四半期報告書-第172期第3四半期(令和2年7月1日-令和2年9月30日)

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2020/11/11 15:42
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20項目
文中の将来に関する事項は、当第3四半期連結会計期間の末日現在において当社グループが判断したものです。
(1)財政状態及び経営成績の状況
当第3四半期連結累計期間においては、新型コロナウイルス感染症の拡大により、世界的に景気が急速に悪化しました。特に、2020年3月以降、当社グループの国内外の事業にも影響を及ぼし始めました。
こうした環境下、当第3四半期連結累計期間における当社グループの業績は、収益は6,763億62百万円(前年同期比9.4%減)、売上総利益は6,019億27百万円(同10.7%減)、売上総利益のオーガニック成長率(為替やM&Aの影響を除いた内部成長率)は△10.9%となりました。なお、第3四半期連結会計期間(2020年7月1日~9月30日)のオーガニック成長率は△14.8%と、第2四半期連結会計期間の△17.3%から改善しました。景気の悪化に対応したコストコントロールに努めたことなどにより、調整後営業利益は758億23百万円(同0.3%増)、オペレーティング・マージン(調整後営業利益÷売上総利益)は12.6%(前年同期は11.2%)、親会社の所有者に帰属する調整後四半期利益は393億69百万円(同0.2%減)となりました。事業構造改革費用の計上などにより営業利益は185億3百万円(同50.1%減)となりましたが、条件付対価に係る公正価値変動額の増加などにより、親会社の所有者に帰属する四半期利益は102億86百万円(同116.9%増)と前年同期を上回りました。
調整後営業利益は、営業利益から、買収行為に関連する損益および一時的要因を排除した、恒常的な事業の業績を測る利益指標であります。
買収行為に関連する損益:買収に伴う無形資産の償却費、M&Aに伴う費用、被買収会社に帰属する株式報酬費用、完全子会社化に伴い発行した株式報酬費用
一時的要因の例示:事業構造改革費用、減損、固定資産の売却損益など
親会社の所有者に帰属する調整後四半期利益は、四半期利益から、営業利益に係る調整項目、条件付対価に係る公正価値変動額(アーンアウト債務再評価損益)・株式買取債務に係る再測定額(買収関連プットオプション再評価損益)、これらに係る税金相当・非支配持分損益相当などを排除した、親会社所有者に帰属する恒常的な損益を測る指標であります。
当第3四半期連結累計期間における報告セグメントの業績は、次のとおりです。
① 国内事業
国内事業の業務区分別売上高では、マーケティング/プロモーション(前年同期比21.5%増)は前年同期を上回りましたが、テレビ(同14.6%減)、インターネット(同4.1%減)、クリエーティブ(同17.0%減)などは減少しました。特に2020年4月以降、新型コロナウイルス感染症の拡大による悪影響が顕著となりました。この結果、国内事業の売上総利益は2,551億円(同7.7%減)、売上総利益のオーガニック成長率は△7.9%となりました。景気の悪化に対応したコストコントロールに努めたものの、調整後営業利益は437億63百万円(同13.3%減)、オペレーティング・マージンは17.2%(前年同期は18.3%)と前年同期を下回りました。
② 海外事業
海外事業の売上総利益のオーガニック成長率は、地域別では、ヨーロッパ、中東およびアフリカ(以下「EMEA」)が△11.5%、米州(以下「Americas」)が△10.7%、アジア太平洋(日本を除く。以下「APAC」)が△20.8%となり、全体では△12.9%となりました。主要国別にみると、ロシアは堅調でしたが、フランス、オランダ、カナダ、ブラジル、中国、オーストラリア、インドなどは厳しい状況となっています。特に2020年3月以降は数多くの市場で、新型コロナウイルス感染症の拡大による悪影響を受けています。
海外事業の売上総利益は、3,471億44百万円(前年同期比12.8%減)となりましたが、リストラによるコスト削減や、景気の悪化に対応したコストコントロールに努めたことなどにより、調整後営業利益は358億86百万円(同43.1%増)、オペレーティング・マージンは10.3%(前年同期は6.3%)と前年同期を上回りました。
