有価証券報告書-第12期(平成31年1月1日-令和1年12月31日)

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2020/03/27 13:07
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147項目
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりです。
なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものです。
(1) 重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されています。この連結財務諸表の作成に当たって、決算日における資産・負債の報告数値及び報告期間における収益・費用の報告数値に影響を与える見積り及び仮定の設定を行っています。当該見積は、過去の実績や状況に応じて合理的と考えられる各種の要因に関して仮定設定、情報収集を行い、見積金額を算出しておりますが、実際の結果は見積り自体に不確実性があるために、これらの見積りと異なる可能性があります。
当社グループの連結財務諸表の作成にあたって採用している重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項 連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項」に記載しています。
(2) 経営成績等の概況及び経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
① 経営成績
当社グループを取り巻く経営環境につきましては、国内情報サービス業の売上高規模は2018年においては11兆5,838億円(前年比2.3%増加)と7年連続で成長を続けています(経済産業省「特定サービス産業動態統計調査(2019年1月公表)」)。その中でSaaS(Software as a Serviceの略称。月額課金や年額課金の仕組みを取っているウェブサービス)の国内市場規模は、年平均成長率が約12%で拡大しており、2023年には約8,200億円に拡大する見込みです(富士キメラ総研「ソフトウェアビジネス新市場2019年版」)。また、スマートフォンの個人保有率は2018年において64.7%(前年比3.8ポイント増)と普及が進んでいます(総務省「平成30年通信利用動向調査(2019年5月31日公表)」)。更に、モバイル広告の市場規模は2018年において1兆181億円と前年比で122.4%と拡大しています(株式会社D2C、株式会社サイバー・コミュニケーションズ(CCI)、株式会社電通の共同調査「2018年 日本の広告費 インターネット広告媒体費 詳細分析(2019年3月公表)」)。また、米国においては米国内のインターネット広告市場は1,075億米ドル(1ドル113円換算で12兆1,475億円)と前年比で121.8%と拡大しています(PwC及びIABによる共同調査「IAB internet advertising revenue report(2019年5月公表)」)。
このような環境の下、当連結会計年度においては、当社グループの売上高は拡大を続けています。
SPEEDA事業では新規獲得IDの順調な積み上げによりMRR(Monthly Recurring Revenueの略称。継続課金による月次収益で、初期費用等の一時的な売上は含まない)が拡大し、NewsPicks事業では有料課金ユーザー数の増加と、広告売上が堅調に推移したことで売上高が拡大しました。また、第4四半期連結会計期間にアルファドライブ社を子会社化したこと、前第3四半期連結会計期間において買収したQuartz社の売上高が、当連結会計年度においては期首からグループ売上高に寄与したことで、グループ売上高は大幅に増加しました。
なお、既存事業であるSPEEDA事業とNewsPicks事業のEBITDA(営業利益+減価償却費+のれん償却費(以下同様))が拡大する一方、Quartz事業においては、既存事業である広告・ソリューションビジネスから有料課金ビジネスへの転換を進めるために、計画に従った投資を実行したことによって、EBITDAはマイナスとなりました。また、営業損失については、EBITDAのマイナス要因に加え、Quartz社の買収に伴い発生したのれんの償却費が通期で発生したことも影響しています。
その結果、当連結会計年度における売上高は12,521百万円(前年同期比34.1%増加)、EBITDAは△411百万円(前年同期は1,187百万円)、営業損失は1,236百万円(前年同期は営業利益830百万円)、経常損失は1,429百万円(前年同期は経常利益533百万円)となりました。なお、行使されずに消滅した第18回新株予約権について新株予約権戻入益311百万円を計上したこと、及び、法人税等を619百万円計上したこと等により、親会社株主に帰属する当期純損失は1,620百万円(前年同期は親会社株主に帰属する当期純利益610百万円)となりました。
