有価証券報告書-第12期(2025/03/01-2026/02/28)
(1) 財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度における日本経済は、雇用・所得環境の改善や各種施策の効果もあり、個人消費や設備投資の持ち直しが続いていることから緩やかな景気回復の動きが見られました。一方で、米国の通商政策の影響による景気の下振れリスクに加え、物価上昇の継続が個人消費に及ぼす影響も我が国の景気を下押しするリスクとなっており、また、金融資本市場の変動等の影響に引き続き注意が必要な状況となっております。
そのような環境の下、当社グループの主力事業であるCRM(Customer Relationship Management)事業においては、生成AI等の新技術を活用し、高い利益率が見込めるソリューションモデルへの変革が重要となっております。こうした市場環境の中、顧客接点多様化に伴う対応領域の拡大とデータ活用により、業務品質や付加価値の向上に努めるとともに、新たな事業領域の開拓を推進しております。
当連結会計年度においては、中期経営計画で掲げた「人材(総力4万人の最大活躍)」「型化(データ活用の高度化)」「共創(NEW BPOの領域開拓)」の3つの重点施策を加速させることで、持続的な成長の実現を目指してまいりました。
型化(データ活用の高度化)においては、生成AI搭載のCXクラウド型コンタクトセンタープラットフォーム「BellCloud+CX」の提供を開始いたしました。本ソリューションは、ナイスジャパン株式会社の独自生成AIを搭載したCXソリューション「NICE CXone Mpower」をOEMで採用し、当社グループにおける豊富な運用ノウハウと組み合わせた、次世代コンタクトセンターの基盤となるソリューションであります。電話回線や通話録音といった基本的なPBX機能に加えて、オムニチャネル・AIボットなどのデジタル応対から、ワークフォース管理、オペレーター評価、ナレッジマネジメントなど品質管理、翻訳、リアルタイムでの音声認識及び会話要約などの生成AI機能まで同一プラットフォームで利用することができます。これにより、蓄積したデータをシームレスにCX向上のための各種施策へ活用することが可能となり、導入企業様の業務効率化とCX向上に寄与しております。さらに、当社の子会社でデータマーケティングの専門企業である株式会社シンカーと共同で、コンタクトセンターの通話データやチャットログなどのVOC(顧客の声)データから生成AIにより顧客ニーズを推定する「ヒトトナリAI」サービスの提供を開始いたしました。本サービスは、顧客のライフイベントや興味関心の可能性をスコア化することで顧客ニーズを推定し、最適な商品の提案や、新商品のニーズ推定、新規顧客獲得のための広告配信など、様々なマーケティングへの活用が可能であります。また、営業活動や顧客対応の運用改善にも利用でき、VOCをマーケティングに活用したい企業様に伴走し、コンサルティングからマーケティング施策の実行までワンストップで提供しております。
また、新たにマンション管理業務特化のBPOセンターを池袋及び札幌の拠点内に構築し、「マンション管理BPOサービス」の提供を開始いたしました。従来、当社がマンション管理事業者向けに提供してきたBPOサービスは、電話やメールなどの問い合わせ窓口や書類のチェック・作成といった「日常管理サポート業務」が中心でありました。今回、人材不足や働き方改革の事業課題を解決する業務DX支援を目的に、「顧客獲得マーケティング業務」「組合委託契約業務」「生活支援サービス業務」及び「資産価値向上施策」を支援メニューに加え、マンションの長期的なライフサイクルに寄り添った幅広い業務へ支援領域を拡大いたしました。これにより、マンション管理事業者の業務負担を軽減し、居住者様の満足度向上に向けたコア業務に専念できるよう支援しております。
共創(NEW BPOの領域開拓)においては、生成AI Co-Creation Lab.の活動を通じて開発中のコンタクトセンター自動化ソリューション「Hybrid Operation Loop」からプロセスの一部を切り出した第一弾ソリューションとして、「Knowledge Generator」の開発が完了いたしました。「Knowledge Generator」は通話録音データから、ナレッジ生成の世界基準である「KCS(ナレッジ・センター・サービス)」に準拠した高精度なナレッジを自動生成する独自の技術であり、これにより、膨大な時間を要した通話録音データから「KCS」に準拠したナレッジ整備を圧倒的に効率化し、短縮することが可能となります。「Knowledge Generator」は、大手生命保険会社など複数社とともに実証実験を実施しており、実運用を見据えた精度を確認しております。
また、伊藤忠商事株式会社(以下、「伊藤忠商事㈱」)と連携し、製薬企業のMR(医薬情報担当者)活動をコンタクトセンターに集約する情報提供活動支援サービス「Co-MR」の提供を開始いたしました。これは、医療機関の訪問規制や医師の働き方改革等によりMRと医師との接点が少なくなっている中、伊藤忠グループの医薬領域での戦略伴走経験やパートナーアライアンスと、当社グループの医薬分野の有資格者などの専門人材やコンタクトセンターノウハウを活用することで、一気通貫の情報提供活動を支援するものです。医薬品に関する適正な情報提供を効率的に実施し、訪問が難しいエリアの医療従事者への情報提供やアポイントを取得することで、MRの工数削減や処方拡大を支援しております。
さらに、株式会社AVILEN(以下、「㈱AVILEN」)及び伊藤忠商事㈱と協業し、AIエージェントのオーダーメイド開発や実装、AI人材へのリスキリング、BPOを包括的に支援するソリューションを提供開始いたしました。本ソリューションは、生成AIやAIエージェントを導入したい、導入したけれど成果に繋がらない、といった企業とのコラボレーション(共創)により、業務プロセス改革やAI活用、BPOなど各領域のプロフェッショナルが、クライアント企業と共同でプロジェクト体制を構築し、現場の課題を細やかにヒアリングしながら効率的・効果的なAIエージェント導入を実現するものであります。当社が有する業務プロセス変革のコンサルティング知見及びソリューション運用ノウハウと、㈱AVILENの強みである約400名のエンジニア人材プールとAI開発力、伊藤忠商事㈱の持つ企業のDXを支援するグループ企業ネットワークを結集し、四位一体となって経営と現場双方での成果創出に繋げております。