当第3四半期連結会計期間末の財政状態については、前連結会計年度末と比べ、主に現金及び現金同等物および営業債権及びその他の債権が減少したことなどにより、資産合計で4,644億84百万円の減少となりました。一方、営業債務及びその他の債務が減少したことなどにより、負債合計で3,808億50百万円の減少となりました。また、主に資本剰余金および在外営業活動体の換算差額ならびにその他の包括利益を通じて測定する金融資産の公正価値の純変動が減少したことなどにより、資本合計は836億33百万円の減少となりました。
2020年までの連結ガイドラインとその進捗状況について
前事業年度の有価証券報告書に記載した当社グループが設定した2020年までの連結ガイドラインは下記のとおりです。
① 売上総利益のオーガニック成長率3%以上(2020年までの3年間のCAGR)の達成
② オペレーティング・マージンは2018年より改善
③ 株主還元については安定的な配当を堅持しつつ、今後の業績やキャッシュ・フローの状況を勘案した適切な利益の還元を検討
当第3四半期連結累計期間においての、ガイドラインの進捗は以下のとおりとなっております。
コロナ禍の影響による世界的な景気後退と、それに伴う広告市場の縮小により、上述のとおり当第3四半期連結累計期間のオーガニック成長率は△10.9%(2019年度は△1.0%、2018年度は3.4%)となりました。一方、オペレーティング・マージンについては、コストコントロールにより、12.6%(前年同期は11.2%、2018年度第3四半期連結累計期間は13.4%)となりました。
2020年12月期通期連結業績予想については、第3四半期連結会計期間に多くの新規顧客獲得はあったものの、第4四半期連結会計期間においても、コロナ禍が引き続き業界全体の需要減退を引き起こしており、回復のタイミングやレベルが市場によって異なることから第4四半期連結会計期間の業績をより慎重に見ていること、また、検討している追加施策の費用計上額およびコスト削減効果を精査中であることから、現時点では業績予想の開示を控えさせていただきます。ただ、重要な2つのKPIである連結ベースの「オーガニック成長率」と「オペレーティング・マージン」の2020年12月期通期のガイダンスは、それぞれ「△12.5%~△12.0%」と「13.0%~13.5%」といたします。2020年12月期通期連結業績予想は2020年12月末までに開示する予定です。
第2四半期連結累計期間の決算発表(2020年8月13日)においてお知らせしましたとおり、8月から着手している「包括的な事業オペレーションと資本効率に関する見直し」が事業面だけでなく資金の有効活用、配当政策を含むB/Sマネジメントも対象としていることを理由に、期末配当予想について期初予想の1株当たり47.5円をいったん「未定」と変更いたしました。当見直しについては継続する一方で、2020年12月期の配当に関しては、コロナ禍による通期連結業績への影響を鑑み、未定としていた1株当たり期末配当予想を23.75円といたしました。中間配当と合わせた年間配当予想は、1株当たり71.25円となります。なお、長期的な配当方針については、2020年12月期決算発表のタイミングで、当見直しの結果と合わせて公表する予定です。
なお、「包括的な事業オペレーションと資本効率に関する見直し」の詳細は、「(3)事業上および財務上の対処すべき課題」をご参照ください。
(2)キャッシュ・フローの状況
当第3四半期連結累計期間末における現金及び現金同等物(以下「資金」という)は、2,884億65百万円となりました。主に営業活動による支出などにより、前連結会計年度末に比べ1,255億89百万円の減少となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果支出した資金は、前年同四半期連結累計期間に比べ656億26百万円減少し、581億2百万円となりました。主に法人所得税の支払額および運転資本が減少したことによるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果支出した資金は、前年同四半期連結累計期間に比べ172億78百万円減少し、407億2百万円となりました。主に子会社の取得による支出が減少したことによるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果支出した資金は、前年同四半期連結累計期間に比べ420億6百万円増加し、154億45百万円となりました。主に長期借入による収入が減少したことによるものです。
(3)事業上および財務上の対処すべき課題