セグメントの業績は次の通りです。
なお、前連結会計年度まで「SPEEDA事業」に含まれていたスタートアップデータベースの「INITIAL(イニシャル、注1)」、B2Bマーケティングプラットフォームの「FORCAS(フォーカス)」等については、第1四半期連結会計期間より、経営管理の観点から「その他事業」の区分を新設し、当該報告セグメントに変更しています。また、前連結会計年度まで「NewsPicks事業」に含まれていた海外メディア事業の「Quartz(クウォーツ)」については、買収後初めて通年で経営管理を行う当連結会計年度より、その重要性から「Quartz事業」の区分を新設し、当該報告セグメントに変更しています。また、第4四半期連結会計期間に子会社化したアルファドライブ社は、事業シナジーの観点から「NewsPicks事業」に含めています。
(注1)2019年11月に、スタートアップデータベースのentrepedia(アントレペディア)は、サービス名称を「INITIAL(イニシャル)」に変更いたしました。
■ SPEEDA事業
SPEEDA事業においては、企業・業界情報プラットフォームである「SPEEDA」の既存顧客による契約ID数の追加及び事業会社による新規導入が進み、契約ID数は堅調に増加しています。第4四半期連結会計期間には、Crunchbase Inc. 及び蘇州朗動網絡科技有限公司と提携し、両社が提供する十数万社のグローバルスタートアップ企業の情報データを拡充し、「SPEEDA」で閲覧・検索することが可能となりました。また、新たな機能として「特許動向検索」をリリースし、経営と技術の戦略的な情報連携における財務データと特許データのクロス分析や、業界と技術の相関分析を「SPEEDA」内で行うことが可能となりました。
その結果、SPEEDA事業の当連結会計年度におけるID数は3,129ID(国内2,750ID、海外379ID)となり、MRRは407百万円となりました。セグメント売上高は4,543百万円(前年同期比25.6%増加)、セグメントEBITDAは1,386百万円(前年同期比64.0%増加)、セグメント利益は1,295百万円(前年同期比67.1%増加)となりました。
なお、前年同期との比較・分析は、変更後の新セグメントに基づいて記載しています(以下、他の事業についても同様です)。
■ NewsPicks事業
NewsPicks事業においては、サービスの知名度の向上、自社によるオリジナルコンテンツや動画コンテンツの配信強化、外部メディアからの優良な記事の配信、当第4四半期連結会計期間より注力した法人向けサービス等を通じて会員ユーザー数(注1)、有料課金ユーザー数(注2)が共に増加しました。その結果、「NewsPicks」の当連結会計年度における会員ユーザー数は4,681千人、有料課金ユーザー数は147,156人、MRRは170百万円となりました。また、当第4四半期連結会計期間においては、広告売上が大きく増加したことに加え、当該期間に子会社化したアルファドライブ社も収益拡大に貢献し、当連結会計年度におけるセグメント売上高は4,190百万円(前年同期比40.4%増加)、セグメントEBITDAは389百万円(前年同期比28.3%増加)、セグメント利益は342百万円(前年同期比19.8%増加)となりました。
(注) 1 会員ユーザー数は、NewsPicksサービスに会員登録(簡易登録含む)しているユーザーの総数(延べ人数ではありません。)を指します。
2 有料課金ユーザー数は、NewsPicksサービスに会員登録しているユーザーのうち、月額有料サービスを利用しているユーザー数(延べ人数ではありません。)及び法人契約を通じてプレミアム会員と同等のサービスを利用するユーザー数を指します。有料課金ユーザーは、プレミアム会員及びアカデミア会員によって構成されます。プレミアム会員とはNewsPicksオリジナル記事や海外の有料媒体の記事等が閲覧でき、アカデミア会員はプレミアム会員のサービス内容に加え、各界著名人による特別講義の受講、NewsPicks選定のアカデミア書籍(毎月1冊)の提供、オンラインでの動画講義(MOOC)等を受けることができます。なお、プレミアム会員は月額1,500円(年割プランは月額1,250円、学割プランは月額500円)、アカデミア会員は月額5,000円です。
※2019年11月以降、Apple Store / Google Play経由でプレミアムプランを新規にお申込みされた方は、月額1,600円となります。
■ Quartz事業
