有価証券報告書-第80期(令和2年4月1日-令和3年3月31日)
(1) 経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次の通りであります。
①財政状態及び経営成績の状況
(経営成績の概況)
政府の月例経済報告によると、当連結会計年度の日本経済は「先行きについては、感染拡大の防止策を講じつつ、社会経済活動のレベルを引き上げていくなかで、各種政策の効果や海外経済の改善もあって、持ち直していくことが期待される。ただし、感染の動向が内外経済に与える影響に十分注意する必要がある。」と記されており、企業の業況判断は「厳しさは残るものの、持ち直しの動きがみられる」とされております。
当社グループにおいても、当連結会計年度は、新型コロナウイルス感染症の影響により、広告収入の減少や観光需要の低下、イベントの中止・延期など少なからず影響を受けましたが、一方では、在宅機会の増加に伴う需要もありました。
こうした状況の中、当社グループの当連結会計年度の売上高は、メディア・コンテンツ事業、都市開発・観光事業がともに減収となり、全体では前年同期比17.7%減収の519,941百万円となりました。
営業利益も、メディア・コンテンツ事業、都市開発・観光事業がともに減益となり、前年同期比38.2%減益の16,274百万円となりました。経常利益は前年同期比36.0%減益の22,295百万円、親会社株主に帰属する当期純利益は、特別利益に計上した投資有価証券売却益が増加した一方で、前連結会計年度に計上した厚生年金基金代行返上益の反動減や特別損失に計上した減損損失の増加などにより、前年同期比75.5%減益の10,112百万円となりました。
報告セグメントの業績の状況は以下の通りであります。
(メディア・コンテンツ事業)
当社グループの中核子会社である㈱フジテレビジョンの放送収入は、新型コロナウイルス感染症による影響を受け、186,666百万円で前年同期比12.4%の減収となりました。
主力の放送事業のうち、全国放送を対象とするネットタイムセールスは「全日本フィギュアスケート選手権2020」、「世界フィギュアスケート選手権2021」が貢献したものの、大型単発番組の中止、延期が相次ぎ、レギュラー番組の減収を補うことはできませんでした。その結果、ネットタイムセールスの売上高は67,955百万円で前年同期比13.8%の減収となりました。
関東地区への放送を対象とするローカルタイムセールスは、セールス区分の変更などもあり、売上高は11,579百万円で前年同期比6.0%の減収となりました。
スポットセールスは、企業の業績悪化の影響を受けて広告市況が低迷した影響から落ち込み、下期は回復傾向を見せたものの、通期では前年を下回りました。業種別では19業種のうち前年を上回ったのは「アルコール飲料」、「電話サービス」など4業種にとどまり、「交通・レジャー・観光」、「金融・保険」、「出版・エンタテインメント」などが前年を下回りました。その結果、スポットセールスの売上高は76,175百万円で前年同期比14.9%の減収となりました。
その他事業では、「FOD(フジテレビオンデマンド)」が好調なデジタル事業とビデオ事業が前年を上回ることができました。映画事業において「コンフィデンスマンJPプリンセス編」の配給収入や二次利用収入が貢献したものの前期に届かず減収となりました。イベント事業においては中止や延期の影響を受けたことから減収となりました。その結果、その他事業の売上高は30,910百万円で前年同期比27.3%の減収となりました。
以上により、㈱フジテレビジョン全体の売上高は、前年同期比14.9%減収の217,577百万円となりました。営業利益は前年同期比29.2%減益の5,071百万円となりました。
㈱ビーエスフジは、スポットは好調でしたがタイムの落ち込みやイベントの中止・延期などで減収となりましたが、利益面では番組原価など営業費用がおさえられたことから増益となりました。
㈱ニッポン放送は、ラジオ通販事業が好調でしたが、主力の放送事業が減収となり、減収増益となりました。
㈱ポニーキャニオンは、音楽配信や旧譜販売は堅調でしたが、新作のリリースが少なかったためパッケージ販売全体では減収となった他、イベント収入も新型コロナウイルス感染症による影響を受け、売上高全体で減収となりました。利益面では原価率が改善し販管費も低減したことから増益となりました。
㈱フジパシフィックミュージックは、著作権使用料収入が配信を中心に伸びたことに加え、原盤使用料収入も堅調でしたが、前期開催したライブツアーの反動減でマネージメント収入が減収となり、減収増益となりました。
㈱ディノス・セシールは、2021年3月にセシール事業を売却し、商号を㈱DINOS CORPORATIONへ変更しました。
ディノス事業は、テレビ通販で美容健康商材を中心に引き続き好調を維持した他、在宅需要等を背景に家庭用品や家具などが好調で増収となりましたが、㈱DINOS CORPORATION全体としてはセシール事業を期中で売却したことにより減収となりました。利益面では販管費抑制にも努め、大幅増益となりました。
㈱クオラスは、広告収入が低調だったことで、減収減益となりました。
㈱フジゲームスは、スマートフォンゲームが苦戦し営業損失を計上しましたが、赤字幅は縮小しました。
