訂正有価証券報告書-第79期(平成31年4月1日-令和2年3月31日)
(1) 経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次の通りであります。
①財政状態及び経営成績の状況
(経営成績の概況)
政府の月例経済報告によると、当連結会計年度の我が国の経済は「先行きについては、新型コロナウイルス感染症の影響による厳しい状況が続くと見込まれる。また、感染症が内外経済をさらに下振れさせるリスクに十分注意する必要がある。金融資本市場の変動等の影響を注視する必要がある。」と記されており、企業の業況判断は「感染症の影響により、悪化している」とされています。
当社グループにおいても、新型コロナウイルス感染症の影響により、広告収入の減少や観光需要の低下、イベントの中止・延期など少なからず影響を受けましたが、当連結会計年度につきましては、それまで業績が好調に推移してきたことや、営業努力により収益への影響を限定的に抑えることができました。
こうした状況の中、当社グループの当連結会計年度の売上高は、メディア・コンテンツ事業、都市開発・観光事業がともに減収となり、全体では前年同期比5.6%減収の631,482百万円となりました。
営業利益も、メディア・コンテンツ事業、都市開発・観光事業がともに減益となり、前年同期比24.1%減益の26,341百万円となりました。経常利益は前年同期比17.0%減益の34,854百万円、親会社株主に帰属する当期純利益は厚生年金基金代行返上益を特別利益に計上したことで前年同期比74.8%増益の41,307百万円となりました。
報告セグメントの業績の状況は以下の通りであります。
(メディア・コンテンツ事業)
当社グループの中核子会社である㈱フジテレビジョンの放送収入は、前期の「2018 FIFA ワールドカップロシア」の反動減や、レギュラー番組のセールスに苦戦したことから、212,980百万円で前年同期比2.5%の減収となりました。
主力の放送事業のうち、全国放送を対象とするネットタイムセールスは「FIVB ワールドカップバレーボール2019」、「FNS27時間テレビ」、「サザエさん放送50周年記念アニメ&ドラマ」などが貢献したものの、レギュラー番組の減収を補うことはできませんでした。その結果、ネットタイムセールスの売上高は78,848百万円で前年同期比2.0%の減収となりました。
関東地区への放送を対象とするローカルタイムセールスは、セールス区分の変更などもあり、売上高は、12,319百万円で前年同期比7.3%の減収となりました。
スポットセールスは、すべての月でシェアを伸ばしたものの広告市況が低迷した影響から通期では前年を下回りました。業種別では「情報・通信・放送」、「エネルギー・機械」が前年を上回る一方、「化粧品・トイレタリー」、「自動車・関連品」などが前年を下回りました。その結果、売上高は89,547百万円で前年同期比3.2%の減収となりました。
その他事業では、映画事業において、劇場版「ONE PIECE STAMPEDE」、「記憶にございません!」、「翔んで埼玉」の配給収入や、「万引き家族」、「マスカレード・ホテル」等の二次利用収入などが貢献し増収となりました。デジタル事業も「FOD(フジテレビオンデマンド)」が引き続き好調で、前年の売上を上回ることができました。イベント事業においてはシルク・ドゥ・ソレイユの大型作品「キュリオス」の前期との規模差により減収となりました。その結果、その他事業の売上高は42,543百万円で前年同期比14.0%の減収となりました。
なお、新型コロナウイルス感染症による影響で、3月にカナダで予定されていた「世界フィギュアスケート選手権2020」が中止となり放送を見送ったほか、イベント事業においても2月および3月に東京で予定されていた「東芝グランドコンサート2020」等が中止となりました。
以上により、㈱フジテレビジョン全体の売上高は、前年同期比4.6%減収の255,523百万円となりました。営業利益は前年同期比29.9%減益の7,160百万円となりました。
㈱ビーエスフジは、放送事業収入ではスポット収入が好調だったものの、タイム収入が伸び悩み、放送事業収入全体で減収となりました。利益面では、BS4K放送費用も増加したことで減益となりました。
㈱ニッポン放送は、ラジオリビング事業が増収となりましたが、放送収入が苦戦し減収となったものの、費用削減等により増益となりました。
㈱ポニーキャニオンは、音楽部門でのヒットに加えて、継続的に進めてきた収益源の多様化が功を奏して、配信、イベント、グッズ等も好調で増収増益となりました。
㈱フジパシフィックミュージックは、著作権使用料収入やマネージメント収入が好調で増収増益となりました。
㈱ディノス・セシールのディノス事業は、テレビ通販で美容健康商材を中心に引き続き好調を維持し増収となりましたが、セシール事業は、カタログ通販が伸び悩み減収となりました。その結果、㈱ディノス・セシール全体としては減収減益となりました。
㈱クオラスは、WEB広告、イベントから派生するグッズ販売などが好調で増収となりましたが、テレビ広告等の減収や、3月以降イベント中止に伴う損失計上などにより、減益となりました。
㈱フジゲームスは、新規タイトルや既存タイトルの課金収入が苦戦し、減収となり、営業損失を計上しました。
以上の結果、メディア・コンテンツ事業全体の売上高は、前年同期比2.1%減収の515,334百万円となり、セグメント利益は同18.0%減益の13,924百万円となりました。
(都市開発・観光事業)
㈱サンケイビルは、ビル事業が減収となったほか、資産開発事業においてサンケイリアルエステート投資法人(REIT)への保有物件売却件数等が前期に比べ減少したことにより、減収減益となりました。
㈱グランビスタホテル&リゾートは、新型コロナウイルス感染症の影響で、インバウンドを含む旅行・観光需要の減少を受けて減収となり、営業損失を計上しました。
