有価証券報告書-第172期(令和2年1月1日-令和2年12月31日)
(経営成績等の状況の概要)
(1) 財政状態及び経営成績の状況
<事業全体の概況>2020年は新型コロナウィルス感染症の拡大により、世界的に景気が急速に悪化しました。特に2020年3月以降は、当社グループの国内外の事業にも影響を及ぼし始めました。
こうした環境下、当期(2020年1月1日~12月31日)における当社グループの業績は、収益は9,392億43百万円(前期比10.4%減)、売上総利益は8,350億42百万円(同11.1%減)、売上総利益のオーガニック成長率(為替やM&Aの影響を除いた内部成長率)は△11.1%となりました。景気の悪化に対応したコストコントロールに努めたことなどにより、調整後営業利益は1,239億79百万円(同11.9%減)、オペレーティング・マージン(調整後営業利益÷売上総利益)は14.8%(前期は15.0%)、親会社の所有者に帰属する調整後当期利益は698億90百万円(前期比8.2%減)となりました。
事業面では、売上総利益に占めるデジタル領域構成比がグループ全体で53.9%(前期は47.5%)へと拡大し、高成長領域への事業モデル転換が進展しました。
一方、制度上の利益項目では、海外事業に起因するのれんの減損損失および国内外での構造改革費用の計上などにより、営業損失は1,406億25百万円(前期は営業損失33億58百万円)、親会社の所有者に帰属する当期損失は1,595億96百万円(前期は当期損失808億93百万円)となりました。
なお、調整後営業利益は、営業利益から、買収行為に関連する損益および一時的要因を排除した、恒常的な事業の業績を測る利益指標であります。
買収行為に関連する損益:買収に伴う無形資産の償却費、M&Aに伴う費用、被買収会社に帰属する株式報酬費用、完全子会社化に伴い発行した株式報酬費用
一時的要因の例示:構造改革費用、減損、固定資産の売却損益など
親会社の所有者に帰属する調整後当期利益は、当期利益から、営業利益に係る調整項目、条件付対価に係る公正価値変動額(アーンアウト債務再評価損益)・株式買取債務に係る再測定額(買収関連プットオプション再評価損益)、これらに係る税金相当・非支配持分損益相当などを排除した、親会社の所有者に帰属する恒常的な損益を測る指標であります。
2020年8月に着手した“包括的な事業オペレーションと資本効率に関する見直し”から導かれた施策の1つとして、既に実施中の海外事業での構造改革に加え、2021年2月に「国内事業の構造改革」の概要、また当見直しに紐づくバランスシートの効率化や株主価値の最大化に向けた施策も合わせ、新たな事業変革をベースに成長を描いた「中期経営計画 ―構造改革と事業変革による持続的な成長の実現―」も発表しました。更に、その先の持続的成長を実現していくため、2021年3月開催の定時株主総会へ推薦する新任の取締役候補者として、電通インターナショナル社のグローバルCEOであるWendy Clark(ウェンディ・クラーク)を推薦し、同株主総会において選任されました。また株主価値向上の観点から、300億円を上限とした自己株式取得の実施を発表しました。
当期の連結業績(単位:百万円、△は減少)
<当期の連結業績のポイント>売上総利益は前期比△11.1%(為替影響排除ベース同△9.8%)の8,350億42百万円となりました。売上総利益減少の主要因は、オーガニック成長(△1,039億25百万円、成長率(連結△11.1%、国内事業△8.4%、海外事業△13.0%))、為替影響(△143億2百万円)です。
国内事業において、デジタル領域は好調に推移しましたが、コロナ禍の影響もあり、マス4媒体市場が縮小し、前期比△8.3%の3,489億2百万円となりました。
海外事業においても、コロナ禍の影響で、ヨーロッパ、中東およびアフリカ(以下「EMEA」)、米州(以下「Americas」)、アジア太平洋(日本を除く。以下「APAC」)の全地域がマイナスのオーガニック成長となり、同△13.1%(為替影響排除ベース同△10.9%)の4,863億2百万円となりました。
売上総利益に占めるデジタル領域構成比は大幅に拡大し、連結53.9%(前期は47.5%)、国内事業34.8%(同29.3%)、海外事業67.5%(同59.9%)となりました。
調整後営業利益は、前期比△11.9%(為替影響排除ベース同△10.6%)の1,239億79百万円となりました。国内事業の調整後営業利益は、減収などにより、同△13.4%の627億46百万円となり、オペレーティング・マージンは18.0%(前期は19.1%)となりました。海外事業の調整後営業利益は、コストコントロールや構造改革の成果などにより、為替影響排除ベースでは若干の増益(同+0.2%)となりましたが、前期比△2.7%の665億18百万円、オペレーティング・マージンは13.7%(前期は12.2%)となりました。
営業利益調整項目は、減損損失の増加(+710億50百万円)、構造改革費用の増加(+587億12百万円)などによって損失が拡大し、△2,646億5百万円となりました。
その結果、営業損失は、前期の33億58百万円から1,372億67百万円損失が拡大し、1,406億25百万円となりました。
調整後当期利益(親会社の所有者に帰属)は、主に調整後営業利益の減少により、前期比△8.2%の698億90百万円となりました。
当期利益調整項目は、アーンアウト債務・買収関連プットオプション再評価損益の増加はあったものの、減損損失および構造改革による営業利益調整項目の減少が大きく、前期差724億72百万円の損失増加となり、△2,294億86百万円となりました。
その結果、当期損失(親会社の所有者に帰属)は、前期の808億93百万円から787億2百万円損失が拡大し、1,595億96百万円となりました。
<当期の連結業績:地域別>1.国内事業
コロナ禍の影響は大きく、顧客企業によるマス広告出稿は大きく落ち込みましたが、デジタル領域では顧客企業によるデジタルトランスフォーメーション需要が継続しており、当期間を通して好調に推移しました。会社別では、㈱電通が大幅な減収(前期比13.2%減)となったものの、㈱電通国際情報サービス(ISID、同12.2%増)や㈱電通デジタル(同15.6%増)などが貢献しました。2020年2月から開始した迅速なコストコントロールと経費の適正化、並びに2017年度から実施している労働環境改革による生産性の向上などの効果はあったものの、減収を相殺するには至りませんでした。
その結果、国内事業の売上総利益は3,489億2百万円(同8.3%減)、売上総利益のオーガニック成長率は△8.4%となりました。また、調整後営業利益は627億46百万円(同13.4%減)、オペレーティング・マージンは18.0%(前期は19.1%)と前期を下回りました。
なお、第3四半期には、㈱電通において、社員に新しいキャリアの選択肢を提供することを目的とした早期希望退職プログラムの実施を決定し、第4四半期に当プログラムを実施しました。これを主な要因として、2020年度に国内事業として合計242億78百万円の構造改革費用を計上しました。また、減損損失は43億52百万円(前期は0百万円)となりました。 構造改革の概要については、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」をご参照ください。