以上の結果、メディア・コンテンツ事業全体の売上高は、前年同期比14.7%減収の439,466百万円となり、セグメント利益は同1.4%減益の13,723百万円となりました。
(都市開発・観光事業)
㈱サンケイビルは、ビル事業が増収となりましたが、住宅事業において分譲マンション販売が減少し、資産開発事業における不動産販売収入も減少し、全体で減収減益となりました。
㈱グランビスタホテル&リゾートは、新型コロナウイルス感染症による影響で、インバウンド含む旅行・観光需要の減少を受けて減収となり、営業損失を計上しました。
以上の結果、都市開発・観光事業全体の売上高は、前年同期比31.3%減収の76,048百万円となり、セグメント利益は同72.8%減益の3,728百万円となりました。
(その他事業)
その他事業全体の売上高は前年同期比9.4%減収の17,510百万円、セグメント利益は同25.3%減益の444百万円となりました。
持分法適用会社では、伊藤忠・フジ・パートナーズ㈱、フジテレビ系列局、日本映画放送㈱、㈱WOWOW、㈱産業経済新聞社などは持分法による投資利益に貢献しました。
(財政状態の概況)
当期末の総資産は1,336,042百万円となり、前期末比81,429百万円(6.5%)増加しました。
流動資産は412,709百万円で、前期末比11,323百万円(2.7%)減少しました。これは主に、現金及び預金が28,724百万円増加した一方で、受取手形及び売掛金が19,195百万円、たな卸資産が11,322百万円、有価証券が8,730百万円減少したこと等によるものであります。
固定資産は923,333百万円で、前期末比92,986百万円(11.2%)増加しました。これは主に、投資有価証券が上場株式の含み益の増加等により74,960百万円、建物及び構築物が14,947百万円増加したこと等によります。
負債は551,612百万円で、前期末比42,574百万円(8.4%)増加しました。
流動負債は140,013百万円で、前期末比26,071百万円(15.7%)減少しました。これは主に、短期借入金が23,891百万円減少したこと等によります。
固定負債は411,599百万円で、前期末比68,646百万円(20.0%)増加しました。これは主に、流動負債への振替により社債が10,000百万円減少した一方で、長期借入金が64,700百万円増加したことや、上場株式の含み益の増加等により繰延税金負債が18,068百万円増加したこと等によります。
純資産は784,429百万円で、前期末比38,855百万円(5.2%)増加しました。これは、自己株式を9,999百万円取得し、剰余金の配当を9,325百万円行った一方で、上場株式の含み益の増加等によりその他有価証券評価差額金が45,594百万円増加し、親会社株主に帰属する当期純利益10,112百万円を計上したこと等によります。
②キャッシュ・フローの状況
当期における各キャッシュ・フローの状況は以下の通りであります。
営業活動によるキャッシュ・フローは、45,844百万円の収入となり、前期比28,990百万円(172.0%)の収入増加となりました。これは、税金等調整前当期純利益が35,564百万円減少した一方で、退職給付に係る負債の増減額が18,314百万円の支出減少、売上債権の増減額が16,344百万円の収入増加、たな卸資産の増減額が15,915百万円の収入増加となったこと等によります。
投資活動によるキャッシュ・フローは、26,613百万円の支出となり、前期比7,293百万円(21.5%)の支出減少となりました。これは、投資有価証券の売却及び償還による収入が10,214百万円減少、有価証券の売却及び償還による収入が8,704百万円減少、有形固定資産の取得による支出が5,612百万円増加した一方で、有価証券の取得による支出が34,374百万円減少したこと等によります。
財務活動によるキャッシュ・フローは、20,395百万円の収入となり、前期比12,007百万円の収入増加となりました。これは、長期借入金の返済による支出が12,642百万円増加した一方で、長期借入れによる収入が31,137百万円増加したこと等によります。
以上の結果、現金及び現金同等物の当期末残高は、118,591百万円となり、前期末に比べ38,621百万円(48.3%)の増加となりました。
(参考) キャッシュ・フロー関連指標の推移
(注) 1.自己資本比率:自己資本/総資産
2.時価ベースの自己資本比率:株式時価総額/総資産
3.キャッシュ・フロー対有利子負債比率:有利子負債/キャッシュ・フロー
4.インタレスト・カバレッジ・レシオ:キャッシュ・フロー/利払い
※ 各指標は、いずれも連結ベースの財務数値により算出しております。
※ 株式時価総額は、期末株価終値×期末発行済株式数(自己株式控除後)により算出しております。
※ キャッシュ・フローは、連結キャッシュ・フロー計算書の営業活動によるキャッシュ・フローを使用しております。
※ 有利子負債は、連結貸借対照表に計上されている負債のうち、利子を支払っている全ての負債を対象としております。また、利払いについては、連結キャッシュ・フロー計算書の利息の支払額を使用しております。
※ 「『税効果会計に係る会計基準』の一部改正」(企業会計基準第28号 平成30年2月16日)等を2019年3月期の期首から適用しており、2018年3月期の指標については遡及適用後の数値を記載しております。
③生産、受注及び販売の実績