Quartz事業においては、有料課金ビジネスへのシフトを加速させたことにより、既存事業である広告・ソリューションビジネスの売上高に関しては前年比で減少しましたが、事業の構造改革を実施したことによって、損益分岐点は大幅に改善しました。一方で、新規事業である有料課金ビジネスについては順調な立ち上がりを見せており、当第4四半期連結会計期間より、日本市場においても新たにサービスを開始し、購読コンテンツを配信しています。当連結会計年度における有料課金ユーザー数は12,000人を突破し、MRRは11百万円となり、有料課金ユーザー数とMRRが順調に拡大しておりますが、現状は売上高に占める割合は軽微です。
その結果、Quartz事業の当連結会計年度におけるセグメント売上高は2,943百万円、セグメントEBITDAは△2,052百万円、セグメント損失は2,721百万円となりました。
なお、Quartz社については、2018年7月に買収を完了し前第3四半期連結会計期間より連結の範囲に含まれており、当連結会計年度実績と前連結会計年度実績は比較の対象期間が異なるため、前年同期比の記載は行っていません。
■ その他事業
その他事業においては、スタートアップデータベースの「INITIAL(イニシャル)」、B2Bマーケティングプラットフォーム「FORCAS(フォーカス)」の各サービスにおいて順調に顧客獲得が進みました。特に、当連結会計年度においてFORCASのMRRは75百万円まで増加し、売上高の拡大に大きく寄与しました。また、「INITIAL」は2017年1月に買収後、3年後である当連結会計年度において通期黒字化を達成しました。その結果、その他事業の当連結会計年度におけるセグメント売上高は871百万円(前年同期比140.6%増加)、セグメントEBITDAは△127百万円(前年同期は△193百万円)、セグメント損失は146百万円(前年同期はセグメント損失209百万円)となりました。
② 財政状態
(資産の部)
資産合計は、前連結会計年度末と比較して2,154百万円増加し、20,958百万円となりました。これは主に、流動資産において現金及び預金が2,228百万円増加したこと、固定資産において、のれんが償却及び為替換算等により391百万円減少したこと、株式会社UB Venturesの運営するファンドによる投資活動等により投資有価証券が476百万円増加したこと等によるものです。
(負債の部)
負債合計は、前連結会計年度末と比較して1,339百万円増加し、13,826百万円となりました。流動負債においては、1年内返済予定の長期借入金が531百万円増加したこと、SPEEDA事業における売上高成長により前受収益が437百万円増加したこと等により流動負債は1,564百万円増加しました。また、固定負債においては、長期借入金が123百万円減少したこと等により固定負債は225百万円減少しました。
(純資産の部)
純資産合計は、前連結会計年度末と比較して815百万円増加し、7,131百万円となりました。株式会社東京放送ホールディングス等からの第三者割当増資及び従業員のストック・オプションの行使等により資本金が1,364百万円増加、資本剰余金が1,345百万円増加しました。また、親会社株主に帰属する当期純損失1,620百万円を計上したこと、また連結子会社であるNewsPicks USA, LLCの決算期変更に伴う利益剰余金の減少283百万円(注)等により利益剰余金が1,904百万円減少しました。また、連結子会社である株式会社UB Venturesの運営するファンドにおける外部投資家からの払込等により非支配株主持分が811百万円増加しています。
(注)連結子会社であるNewsPicks USA, LLCの決算において、従来9月末を決算基準日として年度決算においてグループ連結に取り込んでおりましたが、前連結会計年度における同社の100%子会社化に伴い、グループ全体の決算期と合わせ、当連結会計年度より決算基準日を12月末に変更し、グループ連結に取り込むことといたしました。これに伴い、2018年10月1日から12月31日における同社の3ヶ月分の当期純損失及びのれん償却費については、当連結会計年度において、連結株主資本等変動計算書の利益剰余金の減少項目として調整しています。
③ キャッシュ・フロー