国内事業 会社別売上総利益の状況(IFRSベース)(単位:百万円、△は減少)
※「地域電通」は100%連結子会社の㈱電通東日本、㈱電通西日本、㈱電通九州、㈱電通北海道の4社の合計
2.海外事業
海外事業の売上総利益のオーガニック成長率は、地域別では、EMEAが△12.4%、Americasが△11.3%、APACが△18.0%となり、全体では△13.0%となりました。
海外事業の売上総利益は、4,863億2百万円(前期比13.1%減)となりましたが、リストラによるコスト削減や、景気の悪化に対応したコストコントロールに努めたことなどにより、調整後営業利益は665億18百万円(同2.7%減)となりました。オペレーティング・マージンは13.7%(前期は12.2%)となり、前期を上回りました。
なお、海外事業において計上した構造改革費用は541億15百万円(前期は196億82百万円)、減損損失は1,403億67百万円(前期は736億69百万円)となりました。 構造改革の概要については、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」を、減損損失の詳細については、「第5 経理の状況 連結財務諸表注記 15.のれんおよび無形資産 (2) 重要なのれんおよび無形資産、及び、(3)のれんの減損テスト」をご参照ください。
EMEA:売上総利益のオーガニック成長率は、新型コロナウイルスの感染が拡大した第2四半期に大きく落ち込みました。第3四半期には回復傾向がみられたものの、第4四半期は、第3四半期までの傾向から大きな変化は見られませんでした。通年ではロシアが唯一のプラス成長となりました。コロナ禍による規制の影響が大きかったフランス、ドイツ、オランダの不調は第4四半期まで継続しました。英国とスペインは、特にメディア事業の減収が顕著となりました。第4四半期においては、CXM事業とクリエイティブ事業は比較的堅調に推移した一方で、屋外広告や経験マーケティング分野の収益は減少しました。
Americas:第1四半期にプラスであった売上総利益のオーガニック成長率は、新型コロナウイルスの感染が拡大した第2四半期には、二桁のマイナスとなりました。その後、第3、第4四半期と緩やかながら回復傾向がみられました。米国では、CXM事業で第4四半期にテック系顧客企業からの追加受注があり、またEコマースとD2C戦略を支えるファーストパーティデータに顧客企業の注目が集まっていることから、CXM事業とその中核ブランドであるMerkleは、2021年に向けて成長の兆しが見えてきました。メディア事業のパフォーマンス分野においては、12月に顧客企業のターゲティング広告出稿増により足元は順調なものの、メディア事業全体においては、2020年度の年間を通して厳しい状況となりました。クリエイティブ事業は、コロナ禍でプロジェクトベースの受注が減少しました。
APAC:売上総利益のオーガニック成長率は年間を通してマイナスが継続したものの、第2四半期を底に回復傾向にあります。特に第4四半期においては、プロジェクトベースのCXM、メディア、クリエイティブの各事業の受注が徐々に回復し、想定を上回る業績となりました。中国は第4四半期もマイナス成長のまま推移したものの、オーストラリアの第4四半期はプラス成長となり、インドも第4四半期において、それまでの四半期と比較して大幅な改善となりました。
海外事業 地域別のオーガニック成長率(△はマイナス成長)
海外事業 サービスライン別の売上総利益・オーガニック成長率(△はマイナス成長)
2020年度(1-12月)
※顧客体験マネジメント(Customer Experience Management)
<2020年までの連結ガイドラインとその進捗について>前事業年度の有価証券報告書に記載した当社グループが設定した2020年までの連結ガイドラインは下記のとおりです。
① 売上総利益のオーガニック成長率3%以上(2020年までの3年間のCAGR)の達成
② オペレーティング・マージンは2018年より改善
③ 株主還元については安定的な配当を堅持しつつ、今後の業績やキャッシュ・フローの状況を勘案した
適切な利益の還元を検討
当期の実績をふまえたガイドラインの進捗は以下のとおりとなりました。
コロナ禍の影響による世界的な景気後退と、それに伴う広告市場の縮小により、上述のとおり当期のオーガニック成長率は△11.1%(2019年度は△1.0%、2018年度は3.4%)となりました。一方、オペレーティング・マージンについては、コストコントロールにより、14.8%(2019年度は15.0%、2018年度は16.4%)となりました。
また、2020年度の1株当たりの年間配当金は、安定性を重視しつつ、連結業績動向、財務状況等を総合的に勘案して、71.25円(2019年度は95.0円、2018年度は90.0円)となりました。なお、株主価値向上の観点から、2019年8月7日に300億円を上限とする自己株式取得の実施を決定し、その後、299億円の取得を実施いたしました。
<財政状態の状況について>当期末は、前期末と比べ、主に、国内事業のその他の金融資産および海外事業ののれんが減少したこと等から、資産合計で4,153億16百万円の減少となりました。一方、主に営業債務が減少したことから、負債合計で1,831億36百万円の減少となりました。また、主に親会社の所有者に帰属する当期損失の計上などにより、資本合計は2,321億80百万円の減少となりました。
国内事業における、その他の金融資産の減少は、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおり、「包括的な事業オペレーションと資本効率に関する見直し」と呼ぶ構造改革に着手し、2020年度中に保有株式の売却などの一部施策を実施したためです。
また、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおり、当社グループは、今後の経営方針として、中期的なNet Debt/EBITDA倍率を1.5倍水準(IFRS第16号の適用影響を控除したベース)(但し、短期的にはより低い水準)で管理していく方針であります。健全なバランスシートの維持は重要な経営課題であり、短期的にはコロナ禍による不透明な事業環境をマネージしつつ、中長期的な事業変革や成長戦略を支える財務基盤を維持するために適切なレバレッジ水準を設定するとともに、非事業資産の処分なども含めた総合的な施策を続けてまいります。
(2) キャッシュ・フロー
当連結会計年度末の現金及び現金同等物(以下「資金」という)は、5,306億92百万円(前連結会計年度末4,140億55百万円)となりました。主に投資活動による収入などにより、前連結会計年度末に比べ1,166億37百万円の増加となりました。
営業活動によるキャッシュ・フロー