(a) 生産実績
該当事項はありません。
(b) 受注実績
該当事項はありません。
(c) 販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次の通りであります。
(注) 1 主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合
2 上記の金額には、消費税等は含まれておりません
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次の通りであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
① 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
当社グループの当連結会計年度の経営成績等については、(1)経営成績等の状況の概要に記載の通り、新型コロナウイルス感染症による広告収入の減少や観光需要の低下、イベントの中止・延期などから大きな影響を受けました。一方では、在宅機会の増加に伴う需要も取り込むことができましたが、連結業績全体では減収減益となりました。
当連結会計年度は、2018年5月15日に公表した中期経営計画の最終年度にあたりましたが、その定量目標については、2020年11月12日付四半期報告書に記載の通り、新型コロナウイルス感染症の影響に伴う大きな経営環境の変化と当社グループの状況から取り下げることといたしました。同中期経営計画で掲げた各施策については、㈱フジテレビジョンにおける固定的な費用の見直しや番組制作費の効率的運用、放送事業収支の拡大に向けた取り組みなどの構造改革また、事業ポートフォリオの強化の一環としての㈱DINOS CORPORATIONにおけるセシール事業の譲渡など、その取り組みを継続してまいりました。
当社グループでは、引き続き、グループの収益力・経営基盤の強化の取り組みを継続するとともにメディア環境の変化に対応し構造改革を実施してまいります。
(セグメント区分別の分析)
(メディア・コンテンツ事業)
メディア・コンテンツ事業の経営成績等の状況に関する認識については、(1)経営成績等の状況の概要に記載の通りです。
在宅需要を取り込み家庭用品や家具などが好調だった㈱DINOS CORPORATIONや、旧作パッケージや配信が好調に推移した㈱ポニーキャニオンなど、これまでの取り組みの成果やコロナ禍での消費者動向の変化により営業増益を果たしたグループ会社がある一方で、中核子会社である㈱フジテレビジョンをはじめ複数のグループ会社では、広告収入の減少、主催イベントの中止・規模縮小、劇場映画の公開延期等により減収減益となりました。メディア・コンテンツ事業では、今後も新型コロナウイルス感染症の感染状況を注視しながら、引き続き事業環境に応じた改革を中期的に進めるとともに、㈱フジテレビジョンを中心にグループ各社の事業の連動を促し、セグメントが一体となった効率的な運用によって、収益力・経営基盤の強化を図っていきます。また、強力なコンテンツ制作力をもとに、外部向けのプロダクション機能とコンテンツホルダーとしての収益拡大を推進していきます。
(都市開発・観光事業)
都市開発・観光事業の経営成績等の状況に関する認識については、(1)経営成績等の状況の概要に記載の通りです。
特に、㈱グランビスタホテル&リゾートにおいて、新型コロナウイルス感染症の影響による観光需要の激減を受け売上高は大幅な減収となり、人件費圧縮など費用削減に努めましたが営業赤字が前連結会計年度を大幅に上回る結果となりました。また、㈱サンケイビルにおいては、ビル事業は増収になったものの、前連結会計年度のREITへの大型物件の売却の反動や、販売戸数の減少による住宅事業の減収などを賄うことが出来ず、全体では減収減益となりました。
このように都市開発・観光事業は、新型コロナウイルス感染症の影響を特に強く受けており、当面はこの影響が継続し、事業を取り巻く環境は不安定な状況が継続すると認識しておりますが、我が国の豊かな観光資源への潜在的なインバウンド需要は大きく、中長期的には高い成長を期待することが出来る事業領域であると認識しています。新型コロナウイルス感染症等が及ぼす今後の観光需要やオフィス需要への影響を見極めつつ、財務の健全性を確保した上で長期的な視点で投資を継続していきます。
(その他事業)
その他事業の経営成績等の状況に関する認識等については、(1)経営成績等の状況の概要に記載の通りです。
② 資本の財源及び資金の流動性に関する情報
(財務戦略の基本的な考え方)
当社グループは、グループ各社の持続的成長と中長期的な企業価値向上を目指すため、健全な財務体質と資本効率の向上を両立させながら、成長分野への投資を推進し、株主還元の充実を図っていくことを財務戦略の基本方針としています。
メディア・コンテンツ事業の中核をなす㈱フジテレビジョンは、大規模災害や疾病等の事業上のリスクにより大幅な収入減が長期間生じた際にも、社会的なインフラとして放送を継続する役割を担っており、それを可能とする強固な財務体質と十分な手元流動性を確保しております。併せて都市開発・観光事業では、2020年初頭に発生した新型コロナウィルス感染症の終息後を見据えて、REITを通じた戦略投資や観光需要回復に向けた成長投資への資金確保が必要になると考えております。