人材(総力4万人の最大活躍)においては、当社が掲げる健康経営戦略に沿って、従業員の心身の健康維持・向上と、仕事と育児・介護の両立支援に重点をおいた施策を実施いたしました。メンタルヘルスケアの推進においては、ストレスチェック受検率の向上を目標に掲げ、経営層からのメッセージ発信や、各部署の受検状況を可視化した定期配信による受検勧奨を実施、また、仕事と育児・介護の両立支援においては、社内ネットワーキング活動の中で、仕事と育児の両立支援チームが男性育休等に関する情報発信や座談会などの企画運営を行いました。また、経営層と介護経験者、男性育休取得者、女性育休取得者とのラウンドテーブルをそれぞれ実施し、現場の実態や課題を把握するとともに、制度・施策の改善に活かしており、結果として経済産業省と日本健康会議が共同で実施する「健康経営優良法人2026」の大規模法人部門に4年連続で認定されました。
また、厚生労働省が実施する「安全衛生優良企業公表制度」において、「安全衛生優良企業」として認定されました。「安全衛生優良企業」は、労働者の安全や健康を確保するための対策に積極的に取り組み、高い安全衛生水準を維持・改善しているとして、厚生労働省より認定を受けた企業であります。この認定を受けるためには、過去3年間に労働安全衛生関連の重大な法令違反がないなどの基本事項に加え、労働者の健康保持・増進対策、メンタルヘルス対策、過重労働防止対策、安全管理など、幅広い分野で積極的な取り組みを行っていることが求められます。当社では、労働安全衛生に関する法令やその他の要求事項を遵守し、従業員への教育研修を通じて安全衛生に対する意識を高めるとともに、従業員が最高のパフォーマンスを発揮できるよう心と体の健康の維持・向上に努め、職場環境の整備に取り組んでおります。今回の認定では、特に長時間労働の管理、健康保険組合と連携した活動、外部専門家を招いたメンタルヘルス対策の研修や講演の実施、復職に関するルール化や復職後の面談などが優れた取り組みとして評価されました。
さらに、日本経済新聞社が主催する「日経サステナブル総合調査スマートワーク経営編」において、4つ星に認定されました。この調査は、人材を活用するとともに、人材投資を加速させることで新たなイノベーションを生み出し、生産性を向上させ、企業価値を最大化させることを目指す先進企業を選定するもので、当社は、「人材活用」の「多様で柔軟な働き方」「ダイバーシティの推進」、及び「人材投資」の「多様なキャリアパス」において高い評価を受け、4つ星の認定となりました。
その他、ESG(環境・社会・ガバナンス)に関する取り組みとしては、自社コンタクトセンターである神戸ソリューションセンター(兵庫県三田市)において、持続可能な社会の実現に貢献する「サステナブル・センター」の取り組みを強化いたしました。具体的には、「人と働き方の多様性」の分野において、障がいのある方々など、多様な人材の更なる活躍の場の提供を目的としてLED菜園(人工光型水耕栽培)と社内カフェを開設いたしました。LED菜園は、センター内の執務スペースに設置することで室内のCO2を吸収し職場環境の改善にも貢献しております。また、「地球環境の保護」の分野では、全社のカーボン・ニュートラル化(2040年目標)を目指し、再生可能エネルギーの導入だけではなく「創り出す」取り組みとして、センターの駐車場・駐輪場に太陽光発電設備を導入いたしました。創り出された電力はLED菜園にも供給され、クリーンなエネルギーでセンターの取り組みを支えております。
各セグメントの業績は、以下の通りであります。
(CRM事業)
収益改善施策が奏功したことにより、CRM事業の売上収益は1,455億56百万円(前年同期比1.6%増)となりました。一方、税引前利益は116億87百万円(同3.3%減)となりました。これは、前連結会計年度において子会社株式の一部売却に伴う利益37億60百万円を計上していた影響によるものであります。
(その他)
コンテンツ販売収入が減少したため、その他のセグメントの売上収益は2億70百万円(前年同期比34.4%減)となりました。一方、吸収分割によるコンテンツ事業の一部譲渡により、税引前利益は6億3百万円(前連結会計年度は、8億56百万円の損失)となりました。
以上の結果、当連結会計年度の業績は、売上収益は1,458億26百万円(前年同期比1.5%増)、営業利益は126億52百万円(同9.2%増)、税引前利益は122億90百万円(同9.4%増)、親会社の所有者に帰属する当期利益は81億81百万円(同2.2%増)となりました。
(2) キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物は、前連結会計年度末に比べ2億2百万円増加し、71億94百万円となりました。当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は、以下の通りであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果得られた資金は、165億33百万円となりました(前年同期は173億91百万円の収入)。これは主に、税引前利益が122億90百万円、減価償却費及び償却費が89億47百万円、法人所得税の支払額が33億61百万円及び営業債権の増加額が16億55百万円それぞれ生じたこと等によるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果使用した資金は、5億71百万円となりました(前年同期は36億93百万円の支出)。これは主に、敷金及び保証金の回収による収入が5億80百万円、有形固定資産の取得による支出が5億98百万円及び無形資産の取得による支出が4億27百万円それぞれ生じたこと等によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果使用した資金は、157億82百万円となりました(前年同期は138億97百万円の支出)。これは主に、長期借入れによる収入が180億円、長期借入金の返済による支出が156億円、短期借入金の減少額が77億円、リース負債の返済による支出が65億84百万円及び配当金の支払額が44億43百万円それぞれ生じたこと等によるものであります。