営業活動の結果により得た資金は、前連結会計年度に比べ83億56百万円増加し、883億13百万円となりました。当連結会計年度の運転資本の増減額は△225億40百万円となり、前連結会計年度の増減額△282億54百万円と比べ、運転資本の減少額が減少しました。また、それに加え、法人所得税の支払額が減少したことなどにより、営業活動の結果により得た資金が増加しました。
投資活動によるキャッシュ・フロー
投資活動の結果により得た資金は、前連結会計年度に比べ2,130億64百万円増加し、1,370億13百万円となりました。主に、有価証券の売却による収入が増加したことによるものです。有価証券の売却による収入の増加は、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおり、「包括的な事業オペレーションと資本効率に関する見直し」と呼ぶ構造改革に着手し、2020年度中に保有株式の売却などの一部施策を実施したためです。
財務活動によるキャッシュ・フロー
財務活動の結果支出した資金は、前連結会計年度に比べ888億18百万円増加し、966億22百万円となりました。主に社債の発行による収入が増加した一方、長期借入れによる収入が減少したことや、前述の社債の発行による調達資金を原資とした長期借入金の返済による支出が増加したことなどにより資金が減少したことによるものです。なお、2019年8月7日開催の取締役会において、300億円を上限とする自己株式取得の実施を決議したこと等に伴い、当連結会計年度に100億4百万円の自己株式の取得による支出がありました。
また、2021年2月15日開催の取締役会において、300億円を上限とした自己株式取得の実施を決議しております。(取得する期間:2021年2月16日~2021年12月23日)
(生産、受注及び販売の状況)
販売実績
当連結会計年度におけるセグメントの販売実績(売上高)は次のとおりであります。
(注) 1 セグメント間取引については相殺消去しております。
2 売上高は当社グループが顧客に対して行った請求額および顧客に対する請求可能額の総額(割引および消費税等の関連する税金を除く)であり、IFRSに準拠した開示ではありません。
(経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容)
文中における将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において、当社グループが判断したものであります。
(1) 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
当連結会計年度の財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容につきましては「(経営成績等の状況の概要) (1) 財政状態及び経営成績の状況」に記載したとおりであります。
(2) キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
① 資本政策・財務戦略の基本的な考え方
当社グループは、2021年2月に発表した中期経営計画期間において、経営の安定性、財務の健全性に留意しつつ、企業活動のデジタル化の進展などがもたらす社会の変化と事業機会を積極的にとらえ、広く社会課題の解決に資するとともに、さらなる企業価値、株主価値の向上を目指してまいります。
財務の健全性に関しては、中期的には純有利子負債のEBITDAに対する倍率が1.5倍程度(IFRS第16号の適用影響を控除したベース)(但し、短期的にはより低い水準)までに保つことで、高い信用格付を維持することを目指します。また、内部資金、金融機関からの借入、社債、コマーシャル・ペーパー、債権流動化、またはコミットメントライン等により、十分な手元流動性を確保することとしております。さらに、2020年度においては、新型コロナウイルス感染症による影響に備えた流動性確保等の目的で、金融機関との間で一時的に追加の銀行融資枠を設定しております。これらにより、急激な事業環境の変化等に対するリスク耐性が高い状態を維持できるよう努めてまいります。
M&A・設備投資等の成長投資に関しては、経営の安定性・財務の健全性に留意しながら、グループ全社にわたる成長に向けた投資を推進してまいります。
株主還元に関しては、これらの活動を通して得られる利益の適切な配分と本源的な企業価値の向上を通じて株主の皆様への利益還元に努めることとし、次期以降の配当方針としては、基本的1株当たり調整後当期利益に対する配当性向を今後数年で35%まで漸進的に高めてまいります。
② 資金需要の主な内容
当社グループの運転資金需要のうち主なものは、広告作業実施のための媒体料金および制作費の支払等ならびに人件費をはじめとする販売費及び一般管理費であります。
また、2021年2月に発表した中期経営計画期間においては、新しいテクノロジーやソリューション開発、イノベーションへの投資や高成長領域であるカスタマートランスフォーメーション&テクノロジーへのM&A・投資に係る資金需要が見込まれます。
③ キャッシュフローの状況
当連結会計年度のキャッシュフローの状況につきましては「(経営成績等の状況の概要) (2) キャッシュ・フロー」に記載したとおりであります。
④ 資金調達及び流動性の状況
当社グループは、内部資金、金融機関からの借入、社債、コマーシャル・ペーパー、または債権流動化等の多様な手段の中から、その時々の市場環境や長期資金の年度別償還額も考慮した上で、機動的に有利な手段を選択し、資金調達を行っております。なお、2020年度の持株会社体制移行に伴い、長期資金については、原則として当社で一元的に資金調達しております。
また、緊急時の流動性を確保するため、当社はシンジケーション方式による極度額500億円のコミットメントラインを、電通インターナショナル社(Dentsu International Limited)は、5億ポンド(約699億円)のコミットメントラインを設定しております。また、新型コロナウイルス感染症による影響に備えた流動性確保等の目的で、金融機関との間で一時的に追加の銀行融資枠を設定しております。
さらに、グループ内の資金調達の一元化・資金効率の向上・流動性の確保の観点から、資金余剰状態にある子会社から親会社が資金を借り入れ、資金需要が発生している子会社に貸出を行うキャッシュ・マネジメント・システムを導入しております。
当社グループは、安定的な外部資金調達能力の維持向上を重要な経営課題と認識しており、格付機関である株式会社格付投資情報センター(R&I)から長期格付AA-、短期格付a-1+を取得しております。また、主要な内外金融機関との間で長期間に亘って築き上げてきた幅広く良好な関係に基づき、当社グループの事業の維持拡大、必要な運転資金の確保、成長投資資金の調達に関しては問題なく実施可能と認識しています。
(3) 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社の連結財務諸表は、国際会計基準審議会により公表されたIFRSに基づき作成されております。