自己資本比率、有利子負債残高、ROE等の指標を注視して、一定の財務健全性を確保しながら資本効率を高め、グループ全体の企業価値向上に努めてまいります。
(資金需要の内容)
当社グループの資金需要は、営業活動に関わる支出として、放映権の取得費用、番組制作のための人件費、外注費、著作権等の使用料、通信販売商品の仕入、新規不動産の取得ならびに開発費、既存ビルの設備改修ほか、販売費及び一般管理費(代理店手数料、宣伝広告費、人件費等)があります。
また投資活動に関わる支出として、コンテンツ制作力の増強を図るための放送用設備・機器等の設備投資、メディア戦略強化のための投資資金、グループの資本政策に伴う株式の取得資金等があります。
(資金調達)
当社グループの事業活動を維持し拡大していくためには資金の安定的な確保が求められますが、そのために内部資金を中心に外部資金も有効に活用しております。効率的な投資を可能にするために現在20,000百万円の社債を発行しておりますが、更に機動的な資金調達をすべく50,000百万円の社債発行登録枠を確保しております。また都市開発・観光事業では建物及び土地の調達にあたり、一定の財務規律の下、金融機関からの借入を活用しています。併せて安定的な外部資金調達を図るために、格付投資情報センターより格付を取得しており、本報告書提出時点でシングルAプラス(安定的)となっております。当社グループは強固な財務体質を有しており、さらに営業活動によるキャッシュ・フロー創出能力が高いことから、当社グループの成長を維持するための運転資金、設備投資及び投融資に要する資金を調達することは可能と認識しております。
③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたっては、経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額及び開示に影響を与える見積りを必要とします。経営者は、これらの見積りについて過去の実績等を勘案し合理的に判断しておりますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。
当社グループにおいて、連結財務諸表に与える影響が大きいと考えている会計上の見積りに係る項目は、以下の通りであります。
なお、会計上の見積りに係る項目のうち、翌連結会計年度の連結財務諸表に与える影響に重要性があると判断している都市開発・観光事業におけるたな卸資産評価損と固定資産の減損損失につきましては、第5 経理の状況 1連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)に算出方法や主要な仮定等の詳細を記載しております。また、新型コロナウイルス感染症の影響についての考え方についても当該箇所に記載しております。
(繰延税金資産)
当社グループは、繰延税金資産の回収可能性の検討にあたり、各課税主体ごとに将来の課税所得を合理的に見積もり、回収可能性がないと判断した部分については評価性引当額を計上しております。将来の課税所得の見積りは、当連結会計年度末時点で予測可能な合理的な将来課税所得見込額とタックスプランニングに基づいておりますが、今後の業績の変動により見積りと実績が乖離する可能性があります。この場合、繰延税金資産の取崩等により、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼすことが考えられます。
(退職給付に係る資産及び負債)
当社及び一部の連結子会社では確定給付型の退職金制度を採用しており、退職給付債務算定において原則法を採用しています。退職給付債務算定における数理計算は、割引率、退職率、死亡率、予想昇給率などの計算基礎に基づいており、割引率は安全性の高い債券の利回りを基礎として決定しております。また、年金資産の長期期待運用収益率は、年金資産が退職給付の支払に充てられるまでの時期、保有している年金資産のポートフォリオ、過去の運用実績、運用方針及び市場の動向等を考慮して決定しております。これらの前提条件の見積りと実績の差異は、数理計算上の差異として計上され、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼすことが考えられます。
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次の通りであります。
①財政状態及び経営成績の状況
(経営成績の概況)
政府の月例経済報告によると、当連結会計年度の日本経済は「先行きについては、感染拡大の防止策を講じつつ、社会経済活動のレベルを引き上げていくなかで、各種政策の効果や海外経済の改善もあって、持ち直していくことが期待される。ただし、感染の動向が内外経済に与える影響に十分注意する必要がある。」と記されており、企業の業況判断は「厳しさは残るものの、持ち直しの動きがみられる」とされております。
当社グループにおいても、当連結会計年度は、新型コロナウイルス感染症の影響により、広告収入の減少や観光需要の低下、イベントの中止・延期など少なからず影響を受けましたが、一方では、在宅機会の増加に伴う需要もありました。
こうした状況の中、当社グループの当連結会計年度の売上高は、メディア・コンテンツ事業、都市開発・観光事業がともに減収となり、全体では前年同期比17.7%減収の519,941百万円となりました。