以上の結果、都市開発・観光事業全体の売上高は、前年同期比19.4%減収の110,749百万円となり、セグメント利益は同24.0%減益の13,706百万円となりました。
(その他事業)
その他事業全体の売上高は前年同期比1.4%増収の19,335百万円、セグメント利益は同7.2%増益の595百万円となりました。
持分法適用会社では、フジテレビ系列局、伊藤忠・フジ・パートナーズ㈱、日本映画放送㈱、㈱WOWOW、㈱産業経済新聞社が持分法による投資利益に貢献しました。
(財政状態の概況)
当期末の総資産は1,254,613百万円となり、前期末比35,871百万円(2.8%)減少しました。
流動資産は424,033百万円で、前期末比16,426百万円(4.0%)増加しました。これは主に、有価証券が9,763百万円減少した一方で、たな卸資産が26,971百万円増加したこと等によるものであります。
固定資産は830,346百万円で、前期末比51,972百万円(5.9%)減少しました。これは主に、投資有価証券が上場株式の時価の下落等により44,230百万円、土地が8,131百万円減少したこと等によります。
負債は509,038百万円で、前期末比38,097百万円(7.0%)減少しました。
流動負債は166,085百万円で、前期末比24,697百万円(12.9%)減少しました。これは主に、支払手形及び買掛金が6,819百万円、未払法人税等が5,309百万円、「その他」に含まれる未払費用が3,011百万円減少したこと等によります。
固定負債は342,953百万円で、前期末比13,400百万円(3.8%)減少しました。これは、長期借入金が25,766百万円増加した一方で、主に厚生年金基金代行返上により退職給付に係る負債が27,912百万円減少し、上場株式の含み益の減少等により繰延税金負債が12,848百万円減少したこと等によります。
純資産は745,574百万円で、前期末比2,226百万円(0.3%)増加しました。これは、剰余金の配当を10,304百万円行い、その他有価証券評価差額金が31,328百万円減少した一方で、親会社株主に帰属する当期純利益41,307百万円を計上したことや、退職給付に係る調整累計額が6,207百万円増加したこと等によります。
②キャッシュ・フローの状況
当期における各キャッシュ・フローの状況は以下の通りであります。
営業活動によるキャッシュ・フローは、16,854百万円の収入となり、前期比86,786百万円(83.7%)の収入減少となりました。これは、税金等調整前当期純利益が20,477百万円増加した一方で、たな卸資産の増減額が49,449百万円の収入減少、退職給付に係る負債の増減額が18,122百万円の支出増加、仕入債務の増減額が13,867百万円の収入減少となったこと等によります。
投資活動によるキャッシュ・フローは、33,907百万円の支出となり、前期比65,478百万円(65.9%)の支出減少となりました。これは、有形固定資産の取得による支出が33,042百万円減少し、有価証券の売却及び償還による収入が24,608百万円増加し、投資有価証券の売却及び償還による収入が23,498百万円増加したこと等によります。
財務活動によるキャッシュ・フローは、8,388百万円の収入となり、7,310百万円の支出だった前期と比べ、15,699百万円の収入増加となりました。これは、短期借入金の純増減額が24,500百万円の収入減少となった一方で、長期借入れによる収入が23,247百万円増加し、長期借入金の返済による支出が18,700百万円減少したこと等によります。
連結除外に伴う現金及び現金同等物の減少額1,114百万円を加味したこと等の結果、現金及び現金同等物の当期末残高は、79,970百万円となり、前期末に比べ9,929百万円(11.0%)の減少となりました。
(参考) キャッシュ・フロー関連指標の推移
(注) 1.自己資本比率:自己資本/総資産
2.時価ベースの自己資本比率:株式時価総額/総資産
3.キャッシュ・フロー対有利子負債比率:有利子負債/キャッシュ・フロー
4.インタレスト・カバレッジ・レシオ:キャッシュ・フロー/利払い
※ 各指標は、いずれも連結ベースの財務数値により算出しております。
※ 株式時価総額は、期末株価終値×期末発行済株式数(自己株式控除後)により算出しております。
※ キャッシュ・フローは、連結キャッシュ・フロー計算書の営業活動によるキャッシュ・フローを使用しております。
※ 有利子負債は、連結貸借対照表に計上されている負債のうち、利子を支払っている全ての負債を対象としております。また、利払いについては、連結キャッシュ・フロー計算書の利息の支払額を使用しております。
※ 「『税効果会計に係る会計基準』の一部改正」(企業会計基準第28号 平成30年2月16日)等を2019年3月期の期首から適用しており、2018年3月期の指標については遡及適用後の数値を記載しております。
③生産、受注及び販売の実績
(a) 生産実績
該当事項はありません。
(b) 受注実績
該当事項はありません。
(c) 販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次の通りであります。
(注) 1 主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合
2 上記の金額には、消費税等は含まれておりません
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次の通りであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
① 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