(生産、受注及び販売の状況)
(1) 生産の実績
当社グループは生産活動を行っていないため、該当事項はありません。
(2) 受注の実績
当社グループが顧客企業と締結している契約は、料金算定の基礎となる単価等であり、受注金額の算定に必要な座席数、時間等についてはコール予想等に応じて頻繁に変動いたします。従って、受注金額の特定が極めて困難な状況であるため、同数値の記載を省略しております。
(3) 販売の実績
当連結会計年度における販売の実績をセグメント毎に示すと、以下の通りであります。
(注) 1.セグメント間取引については、相殺消去しております。
2.上記金額には消費税等は含まれておりません。
(経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容)
文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものであります。
(1)重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、国際会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成に当たっては、決算日における財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を与えるような経営者の見積り及び予測を必要としております。当社は、過去の実績値や状況を踏まえ合理的と判断される前提に基づき、見積り及び予測を行っておりますが、前提条件やその後の環境等に変化がある場合には、実際の結果がこれら見積りと異なる可能性があります。
連結財務諸表の作成にあたり採用した重要な会計方針、重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 連結財務諸表注記 3 重要性がある会計方針及び4 重要な会計上の見積り及び判断」に記載しております。
(2)経営成績の分析
① 売上収益
当連結会計年度の売上収益は、通信キャリア案件及び公共系案件が着実に増加したことに加え、二度の国政選挙に関連する業務もあったことから、前連結会計年度に比べて22億19百万円増加(前連結会計年度比1.5%増)し、1,458億26百万円となりました。
② 売上総利益
当連結会計年度の売上総利益は、売上収益の増加に加え、拠点整理によるコスト削減及びオペレーションの効率化等の収益改善施策が奏功し、前連結会計年度に比べて21億5百万円増加(前連結会計年度比8.3%増)し、275億17百万円となりました。
③ 販売費及び一般管理費
当連結会計年度の販売費及び一般管理費は、拠点整理によるコスト削減及びオペレーションの効率化等が寄与し、前連結会計年度に比べて5億76百万円減少(前連結会計年度比3.6%減)し、156億6百万円となりました。
④ その他の収益及び費用
当連結会計年度のその他の収益及び費用の純額は、吸収分割によるコンテンツ事業の一部譲渡により、7億41百万円の収益(前連結会計年度は23億57百万円の収益)となりました。
⑤ 営業利益
当連結会計年度の営業利益は、前連結会計年度に比べて10億65百万円増加(前連結会計年度比9.2%増)し、126億52百万円となりました。
⑥ 金融収益及び費用、持分法による投資損益
当連結会計年度の金融収益及び費用、持分法による投資損益の純額は、3億62百万円の費用(前連結会計年度は3億55百万円の費用)となりました。
⑦ 税引前利益
当連結会計年度の税引前利益は、営業利益の増加等により、前連結会計年度に比べて10億58百万円増加(前連結会計年度比9.4%増)し、122億90百万円となりました。
⑧ 親会社の所有者に帰属する当期利益
当連結会計年度の親会社の所有者に帰属する当期利益は、税引前利益の増加等により、前連結会計年度に比べて1億78百万円増加(前連結会計年度比2.2%増)し、81億81百万円となりました。
(3)財政状態の分析
① 資産の分析
流動資産は、主に営業債権が16億51百万円増加したため、前連結会計年度末より16億75百万円増加し、297億17百万円となりました。
非流動資産は、主に有形固定資産が60億7百万円及びその他の長期金融資産が5億16百万円減少したため、前連結会計年度末より62億67百万円減少し、1,401億4百万円となりました。
これらにより、資産合計は前連結会計年度末より45億92百万円減少し、1,698億21百万円となりました。
② 負債の分析
流動負債は、主に未払法人所得税が9億9百万円及び未払従業員給付が5億49百万円増加しましたが、借入金が134億99百万円減少したため、前連結会計年度末より116億23百万円減少し、457億90百万円となりました。
非流動負債は、その他の長期金融負債が46億92百万円減少しましたが、長期借入金が81億91百万円増加したため、前連結会計年度末より30億86百万円増加し、492億49百万円となりました。
これらにより、負債合計は前連結会計年度末より85億37百万円減少し、950億39百万円となりました。
③ 資本の分析
資本は、主に資本剰余金が42億63百万円減少しましたが、利益剰余金が81億81百万円増加したため、前連結会計年度末より39億45百万円増加し、747億82百万円となりました。