当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は前連結会計年度末と比べ2,228百万円増加し、7,954百万円となりました。当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次の通りです。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動によるキャッシュ・フローは、60百万円の収入(前年同期は145百万円の収入)となりました。これは主に、税金等調整前当期純損失1,130百万円を計上した一方、のれん償却額632百万円を計上したこと、また債権の回収が進んだこと等により売上債権が565百万円減少したこと、前受収益が437百万円増加したこと等によるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動によるキャッシュ・フローは、851百万円の支出(前年同期は6,592百万円の支出)となりました。主に、株式会社UB Venturesの運営するファンドによる投資有価証券の取得による支出473百万円、アルファドライブ社の連結子会社化に伴い連結の範囲の変更を伴う子会社株式の取得による支出43百万円によるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動によるキャッシュ・フローは、3,282百万円の収入(前年同期は8,968百万円の収入)となりました。主に、リファイナンス等に伴い長期借入れによる収入6,500百万円及び長期借入金の返済による支出6,092百万円、株式会社東京放送ホールディングスとの業務提携に伴う第三者割当増資等により株式の発行による収入2,077百万円によるものです。
(3) 生産、受注及び販売の実績
① 生産実績
生産に該当する事項がないため、生産実績に関する記載はしておりません。
② 受注実績
受注生産を行っていないため、受注実績に関する記載はしておりません。なお、NewsPicks事業及びQuartz事業における広告サービスにおいて受注はありますが、受注から役務提供までの期間が短いため、受注状況に関する記載を省略しています。
③ 販売実績
当連結会計年度におけるセグメントごとの販売実績は、次のとおりです。
セグメントの名称金額(百万円)前年同期比(%)
SPEEDA事業4,530125.5
NewsPicks事業4,177141.0
Quartz事業2,942121.9
その他事業870246.6
合計12,521134.1

(注)1 セグメント間取引は相殺消去しています。
2 上記の金額には、消費税等は含まれていません。
3 前連結会計年度及び当連結会計年度の主な相手先別販売実績及び当該販売実績に対する割合については、その割合が100分の10以上に該当する相手先がないため、記載を省略しています。
(4) 資本の財源及び資金の流動性についての分析
当連結会計年度におけるキャッシュ・フローの状況の分析については、「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況分析 (2) 経営成績等の概況及び経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容 ③キャッシュ・フロー」に記載しています。
当社グループにおける各事業はシステムを利用したプラットフォームサービスの提供を主としており、多額の設備投資などは必要とせず、主たる資金需要は人件費や広告宣伝費などの運転資金です。収益基盤の確立した既存ビジネスの獲得するキャッシュ・フローを原資に、新規に開始するビジネスの運転資金を賄うことを基本方針としていますが、足元における米国事業の成長投資資金については、既存ビジネスによる獲得資金に加え、金融機関からの借入によって賄っています。
当連結会計年度においては、2018年7月末のQuartz社買収時に金融機関より調達した既存借入金5,500百万円を対象とした借入期間を大幅に伸長するリファイナンス(借換)を実施しました。また、2019年12月には事業成長資金の確保並びに財務基盤の強化等を目的として、株式会社東京放送ホールディングスを割当先とした第三者割当を行い、1,999百万円の資本調達を実施しました。
(5) 経営成績に重要な影響を与える要因について
当社グループの将来の財政状態及び経営成績に重要な影響を与えるリスク要因については、「第2 事業の状況 2 事業等のリスク」に記載しています。
(6) 経営戦略の現状と見通し
経営戦略の現状と見通しについては、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載しています。
(7) 経営者の問題認識と今後の方針について
当社グループが今後業容を拡大し、より高品質なサービスを継続的に提供していくためには、経営者は「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載の課題に対処していく必要があると認識しています。それらの課題に対応するため、経営者は常に市場におけるニーズや事業環境の変化に関する情報の入手及び分析を行い、現在及び将来における事業環境を認識したうえで、当社グループの経営資源を最適に配分し、最適な解決策を実施していく方針です。