営業利益も、メディア・コンテンツ事業、都市開発・観光事業がともに減益となり、前年同期比38.2%減益の16,274百万円となりました。経常利益は前年同期比36.0%減益の22,295百万円、親会社株主に帰属する当期純利益は、特別利益に計上した投資有価証券売却益が増加した一方で、前連結会計年度に計上した厚生年金基金代行返上益の反動減や特別損失に計上した減損損失の増加などにより、前年同期比75.5%減益の10,112百万円となりました。
報告セグメントの業績の状況は以下の通りであります。
売 上 高 | セグメント利益 | |||||
前連結会計年度 | 当連結会計年度 | 増減 | 前連結会計年度 | 当連結会計年度 | 増減 | |
(百万円) | (百万円) | (%) | (百万円) | (百万円) | (%) | |
メディア・ コンテンツ事業 | 515,334 | 439,466 | △14.7 | 13,924 | 13,723 | △1.4 |
都市開発・観光事業 | 110,749 | 76,048 | △31.3 | 13,706 | 3,728 | △72.8 |
その他事業 | 19,335 | 17,510 | △9.4 | 595 | 444 | △25.3 |
調整額 | △13,936 | △13,083 | ― | △1,885 | △1,622 | ― |
合 計 | 631,482 | 519,941 | △17.7 | 26,341 | 16,274 | △38.2 |
(メディア・コンテンツ事業)
当社グループの中核子会社である㈱フジテレビジョンの放送収入は、新型コロナウイルス感染症による影響を受け、186,666百万円で前年同期比12.4%の減収となりました。
主力の放送事業のうち、全国放送を対象とするネットタイムセールスは「全日本フィギュアスケート選手権2020」、「世界フィギュアスケート選手権2021」が貢献したものの、大型単発番組の中止、延期が相次ぎ、レギュラー番組の減収を補うことはできませんでした。その結果、ネットタイムセールスの売上高は67,955百万円で前年同期比13.8%の減収となりました。
関東地区への放送を対象とするローカルタイムセールスは、セールス区分の変更などもあり、売上高は11,579百万円で前年同期比6.0%の減収となりました。
スポットセールスは、企業の業績悪化の影響を受けて広告市況が低迷した影響から落ち込み、下期は回復傾向を見せたものの、通期では前年を下回りました。業種別では19業種のうち前年を上回ったのは「アルコール飲料」、「電話サービス」など4業種にとどまり、「交通・レジャー・観光」、「金融・保険」、「出版・エンタテインメント」などが前年を下回りました。その結果、スポットセールスの売上高は76,175百万円で前年同期比14.9%の減収となりました。
その他事業では、「FOD(フジテレビオンデマンド)」が好調なデジタル事業とビデオ事業が前年を上回ることができました。映画事業において「コンフィデンスマンJPプリンセス編」の配給収入や二次利用収入が貢献したものの前期に届かず減収となりました。イベント事業においては中止や延期の影響を受けたことから減収となりました。その結果、その他事業の売上高は30,910百万円で前年同期比27.3%の減収となりました。
以上により、㈱フジテレビジョン全体の売上高は、前年同期比14.9%減収の217,577百万円となりました。営業利益は前年同期比29.2%減益の5,071百万円となりました。
㈱ビーエスフジは、スポットは好調でしたがタイムの落ち込みやイベントの中止・延期などで減収となりましたが、利益面では番組原価など営業費用がおさえられたことから増益となりました。
㈱ニッポン放送は、ラジオ通販事業が好調でしたが、主力の放送事業が減収となり、減収増益となりました。
㈱ポニーキャニオンは、音楽配信や旧譜販売は堅調でしたが、新作のリリースが少なかったためパッケージ販売全体では減収となった他、イベント収入も新型コロナウイルス感染症による影響を受け、売上高全体で減収となりました。利益面では原価率が改善し販管費も低減したことから増益となりました。
㈱フジパシフィックミュージックは、著作権使用料収入が配信を中心に伸びたことに加え、原盤使用料収入も堅調でしたが、前期開催したライブツアーの反動減でマネージメント収入が減収となり、減収増益となりました。
㈱ディノス・セシールは、2021年3月にセシール事業を売却し、商号を㈱DINOS CORPORATIONへ変更しました。
ディノス事業は、テレビ通販で美容健康商材を中心に引き続き好調を維持した他、在宅需要等を背景に家庭用品や家具などが好調で増収となりましたが、㈱DINOS CORPORATION全体としてはセシール事業を期中で売却したことにより減収となりました。利益面では販管費抑制にも努め、大幅増益となりました。
㈱クオラスは、広告収入が低調だったことで、減収減益となりました。
㈱フジゲームスは、スマートフォンゲームが苦戦し営業損失を計上しましたが、赤字幅は縮小しました。
以上の結果、メディア・コンテンツ事業全体の売上高は、前年同期比14.7%減収の439,466百万円となり、セグメント利益は同1.4%減益の13,723百万円となりました。
(都市開発・観光事業)