(4)資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当社グループは、資本効率を意識した経営の推進を通じて、持続的な成長及び中長期的な企業価値の向上を目指しております。自己資本利益率(ROE)については、株主資本コストを上回る水準の維持に努めるとともに、収益性の改善及び成長投資の推進を通じて市場評価の改善を図り、株価純資産倍率(PBR)の向上に取り組んでまいります。
また資金需要及び資金調達について、当社グループは事業運営に伴う新規拠点の構築及び設備の更新を継続的に実施しております。これらの資金需要は手許資金で賄うことを基本とし、必要に応じて資金調達を実施いたします。
キャッシュ・フローの状況については、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (2)キャッシュ・フローの状況」をご参照ください。
(5)経営成績に重要な影響を与える要因について
当社グループの主力事業であるCRM事業においては、サービス提供価格の変動と、オペレーター人材の確保及び人件費の変動が、経営成績に重要な影響を与える主要因と認識しております。当社グループを取り巻く事業環境は非常に競争が激しく、昨今の経済状況により、クライアント企業の費用削減傾向が強まる場合には、当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。また、当事業における原価の大部分は、主にオペレーターの人件費であるため、人材不足による採用難や賃金上昇によるオペレーションコストの増加は、当社グループの経営成績に影響を与えます。
対応策といたしましては、当社グループが40年超にわたって築き上げてきた実績と経験を活かして他社との差別化を図り、品質向上及び新しいソリューション提供に努めることで業務の効率化及び売上規模の拡大を実現し、併せて、当社グループのブランド価値向上によりオペレーターの確保及び人件費増に対応する適切な価格設定に努めてまいります。また、AI等新たな技術の活用を強力に推進し、AIとヒトのハイブリッド型CRM事業を早期に実現することで、顧客企業とともに成長できるパートナーへの進化を目指してまいります。
(6)経営戦略の現状と見通し
当社グループが属する派遣売上を加えたコンタクトセンターアウトソーシング市場の総市場規模は1兆円規模で推移しており、2024年度以降は年平均成長率3.5%程度で推移し、2028年度には1兆1,570億円規模に拡大すると推定されております(出典:デロイトトーマツミック経済研究所株式会社「BPO総市場の現状と展望コンタクトセンター&フルフィルメントサービス編2026年版(第19版)」)。
また、AIの活用が社会全体で一般化する中、コンタクトセンターアウトソーシングは単なる問い合わせ対応にとどまらず、応対の自動化・高度化や品質向上に加え、クライアントの収益に貢献する高付加価値サービスの提供が一層重要になっていると考えられます。
こうした中、競合企業は、当該市場において一定のシェアを確保しつつ、IT系BPO事業者との連携や専門性の高い業務への展開を進めております。また、AIやデータ活用により応対の高度化・効率化を図るとともに、コンタクトデータの分析を通じて企業のマーケティング部門へのアプローチを強化する動きがみられます。
当社グループは、これまで培ってきた膨大なデータとメソッド、人財マネジメント力、共創ネットワークをAIにより全方位に拡張し、あらゆるビジネスの進化を通じて差別化を図り、生産年齢人口の減少に伴い拡大するアウトソーシング需要を取り込み、継続的な成長を目指してまいります。
当社グループの強みは、年間約5億件の対話データ、40年超にわたり培った運用メソッド、年間1,500社以上の業務実績、並びに数万人規模の人材育成・運用体制にあります。こうした強みに加え、伊藤忠商事グループ及びTOPPANグループ等をはじめとする多様なパートナーとの営業、事業開発及び先進分野におけるシナジー創出を通じて、クライアント企業と同じ目線で経営課題に取り組み、改善提案を実践するパートナーとして、AI時代の社会的ニーズに応え、さらなる成長を目指してまいります。
(7)経営者の問題意識と今後の方針について
当社グループの経営陣は、現在の事業環境及び入手可能な情報に基づき最善の経営方針を立案するように努めております。当社グループは、主要ビジネスであるCRM事業を中心に、既存クライアントとの取引拡大及び伊藤忠商事グループやTOPPANグループの多様な企業ネットワークを活用した新規クライアント獲得強化による売上規模拡大、及び人件費増に対応する適切な価格設定の実施、業務の効率化及びコストコントロールの徹底による収益性向上との相乗効果により、収益基盤の拡充策を強力に展開してまいります。
株主に対しては、利益還元を最重要課題の一つとして認識しており、剰余金の配当を安定かつ継続的に実施し、業績の進捗状況に応じて配当性向及び必要な内部留保の充実等を総合的に勘案した上で、中期的には親会社所有者に帰属する当期利益をベースに、連結配当性向50%を目標として、中間配当と期末配当の年2回の剰余金の配当を行うことを基本的な方針としております。
また、従業員に対しては、“プロフェッショナル”が集う、“働きがい”のある企業の実現に向けて、新たな人事制度、人材育成施策の導入を段階的に進める他、女性活躍推進を目的とした育成プログラムの実施、企業内保育所の設置、及び教育研修施設の開設等、より多様な働き方を実現する環境整備の取り組みを続けてまいります。これらに加え、D&Iと健康経営の更なる推進を図り、多様な人材の活躍を促進してまいります。
さらに、AI等の新技術を活用した自動化対応への取り組みと人特有のホスピタリティー溢れる価値提供を通じたハイブリッド運用により、クライアントが感動するCXを実現する他、クライアントへの最適なソリューション提供により、クライアント企業の新しいビジネス価値を創造してまいります。
「中期経営計画2028」に掲げたCX高度化とBPO拡大をテーマに、当社グループのデータ・メソッドを、AIにより全方位に進化させた高付加価値サービスの提供、並びに当社グループの強みとパートナー企業の知見・技術を融合し、新たな価値の創出に向け、引き続き事業基盤を強化してまいります。