また、当社経営陣は、連結財務諸表の作成に際し、決算日における資産・負債の報告数値および偶発債務等オフバランス取引の開示、報告期間における財政状態および経営成績について影響を与える見積りを行わなければなりません。経営陣は、例えば、投資、企業結合、退職金、法人税等、偶発事象や訴訟等に関する見通しや判断に対して、継続して評価を行っております。経営陣は、過去の実績や状況に応じ合理的だと考えられる様々な要因に基づき、見積りおよび判断を行い、その結果は、資産・負債の簿価、収益・費用の報告数字についての根拠となります。実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、見積りと異なる場合があります。
当社は、特に以下の重要な会計方針について、当社グループの財政状態および経営成績に特に影響を与える、あるいは、当社の連結財務諸表の作成において使用される当社グループの重要な判断と見積りにより、大きな影響を受けると考えております。
なお、新型コロナウイルス感染症の影響に伴う会計上の見積りについては、「第5 経理の状況 連結財務諸表注記 4.重要な会計上の判断、見積りおよび仮定 (追加情報)新型コロナウイルス感染症の拡大に伴う会計上の見積りについて」に記載のとおりであります。
① 収益の認識
「第5 経理の状況 連結財務諸表注記 3.重要な会計方針 (15)収益」をご参照下さい。
② 有形固定資産、のれん、無形資産および投資不動産の減損
当社グループは決算日において、棚卸資産および繰延税金資産を除く非金融資産が減損している可能性を示す兆候があるか否かを判定し、減損の兆候が存在する場合には当該資産の回収可能価額に基づき減損テストを実施しております。のれんは償却を行わず、減損の兆候の有無にかかわらず年に一度、または減損の兆候がある場合はその都度、減損テストを実施しております。資産の回収可能価額は資産または資金生成単位の処分コスト控除後の公正価値と使用価値のいずれか高い方の金額としており、資産または資金生成単位の帳簿価額が回収可能価額を超過する場合には、当該資産は回収可能価額まで減額し、減損損失を認識しております。使用価値の算定に際しては、資産の耐用年数や将来キャッシュ・フロー、成長率、割引率等について一定の仮定を用いております。
これらの仮定は過去の実績や当社経営陣により承認された事業計画等に基づく最善の見積りと判断により決定しておりますが、事業戦略の変更や市場環境の変化等により影響を受ける可能性があり、仮定の変更が必要となった場合、認識される減損損失の金額に重要な影響を及ぼす可能性があります。
海外事業におけるのれんの減損テストにおける主要な仮定や感応度分析等の詳細については、「第5 経理の状況 連結財務諸表注記 15.のれんおよび無形資産 (3)のれんの減損テスト」をご参照ください。
③ 金融商品の評価
当社グループは有価証券やデリバティブ等の金融資産を保有しており、当該金融資産の評価に当たり一定の仮定を用いております。公正価値は、市場価格の他、マーケット・アプローチやインカムアプローチ等の算出手順に基づき決定しております。具体的には、株式およびその他の金融資産のうち活発な市場が存在する銘柄の公正価値は市場価格に基づいて算定し、活発な市場が存在しない銘柄の公正価値は観察可能な市場データを用いて算定した金額、観察不能なインプットを用いて主としてインカムアプローチやマーケット・アプローチで算定した金額で評価しております。
企業結合の結果生じる条件付対価および株式買取債務の公正価値等は、観察不能なインプットを用いて割引キャッシュ・フロー法で算定した価額で評価しております。
当社経営陣は金融商品の公正価値等の評価は合理的であると判断しておりますが、予測不能な前提条件の変化等により見積りの変更が必要となった場合、認識される公正価値等の金額に重要な影響を及ぼす可能性があります。
④ 確定給付制度債務の評価
確定給付制度債務および退職給付費用は、年金数理計算上で設定される前提条件に基づいて算出されております。これらの前提条件には、割引率、将来の報酬水準、退職率、死亡率等が含まれます。
当社経営陣はこれらの前提条件は合理的であると判断しておりますが、実際の結果が前提条件と異なる場合、または前提条件が変更された場合、認識される費用および計上される債務に重要な影響を及ぼす可能性があります。
⑤ 引当金
当社グループは、過去の事象の結果として現在の法的または推定的債務を有しており、債務の決済を要求される可能性が高く、かつ当該債務の金額について信頼性のある見積りが可能である場合に引当金を認識しております。貨幣の時間価値の影響が重要である場合、引当金は当該負債に特有のリスクを反映させた割引率を用いた現在価値により測定しております。
これらの引当金は、決算日における不確実性を考慮した最善の見積りにより算定しておりますが、予測不能な事象の発生や状況の変化等により影響を受ける可能性があり、実際の結果が見積りと異なる場合、計上される債務の金額に重要な影響を及ぼす可能性があります。
⑥ 繰延税金資産の回収可能性
繰延税金資産は、税務上の繰越欠損金、繰越税額控除および将来減算一時差異のうち、将来の課税所得に対して利用できる可能性が高いものに限り認識しております。繰延税金資産は毎決算日に見直し、税務便益の実現が見込めないと判断される部分について減額しております。
当社グループは、将来の課税所得および慎重かつ実現性の高い継続的なタックス・プランニングの検討に基づき繰延税金資産を計上しており、回収可能性の評価に当たり行っている見積りは合理的であると判断しておりますが、見積りは予測不能な事象の発生や状況の変化等により影響を受ける可能性があり、実際の結果が見積りと異なる場合、認識される費用および計上される資産に重要な影響を及ぼす可能性があります。
(1) 財政状態及び経営成績の状況
<事業全体の概況>2020年は新型コロナウィルス感染症の拡大により、世界的に景気が急速に悪化しました。特に2020年3月以降は、当社グループの国内外の事業にも影響を及ぼし始めました。
こうした環境下、当期(2020年1月1日~12月31日)における当社グループの業績は、収益は9,392億43百万円(前期比10.4%減)、売上総利益は8,350億42百万円(同11.1%減)、売上総利益のオーガニック成長率(為替やM&Aの影響を除いた内部成長率)は△11.1%となりました。景気の悪化に対応したコストコントロールに努めたことなどにより、調整後営業利益は1,239億79百万円(同11.9%減)、オペレーティング・マージン(調整後営業利益÷売上総利益)は14.8%(前期は15.0%)、親会社の所有者に帰属する調整後当期利益は698億90百万円(前期比8.2%減)となりました。
事業面では、売上総利益に占めるデジタル領域構成比がグループ全体で53.9%(前期は47.5%)へと拡大し、高成長領域への事業モデル転換が進展しました。
一方、制度上の利益項目では、海外事業に起因するのれんの減損損失および国内外での構造改革費用の計上などにより、営業損失は1,406億25百万円(前期は営業損失33億58百万円)、親会社の所有者に帰属する当期損失は1,595億96百万円(前期は当期損失808億93百万円)となりました。