新型コロナウイルス感染症拡大防止の観点から、世界中で出入国規制や外出制限などの措置が取られました。当社グループは145以上の国・地域で事業を展開しており、各国の政府および自治体の指導に沿った対応をしています。日本においては、いち早くリモートワークに移行するなど、感染拡大防止に向けた措置を講じており、海外においても感染が拡大している国・地域ではリモートワークを実施しています。また、当社グループでは、従業員の雇用を守ることと、従業員とその家族への各種サポートに注力しています。全世界の従業員を対象にした調査等による相互コミュニケーションにより、より効果的な施策の提供に努めています。
当環境下においても、お取引先からのご要望には適切かつ迅速に対応できる事業体制を維持し、お取引先様のパートナーとして事業の維持・成長に貢献すべく努めています。また、当社グループの調査・分析・予測の機能を活用し、「withコロナ」あるいは「afterコロナ」の世界を見据え、そのインサイトを企業・団体に提供するなど、当社グループがコロナ禍においてできるあらゆる施策を検討し、実施しています。例えば、当社グループが主要国で実施している「COVID-19生活者意識ナビゲーター」調査を活用し、お取引先に定期的かつタイムリーな市場動向、企業・団体のあるべき姿勢・行動、需要変化、ブランドマネジメントに関するインサイトを提供しています。
医療従事者・事業者・住民への支援など、地域社会への貢献活動を国内外で実施しています。例えば、影響の大きかったアジア地域では、お取引先が医療従事者へ食料を提供する活動の支援、中国では医薬品メーカーとの協働で無料オンライン医療診断サービスなどを行いました。
今後も当社グループは、従業員とその家族、お取引先、地域社会の安全と健康の確保を最優先としつつ、各国政府の方針や行動計画に基づき、感染症拡大防止に努めると同時に、社会・経済の活性化に貢献すべく迅速に対応してまいります。
当社グループの役割は、グループに内在する多様なカルチャーと多彩なスキル、並びにネットワークする社外の知見やスキルを融合することによるイノベーションを通じて、お取引先の事業の成功、ひいては社会や経済の活性化に貢献することにあります。コロナ禍の今、一企業市民として、また全世界で約11,000社に及ぶお取引先のパートナーとして事業に取り組むことで、サステナブルな社会の創造に貢献するという当社グループの役割を果たしていきたいと考えています。
この緊急事態においては、従業員とその家族、お取引先、地域社会の安全と健康の確保を基本方針としています。とりわけ、従業員こそが「最大の資産」である当社の事業モデルにおいては、社会的使命である「従業員の雇用を守る」ことにとどまらず、「従業員の安全・健康を守ること」が何よりも大事であると考えています。世界中で働く約65,000名の「電通人」が不安を抱えることなく、矜持を持って果たすべき役割を全うできる環境を整備します。そして、経営陣と従業員、電通グループ全社が一丸となってこの難局を乗り越えていきます。
今後は、この世界的な景気後退がペースを鈍化させながらも継続し、2021年度には僅かに回復基調となる前提で、事業計画を組む必要があると考えます。そのため、今の段階から「包括的な事業オペレーションと資本効率に関する見直し」および「事業トランスフォーメーションの加速」のための計画に着手しました。当見直しは、合理的な事業構造による統合ソリューションの高度化、コスト構造の改革、バランスシートの効率化加速、これらによる長期的視点での株主価値の最大化を図るものであります。2020年12月期通期決算発表のタイミングでの詳細発表を予定しています。
このうち、「合理的な事業構造」については、海外事業では既に3つの事業ラインへの集約を完了し稼働していますが、これに加え、現在の160のエージェンシーブランドを6つのリーダーシップブランドに集約します。また、国内事業は、現在の事業を4つの分野を軸とした構成へ再編することで、コストの最適化と効率的なコラボレーションを実現して参ります。「コスト構造の改革」の観点では、当社グループの世界中のケイパビリティを特定の拠点に集約することや、オフショアリングの更なる活用、オフィススペースの最適化、保有不動産の見直しを進めています。「バランスシートの効率化」の観点では、長期的な株主価値の最大化を目的に、保有資産の徹底的な見直しを進めています。