当連結会計年度における日本経済は、雇用・所得環境の改善や各種施策の効果もあり、個人消費や設備投資の持ち直しが続いていることから緩やかな景気回復の動きが見られました。一方で、米国の通商政策の影響による景気の下振れリスクに加え、物価上昇の継続が個人消費に及ぼす影響も我が国の景気を下押しするリスクとなっており、また、金融資本市場の変動等の影響に引き続き注意が必要な状況となっております。
そのような環境の下、当社グループの主力事業であるCRM(Customer Relationship Management)事業においては、生成AI等の新技術を活用し、高い利益率が見込めるソリューションモデルへの変革が重要となっております。こうした市場環境の中、顧客接点多様化に伴う対応領域の拡大とデータ活用により、業務品質や付加価値の向上に努めるとともに、新たな事業領域の開拓を推進しております。
当連結会計年度においては、中期経営計画で掲げた「人材(総力4万人の最大活躍)」「型化(データ活用の高度化)」「共創(NEW BPOの領域開拓)」の3つの重点施策を加速させることで、持続的な成長の実現を目指してまいりました。
型化(データ活用の高度化)においては、生成AI搭載のCXクラウド型コンタクトセンタープラットフォーム「BellCloud+CX」の提供を開始いたしました。本ソリューションは、ナイスジャパン株式会社の独自生成AIを搭載したCXソリューション「NICE CXone Mpower」をOEMで採用し、当社グループにおける豊富な運用ノウハウと組み合わせた、次世代コンタクトセンターの基盤となるソリューションであります。電話回線や通話録音といった基本的なPBX機能に加えて、オムニチャネル・AIボットなどのデジタル応対から、ワークフォース管理、オペレーター評価、ナレッジマネジメントなど品質管理、翻訳、リアルタイムでの音声認識及び会話要約などの生成AI機能まで同一プラットフォームで利用することができます。これにより、蓄積したデータをシームレスにCX向上のための各種施策へ活用することが可能となり、導入企業様の業務効率化とCX向上に寄与しております。さらに、当社の子会社でデータマーケティングの専門企業である株式会社シンカーと共同で、コンタクトセンターの通話データやチャットログなどのVOC(顧客の声)データから生成AIにより顧客ニーズを推定する「ヒトトナリAI」サービスの提供を開始いたしました。本サービスは、顧客のライフイベントや興味関心の可能性をスコア化することで顧客ニーズを推定し、最適な商品の提案や、新商品のニーズ推定、新規顧客獲得のための広告配信など、様々なマーケティングへの活用が可能であります。また、営業活動や顧客対応の運用改善にも利用でき、VOCをマーケティングに活用したい企業様に伴走し、コンサルティングからマーケティング施策の実行までワンストップで提供しております。
また、新たにマンション管理業務特化のBPOセンターを池袋及び札幌の拠点内に構築し、「マンション管理BPOサービス」の提供を開始いたしました。従来、当社がマンション管理事業者向けに提供してきたBPOサービスは、電話やメールなどの問い合わせ窓口や書類のチェック・作成といった「日常管理サポート業務」が中心でありました。今回、人材不足や働き方改革の事業課題を解決する業務DX支援を目的に、「顧客獲得マーケティング業務」「組合委託契約業務」「生活支援サービス業務」及び「資産価値向上施策」を支援メニューに加え、マンションの長期的なライフサイクルに寄り添った幅広い業務へ支援領域を拡大いたしました。これにより、マンション管理事業者の業務負担を軽減し、居住者様の満足度向上に向けたコア業務に専念できるよう支援しております。
共創(NEW BPOの領域開拓)においては、生成AI Co-Creation Lab.の活動を通じて開発中のコンタクトセンター自動化ソリューション「Hybrid Operation Loop」からプロセスの一部を切り出した第一弾ソリューションとして、「Knowledge Generator」の開発が完了いたしました。「Knowledge Generator」は通話録音データから、ナレッジ生成の世界基準である「KCS(ナレッジ・センター・サービス)」に準拠した高精度なナレッジを自動生成する独自の技術であり、これにより、膨大な時間を要した通話録音データから「KCS」に準拠したナレッジ整備を圧倒的に効率化し、短縮することが可能となります。「Knowledge Generator」は、大手生命保険会社など複数社とともに実証実験を実施しており、実運用を見据えた精度を確認しております。
また、伊藤忠商事株式会社(以下、「伊藤忠商事㈱」)と連携し、製薬企業のMR(医薬情報担当者)活動をコンタクトセンターに集約する情報提供活動支援サービス「Co-MR」の提供を開始いたしました。これは、医療機関の訪問規制や医師の働き方改革等によりMRと医師との接点が少なくなっている中、伊藤忠グループの医薬領域での戦略伴走経験やパートナーアライアンスと、当社グループの医薬分野の有資格者などの専門人材やコンタクトセンターノウハウを活用することで、一気通貫の情報提供活動を支援するものです。医薬品に関する適正な情報提供を効率的に実施し、訪問が難しいエリアの医療従事者への情報提供やアポイントを取得することで、MRの工数削減や処方拡大を支援しております。
さらに、株式会社AVILEN(以下、「㈱AVILEN」)及び伊藤忠商事㈱と協業し、AIエージェントのオーダーメイド開発や実装、AI人材へのリスキリング、BPOを包括的に支援するソリューションを提供開始いたしました。本ソリューションは、生成AIやAIエージェントを導入したい、導入したけれど成果に繋がらない、といった企業とのコラボレーション(共創)により、業務プロセス改革やAI活用、BPOなど各領域のプロフェッショナルが、クライアント企業と共同でプロジェクト体制を構築し、現場の課題を細やかにヒアリングしながら効率的・効果的なAIエージェント導入を実現するものであります。当社が有する業務プロセス変革のコンサルティング知見及びソリューション運用ノウハウと、㈱AVILENの強みである約400名のエンジニア人材プールとAI開発力、伊藤忠商事㈱の持つ企業のDXを支援するグループ企業ネットワークを結集し、四位一体となって経営と現場双方での成果創出に繋げております。