㈱サンケイビルは、ビル事業が増収となりましたが、住宅事業において分譲マンション販売が減少し、資産開発事業における不動産販売収入も減少し、全体で減収減益となりました。
㈱グランビスタホテル&リゾートは、新型コロナウイルス感染症による影響で、インバウンド含む旅行・観光需要の減少を受けて減収となり、営業損失を計上しました。
以上の結果、都市開発・観光事業全体の売上高は、前年同期比31.3%減収の76,048百万円となり、セグメント利益は同72.8%減益の3,728百万円となりました。
(その他事業)
その他事業全体の売上高は前年同期比9.4%減収の17,510百万円、セグメント利益は同25.3%減益の444百万円となりました。
持分法適用会社では、伊藤忠・フジ・パートナーズ㈱、フジテレビ系列局、日本映画放送㈱、㈱WOWOW、㈱産業経済新聞社などは持分法による投資利益に貢献しました。
(財政状態の概況)
当期末の総資産は1,336,042百万円となり、前期末比81,429百万円(6.5%)増加しました。
流動資産は412,709百万円で、前期末比11,323百万円(2.7%)減少しました。これは主に、現金及び預金が28,724百万円増加した一方で、受取手形及び売掛金が19,195百万円、たな卸資産が11,322百万円、有価証券が8,730百万円減少したこと等によるものであります。
固定資産は923,333百万円で、前期末比92,986百万円(11.2%)増加しました。これは主に、投資有価証券が上場株式の含み益の増加等により74,960百万円、建物及び構築物が14,947百万円増加したこと等によります。
負債は551,612百万円で、前期末比42,574百万円(8.4%)増加しました。
流動負債は140,013百万円で、前期末比26,071百万円(15.7%)減少しました。これは主に、短期借入金が23,891百万円減少したこと等によります。
固定負債は411,599百万円で、前期末比68,646百万円(20.0%)増加しました。これは主に、流動負債への振替により社債が10,000百万円減少した一方で、長期借入金が64,700百万円増加したことや、上場株式の含み益の増加等により繰延税金負債が18,068百万円増加したこと等によります。
純資産は784,429百万円で、前期末比38,855百万円(5.2%)増加しました。これは、自己株式を9,999百万円取得し、剰余金の配当を9,325百万円行った一方で、上場株式の含み益の増加等によりその他有価証券評価差額金が45,594百万円増加し、親会社株主に帰属する当期純利益10,112百万円を計上したこと等によります。
②キャッシュ・フローの状況
当期における各キャッシュ・フローの状況は以下の通りであります。
営業活動によるキャッシュ・フローは、45,844百万円の収入となり、前期比28,990百万円(172.0%)の収入増加となりました。これは、税金等調整前当期純利益が35,564百万円減少した一方で、退職給付に係る負債の増減額が18,314百万円の支出減少、売上債権の増減額が16,344百万円の収入増加、たな卸資産の増減額が15,915百万円の収入増加となったこと等によります。
投資活動によるキャッシュ・フローは、26,613百万円の支出となり、前期比7,293百万円(21.5%)の支出減少となりました。これは、投資有価証券の売却及び償還による収入が10,214百万円減少、有価証券の売却及び償還による収入が8,704百万円減少、有形固定資産の取得による支出が5,612百万円増加した一方で、有価証券の取得による支出が34,374百万円減少したこと等によります。
財務活動によるキャッシュ・フローは、20,395百万円の収入となり、前期比12,007百万円の収入増加となりました。これは、長期借入金の返済による支出が12,642百万円増加した一方で、長期借入れによる収入が31,137百万円増加したこと等によります。
以上の結果、現金及び現金同等物の当期末残高は、118,591百万円となり、前期末に比べ38,621百万円(48.3%)の増加となりました。
(参考) キャッシュ・フロー関連指標の推移
2017年3月期 | 2018年3月期 | 2019年3月期 | 2020年3月期 | 2021年3月期 | |
自己資本比率(%) | 56.3 | 56.7 | 56.5 | 58.6 | 57.9 |
時価ベースの自己資本比率(%) | 29.9 | 33.7 | 27.4 | 19.9 | 22.6 |
キャッシュ・フロー対有利子 負債比率(年) | 4.2 | 4.6 | 2.1 | 14.7 | 6.3 |
インタレスト・カバレッジ・ レシオ(倍) | 31.0 | 38.4 | 90.2 | 14.4 | 33.5 |
(注) 1.自己資本比率:自己資本/総資産
2.時価ベースの自己資本比率:株式時価総額/総資産
3.キャッシュ・フロー対有利子負債比率:有利子負債/キャッシュ・フロー
4.インタレスト・カバレッジ・レシオ:キャッシュ・フロー/利払い
※ 各指標は、いずれも連結ベースの財務数値により算出しております。
※ 株式時価総額は、期末株価終値×期末発行済株式数(自己株式控除後)により算出しております。
※ キャッシュ・フローは、連結キャッシュ・フロー計算書の営業活動によるキャッシュ・フローを使用しております。
※ 有利子負債は、連結貸借対照表に計上されている負債のうち、利子を支払っている全ての負債を対象としております。また、利払いについては、連結キャッシュ・フロー計算書の利息の支払額を使用しております。