なお、調整後営業利益は、営業利益から、買収行為に関連する損益および一時的要因を排除した、恒常的な事業の業績を測る利益指標であります。
買収行為に関連する損益:買収に伴う無形資産の償却費、M&Aに伴う費用、被買収会社に帰属する株式報酬費用、完全子会社化に伴い発行した株式報酬費用
一時的要因の例示:構造改革費用、減損、固定資産の売却損益など
親会社の所有者に帰属する調整後当期利益は、当期利益から、営業利益に係る調整項目、条件付対価に係る公正価値変動額(アーンアウト債務再評価損益)・株式買取債務に係る再測定額(買収関連プットオプション再評価損益)、これらに係る税金相当・非支配持分損益相当などを排除した、親会社の所有者に帰属する恒常的な損益を測る指標であります。
2020年8月に着手した“包括的な事業オペレーションと資本効率に関する見直し”から導かれた施策の1つとして、既に実施中の海外事業での構造改革に加え、2021年2月に「国内事業の構造改革」の概要、また当見直しに紐づくバランスシートの効率化や株主価値の最大化に向けた施策も合わせ、新たな事業変革をベースに成長を描いた「中期経営計画 ―構造改革と事業変革による持続的な成長の実現―」も発表しました。更に、その先の持続的成長を実現していくため、2021年3月開催の定時株主総会へ推薦する新任の取締役候補者として、電通インターナショナル社のグローバルCEOであるWendy Clark(ウェンディ・クラーク)を推薦し、同株主総会において選任されました。また株主価値向上の観点から、300億円を上限とした自己株式取得の実施を発表しました。
当期の連結業績(単位:百万円、△は減少)
| 科目 | 2020年度 | 2019年度 | 前期比・差 |
| 収益 | 939,243 | 1,047,881 | △10.4% |
| 売上総利益 | 835,042 | 939,385 | △11.1% |
| 調整後営業利益 | 123,979 | 140,751 | △11.9% |
| オペレーティング・マージン | 14.8% | 15.0% | △20bps |
| 調整後当期利益(親会社の所有者に 帰属) | 69,890 | 76,120 | △8.2% |
| 営業損失 | △140,625 | △3,358 | △137,267 |
| 当期損失(親会社の 所有者に帰属) | △159,596 | △80,893 | △78,702 |
<当期の連結業績のポイント>売上総利益は前期比△11.1%(為替影響排除ベース同△9.8%)の8,350億42百万円となりました。売上総利益減少の主要因は、オーガニック成長(△1,039億25百万円、成長率(連結△11.1%、国内事業△8.4%、海外事業△13.0%))、為替影響(△143億2百万円)です。
国内事業において、デジタル領域は好調に推移しましたが、コロナ禍の影響もあり、マス4媒体市場が縮小し、前期比△8.3%の3,489億2百万円となりました。
海外事業においても、コロナ禍の影響で、ヨーロッパ、中東およびアフリカ(以下「EMEA」)、米州(以下「Americas」)、アジア太平洋(日本を除く。以下「APAC」)の全地域がマイナスのオーガニック成長となり、同△13.1%(為替影響排除ベース同△10.9%)の4,863億2百万円となりました。
売上総利益に占めるデジタル領域構成比は大幅に拡大し、連結53.9%(前期は47.5%)、国内事業34.8%(同29.3%)、海外事業67.5%(同59.9%)となりました。
調整後営業利益は、前期比△11.9%(為替影響排除ベース同△10.6%)の1,239億79百万円となりました。国内事業の調整後営業利益は、減収などにより、同△13.4%の627億46百万円となり、オペレーティング・マージンは18.0%(前期は19.1%)となりました。海外事業の調整後営業利益は、コストコントロールや構造改革の成果などにより、為替影響排除ベースでは若干の増益(同+0.2%)となりましたが、前期比△2.7%の665億18百万円、オペレーティング・マージンは13.7%(前期は12.2%)となりました。
営業利益調整項目は、減損損失の増加(+710億50百万円)、構造改革費用の増加(+587億12百万円)などによって損失が拡大し、△2,646億5百万円となりました。
その結果、営業損失は、前期の33億58百万円から1,372億67百万円損失が拡大し、1,406億25百万円となりました。
調整後当期利益(親会社の所有者に帰属)は、主に調整後営業利益の減少により、前期比△8.2%の698億90百万円となりました。
当期利益調整項目は、アーンアウト債務・買収関連プットオプション再評価損益の増加はあったものの、減損損失および構造改革による営業利益調整項目の減少が大きく、前期差724億72百万円の損失増加となり、△2,294億86百万円となりました。
その結果、当期損失(親会社の所有者に帰属)は、前期の808億93百万円から787億2百万円損失が拡大し、1,595億96百万円となりました。
<当期の連結業績:地域別>1.国内事業
コロナ禍の影響は大きく、顧客企業によるマス広告出稿は大きく落ち込みましたが、デジタル領域では顧客企業によるデジタルトランスフォーメーション需要が継続しており、当期間を通して好調に推移しました。会社別では、㈱電通が大幅な減収(前期比13.2%減)となったものの、㈱電通国際情報サービス(ISID、同12.2%増)や㈱電通デジタル(同15.6%増)などが貢献しました。2020年2月から開始した迅速なコストコントロールと経費の適正化、並びに2017年度から実施している労働環境改革による生産性の向上などの効果はあったものの、減収を相殺するには至りませんでした。
その結果、国内事業の売上総利益は3,489億2百万円(同8.3%減)、売上総利益のオーガニック成長率は△8.4%となりました。また、調整後営業利益は627億46百万円(同13.4%減)、オペレーティング・マージンは18.0%(前期は19.1%)と前期を下回りました。
なお、第3四半期には、㈱電通において、社員に新しいキャリアの選択肢を提供することを目的とした早期希望退職プログラムの実施を決定し、第4四半期に当プログラムを実施しました。これを主な要因として、2020年度に国内事業として合計242億78百万円の構造改革費用を計上しました。また、減損損失は43億52百万円(前期は0百万円)となりました。 構造改革の概要については、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」をご参照ください。
国内事業 会社別売上総利益の状況(IFRSベース)(単位:百万円、△は減少)
| IFRSベース | 2020年度 (1-12月) | 前期差 | 前期比 |
| ㈱電通 | 187,215 | △28,353 | △13.2% |
| ㈱電通国際情報サービス(ISID) | 37,472 | +4,082 | +12.2% |
| ㈱電通デジタル | 25,102 | +3,383 | +15.6% |
| ㈱CARTA HOLDINGS | 20,281 | △163 | △0.8% |