人材(総力4万人の最大活躍)においては、当社が掲げる健康経営戦略に沿って、従業員の心身の健康維持・向上と、仕事と育児・介護の両立支援に重点をおいた施策を実施いたしました。メンタルヘルスケアの推進においては、ストレスチェック受検率の向上を目標に掲げ、経営層からのメッセージ発信や、各部署の受検状況を可視化した定期配信による受検勧奨を実施、また、仕事と育児・介護の両立支援においては、社内ネットワーキング活動の中で、仕事と育児の両立支援チームが男性育休等に関する情報発信や座談会などの企画運営を行いました。また、経営層と介護経験者、男性育休取得者、女性育休取得者とのラウンドテーブルをそれぞれ実施し、現場の実態や課題を把握するとともに、制度・施策の改善に活かしており、結果として経済産業省と日本健康会議が共同で実施する「健康経営優良法人2026」の大規模法人部門に4年連続で認定されました。
また、厚生労働省が実施する「安全衛生優良企業公表制度」において、「安全衛生優良企業」として認定されました。「安全衛生優良企業」は、労働者の安全や健康を確保するための対策に積極的に取り組み、高い安全衛生水準を維持・改善しているとして、厚生労働省より認定を受けた企業であります。この認定を受けるためには、過去3年間に労働安全衛生関連の重大な法令違反がないなどの基本事項に加え、労働者の健康保持・増進対策、メンタルヘルス対策、過重労働防止対策、安全管理など、幅広い分野で積極的な取り組みを行っていることが求められます。当社では、労働安全衛生に関する法令やその他の要求事項を遵守し、従業員への教育研修を通じて安全衛生に対する意識を高めるとともに、従業員が最高のパフォーマンスを発揮できるよう心と体の健康の維持・向上に努め、職場環境の整備に取り組んでおります。今回の認定では、特に長時間労働の管理、健康保険組合と連携した活動、外部専門家を招いたメンタルヘルス対策の研修や講演の実施、復職に関するルール化や復職後の面談などが優れた取り組みとして評価されました。
さらに、日本経済新聞社が主催する「日経サステナブル総合調査スマートワーク経営編」において、4つ星に認定されました。この調査は、人材を活用するとともに、人材投資を加速させることで新たなイノベーションを生み出し、生産性を向上させ、企業価値を最大化させることを目指す先進企業を選定するもので、当社は、「人材活用」の「多様で柔軟な働き方」「ダイバーシティの推進」、及び「人材投資」の「多様なキャリアパス」において高い評価を受け、4つ星の認定となりました。
その他、ESG(環境・社会・ガバナンス)に関する取り組みとしては、自社コンタクトセンターである神戸ソリューションセンター(兵庫県三田市)において、持続可能な社会の実現に貢献する「サステナブル・センター」の取り組みを強化いたしました。具体的には、「人と働き方の多様性」の分野において、障がいのある方々など、多様な人材の更なる活躍の場の提供を目的としてLED菜園(人工光型水耕栽培)と社内カフェを開設いたしました。LED菜園は、センター内の執務スペースに設置することで室内のCO2を吸収し職場環境の改善にも貢献しております。また、「地球環境の保護」の分野では、全社のカーボン・ニュートラル化(2040年目標)を目指し、再生可能エネルギーの導入だけではなく「創り出す」取り組みとして、センターの駐車場・駐輪場に太陽光発電設備を導入いたしました。創り出された電力はLED菜園にも供給され、クリーンなエネルギーでセンターの取り組みを支えております。
各セグメントの業績は、以下の通りであります。
(CRM事業)
収益改善施策が奏功したことにより、CRM事業の売上収益は1,455億56百万円(前年同期比1.6%増)となりました。一方、税引前利益は116億87百万円(同3.3%減)となりました。これは、前連結会計年度において子会社株式の一部売却に伴う利益37億60百万円を計上していた影響によるものであります。
(その他)
コンテンツ販売収入が減少したため、その他のセグメントの売上収益は2億70百万円(前年同期比34.4%減)となりました。一方、吸収分割によるコンテンツ事業の一部譲渡により、税引前利益は6億3百万円(前連結会計年度は、8億56百万円の損失)となりました。
以上の結果、当連結会計年度の業績は、売上収益は1,458億26百万円(前年同期比1.5%増)、営業利益は126億52百万円(同9.2%増)、税引前利益は122億90百万円(同9.4%増)、親会社の所有者に帰属する当期利益は81億81百万円(同2.2%増)となりました。
(2) キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物は、前連結会計年度末に比べ2億2百万円増加し、71億94百万円となりました。当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は、以下の通りであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果得られた資金は、165億33百万円となりました(前年同期は173億91百万円の収入)。これは主に、税引前利益が122億90百万円、減価償却費及び償却費が89億47百万円、法人所得税の支払額が33億61百万円及び営業債権の増加額が16億55百万円それぞれ生じたこと等によるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果使用した資金は、5億71百万円となりました(前年同期は36億93百万円の支出)。これは主に、敷金及び保証金の回収による収入が5億80百万円、有形固定資産の取得による支出が5億98百万円及び無形資産の取得による支出が4億27百万円それぞれ生じたこと等によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果使用した資金は、157億82百万円となりました(前年同期は138億97百万円の支出)。これは主に、長期借入れによる収入が180億円、長期借入金の返済による支出が156億円、短期借入金の減少額が77億円、リース負債の返済による支出が65億84百万円及び配当金の支払額が44億43百万円それぞれ生じたこと等によるものであります。