※ 「『税効果会計に係る会計基準』の一部改正」(企業会計基準第28号 平成30年2月16日)等を2019年3月期の期首から適用しており、2018年3月期の指標については遡及適用後の数値を記載しております。
③生産、受注及び販売の実績
(a) 生産実績
該当事項はありません。
(b) 受注実績
該当事項はありません。
(c) 販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次の通りであります。
セグメントの名称 | 販売高(百万円) | 前年同期比(%) |
メディア・コンテンツ事業 | 439,466 | △14.7 |
都市開発・観光事業 | 76,048 | △31.3 |
その他事業 | 17,510 | △9.4 |
調整額 | △13,083 | - |
計 | 519,941 | △17.7 |
(注) 1 主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合
相手先 | 前連結会計年度 | 当連結会計年度 | ||
販売高(百万円) | 割合(%) | 販売高(百万円) | 割合(%) | |
㈱電通 | 92,725 | 14.7 | 79,399 | 15.3 |
㈱博報堂DYメディアパートナーズ | 66,504 | 10.5 | 53,574 | 10.3 |
2 上記の金額には、消費税等は含まれておりません
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次の通りであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
① 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
当社グループの当連結会計年度の経営成績等については、(1)経営成績等の状況の概要に記載の通り、新型コロナウイルス感染症による広告収入の減少や観光需要の低下、イベントの中止・延期などから大きな影響を受けました。一方では、在宅機会の増加に伴う需要も取り込むことができましたが、連結業績全体では減収減益となりました。
当連結会計年度は、2018年5月15日に公表した中期経営計画の最終年度にあたりましたが、その定量目標については、2020年11月12日付四半期報告書に記載の通り、新型コロナウイルス感染症の影響に伴う大きな経営環境の変化と当社グループの状況から取り下げることといたしました。同中期経営計画で掲げた各施策については、㈱フジテレビジョンにおける固定的な費用の見直しや番組制作費の効率的運用、放送事業収支の拡大に向けた取り組みなどの構造改革また、事業ポートフォリオの強化の一環としての㈱DINOS CORPORATIONにおけるセシール事業の譲渡など、その取り組みを継続してまいりました。
当社グループでは、引き続き、グループの収益力・経営基盤の強化の取り組みを継続するとともにメディア環境の変化に対応し構造改革を実施してまいります。
(セグメント区分別の分析)
(メディア・コンテンツ事業)
メディア・コンテンツ事業の経営成績等の状況に関する認識については、(1)経営成績等の状況の概要に記載の通りです。
在宅需要を取り込み家庭用品や家具などが好調だった㈱DINOS CORPORATIONや、旧作パッケージや配信が好調に推移した㈱ポニーキャニオンなど、これまでの取り組みの成果やコロナ禍での消費者動向の変化により営業増益を果たしたグループ会社がある一方で、中核子会社である㈱フジテレビジョンをはじめ複数のグループ会社では、広告収入の減少、主催イベントの中止・規模縮小、劇場映画の公開延期等により減収減益となりました。メディア・コンテンツ事業では、今後も新型コロナウイルス感染症の感染状況を注視しながら、引き続き事業環境に応じた改革を中期的に進めるとともに、㈱フジテレビジョンを中心にグループ各社の事業の連動を促し、セグメントが一体となった効率的な運用によって、収益力・経営基盤の強化を図っていきます。また、強力なコンテンツ制作力をもとに、外部向けのプロダクション機能とコンテンツホルダーとしての収益拡大を推進していきます。
(都市開発・観光事業)
都市開発・観光事業の経営成績等の状況に関する認識については、(1)経営成績等の状況の概要に記載の通りです。
特に、㈱グランビスタホテル&リゾートにおいて、新型コロナウイルス感染症の影響による観光需要の激減を受け売上高は大幅な減収となり、人件費圧縮など費用削減に努めましたが営業赤字が前連結会計年度を大幅に上回る結果となりました。また、㈱サンケイビルにおいては、ビル事業は増収になったものの、前連結会計年度のREITへの大型物件の売却の反動や、販売戸数の減少による住宅事業の減収などを賄うことが出来ず、全体では減収減益となりました。
このように都市開発・観光事業は、新型コロナウイルス感染症の影響を特に強く受けており、当面はこの影響が継続し、事業を取り巻く環境は不安定な状況が継続すると認識しておりますが、我が国の豊かな観光資源への潜在的なインバウンド需要は大きく、中長期的には高い成長を期待することが出来る事業領域であると認識しています。新型コロナウイルス感染症等が及ぼす今後の観光需要やオフィス需要への影響を見極めつつ、財務の健全性を確保した上で長期的な視点で投資を継続していきます。