当社グループの当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識等については、(1)経営成績等の状況の概要に記載の通りです。当社では、2018年5月に中期経営計画を公表しました。計画2年目である当連結会計年度は、㈱フジテレビジョンにおいて映画事業が前期に続き好調だったほか、㈱ポニーキャニオンが音楽部門でのヒット等で増益となるなど、当社グループが目指す多彩なコンテンツからの収益の拡大に向けて当社グループの強みを発揮することができましたが、新型コロナウイルス感染症による影響やスポット広告市場全体の落ち込み等により、以下の通り、中期経営計画における当連結会計年度の目標数値を下回りました。
新型コロナウイルスの感染拡大により現状は中期経営計画において前提とした経営環境と大きく異なっています。その中で当社グループは、従業員並びに出演者やスタッフ、関係者及び各事業の顧客の安全を最優先に考えながら、グループ全体で新型コロナウイルスの感染拡大防止に最大限の協力をしていくとともに、事態の収束後にはさらなる成長を実現・加速できるようグループの改革を継続していきます。
(単位:百万円)
営業利益のセグメント別内訳 (単位:百万円)
(セグメント区分別の分析)
(メディア・コンテンツ事業)
メディア・コンテンツ事業の経営成績等の状況に関する認識については、(1)経営成績等の状況の概要に記載の通りです。
当連結会計年度は、中核子会社である㈱フジテレビジョンにおいて、収益の源泉であるコンテンツの強化に経営資源を最大限投下できるよう固定費の見直しなど体質強化を進めてきた中で、ゴールデン・プライムタイムの年度視聴率が前期に続き上昇し、スポット収入の東京地区におけるシェアも向上したほか、前期に続いてヒット作が続き好調な映画事業が収益に貢献しました。しかしながら、スポット市場全体の落ち込みが大きく、また、新型コロナウイルス感染症による広告収入やイベント興行等への影響もあり、減収減益となりました。そのほか、㈱ポニーキャニオンにおいて、構造的な事業改革を進めてきた中で音楽部門での大きなヒット等で増収増益となりましたが、メディア・コンテンツ事業全体では減収減益となり、セグメントの営業利益は中期経営計画における当連結会計年度の目標数値を下回りました。
メディア・コンテンツ事業では、新型コロナウイルス感染症の拡大に伴う経済活動の停滞により、広告収入が減少しているほか、主催イベントの延期・中止、劇場映画の公開延期などの影響を受けています。当社グループでは今後の感染状況を注視しながら事業を遂行していくとともに、引き続き事業環境に応じた改革を中期的に進めるとともに、㈱フジテレビジョンを中心にグループ各社の事業の連動を促し、セグメントが一体となった効率的な運用によって、収益力・経営基盤の強化を図っていきます。また、強力なコンテンツ制作力をもとに、外部向けのプロダクション機能とコンテンツホルダーとしての収益拡大を推進していきます。
(都市開発・観光事業)
都市開発・観光事業の経営成績等の状況に関する認識については、(1)経営成績等の状況の概要に記載の通りです。
当連結会計年度は、㈱グランビスタホテル&リゾートにおいて、新型コロナウイルス感染症の影響を受け、減収営業損失となりました。㈱サンケイビルは、前期からは減収減益となりましたが、ビル賃貸事業やサンケイリアルエステート投資法人(REIT)等を通じた資産循環型ビジネスが引き続き好調に推移しました。その結果、都市開発・観光事業全体で減収減益となりましたが、セグメントの営業利益は中期経営計画における当連結会計年度の目標数値を上回りました。
都市開発・観光事業では、新型コロナウイルス感染症の拡大によりインバウンドを含む観光需要の減少、国内の移動制限等を受けホテルやレジャー施設等を営業休止とするなどの影響を受けています。当社グループでは、各地域の事業環境の把握に努め、感染防止策を図りつつ適宜営業活動を再開していくなど、今後の感染状況を注視しながら事業を遂行していきます。当社グループでは、都市開発・観光事業をグループの柱の一つと位置づけており、引き続き、都市開発分野では、財務の健全性を確保しながら戦略投資を拡大していきます。また、観光分野では、感染症による影響を最小限に抑えつつ、事態収束後の観光需要の再拡大を見据えながら、新規施設の計画的な開業を進めていきます。
(その他事業)
その他事業の経営成績等の状況に関する認識等については、(1)経営成績等の状況の概要に記載の通りです。
② 資本の財源及び資金の流動性に関する情報
(財務戦略の基本的な考え方)
当社グループは、グループ各社の持続的成長と中長期的な企業価値向上を目指すため、健全な財務体質と資本効率の向上を両立させながら、成長分野への投資を推進し、株主還元の充実を図っていくことを財務戦略の基本方針としています。
メディア・コンテンツ事業の中核をなす㈱フジテレビジョンは、大規模災害や疾病等の事業上のリスクにより大幅な収入減が長期間生じた際にも、社会的なインフラとして放送を継続する役割を担っており、それを可能とする強固な財務体質と十分な手元流動性を確保しております。併せて都市開発・観光事業では、2020年初頭に発生した新型コロナウィルス感染症の終息後を見据えて、REITを通じた戦略投資や観光需要回復に向けた成長投資への資金確保が必要になると考えております。
2018年5月に公表した中期経営計画をベースに、自己資本比率、有利子負債残高、ROE等の指標を注視して、一定の財務健全性を確保しながら資本効率を高め、グループ全体の企業価値向上に努めてまいります。
(資金需要の内容)
当社グループの資金需要は、営業活動に関わる支出として、放映権の取得費用、番組制作のための人件費、外注費、著作権等の使用料、通信販売商品の仕入、新規不動産の取得ならび開発費、既存ビルの設備改修ほか、販売費及び一般管理費(代理店手数料、宣伝広告費、人件費等)があります。
また投資活動に関わる支出として、コンテンツ制作力の増強を図るための放送用設備・機器等の設備投資、メディア戦略強化のための投資資金、グループの資本政策に伴う株式の取得資金等があります。
(資金調達)