(生産、受注及び販売の状況)
(1) 生産の実績
当社グループは生産活動を行っていないため、該当事項はありません。
(2) 受注の実績
当社グループが顧客企業と締結している契約は、料金算定の基礎となる単価等であり、受注金額の算定に必要な座席数、時間等についてはコール予想等に応じて頻繁に変動いたします。従って、受注金額の特定が極めて困難な状況であるため、同数値の記載を省略しております。
(3) 販売の実績
当連結会計年度における販売の実績をセグメント毎に示すと、以下の通りであります。
| セグメントの名称 | 販売高(百万円) | 前年同期比(%) |
| CRM事業 | 145,556 | 1.6 |
| その他 | 270 | △34.4 |
| 合計 | 145,826 | 1.5 |
(注) 1.セグメント間取引については、相殺消去しております。
2.上記金額には消費税等は含まれておりません。
(経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容)
文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものであります。
(1)重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、国際会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成に当たっては、決算日における財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を与えるような経営者の見積り及び予測を必要としております。当社は、過去の実績値や状況を踏まえ合理的と判断される前提に基づき、見積り及び予測を行っておりますが、前提条件やその後の環境等に変化がある場合には、実際の結果がこれら見積りと異なる可能性があります。
連結財務諸表の作成にあたり採用した重要な会計方針、重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 連結財務諸表注記 3 重要性がある会計方針及び4 重要な会計上の見積り及び判断」に記載しております。
(2)経営成績の分析
① 売上収益
当連結会計年度の売上収益は、通信キャリア案件及び公共系案件が着実に増加したことに加え、二度の国政選挙に関連する業務もあったことから、前連結会計年度に比べて22億19百万円増加(前連結会計年度比1.5%増)し、1,458億26百万円となりました。
② 売上総利益
当連結会計年度の売上総利益は、売上収益の増加に加え、拠点整理によるコスト削減及びオペレーションの効率化等の収益改善施策が奏功し、前連結会計年度に比べて21億5百万円増加(前連結会計年度比8.3%増)し、275億17百万円となりました。
③ 販売費及び一般管理費
当連結会計年度の販売費及び一般管理費は、拠点整理によるコスト削減及びオペレーションの効率化等が寄与し、前連結会計年度に比べて5億76百万円減少(前連結会計年度比3.6%減)し、156億6百万円となりました。
④ その他の収益及び費用
当連結会計年度のその他の収益及び費用の純額は、吸収分割によるコンテンツ事業の一部譲渡により、7億41百万円の収益(前連結会計年度は23億57百万円の収益)となりました。
⑤ 営業利益
当連結会計年度の営業利益は、前連結会計年度に比べて10億65百万円増加(前連結会計年度比9.2%増)し、126億52百万円となりました。
⑥ 金融収益及び費用、持分法による投資損益
当連結会計年度の金融収益及び費用、持分法による投資損益の純額は、3億62百万円の費用(前連結会計年度は3億55百万円の費用)となりました。
⑦ 税引前利益
当連結会計年度の税引前利益は、営業利益の増加等により、前連結会計年度に比べて10億58百万円増加(前連結会計年度比9.4%増)し、122億90百万円となりました。
⑧ 親会社の所有者に帰属する当期利益
当連結会計年度の親会社の所有者に帰属する当期利益は、税引前利益の増加等により、前連結会計年度に比べて1億78百万円増加(前連結会計年度比2.2%増)し、81億81百万円となりました。
(3)財政状態の分析
① 資産の分析
流動資産は、主に営業債権が16億51百万円増加したため、前連結会計年度末より16億75百万円増加し、297億17百万円となりました。
非流動資産は、主に有形固定資産が60億7百万円及びその他の長期金融資産が5億16百万円減少したため、前連結会計年度末より62億67百万円減少し、1,401億4百万円となりました。
これらにより、資産合計は前連結会計年度末より45億92百万円減少し、1,698億21百万円となりました。
② 負債の分析
流動負債は、主に未払法人所得税が9億9百万円及び未払従業員給付が5億49百万円増加しましたが、借入金が134億99百万円減少したため、前連結会計年度末より116億23百万円減少し、457億90百万円となりました。
非流動負債は、その他の長期金融負債が46億92百万円減少しましたが、長期借入金が81億91百万円増加したため、前連結会計年度末より30億86百万円増加し、492億49百万円となりました。
これらにより、負債合計は前連結会計年度末より85億37百万円減少し、950億39百万円となりました。
③ 資本の分析
資本は、主に資本剰余金が42億63百万円減少しましたが、利益剰余金が81億81百万円増加したため、前連結会計年度末より39億45百万円増加し、747億82百万円となりました。