| ㈱電通テック | 13,667 | △1,876 | △12.1% |
| ㈱電通ライブ | 10,223 | △1,797 | △15.0% |
| 地域電通※ | 17,839 | △4,116 | △18.7% |
| その他・内部取引等 | 37,103 | △2,624 | △6.6% |
| 国内事業 合計 | 348,902 | △31,464 | △8.3% |
※「地域電通」は100%連結子会社の㈱電通東日本、㈱電通西日本、㈱電通九州、㈱電通北海道の4社の合計
2.海外事業
海外事業の売上総利益のオーガニック成長率は、地域別では、EMEAが△12.4%、Americasが△11.3%、APACが△18.0%となり、全体では△13.0%となりました。
海外事業の売上総利益は、4,863億2百万円(前期比13.1%減)となりましたが、リストラによるコスト削減や、景気の悪化に対応したコストコントロールに努めたことなどにより、調整後営業利益は665億18百万円(同2.7%減)となりました。オペレーティング・マージンは13.7%(前期は12.2%)となり、前期を上回りました。
なお、海外事業において計上した構造改革費用は541億15百万円(前期は196億82百万円)、減損損失は1,403億67百万円(前期は736億69百万円)となりました。 構造改革の概要については、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」を、減損損失の詳細については、「第5 経理の状況 連結財務諸表注記 15.のれんおよび無形資産 (2) 重要なのれんおよび無形資産、及び、(3)のれんの減損テスト」をご参照ください。
EMEA:売上総利益のオーガニック成長率は、新型コロナウイルスの感染が拡大した第2四半期に大きく落ち込みました。第3四半期には回復傾向がみられたものの、第4四半期は、第3四半期までの傾向から大きな変化は見られませんでした。通年ではロシアが唯一のプラス成長となりました。コロナ禍による規制の影響が大きかったフランス、ドイツ、オランダの不調は第4四半期まで継続しました。英国とスペインは、特にメディア事業の減収が顕著となりました。第4四半期においては、CXM事業とクリエイティブ事業は比較的堅調に推移した一方で、屋外広告や経験マーケティング分野の収益は減少しました。
Americas:第1四半期にプラスであった売上総利益のオーガニック成長率は、新型コロナウイルスの感染が拡大した第2四半期には、二桁のマイナスとなりました。その後、第3、第4四半期と緩やかながら回復傾向がみられました。米国では、CXM事業で第4四半期にテック系顧客企業からの追加受注があり、またEコマースとD2C戦略を支えるファーストパーティデータに顧客企業の注目が集まっていることから、CXM事業とその中核ブランドであるMerkleは、2021年に向けて成長の兆しが見えてきました。メディア事業のパフォーマンス分野においては、12月に顧客企業のターゲティング広告出稿増により足元は順調なものの、メディア事業全体においては、2020年度の年間を通して厳しい状況となりました。クリエイティブ事業は、コロナ禍でプロジェクトベースの受注が減少しました。
APAC:売上総利益のオーガニック成長率は年間を通してマイナスが継続したものの、第2四半期を底に回復傾向にあります。特に第4四半期においては、プロジェクトベースのCXM、メディア、クリエイティブの各事業の受注が徐々に回復し、想定を上回る業績となりました。中国は第4四半期もマイナス成長のまま推移したものの、オーストラリアの第4四半期はプラス成長となり、インドも第4四半期において、それまでの四半期と比較して大幅な改善となりました。
海外事業 地域別のオーガニック成長率(△はマイナス成長)
| 2020年度 (1-12月) | 2020年度 第4四半期(10-12月) | 2020年度 第3四半期(7-9月) | 2020年度 第2四半期(4-6月) | 2020年度 第1四半期(1-3月) | |
| EMEA | △12.4% | △14.4% | △12.9% | △20.2% | △0.4% |
| Americas | △11.3% | △13.0% | △15.3% | △17.1% | +1.2% |
| APAC | △18.0% | △10.9% | △16.4% | △26.4% | △19.5% |
| 海外事業 合計 | △13.0% | △13.2% | △14.6% | △20.0% | △3.3% |
海外事業 サービスライン別の売上総利益・オーガニック成長率(△はマイナス成長)
2020年度(1-12月)
| 売上総利益(構成比) (単位:百万円) | オーガニック成長率 | |
| メディア | 231,657(47%) | △15.6% |
| クリエイティブ | 110,290(23%) | △18.0% |
| CXM※ | 144,357(30%) | △3.2% |
※顧客体験マネジメント(Customer Experience Management)
<2020年までの連結ガイドラインとその進捗について>前事業年度の有価証券報告書に記載した当社グループが設定した2020年までの連結ガイドラインは下記のとおりです。
① 売上総利益のオーガニック成長率3%以上(2020年までの3年間のCAGR)の達成
② オペレーティング・マージンは2018年より改善
③ 株主還元については安定的な配当を堅持しつつ、今後の業績やキャッシュ・フローの状況を勘案した
適切な利益の還元を検討
当期の実績をふまえたガイドラインの進捗は以下のとおりとなりました。
コロナ禍の影響による世界的な景気後退と、それに伴う広告市場の縮小により、上述のとおり当期のオーガニック成長率は△11.1%(2019年度は△1.0%、2018年度は3.4%)となりました。一方、オペレーティング・マージンについては、コストコントロールにより、14.8%(2019年度は15.0%、2018年度は16.4%)となりました。
また、2020年度の1株当たりの年間配当金は、安定性を重視しつつ、連結業績動向、財務状況等を総合的に勘案して、71.25円(2019年度は95.0円、2018年度は90.0円)となりました。なお、株主価値向上の観点から、2019年8月7日に300億円を上限とする自己株式取得の実施を決定し、その後、299億円の取得を実施いたしました。
<財政状態の状況について>当期末は、前期末と比べ、主に、国内事業のその他の金融資産および海外事業ののれんが減少したこと等から、資産合計で4,153億16百万円の減少となりました。一方、主に営業債務が減少したことから、負債合計で1,831億36百万円の減少となりました。また、主に親会社の所有者に帰属する当期損失の計上などにより、資本合計は2,321億80百万円の減少となりました。
国内事業における、その他の金融資産の減少は、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおり、「包括的な事業オペレーションと資本効率に関する見直し」と呼ぶ構造改革に着手し、2020年度中に保有株式の売却などの一部施策を実施したためです。