当社グループの事業活動を維持し拡大していくためには資金の安定的な確保が求められますが、そのために内部資金を中心に外部資金も有効に活用しております。効率的な投資を可能にするために現在20,000百万円の社債を発行しておりますが、更に機動的な資金調達をすべく50,000百万円の社債発行登録枠を確保しております。また都市開発・観光事業では建物及び土地の調達にあたり、一定の財務規律の下、金融機関からの借入を活用しています。併せて安定的な外部資金調達を図るために、格付投資情報センターより格付を取得しており、本報告書提出時点でシングルAプラス(安定的)となっております。当社グループは強固な財務体質を有しており、さらに営業活動によるキャッシュ・フロー創出能力が高いことから、当社グループの成長を維持するための運転資金、設備投資及び投融資に要する資金を調達することは可能と認識しております。
③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたっては、経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額及び開示に影響を与える見積りを必要とします。経営者は、これらの見積りについて過去の実績等を勘案し合理的に判断しておりますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。
当社グループにおいて、連結財務諸表に与える影響が大きいと考えている会計上の見積りに係る項目は、以下の通りであります。
なお、新型コロナウイルス感染症の影響についての考え方は、第5 経理の状況 1連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(追加情報)に記載しております。
(繰延税金資産)
当社グループは、繰延税金資産の回収可能性の検討にあたり、各課税主体ごとに将来の課税所得を合理的に見積もり、回収可能性がないと判断した部分については評価性引当額を計上しております。将来の課税所得の見積りは、当連結会計年度末時点で予測可能な合理的な将来課税所得見込額とタックスプランニングに基づいておりますが、今後の業績の変動により見積りと実績が乖離する可能性があります。この場合、繰延税金資産の取崩等により、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼすことが考えられます。
(退職給付に係る資産及び負債)
当社及び一部の連結子会社では確定給付型の退職金制度を採用しており、退職給付債務算定において原則法を採用しています。退職給付債務算定における数理計算は、割引率、退職率、死亡率、予想昇給率などの計算基礎に基づいており、割引率は安全性の高い債券の利回りを基礎として決定しております。また、年金資産の長期期待運用収益率は、年金資産が退職給付の支払に充てられるまでの時期、保有している年金資産のポートフォリオ、過去の運用実績、運用方針及び市場の動向等を考慮して決定しております。これらの前提条件の見積りと実績の差異は、数理計算上の差異として計上され、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼすことが考えられます。
なお、当社及び一部の連結子会社が加入するフジ厚生年金基金は、厚生年金基金の代行部分について過去分返上の認可を受けており、当連結会計年度において厚生年金基金代行返上益18,832百万円を計上しております。
(固定資産の減損)
固定資産の減損損失計上の検討において、メディア・コンテンツ事業では主として管理会計上の区分を基準として資産のグルーピングを行い、都市開発・観光事業においては原則として個別の物件ごとに、または管理会計上の事業所区分別にグルーピングを行っております。各事業セグメントでは、回収可能価額の算定にあたり、当連結会計年度末時点で予測可能な合理的な将来キャッシュ・フロー、割引率、正味売却価額等を見積もっておりますが、今後の業績や事業環境の変動により見積りと実績が乖離する可能性があります。この場合、追加の減損損失計上が必要になるなど、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼすことが考えられます。
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次の通りであります。
①財政状態及び経営成績の状況
(経営成績の概況)
政府の月例経済報告によると、当連結会計年度の我が国の経済は「先行きについては、新型コロナウイルス感染症の影響による厳しい状況が続くと見込まれる。また、感染症が内外経済をさらに下振れさせるリスクに十分注意する必要がある。金融資本市場の変動等の影響を注視する必要がある。」と記されており、企業の業況判断は「感染症の影響により、悪化している」とされています。
当社グループにおいても、新型コロナウイルス感染症の影響により、広告収入の減少や観光需要の低下、イベントの中止・延期など少なからず影響を受けましたが、当連結会計年度につきましては、それまで業績が好調に推移してきたことや、営業努力により収益への影響を限定的に抑えることができました。
こうした状況の中、当社グループの当連結会計年度の売上高は、メディア・コンテンツ事業、都市開発・観光事業がともに減収となり、全体では前年同期比5.6%減収の631,482百万円となりました。
営業利益も、メディア・コンテンツ事業、都市開発・観光事業がともに減益となり、前年同期比24.1%減益の26,341百万円となりました。経常利益は前年同期比17.0%減益の34,854百万円、親会社株主に帰属する当期純利益は厚生年金基金代行返上益を特別利益に計上したことで前年同期比74.8%増益の41,307百万円となりました。
報告セグメントの業績の状況は以下の通りであります。
売 上 高 | セグメント利益 | |||||