(4)資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当社グループは、資本効率を意識した経営の推進を通じて、持続的な成長及び中長期的な企業価値の向上を目指しております。自己資本利益率(ROE)については、株主資本コストを上回る水準の維持に努めるとともに、収益性の改善及び成長投資の推進を通じて市場評価の改善を図り、株価純資産倍率(PBR)の向上に取り組んでまいります。
また資金需要及び資金調達について、当社グループは事業運営に伴う新規拠点の構築及び設備の更新を継続的に実施しております。これらの資金需要は手許資金で賄うことを基本とし、必要に応じて資金調達を実施いたします。
キャッシュ・フローの状況については、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (2)キャッシュ・フローの状況」をご参照ください。
(5)経営成績に重要な影響を与える要因について
当社グループの主力事業であるCRM事業においては、サービス提供価格の変動と、オペレーター人材の確保及び人件費の変動が、経営成績に重要な影響を与える主要因と認識しております。当社グループを取り巻く事業環境は非常に競争が激しく、昨今の経済状況により、クライアント企業の費用削減傾向が強まる場合には、当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。また、当事業における原価の大部分は、主にオペレーターの人件費であるため、人材不足による採用難や賃金上昇によるオペレーションコストの増加は、当社グループの経営成績に影響を与えます。
対応策といたしましては、当社グループが40年超にわたって築き上げてきた実績と経験を活かして他社との差別化を図り、品質向上及び新しいソリューション提供に努めることで業務の効率化及び売上規模の拡大を実現し、併せて、当社グループのブランド価値向上によりオペレーターの確保及び人件費増に対応する適切な価格設定に努めてまいります。また、AI等新たな技術の活用を強力に推進し、AIとヒトのハイブリッド型CRM事業を早期に実現することで、顧客企業とともに成長できるパートナーへの進化を目指してまいります。
(6)経営戦略の現状と見通し
当社グループが属する派遣売上を加えたコンタクトセンターアウトソーシング市場の総市場規模は1兆円規模で推移しており、2024年度以降は年平均成長率3.5%程度で推移し、2028年度には1兆1,570億円規模に拡大すると推定されております(出典:デロイトトーマツミック経済研究所株式会社「BPO総市場の現状と展望コンタクトセンター&フルフィルメントサービス編2026年版(第19版)」)。
また、AIの活用が社会全体で一般化する中、コンタクトセンターアウトソーシングは単なる問い合わせ対応にとどまらず、応対の自動化・高度化や品質向上に加え、クライアントの収益に貢献する高付加価値サービスの提供が一層重要になっていると考えられます。
こうした中、競合企業は、当該市場において一定のシェアを確保しつつ、IT系BPO事業者との連携や専門性の高い業務への展開を進めております。また、AIやデータ活用により応対の高度化・効率化を図るとともに、コンタクトデータの分析を通じて企業のマーケティング部門へのアプローチを強化する動きがみられます。
当社グループは、これまで培ってきた膨大なデータとメソッド、人財マネジメント力、共創ネットワークをAIにより全方位に拡張し、あらゆるビジネスの進化を通じて差別化を図り、生産年齢人口の減少に伴い拡大するアウトソーシング需要を取り込み、継続的な成長を目指してまいります。
当社グループの強みは、年間約5億件の対話データ、40年超にわたり培った運用メソッド、年間1,500社以上の業務実績、並びに数万人規模の人材育成・運用体制にあります。こうした強みに加え、伊藤忠商事グループ及びTOPPANグループ等をはじめとする多様なパートナーとの営業、事業開発及び先進分野におけるシナジー創出を通じて、クライアント企業と同じ目線で経営課題に取り組み、改善提案を実践するパートナーとして、AI時代の社会的ニーズに応え、さらなる成長を目指してまいります。
(7)経営者の問題意識と今後の方針について
当社グループの経営陣は、現在の事業環境及び入手可能な情報に基づき最善の経営方針を立案するように努めております。当社グループは、主要ビジネスであるCRM事業を中心に、既存クライアントとの取引拡大及び伊藤忠商事グループやTOPPANグループの多様な企業ネットワークを活用した新規クライアント獲得強化による売上規模拡大、及び人件費増に対応する適切な価格設定の実施、業務の効率化及びコストコントロールの徹底による収益性向上との相乗効果により、収益基盤の拡充策を強力に展開してまいります。
株主に対しては、利益還元を最重要課題の一つとして認識しており、剰余金の配当を安定かつ継続的に実施し、業績の進捗状況に応じて配当性向及び必要な内部留保の充実等を総合的に勘案した上で、中期的には親会社所有者に帰属する当期利益をベースに、連結配当性向50%を目標として、中間配当と期末配当の年2回の剰余金の配当を行うことを基本的な方針としております。
また、従業員に対しては、“プロフェッショナル”が集う、“働きがい”のある企業の実現に向けて、新たな人事制度、人材育成施策の導入を段階的に進める他、女性活躍推進を目的とした育成プログラムの実施、企業内保育所の設置、及び教育研修施設の開設等、より多様な働き方を実現する環境整備の取り組みを続けてまいります。これらに加え、D&Iと健康経営の更なる推進を図り、多様な人材の活躍を促進してまいります。
さらに、AI等の新技術を活用した自動化対応への取り組みと人特有のホスピタリティー溢れる価値提供を通じたハイブリッド運用により、クライアントが感動するCXを実現する他、クライアントへの最適なソリューション提供により、クライアント企業の新しいビジネス価値を創造してまいります。
「中期経営計画2028」に掲げたCX高度化とBPO拡大をテーマに、当社グループのデータ・メソッドを、AIにより全方位に進化させた高付加価値サービスの提供、並びに当社グループの強みとパートナー企業の知見・技術を融合し、新たな価値の創出に向け、引き続き事業基盤を強化してまいります。