また、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおり、当社グループは、今後の経営方針として、中期的なNet Debt/EBITDA倍率を1.5倍水準(IFRS第16号の適用影響を控除したベース)(但し、短期的にはより低い水準)で管理していく方針であります。健全なバランスシートの維持は重要な経営課題であり、短期的にはコロナ禍による不透明な事業環境をマネージしつつ、中長期的な事業変革や成長戦略を支える財務基盤を維持するために適切なレバレッジ水準を設定するとともに、非事業資産の処分なども含めた総合的な施策を続けてまいります。
(2) キャッシュ・フロー
当連結会計年度末の現金及び現金同等物(以下「資金」という)は、5,306億92百万円(前連結会計年度末4,140億55百万円)となりました。主に投資活動による収入などにより、前連結会計年度末に比べ1,166億37百万円の増加となりました。
営業活動によるキャッシュ・フロー
営業活動の結果により得た資金は、前連結会計年度に比べ83億56百万円増加し、883億13百万円となりました。当連結会計年度の運転資本の増減額は△225億40百万円となり、前連結会計年度の増減額△282億54百万円と比べ、運転資本の減少額が減少しました。また、それに加え、法人所得税の支払額が減少したことなどにより、営業活動の結果により得た資金が増加しました。
投資活動によるキャッシュ・フロー
投資活動の結果により得た資金は、前連結会計年度に比べ2,130億64百万円増加し、1,370億13百万円となりました。主に、有価証券の売却による収入が増加したことによるものです。有価証券の売却による収入の増加は、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおり、「包括的な事業オペレーションと資本効率に関する見直し」と呼ぶ構造改革に着手し、2020年度中に保有株式の売却などの一部施策を実施したためです。
財務活動によるキャッシュ・フロー
財務活動の結果支出した資金は、前連結会計年度に比べ888億18百万円増加し、966億22百万円となりました。主に社債の発行による収入が増加した一方、長期借入れによる収入が減少したことや、前述の社債の発行による調達資金を原資とした長期借入金の返済による支出が増加したことなどにより資金が減少したことによるものです。なお、2019年8月7日開催の取締役会において、300億円を上限とする自己株式取得の実施を決議したこと等に伴い、当連結会計年度に100億4百万円の自己株式の取得による支出がありました。
また、2021年2月15日開催の取締役会において、300億円を上限とした自己株式取得の実施を決議しております。(取得する期間:2021年2月16日~2021年12月23日)
(生産、受注及び販売の状況)
販売実績
当連結会計年度におけるセグメントの販売実績(売上高)は次のとおりであります。
| セグメントの名称 | 金額(百万円) | 前連結会計年度比(%) |
| 国内事業 | 1,723,383 | 89.9 |
| 海外事業 | 2,774,832 | 85.9 |
| 計 | 4,498,216 | 87.4 |
(注) 1 セグメント間取引については相殺消去しております。
2 売上高は当社グループが顧客に対して行った請求額および顧客に対する請求可能額の総額(割引および消費税等の関連する税金を除く)であり、IFRSに準拠した開示ではありません。
(経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容)
文中における将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において、当社グループが判断したものであります。
(1) 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
当連結会計年度の財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容につきましては「(経営成績等の状況の概要) (1) 財政状態及び経営成績の状況」に記載したとおりであります。
(2) キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
① 資本政策・財務戦略の基本的な考え方
当社グループは、2021年2月に発表した中期経営計画期間において、経営の安定性、財務の健全性に留意しつつ、企業活動のデジタル化の進展などがもたらす社会の変化と事業機会を積極的にとらえ、広く社会課題の解決に資するとともに、さらなる企業価値、株主価値の向上を目指してまいります。
財務の健全性に関しては、中期的には純有利子負債のEBITDAに対する倍率が1.5倍程度(IFRS第16号の適用影響を控除したベース)(但し、短期的にはより低い水準)までに保つことで、高い信用格付を維持することを目指します。また、内部資金、金融機関からの借入、社債、コマーシャル・ペーパー、債権流動化、またはコミットメントライン等により、十分な手元流動性を確保することとしております。さらに、2020年度においては、新型コロナウイルス感染症による影響に備えた流動性確保等の目的で、金融機関との間で一時的に追加の銀行融資枠を設定しております。これらにより、急激な事業環境の変化等に対するリスク耐性が高い状態を維持できるよう努めてまいります。
M&A・設備投資等の成長投資に関しては、経営の安定性・財務の健全性に留意しながら、グループ全社にわたる成長に向けた投資を推進してまいります。
株主還元に関しては、これらの活動を通して得られる利益の適切な配分と本源的な企業価値の向上を通じて株主の皆様への利益還元に努めることとし、次期以降の配当方針としては、基本的1株当たり調整後当期利益に対する配当性向を今後数年で35%まで漸進的に高めてまいります。
② 資金需要の主な内容
当社グループの運転資金需要のうち主なものは、広告作業実施のための媒体料金および制作費の支払等ならびに人件費をはじめとする販売費及び一般管理費であります。
また、2021年2月に発表した中期経営計画期間においては、新しいテクノロジーやソリューション開発、イノベーションへの投資や高成長領域であるカスタマートランスフォーメーション&テクノロジーへのM&A・投資に係る資金需要が見込まれます。
③ キャッシュフローの状況
当連結会計年度のキャッシュフローの状況につきましては「(経営成績等の状況の概要) (2) キャッシュ・フロー」に記載したとおりであります。
④ 資金調達及び流動性の状況
当社グループは、内部資金、金融機関からの借入、社債、コマーシャル・ペーパー、または債権流動化等の多様な手段の中から、その時々の市場環境や長期資金の年度別償還額も考慮した上で、機動的に有利な手段を選択し、資金調達を行っております。なお、2020年度の持株会社体制移行に伴い、長期資金については、原則として当社で一元的に資金調達しております。