前連結会計年度 | 当連結会計年度 | 増減 | 前連結会計年度 | 当連結会計年度 | 増減 | |
(百万円) | (百万円) | (%) | (百万円) | (百万円) | (%) | |
メディア・ コンテンツ事業 | 526,568 | 515,334 | △2.1 | 16,987 | 13,924 | △18.0 |
都市開発・観光事業 | 137,381 | 110,749 | △19.4 | 18,029 | 13,706 | △24.0 |
その他事業 | 19,062 | 19,335 | 1.4 | 555 | 595 | 7.2 |
調整額 | △13,781 | △13,936 | ― | △863 | △1,885 | ― |
合 計 | 669,230 | 631,482 | △5.6 | 34,709 | 26,341 | △24.1 |
(メディア・コンテンツ事業)
当社グループの中核子会社である㈱フジテレビジョンの放送収入は、前期の「2018 FIFA ワールドカップロシア」の反動減や、レギュラー番組のセールスに苦戦したことから、212,980百万円で前年同期比2.5%の減収となりました。
主力の放送事業のうち、全国放送を対象とするネットタイムセールスは「FIVB ワールドカップバレーボール2019」、「FNS27時間テレビ」、「サザエさん放送50周年記念アニメ&ドラマ」などが貢献したものの、レギュラー番組の減収を補うことはできませんでした。その結果、ネットタイムセールスの売上高は78,848百万円で前年同期比2.0%の減収となりました。
関東地区への放送を対象とするローカルタイムセールスは、セールス区分の変更などもあり、売上高は、12,319百万円で前年同期比7.3%の減収となりました。
スポットセールスは、すべての月でシェアを伸ばしたものの広告市況が低迷した影響から通期では前年を下回りました。業種別では「情報・通信・放送」、「エネルギー・機械」が前年を上回る一方、「化粧品・トイレタリー」、「自動車・関連品」などが前年を下回りました。その結果、売上高は89,547百万円で前年同期比3.2%の減収となりました。
その他事業では、映画事業において、劇場版「ONE PIECE STAMPEDE」、「記憶にございません!」、「翔んで埼玉」の配給収入や、「万引き家族」、「マスカレード・ホテル」等の二次利用収入などが貢献し増収となりました。デジタル事業も「FOD(フジテレビオンデマンド)」が引き続き好調で、前年の売上を上回ることができました。イベント事業においてはシルク・ドゥ・ソレイユの大型作品「キュリオス」の前期との規模差により減収となりました。その結果、その他事業の売上高は42,543百万円で前年同期比14.0%の減収となりました。
なお、新型コロナウイルス感染症による影響で、3月にカナダで予定されていた「世界フィギュアスケート選手権2020」が中止となり放送を見送ったほか、イベント事業においても2月および3月に東京で予定されていた「東芝グランドコンサート2020」等が中止となりました。
以上により、㈱フジテレビジョン全体の売上高は、前年同期比4.6%減収の255,523百万円となりました。営業利益は前年同期比29.9%減益の7,160百万円となりました。
㈱ビーエスフジは、放送事業収入ではスポット収入が好調だったものの、タイム収入が伸び悩み、放送事業収入全体で減収となりました。利益面では、BS4K放送費用も増加したことで減益となりました。
㈱ニッポン放送は、ラジオリビング事業が増収となりましたが、放送収入が苦戦し減収となったものの、費用削減等により増益となりました。
㈱ポニーキャニオンは、音楽部門でのヒットに加えて、継続的に進めてきた収益源の多様化が功を奏して、配信、イベント、グッズ等も好調で増収増益となりました。
㈱フジパシフィックミュージックは、著作権使用料収入やマネージメント収入が好調で増収増益となりました。
㈱ディノス・セシールのディノス事業は、テレビ通販で美容健康商材を中心に引き続き好調を維持し増収となりましたが、セシール事業は、カタログ通販が伸び悩み減収となりました。その結果、㈱ディノス・セシール全体としては減収減益となりました。
㈱クオラスは、WEB広告、イベントから派生するグッズ販売などが好調で増収となりましたが、テレビ広告等の減収や、3月以降イベント中止に伴う損失計上などにより、減益となりました。
㈱フジゲームスは、新規タイトルや既存タイトルの課金収入が苦戦し、減収となり、営業損失を計上しました。
以上の結果、メディア・コンテンツ事業全体の売上高は、前年同期比2.1%減収の515,334百万円となり、セグメント利益は同18.0%減益の13,924百万円となりました。
(都市開発・観光事業)
㈱サンケイビルは、ビル事業が減収となったほか、資産開発事業においてサンケイリアルエステート投資法人(REIT)への保有物件売却件数等が前期に比べ減少したことにより、減収減益となりました。
㈱グランビスタホテル&リゾートは、新型コロナウイルス感染症の影響で、インバウンドを含む旅行・観光需要の減少を受けて減収となり、営業損失を計上しました。
以上の結果、都市開発・観光事業全体の売上高は、前年同期比19.4%減収の110,749百万円となり、セグメント利益は同24.0%減益の13,706百万円となりました。
(その他事業)
その他事業全体の売上高は前年同期比1.4%増収の19,335百万円、セグメント利益は同7.2%増益の595百万円となりました。
持分法適用会社では、フジテレビ系列局、伊藤忠・フジ・パートナーズ㈱、日本映画放送㈱、㈱WOWOW、㈱産業経済新聞社が持分法による投資利益に貢献しました。
(財政状態の概況)
当期末の総資産は1,254,613百万円となり、前期末比35,871百万円(2.8%)減少しました。
流動資産は424,033百万円で、前期末比16,426百万円(4.0%)増加しました。これは主に、有価証券が9,763百万円減少した一方で、たな卸資産が26,971百万円増加したこと等によるものであります。