また、「事業トランスフォーメーションの加速」については、第3四半期に株式会社電通において、社員に新しいキャリアの選択肢を提供することに紐づく早期退職プログラムを実施し、230名の早期退職者を予定しています。海外事業では実行中の2019年12月発表の事業構造改革に加え、今年度中に実施する追加の事業構造改革計画の策定に着手しております。
これらを通じて、当社グループの変革を加速し、世界トップレベルのサービス、ソリューションを顧客企業に提供し続けることにより、アフターコロナのニューノーマルにおいても、顧客企業へのさらなる貢献と当社グループのより力強い成長を実現できるようになると考えています。
当第3四半期連結累計期間においては、上記以外には事業上および財務上の対処すべき課題に、重要な変更および新たに発生した課題はありません。
(4)研究開発活動
当第3四半期連結累計期間における研究開発活動の金額は、13億72百万円であり、国内事業における情報サービス業に属するものです。
なお、当第3四半期連結累計期間において、当社グループの研究開発活動の状況に重要な変更はありません。
(5)経営成績に重要な影響を与える要因および経営戦略の現状と見通し
① 経営成績に重要な影響を与える要因
当第3四半期連結累計期間において、前事業年度の有価証券報告書に記載した「経営成績に重要な影響を与える要因」に、上記「事業等のリスク」の記載事項を除き、重要な変更はありません。
② 経営戦略の現状と見通し
当第3四半期連結累計期間において、前事業年度の有価証券報告書に記載した「経営戦略の現状と見通し」に、上記(3)事業上および財務上の対処すべき課題の記載事項を除き、重要な変更はありません。
(6)資本の財源および資金の流動性についての分析
① 資金需要
当社グループの運転資金需要のうち主なものは、広告作業実施のための媒体料金および制作費の支払等ならびに人件費をはじめとする販売費及び一般管理費であります。
また、近年においては既存事業の拡大、新規事業の発掘および開発のため、海外事業やデジタルテクノロジー領域をはじめとした様々な領域への投資に係る資金需要が生じております。
② 財務政策
当社グループは、運転資金につきましては、内部資金、社債、コマーシャル・ペーパーまたは短期借入金により調達することとしております。また、債権の流動化も実施しております。
資金の短期流動性を確保するため、当社はシンジケーション方式による極度額500億円(当第3四半期連結会計期間末)のコミットメントラインを、Dentsu International Limited(電通インターナショナル社)(注)は、5億ポンド(約680億円)(当第3四半期連結会計期間末)のコミットメントラインを設定しております。また、新型コロナウイルス感染症による影響に備えた流動性確保等の目的で、当社は、金融機関との間で一時的に追加の銀行融資枠を設定しております。さらに、グループ内の資金効率の向上を図るべく、資金余剰状態にある子会社から親会社が資金を借り入れ、資金需要が発生している子会社に貸出を行うキャッシュ・マネジメント・システムを導入しております。
なお、当社は、格付機関である株式会社格付投資情報センター(R&I)から長期格付AA-、短期格付a-1+を取得しております。
(注)2020年9月に、Dentsu Aegis Network Ltd.(電通イージス・ネットワーク社)は、Dentsu International Limited(電通インターナショナル社)に、その商号を変更しました。
(7)経営者の問題意識と今後の方針について
当第3四半期連結累計期間において、前事業年度の有価証券報告書に記載した「経営者の問題意識と今後の方針について」に、上記(3)事業上および財務上の対処すべき課題の記載事項を除き、重要な変更はありません。
(8)従業員数
当第3四半期連結累計期間において、当社グループの従業員数に著しい増減はありません。
(9)生産、受注及び販売の実績
当第3四半期連結累計期間におけるセグメントの販売実績(売上高)は、次のとおりであります。
新型コロナウイルス感染症の拡大と、それに伴う広告市場の縮小により、販売実績(売上高)は次のとおり減少しております。
セグメントの名称金額(百万円)前年同期比(%)
国内事業1,271,43991.5
海外事業1,874,81682.4
3,146,25585.8

(注) 1 セグメント間取引については相殺消去しております。
2 売上高は当社グループが顧客に対して行った請求額および顧客に対する請求可能額の総額(割引および消費税等の関連する税金を除く)であり、IFRSに準拠した開示ではありません。
(10)主要な設備
当第3四半期連結累計期間において、著しい変動はありません。