また、緊急時の流動性を確保するため、当社はシンジケーション方式による極度額500億円のコミットメントラインを、電通インターナショナル社(Dentsu International Limited)は、5億ポンド(約699億円)のコミットメントラインを設定しております。また、新型コロナウイルス感染症による影響に備えた流動性確保等の目的で、金融機関との間で一時的に追加の銀行融資枠を設定しております。
さらに、グループ内の資金調達の一元化・資金効率の向上・流動性の確保の観点から、資金余剰状態にある子会社から親会社が資金を借り入れ、資金需要が発生している子会社に貸出を行うキャッシュ・マネジメント・システムを導入しております。
当社グループは、安定的な外部資金調達能力の維持向上を重要な経営課題と認識しており、格付機関である株式会社格付投資情報センター(R&I)から長期格付AA-、短期格付a-1+を取得しております。また、主要な内外金融機関との間で長期間に亘って築き上げてきた幅広く良好な関係に基づき、当社グループの事業の維持拡大、必要な運転資金の確保、成長投資資金の調達に関しては問題なく実施可能と認識しています。
(3) 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社の連結財務諸表は、国際会計基準審議会により公表されたIFRSに基づき作成されております。
また、当社経営陣は、連結財務諸表の作成に際し、決算日における資産・負債の報告数値および偶発債務等オフバランス取引の開示、報告期間における財政状態および経営成績について影響を与える見積りを行わなければなりません。経営陣は、例えば、投資、企業結合、退職金、法人税等、偶発事象や訴訟等に関する見通しや判断に対して、継続して評価を行っております。経営陣は、過去の実績や状況に応じ合理的だと考えられる様々な要因に基づき、見積りおよび判断を行い、その結果は、資産・負債の簿価、収益・費用の報告数字についての根拠となります。実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、見積りと異なる場合があります。
当社は、特に以下の重要な会計方針について、当社グループの財政状態および経営成績に特に影響を与える、あるいは、当社の連結財務諸表の作成において使用される当社グループの重要な判断と見積りにより、大きな影響を受けると考えております。
なお、新型コロナウイルス感染症の影響に伴う会計上の見積りについては、「第5 経理の状況 連結財務諸表注記 4.重要な会計上の判断、見積りおよび仮定 (追加情報)新型コロナウイルス感染症の拡大に伴う会計上の見積りについて」に記載のとおりであります。
① 収益の認識
「第5 経理の状況 連結財務諸表注記 3.重要な会計方針 (15)収益」をご参照下さい。
② 有形固定資産、のれん、無形資産および投資不動産の減損
当社グループは決算日において、棚卸資産および繰延税金資産を除く非金融資産が減損している可能性を示す兆候があるか否かを判定し、減損の兆候が存在する場合には当該資産の回収可能価額に基づき減損テストを実施しております。のれんは償却を行わず、減損の兆候の有無にかかわらず年に一度、または減損の兆候がある場合はその都度、減損テストを実施しております。資産の回収可能価額は資産または資金生成単位の処分コスト控除後の公正価値と使用価値のいずれか高い方の金額としており、資産または資金生成単位の帳簿価額が回収可能価額を超過する場合には、当該資産は回収可能価額まで減額し、減損損失を認識しております。使用価値の算定に際しては、資産の耐用年数や将来キャッシュ・フロー、成長率、割引率等について一定の仮定を用いております。
これらの仮定は過去の実績や当社経営陣により承認された事業計画等に基づく最善の見積りと判断により決定しておりますが、事業戦略の変更や市場環境の変化等により影響を受ける可能性があり、仮定の変更が必要となった場合、認識される減損損失の金額に重要な影響を及ぼす可能性があります。
海外事業におけるのれんの減損テストにおける主要な仮定や感応度分析等の詳細については、「第5 経理の状況 連結財務諸表注記 15.のれんおよび無形資産 (3)のれんの減損テスト」をご参照ください。
③ 金融商品の評価
当社グループは有価証券やデリバティブ等の金融資産を保有しており、当該金融資産の評価に当たり一定の仮定を用いております。公正価値は、市場価格の他、マーケット・アプローチやインカムアプローチ等の算出手順に基づき決定しております。具体的には、株式およびその他の金融資産のうち活発な市場が存在する銘柄の公正価値は市場価格に基づいて算定し、活発な市場が存在しない銘柄の公正価値は観察可能な市場データを用いて算定した金額、観察不能なインプットを用いて主としてインカムアプローチやマーケット・アプローチで算定した金額で評価しております。
企業結合の結果生じる条件付対価および株式買取債務の公正価値等は、観察不能なインプットを用いて割引キャッシュ・フロー法で算定した価額で評価しております。
当社経営陣は金融商品の公正価値等の評価は合理的であると判断しておりますが、予測不能な前提条件の変化等により見積りの変更が必要となった場合、認識される公正価値等の金額に重要な影響を及ぼす可能性があります。
④ 確定給付制度債務の評価
確定給付制度債務および退職給付費用は、年金数理計算上で設定される前提条件に基づいて算出されております。これらの前提条件には、割引率、将来の報酬水準、退職率、死亡率等が含まれます。
当社経営陣はこれらの前提条件は合理的であると判断しておりますが、実際の結果が前提条件と異なる場合、または前提条件が変更された場合、認識される費用および計上される債務に重要な影響を及ぼす可能性があります。
⑤ 引当金
当社グループは、過去の事象の結果として現在の法的または推定的債務を有しており、債務の決済を要求される可能性が高く、かつ当該債務の金額について信頼性のある見積りが可能である場合に引当金を認識しております。貨幣の時間価値の影響が重要である場合、引当金は当該負債に特有のリスクを反映させた割引率を用いた現在価値により測定しております。
これらの引当金は、決算日における不確実性を考慮した最善の見積りにより算定しておりますが、予測不能な事象の発生や状況の変化等により影響を受ける可能性があり、実際の結果が見積りと異なる場合、計上される債務の金額に重要な影響を及ぼす可能性があります。
⑥ 繰延税金資産の回収可能性
繰延税金資産は、税務上の繰越欠損金、繰越税額控除および将来減算一時差異のうち、将来の課税所得に対して利用できる可能性が高いものに限り認識しております。繰延税金資産は毎決算日に見直し、税務便益の実現が見込めないと判断される部分について減額しております。
当社グループは、将来の課税所得および慎重かつ実現性の高い継続的なタックス・プランニングの検討に基づき繰延税金資産を計上しており、回収可能性の評価に当たり行っている見積りは合理的であると判断しておりますが、見積りは予測不能な事象の発生や状況の変化等により影響を受ける可能性があり、実際の結果が見積りと異なる場合、認識される費用および計上される資産に重要な影響を及ぼす可能性があります。