固定資産は830,346百万円で、前期末比51,972百万円(5.9%)減少しました。これは主に、投資有価証券が上場株式の時価の下落等により44,230百万円、土地が8,131百万円減少したこと等によります。
負債は509,038百万円で、前期末比38,097百万円(7.0%)減少しました。
流動負債は166,085百万円で、前期末比24,697百万円(12.9%)減少しました。これは主に、支払手形及び買掛金が6,819百万円、未払法人税等が5,309百万円、「その他」に含まれる未払費用が3,011百万円減少したこと等によります。
固定負債は342,953百万円で、前期末比13,400百万円(3.8%)減少しました。これは、長期借入金が25,766百万円増加した一方で、主に厚生年金基金代行返上により退職給付に係る負債が27,912百万円減少し、上場株式の含み益の減少等により繰延税金負債が12,848百万円減少したこと等によります。
純資産は745,574百万円で、前期末比2,226百万円(0.3%)増加しました。これは、剰余金の配当を10,304百万円行い、その他有価証券評価差額金が31,328百万円減少した一方で、親会社株主に帰属する当期純利益41,307百万円を計上したことや、退職給付に係る調整累計額が6,207百万円増加したこと等によります。
②キャッシュ・フローの状況
当期における各キャッシュ・フローの状況は以下の通りであります。
営業活動によるキャッシュ・フローは、16,854百万円の収入となり、前期比86,786百万円(83.7%)の収入減少となりました。これは、税金等調整前当期純利益が20,477百万円増加した一方で、たな卸資産の増減額が49,449百万円の収入減少、退職給付に係る負債の増減額が18,122百万円の支出増加、仕入債務の増減額が13,867百万円の収入減少となったこと等によります。
投資活動によるキャッシュ・フローは、33,907百万円の支出となり、前期比65,478百万円(65.9%)の支出減少となりました。これは、有形固定資産の取得による支出が33,042百万円減少し、有価証券の売却及び償還による収入が24,608百万円増加し、投資有価証券の売却及び償還による収入が23,498百万円増加したこと等によります。
財務活動によるキャッシュ・フローは、8,388百万円の収入となり、7,310百万円の支出だった前期と比べ、15,699百万円の収入増加となりました。これは、短期借入金の純増減額が24,500百万円の収入減少となった一方で、長期借入れによる収入が23,247百万円増加し、長期借入金の返済による支出が18,700百万円減少したこと等によります。
連結除外に伴う現金及び現金同等物の減少額1,114百万円を加味したこと等の結果、現金及び現金同等物の当期末残高は、79,970百万円となり、前期末に比べ9,929百万円(11.0%)の減少となりました。
(参考) キャッシュ・フロー関連指標の推移
2016年3月期 | 2017年3月期 | 2018年3月期 | 2019年3月期 | 2020年3月期 | |
自己資本比率(%) | 55.4 | 56.3 | 56.7 | 56.5 | 58.6 |
時価ベースの自己資本比率(%) | 25.1 | 29.9 | 33.7 | 27.4 | 19.9 |
キャッシュ・フロー対有利子 負債比率(年) | 7.4 | 4.2 | 4.6 | 2.1 | 14.7 |
インタレスト・カバレッジ・ レシオ(倍) | 15.6 | 31.0 | 38.4 | 90.2 | 14.4 |
(注) 1.自己資本比率:自己資本/総資産
2.時価ベースの自己資本比率:株式時価総額/総資産
3.キャッシュ・フロー対有利子負債比率:有利子負債/キャッシュ・フロー
4.インタレスト・カバレッジ・レシオ:キャッシュ・フロー/利払い
※ 各指標は、いずれも連結ベースの財務数値により算出しております。
※ 株式時価総額は、期末株価終値×期末発行済株式数(自己株式控除後)により算出しております。
※ キャッシュ・フローは、連結キャッシュ・フロー計算書の営業活動によるキャッシュ・フローを使用しております。
※ 有利子負債は、連結貸借対照表に計上されている負債のうち、利子を支払っている全ての負債を対象としております。また、利払いについては、連結キャッシュ・フロー計算書の利息の支払額を使用しております。
※ 「『税効果会計に係る会計基準』の一部改正」(企業会計基準第28号 平成30年2月16日)等を2019年3月期の期首から適用しており、2018年3月期の指標については遡及適用後の数値を記載しております。
③生産、受注及び販売の実績
(a) 生産実績
該当事項はありません。
(b) 受注実績
該当事項はありません。
(c) 販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次の通りであります。
セグメントの名称 | 販売高(百万円) | 前年同期比(%) |
メディア・コンテンツ事業 | 515,334 | △2.1 |
都市開発・観光事業 | 110,749 | △19.4 |
その他事業 | 19,335 | 1.4 |
調整額 | △13,936 | ― |
計 | 631,482 | △5.6 |
(注) 1 主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合
相手先 | 前連結会計年度 | 当連結会計年度 | ||
販売高(百万円) | 割合(%) | 販売高(百万円) | 割合(%) | |
㈱電通 | 93,652 | 14.0 | 92,725 | 14.7 |
㈱博報堂DYメディアパートナーズ | 70,270 | 10.5 | 66,504 | 10.5 |
2 上記の金額には、消費税等は含まれておりません
