有価証券報告書-第9期(平成31年1月1日-令和1年12月31日)

【提出】
2020/03/23 15:33
【資料】
PDFをみる
【項目】
161項目
(1) 経営成績等の状況の概要
① 経営成績の状況
当連結会計年度における日本経済は、世界経済の減速に伴う輸出の低迷や、大型台風による生産停止を背景とした製造業の弱含みが続く一方、働き方改革などの影響で雇用・所得環境が改善し、人手不足を背景とした合理化・省力化に伴う設備投資が増加基調で推移したことなどにより、内需を中心に緩やかに回復しました。
国内株式市場は、年初の取引開始から米株安の影響を受け、日経平均株価が20,000円を下回る波乱のスタートとなりました。その後も米中貿易交渉の動向に左右される相場展開となり、貿易摩擦を懸念して株価が下落する場面がありましたが、9月以降は交渉の進展が期待されて上昇基調に転じ、第一段階の合意に達した12月にはさらに上昇しました。また、12月は欧州連合(EU)からの離脱の行方を決める英国総選挙で保守党が圧勝したことも追い風となり、終値ベースで24,000円台の高値水準にまで上昇しました。当連結会計年度末は、前連結会計年度末の20,014円77銭から18.2%上昇して23,656円62銭で取引を終えました。このような市場環境の中、個人投資家の株式等委託売買代金は前連結会計年度と比較して21.2%の減少となりました。
外国為替市場においては、ドル円相場が一時104円台まで急落する場面がありましたが、概ね108円~111円の狭いレンジで推移し、当連結会計年度末は1ドル=108円台で取引を終えました。総じてボラティリティの低い相場展開となったことから、国内店頭FXの取引金額は前年比14.1%の減少となりました。
このような外部環境の中、GMO-FHは、ビッグデータ解析の活用によりFX事業の収益性向上の取り組みをさらに推し進めるとともに、証券事業においては、信用取引の活性化に向けて取引にかかる買方金利・貸株料を引き下げ、大口取引優遇プランのリニューアルを実施し、今後の成長に向けた事業基盤の強化に取り組みました。また、GMO-FHが第二の収益の柱にすべく育成しているCFDについては、プロモーション強化の成果により口座数・預り証拠金残高が大きく伸長しました。仮想通貨事業については、これまでの金融事業で培ってきたノウハウ・技術を活用し、お客様に安心・安全な取引環境をご提供することにより、顧客基盤が順調に拡大しました。海外事業では、インターネット証券取引サービスを提供しているタイ王国の現地法人GMO-Z com Securities (Thailand) Limitedが堅調に推移し、営業利益の単月黒字化を達成しました。
営業収益は、株式取引に係る委託手数料や金融収益が減少したことに加え、店頭FXやCFD等の店頭デリバティブ取引に係る収益が減収したことから前年比で減収となりました。
以上の結果、当連結会計年度の営業収益は32,501百万円(前期比6.6%減)、純営業収益は30,314百万円(同7.8%減)、営業利益は9,762百万円(同17.4%減)、経常利益は9,686百万円(同18.3%減)、親会社株主に帰属する当期純利益は6,073百万円(同21.3%減)となりました。
当連結会計年度における、主な収益、費用、利益の状況は次のとおりです。
(単位:百万円)
前連結会計年度当連結会計年度増減額増減率
営業収益34,78732,501△2,286△6.6%
受入手数料4,0853,170△914△22.4%
トレーディング損益25,55024,658△892△3.5%
金融収益4,3743,991△383△8.8%
その他の営業収益651013655.7%
その他の売上高711578△133△18.7%
金融費用1,3831,75136826.6%
売上原価526434△92△17.5%
純営業収益32,87730,314△2,562△7.8%
販売費及び一般管理費21,06420,552△512△2.4%
営業利益11,8129,762△2,050△17.4%
経常利益11,8499,686△2,162△18.3%
親会社株主に帰属する当期純利益7,7196,073△1,646△21.3%


当連結会計年度におけるセグメント別の状況は次のとおりです。
[参考]営業収益内訳(セグメント別/商品別) (単位:百万円)
前連結会計年度当連結会計年度増減額増減率
証券・FX事業30,03327,970△2,063△6.9%
株式・ETF等※12,2181,711△507△22.9%
先物・オプション326207△119△36.6%
取引所FX718495△222△31.0%
通貨関連店頭デリバティブ20,02719,217△810△4.0%
CFD※22,2912,203△88△3.9%
金融収益4,3743,991△382△8.8%
その他751436890.0%
仮想通貨事業4,0363,943△93△2.3%
仮想通貨※34,0363,943△93△2.3%
その他717588△128△17.9%
その他717588△128△17.9%
調整額0△1△2△263.8%
営業収益合計34,78732,501△2,286△6.6%

※1 株式・ETF等の取引に係る委託手数料及びその他の受入手数料、募集・売出し・特定投資家向け売付け勧誘等の取扱手数料、投資信託に係るその他の受入手数料が含まれています。
※2 CFDには、一部海外子会社の店頭FXに係る収益が含まれています。株BOは2019年4月から商品の取り扱
いを開始しました。
(証券・FX事業)
証券・FX事業のうち店頭FX取引については、収益改善施策の成果により高い収益率を維持したものの、年初の相場急変による一時的な収益性の低下及び外国為替市場のボラティリティ低下を背景とする取引高の減少の影響を受けて収益が減少し、株式関連取引についても、先行不透明な相場環境から個人投資家の手控えを背景に、株式等委託売買代金の減少等を受けて受入手数料が減少、信用取引の売買代金の減少及び信用残高の減少等を受けて金融収益が減少したことから、当連結会計年度における当セグメントの営業収益は27,970百万円(前期比6.9%減)、営業利益は8,724百万円(同20.0%減)となりました。
(仮想通貨事業)
仮想通貨事業については、ビットコインを中心とする仮想通貨のボラティリティ低下に加え、証拠金取引のレバレッジを7月末から仮想通貨交換業協会の自主規制規則を早期適用し引き下げたことも影響して取引高が減少しましたが、カバーの最適化により収益率が改善したことで一定水準の収益を確保しました。この結果、当連結会計年度における当セグメントの営業収益は3,943百万円(前期比2.3%減)、営業利益は889百万円(同22.9%増)となりました。
② 財政状態の状況
(単位:百万円)
前連結会計年度末当連結会計年度末増減額
総資産524,733606,52881,794
負債488,820568,72479,903
純資産35,91337,8031,890