(その他事業)
その他事業の経営成績等の状況に関する認識等については、(1)経営成績等の状況の概要に記載の通りです。
② 資本の財源及び資金の流動性に関する情報
(財務戦略の基本的な考え方)
当社グループは、グループ各社の持続的成長と中長期的な企業価値向上を目指すため、健全な財務体質と資本効率の向上を両立させながら、成長分野への投資を推進し、株主還元の充実を図っていくことを財務戦略の基本方針としています。
メディア・コンテンツ事業の中核をなす㈱フジテレビジョンは、大規模災害や疾病等の事業上のリスクにより大幅な収入減が長期間生じた際にも、社会的なインフラとして放送を継続する役割を担っており、それを可能とする強固な財務体質と十分な手元流動性を確保しております。併せて都市開発・観光事業では、2020年初頭に発生した新型コロナウィルス感染症の終息後を見据えて、REITを通じた戦略投資や観光需要回復に向けた成長投資への資金確保が必要になると考えております。
自己資本比率、有利子負債残高、ROE等の指標を注視して、一定の財務健全性を確保しながら資本効率を高め、グループ全体の企業価値向上に努めてまいります。
(資金需要の内容)
当社グループの資金需要は、営業活動に関わる支出として、放映権の取得費用、番組制作のための人件費、外注費、著作権等の使用料、通信販売商品の仕入、新規不動産の取得ならびに開発費、既存ビルの設備改修ほか、販売費及び一般管理費(代理店手数料、宣伝広告費、人件費等)があります。
また投資活動に関わる支出として、コンテンツ制作力の増強を図るための放送用設備・機器等の設備投資、メディア戦略強化のための投資資金、グループの資本政策に伴う株式の取得資金等があります。
(資金調達)
当社グループの事業活動を維持し拡大していくためには資金の安定的な確保が求められますが、そのために内部資金を中心に外部資金も有効に活用しております。効率的な投資を可能にするために現在20,000百万円の社債を発行しておりますが、更に機動的な資金調達をすべく50,000百万円の社債発行登録枠を確保しております。また都市開発・観光事業では建物及び土地の調達にあたり、一定の財務規律の下、金融機関からの借入を活用しています。併せて安定的な外部資金調達を図るために、格付投資情報センターより格付を取得しており、本報告書提出時点でシングルAプラス(安定的)となっております。当社グループは強固な財務体質を有しており、さらに営業活動によるキャッシュ・フロー創出能力が高いことから、当社グループの成長を維持するための運転資金、設備投資及び投融資に要する資金を調達することは可能と認識しております。
③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたっては、経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額及び開示に影響を与える見積りを必要とします。経営者は、これらの見積りについて過去の実績等を勘案し合理的に判断しておりますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。
当社グループにおいて、連結財務諸表に与える影響が大きいと考えている会計上の見積りに係る項目は、以下の通りであります。
なお、会計上の見積りに係る項目のうち、翌連結会計年度の連結財務諸表に与える影響に重要性があると判断している都市開発・観光事業におけるたな卸資産評価損と固定資産の減損損失につきましては、第5 経理の状況 1連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)に算出方法や主要な仮定等の詳細を記載しております。また、新型コロナウイルス感染症の影響についての考え方についても当該箇所に記載しております。
(繰延税金資産)
当社グループは、繰延税金資産の回収可能性の検討にあたり、各課税主体ごとに将来の課税所得を合理的に見積もり、回収可能性がないと判断した部分については評価性引当額を計上しております。将来の課税所得の見積りは、当連結会計年度末時点で予測可能な合理的な将来課税所得見込額とタックスプランニングに基づいておりますが、今後の業績の変動により見積りと実績が乖離する可能性があります。この場合、繰延税金資産の取崩等により、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼすことが考えられます。
(退職給付に係る資産及び負債)
当社及び一部の連結子会社では確定給付型の退職金制度を採用しており、退職給付債務算定において原則法を採用しています。退職給付債務算定における数理計算は、割引率、退職率、死亡率、予想昇給率などの計算基礎に基づいており、割引率は安全性の高い債券の利回りを基礎として決定しております。また、年金資産の長期期待運用収益率は、年金資産が退職給付の支払に充てられるまでの時期、保有している年金資産のポートフォリオ、過去の運用実績、運用方針及び市場の動向等を考慮して決定しております。これらの前提条件の見積りと実績の差異は、数理計算上の差異として計上され、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼすことが考えられます。