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次の通りであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
① 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
当社グループの当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識等については、(1)経営成績等の状況の概要に記載の通りです。当社では、2018年5月に中期経営計画を公表しました。計画2年目である当連結会計年度は、㈱フジテレビジョンにおいて映画事業が前期に続き好調だったほか、㈱ポニーキャニオンが音楽部門でのヒット等で増益となるなど、当社グループが目指す多彩なコンテンツからの収益の拡大に向けて当社グループの強みを発揮することができましたが、新型コロナウイルス感染症による影響やスポット広告市場全体の落ち込み等により、以下の通り、中期経営計画における当連結会計年度の目標数値を下回りました。
新型コロナウイルスの感染拡大により現状は中期経営計画において前提とした経営環境と大きく異なっています。その中で当社グループは、従業員並びに出演者やスタッフ、関係者及び各事業の顧客の安全を最優先に考えながら、グループ全体で新型コロナウイルスの感染拡大防止に最大限の協力をしていくとともに、事態の収束後にはさらなる成長を実現・加速できるようグループの改革を継続していきます。
(単位:百万円)
中期経営計画における目標数値 (2018年5月公表) | 実績 | 実績 | ||||
2019年 3月期 | 2020年 3月期 | 2021年 3月期 | 2019年 3月期 | 2020年 3月期 | ||
連結売上高 | 623,000 | 645,000 | 655,000 | 669,230 | 631,482 | |
連結営業利益 | 25,500 | 28,500 | 32,500 | 34,709 | 26,341 |
営業利益のセグメント別内訳 (単位:百万円)
中期経営計画における目標数値 (2018年5月公表) | 実績 | 実績 | ||||
2019年 3月期 | 2020年 3月期 | 2021年 3月期 | 2019年 3月期 | 2020年 3月期 | ||
メディア・ コンテンツ事業 | 14,100 | 17,800 | 21,800 | 16,987 | 13,924 | |
都市開発・観光事業 | 11,500 | 11,500 | 11,500 | 18,029 | 13,706 | |
その他事業 | 400 | 400 | 500 | 555 | 595 |
(セグメント区分別の分析)
(メディア・コンテンツ事業)
メディア・コンテンツ事業の経営成績等の状況に関する認識については、(1)経営成績等の状況の概要に記載の通りです。
当連結会計年度は、中核子会社である㈱フジテレビジョンにおいて、収益の源泉であるコンテンツの強化に経営資源を最大限投下できるよう固定費の見直しなど体質強化を進めてきた中で、ゴールデン・プライムタイムの年度視聴率が前期に続き上昇し、スポット収入の東京地区におけるシェアも向上したほか、前期に続いてヒット作が続き好調な映画事業が収益に貢献しました。しかしながら、スポット市場全体の落ち込みが大きく、また、新型コロナウイルス感染症による広告収入やイベント興行等への影響もあり、減収減益となりました。そのほか、㈱ポニーキャニオンにおいて、構造的な事業改革を進めてきた中で音楽部門での大きなヒット等で増収増益となりましたが、メディア・コンテンツ事業全体では減収減益となり、セグメントの営業利益は中期経営計画における当連結会計年度の目標数値を下回りました。
メディア・コンテンツ事業では、新型コロナウイルス感染症の拡大に伴う経済活動の停滞により、広告収入が減少しているほか、主催イベントの延期・中止、劇場映画の公開延期などの影響を受けています。当社グループでは今後の感染状況を注視しながら事業を遂行していくとともに、引き続き事業環境に応じた改革を中期的に進めるとともに、㈱フジテレビジョンを中心にグループ各社の事業の連動を促し、セグメントが一体となった効率的な運用によって、収益力・経営基盤の強化を図っていきます。また、強力なコンテンツ制作力をもとに、外部向けのプロダクション機能とコンテンツホルダーとしての収益拡大を推進していきます。
(都市開発・観光事業)
都市開発・観光事業の経営成績等の状況に関する認識については、(1)経営成績等の状況の概要に記載の通りです。
当連結会計年度は、㈱グランビスタホテル&リゾートにおいて、新型コロナウイルス感染症の影響を受け、減収営業損失となりました。㈱サンケイビルは、前期からは減収減益となりましたが、ビル賃貸事業やサンケイリアルエステート投資法人(REIT)等を通じた資産循環型ビジネスが引き続き好調に推移しました。その結果、都市開発・観光事業全体で減収減益となりましたが、セグメントの営業利益は中期経営計画における当連結会計年度の目標数値を上回りました。
都市開発・観光事業では、新型コロナウイルス感染症の拡大によりインバウンドを含む観光需要の減少、国内の移動制限等を受けホテルやレジャー施設等を営業休止とするなどの影響を受けています。当社グループでは、各地域の事業環境の把握に努め、感染防止策を図りつつ適宜営業活動を再開していくなど、今後の感染状況を注視しながら事業を遂行していきます。当社グループでは、都市開発・観光事業をグループの柱の一つと位置づけており、引き続き、都市開発分野では、財務の健全性を確保しながら戦略投資を拡大していきます。また、観光分野では、感染症による影響を最小限に抑えつつ、事態収束後の観光需要の再拡大を見据えながら、新規施設の計画的な開業を進めていきます。
(その他事業)
その他事業の経営成績等の状況に関する認識等については、(1)経営成績等の状況の概要に記載の通りです。
