有価証券報告書-第93期(平成28年4月1日-平成29年3月31日)

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2017/06/29 9:07
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対処すべき課題

昨年4月の電力の小売全面自由化に続き、本年4月からガスの小売全面自由化も開始され、今後、地域間やエネルギー間の垣根をこえた競争がますます激化するものと見込まれる。また、平成32年4月までに送配電部門の法的分離が求められており、電気事業は大きな変革の時代を迎えている。
一方、当社グループにおいては、業務全般にわたる経営効率化に努めたものの、当年度の連結収支は大幅な減益となった。また、抜本的な経営基盤の回復・経営の安定化に不可欠な原子力発電所の稼働は依然見通しが立っておらず、引き続き厳しい状況に変わりはない。
このような中、当社グループとしては、「信頼。創造。成長。」の企業理念のもと、コンプライアンス最優先の業務運営を基本としながら、中国電力グループ経営ビジョンの実現に向けて、以下の諸課題に取り組んでいく。
なお、電力の小売全面自由化や送配電部門の法的分離など電力システム改革による環境変化に対応するとともに、中国電力グループ経営ビジョンの実現に向けた組織整備を本年10月に実施する予定である。

(1)電力の小売全面自由化等への対応
電力の小売全面自由化を受け、中国地域にも多くの新電力が参入するなど、競争が激しくなっている。このような中、昨年から提供している会員制WEBサイト「ぐっとずっと。クラブ」及び新料金メニュー「ぐっとずっと。プラン」の会員・加入口数が、いずれも当年度末時点で50万口を突破しており、多くのお客さまから確かな評価をいただいている。
当社グループとしては、家庭から事業用までエネルギーに関する多様なニーズに対し、付加価値の高いサービスを提供していくことなどで、事業基盤である中国地域のお客さまに引き続き選択していただくことを目指していく。
加えて、中国地域外や海外における収益基盤を確立するための取り組みを進めている。
中国地域外では、首都圏における電気の販売を行っており、付加価値の高いサービスの展開でさらなる収益の拡大を目指す。また、本年4月には、千葉市での石炭火力発電所の開発に向けた検討を進めるため、JFEスチール株式会社と共同で新会社を設立した。
海外では、昨年3月に出資参画したマレーシアの石炭火力発電事業において発電所の建設を進めている。また、昨年7月には、シンガポールに当社初の駐在員事務所を設置し、アジア諸国を中心に海外発電市場の情報収集等を継続的に行っている。引き続き、新たな海外投資案件の発掘・具体化により、収益力強化に取り組んでいく。
今後もリスクを見極め、時機を逸することなく、当社グループの強みが活かせる成長事業の育成・拡大に取り組んでいく。
(2)島根原子力発電所の再稼働・運転開始に向けた取り組み
原子力発電所の事故を決して起こしてはならないという確固たる決意のもと、新規制基準への適合はもちろんのこと、さらなる安全性を不断に追求し、みなさまに安心していただける原子力発電所を目指していく。
具体的には、緊急時対策所や航空機衝突その他のテロ行為による重大事故等に対処するための特定重大事故等対処施設の設置など、設備面の安全対策に取り組んでいく。また、社員の危機管理に対する意識を高め、緊急時の対応能力を維持・向上させる訓練・教育などを引き続き実施していく。
島根2号機については、原子力規制委員会における新規制基準への適合性審査が進められており、引き続きこれに総力をあげて対応していく。また、島根3号機についても申請に向けて準備を進めていく。
当社グループは、安全性を一層高める取り組みを積み重ね、地域のみなさまのご理解を得ながら島根原子力発電所の再稼働・運転開始に向け、最大限取り組んでいく。
なお、島根1号機については、本年4月、廃止措置計画の認可を受けた。今後も安全確保を最優先に、廃止措置に責任を持って取り組んでいく。
(3)徹底した経営効率化の取り組み
島根原子力発電所の運転停止が長期化している中においても、収支の改善・財務体質の悪化抑制を図り、競争力を強化していくため、徹底した経営効率化の取り組みを一層強化していく。
具体的には、競争発注の拡大などによる請負・資機材等の調達コストの低減、燃料費の削減、労働生産性の向上などに取り組むとともに、今後の事業環境の変化を見据え、恒常的なコストの削減につながるよう、業務の進め方の抜本的な見直しに取り組んでいく。
(4)安定供給確保に向けた取り組み
当社グループは、電源の競争力強化を図りつつ、将来にわたり、低廉で高品質な電気を安定的に供給するという当社の変わらぬ使命を果たすため、中長期的な展望に立った設備の形成・信頼度維持などに取り組んでいく。また、送配電部門の法的分離についても、安定供給や効率性を阻害することがないよう、着実に準備を進めている。
資源の乏しいわが国においては、特定のエネルギー源に過度に依存することなく各種電源の特徴を活かしながらバランスよく活用していくことが必要であり、とりわけ、国のエネルギー政策において重要なベースロード電源と位置付けられている原子力発電については、温室効果ガスの削減を継続的に進めていくためにも、一定比率維持していく必要がある。
当社としても、より一層安全性に優れた新規原子力発電所の開発を計画的に進めていくことが重要であると考えている。島根1号機の廃止を考慮すると、島根3号機の早期運転開始はもとより、新規原子力である上関原子力発電所の開発はこれまで以上に重要な経営課題であり、早期に着手できるよう、引き続き取り組んでいく。
火力発電に関しても、経年化が進む既設火力発電所の代替として、最新鋭の発電技術を採用することによりCO2排出削減にも配慮した三隅発電所2号機の開発を進めていくこととしており、現在、環境影響評価手続きなどに取り組んでいる。
また、トラブルの未然防止や災害への備えのため、設備の計画的かつ確実な点検・補修、更新工事など将来にわたる電力の安定供給確保に取り組むとともに、業務品質の維持・向上に向け、実践的な訓練や点検作業を通じ、グループの保有する技術・技能の向上と着実な継承に努めていく。
(5)地球温暖化問題への取り組み
地球温暖化問題については、昨年11月に温室効果ガス削減に関する2020年以降の新たな国際枠組み(パリ協定)が発効するなど、世界的な対応が求められているところであり、当社グループにとっても重要な課題となっている。
当社を含む電気事業者は、電気事業全体のCO2排出抑制目標を掲げ、低炭素社会の実現に向けて取り組んでいる。
当社グループとしては、安全確保を大前提とした原子力発電の活用や再生可能エネルギーの導入拡大、「大崎クールジェンプロジェクト」による火力発電の高効率化・クリーン化に資する技術開発などに努めていくことにより、温室効果ガスの削減に引き続き取り組んでいく。