入(前年同期4,468百万円の収入)となりました。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
有形固定資産の取得による支出1,635百万円及び連結の範囲の変更を伴う子会社株式の取得による支出655百万円、事業譲受による支出573百万円等により、3,065百万円の支出(前年同期8,670百万円の支出)となりました。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
長期借入れによる収入9,143百万円及び長期借入金の返済による支出9,835百万円、自己株式の取得による支出1,877百万円、短期借入金の純減額1,612百万円、社債の償還による支出1,108百万円、配当金の支払額1,058百万円等により、6,114百万円の支出(前年同期225百万円の支出)となりました。
(4)資本の財源及び資金の流動性
当社グループの資本の財源及び資金の流動性につきましては、次のとおりであります。
当社グループの運転資金需要のうち主なものは商品の仕入のほか、販売費及び一般管理費等の営業費用であります。投資を目的とした資金需要は、設備投資、新規出店及びM&A等によるものであります。
当社グループは、事業運営上必要な資金の流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針としております。
短期運転資金は自己資金及び金融機関からの短期借入を基本としており、設備投資や長期運転資金の調達につきましては、金融機関からの長期借入を基本としております。また、多額な資金需要が発生した場合にはエクイティファイナンス等による調達手段を検討し対応することを基本としております。
(5)重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表を作成するにあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。
①のれんの減損の兆候に関する判断について
保険薬局事業においてのれんを含む、より大きな単位について減損の兆候に該当する事象がある場合には、より大きな単位で減損を認識するかどうかの判定を行いますが、当社グループにおいては営業活動から生ずる損益又はキャッシュ・フローが継続してマイナスとなっているかどうかだけでなく、経営環境の著しい悪化に該当するかどうかの検討も重要となります。
経営環境の著しい悪化に該当するかどうかの検討は、主として、のれんを含む、より大きな単位ごとに重要な指標である売上及びその仮定の構成要素である処方箋枚数について当連結会計年度における傾向分析及び当連結会計年度の実績と将来の見積りの整合性を検討することにより実施されます。
②新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴う会計上の見積り
保険薬局事業においては新型コロナウイルス感染症により、患者さまの医療機関への受診控え、医療機関の外来診療の抑制及び受付回数の減少が2022年3月期においても当連結会計年度と同様の傾向で持続すると認識しております。
当社グループにおいては、連結財務諸表作成時において入手可能な情報に基づき、固定資産の減損会計及び繰延税金資産の回収可能性等の会計上の見積りを行っております。
なお、新型コロナウイルス感染症の収束時期は依然として不透明な状況であり、その経済環境への影響が変化した場合には、2022年3月期の連結財務諸表に影響を与える可能性があります。