② 資本の財源及び資金の流動性に関する情報
(財務戦略の基本的な考え方)
当社グループは、グループ各社の持続的成長と中長期的な企業価値向上を目指すため、健全な財務体質と資本効率の向上を両立させながら、成長分野への投資を推進し、株主還元の充実を図っていくことを財務戦略の基本方針としています。
メディア・コンテンツ事業の中核をなす㈱フジテレビジョンは、大規模災害や疾病等の事業上のリスクにより大幅な収入減が長期間生じた際にも、社会的なインフラとして放送を継続する役割を担っており、それを可能とする強固な財務体質と十分な手元流動性を確保しております。併せて都市開発・観光事業では、2020年初頭に発生した新型コロナウィルス感染症の終息後を見据えて、REITを通じた戦略投資や観光需要回復に向けた成長投資への資金確保が必要になると考えております。
2018年5月に公表した中期経営計画をベースに、自己資本比率、有利子負債残高、ROE等の指標を注視して、一定の財務健全性を確保しながら資本効率を高め、グループ全体の企業価値向上に努めてまいります。
(資金需要の内容)
当社グループの資金需要は、営業活動に関わる支出として、放映権の取得費用、番組制作のための人件費、外注費、著作権等の使用料、通信販売商品の仕入、新規不動産の取得ならび開発費、既存ビルの設備改修ほか、販売費及び一般管理費(代理店手数料、宣伝広告費、人件費等)があります。
また投資活動に関わる支出として、コンテンツ制作力の増強を図るための放送用設備・機器等の設備投資、メディア戦略強化のための投資資金、グループの資本政策に伴う株式の取得資金等があります。
(資金調達)
当社グループの事業活動を維持し拡大していくためには資金の安定的な確保が求められますが、そのために内部資金を中心に外部資金も有効に活用しております。効率的な投資を可能にするために現在20,000百万円の社債を発行しておりますが、更に機動的な資金調達をすべく50,000百万円の社債発行登録枠を確保しております。また都市開発・観光事業では建物及び土地の調達にあたり、一定の財務規律の下、金融機関からの借入を活用しています。併せて安定的な外部資金調達を図るために、格付投資情報センターより格付を取得しており、本報告書提出時点でシングルAプラス(安定的)となっております。当社グループは強固な財務体質を有しており、さらに営業活動によるキャッシュ・フロー創出能力が高いことから、当社グループの成長を維持するための運転資金、設備投資及び投融資に要する資金を調達することは可能と認識しております。
③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたっては、経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額及び開示に影響を与える見積りを必要とします。経営者は、これらの見積りについて過去の実績等を勘案し合理的に判断しておりますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。
当社グループにおいて、連結財務諸表に与える影響が大きいと考えている会計上の見積りに係る項目は、以下の通りであります。
なお、新型コロナウイルス感染症の影響についての考え方は、第5 経理の状況 1連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(追加情報)に記載しております。
(繰延税金資産)
当社グループは、繰延税金資産の回収可能性の検討にあたり、各課税主体ごとに将来の課税所得を合理的に見積もり、回収可能性がないと判断した部分については評価性引当額を計上しております。将来の課税所得の見積りは、当連結会計年度末時点で予測可能な合理的な将来課税所得見込額とタックスプランニングに基づいておりますが、今後の業績の変動により見積りと実績が乖離する可能性があります。この場合、繰延税金資産の取崩等により、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼすことが考えられます。
(退職給付に係る資産及び負債)
当社及び一部の連結子会社では確定給付型の退職金制度を採用しており、退職給付債務算定において原則法を採用しています。退職給付債務算定における数理計算は、割引率、退職率、死亡率、予想昇給率などの計算基礎に基づいており、割引率は安全性の高い債券の利回りを基礎として決定しております。また、年金資産の長期期待運用収益率は、年金資産が退職給付の支払に充てられるまでの時期、保有している年金資産のポートフォリオ、過去の運用実績、運用方針及び市場の動向等を考慮して決定しております。これらの前提条件の見積りと実績の差異は、数理計算上の差異として計上され、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼすことが考えられます。
なお、当社及び一部の連結子会社が加入するフジ厚生年金基金は、厚生年金基金の代行部分について過去分返上の認可を受けており、当連結会計年度において厚生年金基金代行返上益18,832百万円を計上しております。
(固定資産の減損)
固定資産の減損損失計上の検討において、メディア・コンテンツ事業では主として管理会計上の区分を基準として資産のグルーピングを行い、都市開発・観光事業においては原則として個別の物件ごとに、または管理会計上の事業所区分別にグルーピングを行っております。各事業セグメントでは、回収可能価額の算定にあたり、当連結会計年度末時点で予測可能な合理的な将来キャッシュ・フロー、割引率、正味売却価額等を見積もっておりますが、今後の業績や事業環境の変動により見積りと実績が乖離する可能性があります。この場合、追加の減損損失計上が必要になるなど、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼすことが考えられます。