(総資産)
当連結会計年度末における資産合計は606,528百万円(前期末比81,794百万円の増加)となりました。これは主に、現金及び預金の増加22,075百万円、預託金の増加38,340百万円、信用取引資産の増加16,694百万円などによるものです。
(負債)
当連結会計年度末における負債合計は568,724百万円(前期末比79,903百万円の増加)となりました。これは主に、信用取引負債の増加10,501百万円、預り金の増加9,383百万円、受入保証金の増加28,712百万円、短期借入金の増加27,583百万円などによるものです。
(純資産)
当連結会計年度末における純資産は37,803百万円(前期末比1,890百万円の増加)となりました。これは主に、自己株式の処分による資本剰余金の減少1,622百万円、親会社株主に帰属する当期純利益の計上による増加と配当金の支払いによる利益剰余金の減少の結果として利益剰余金が3,007百万円増加したことなどによるものです。
③ キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度における現金及び現金同等物は、営業活動による収入が545百万円、投資活動による支出が1,954百万円、財務活動による収入が24,083百万円となった結果、当連結会計年度末には61,278百万円となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動によるキャッシュ・フローは、545百万円のプラスとなりました。これは主に、税金等調整前当期純利益の計上9,528百万円、受入保証金の増加による収入28,707百万円、預り金の増加による収入9,365百万円、信用取引負債の増加による収入10,501百万円があった一方で、預託金の増加による支出38,353百万円、信用取引資産の増加による支出15,781百万円、法人税等の支払による支出5,177百万円があったことによるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動によるキャッシュ・フローは、1,954百万円のマイナスとなりました。これは主に、有形固定資産の取得による支出462百万円、無形固定資産の取得による支出364百万円、投資有価証券の取得による支出517百万円、長期差入保証金の差入による支出309百万円があったことによるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動によるキャッシュ・フローは、24,083百万円のプラスとなりました。これは主に、短期借入金の純増加による収入27,583百万円、長期借入れによる収入6,350百万円があった一方で、長期借入金の返済による支出4,450百万円、自己株式の取得による支出1,653百万円、配当金の支払による支出3,066百万円があったことによるものです。
④ 生産、受注及び販売の状況
GMO-FHは、証券・FX事業、仮想通貨事業を主要な事業としており、「生産、受注及び販売の状況」は該当する情報が存在しないことから、記載しておりません。
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点によるGMO-FHの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりです。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
① 重要な会計方針及び見積もり
当社の連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に基づき作成しております。具体的には、「連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則」(昭和51年大蔵省令第28号) 並びに同規則第46条及び第68条の規定に基づき、「金融商品取引業等に関する内閣府令」(平成19年内閣府令第52号)及び「有価証券関連業経理の統一に関する規則」(昭和49年日本証券業協会自主規制規則)に準拠して作成しております。
なお、連結財務諸表の作成に際しては、貸倒引当金、賞与引当金、繰延税金資産の計上等について重要な判断や見積もりを行っておりますが、前提となる条件、仮定等に変化があった場合などにはこれらの見積もりが実際の結果と異なる場合があります。
② 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
GMO-FHは、「強いものをより強くする」という方針のもと、収益の柱であるFXの強化により事業基盤のさらなる拡大を図るとともに、その他国内外の既存事業、新規事業に投資することで持続的成長を図っております。低調な市場環境の影響を受けて前連結会計年度比で減収減益となったものの、注力分野である店頭FXの収益性改善、CFDの育成、タイ王国における信用取引の拡大の3点は堅調に推移しています。
証券・FX事業のうち、店頭FXにおいてはビッグデータ解析の活用等によるFX事業の収益性向上の取り組みが実を結び、収益性を示す指標である「スプレッド収益率」が過去最高を記録し、年間で前連結会計年度比約10%向上しました。
仮想通貨事業では、これまでFX事業で培ってきたノウハウ・技術を活用し、顧客基盤拡大、収益安定化に努めた結果、通期での黒字となりました。
③ 資本の財源及び資金の流動性についての分析
(資金需要及び資金の流動性)
GMO-FHの資金需要の主なものは、信用取引買付代金の顧客への貸付、店頭デリバティブ取引等におけるカウンターパーティーとのカバー取引に係る差入保証金等、顧客からの預り金や信用取引、FX取引等に係る保証金の入出金と顧客分別金信託及び顧客区分管理信託への入出金との差による一時的な立替などが挙げられます。これらの資金需要には、自己資金のほか、金融機関等とのコミットメントライン契約及び当座貸越契約に基づく短期借入金、差入保証金の代替として支払承諾契約に基づく保証状のカウンターパーティーへの差し入れ等にて対応しております。
なお、当座貸越契約及びコミットメントライン契約を総額93,569百万円設定しており、当連結会計年度末の借入実行額は69,029百万円であります。
(キャッシュ・フローの状況の分析)
「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ③ キャッシュ・フローの状況」をご参照ください。