有価証券報告書-第11期(平成30年1月1日-平成30年12月31日)
(1) 経営成績等の状況の概要
① 財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度における我が国経済は、人手不足を背景とした省力化投資が活発化しており、緩やかな景気回復となりました。夏季から初秋にかけては豪雨や地震、台風など自然災害の影響で、一部製造業の生産ラインが停止するなど短期的に国内経済が停滞しましたが、その後は力強い回復が見られました。他方、世界経済は米中貿易戦争や原油価格高騰などの影響が見られたものの、グローバル経済をけん引する米国経済と中国経済は底堅く推移しております。米国は雇用の改善や減税政策が所得の増加に繋がり、個人消費は堅調に推移しております。中国の成長スピードは鈍化しているものの、内需拡大を国策に掲げ、新たな経済段階へと向かっております。
当社グループを取り巻く経営環境につきましては、国内情報サービス業の売上高規模は平成30年においては11兆5,183億円(前年比1.7%増加)と7年連続で成長を続けております(経済産業省「特定サービス産業動態統計調査(平成31年1月公表)」)。また、スマートフォンの個人保有率は平成29年において60.9%(前年比4.1ポイント増)と普及が進んでいます(総務省「平成29年通信利用動向調査(平成30年6月公表)」)。更に、モバイル広告の市場規模は平成30年において1兆181億円と前年比で122.4%と拡大しています(株式会社D2C、株式会社サイバー・コミュニケーションズ(CCI)、株式会社電通の共同調査「2018年 日本の広告費 インターネット広告媒体費 詳細分析(平成31年3月公表)」)。また、米国においては米国内のインターネット広告市場は880億米ドル(1ドル113円換算で9兆9,940億円)と前年比で121.4%と拡大しています(PwC及びIABによる共同調査「IAB internet advertising revenue report(平成30年5月公表)」)。
このような環境の下、当社グループの当連結会計年度の状況といたしまして、既存事業の売上高が引き続き堅調に推移したことに加え、平成30年7月に買収した米国のQuartz社が連結範囲に含まれたことにより事業規模が拡大いたしました。その結果、売上高は9,340,256千円(前年同期比104.6%増加)と大幅に増加いたしました。また、既存事業において堅調に収益を獲得したこと、米国事業については季節的変動の影響が大きく、第4四半期における売上高が年間売上高の大きな割合を占めますが、当該売上が想定通り獲得されたことにより収益獲得に寄与し、EBITDAは1,187,676千円(前年同期比99.5%増加)、営業利益は830,237千円(前年同期比52.1%増加)となりました。また、NewsPicks USA, LLC(以下「NewsPicks USA社」という。)における先行投資による持分法投資損失の影響などにより、経常利益は533,402千円(前年同期比2.9%増加)、Quartz社の買収に要した買収関連費用の特別損失を計上する一方、これまで持分法適用会社であったNewsPicks USA, LLCの完全子会社化に伴い、特別利益として段階取得に係る差益を計上した影響などにより、親会社株主に帰属する当期純利益は610,932千円(前年同期比39.5%増加)となりました。
なお、資産・負債・純資産のいずれも、上述の買収を主要因として増加しており、前連結会計年度末に比べ、資産は14,405,380千円増加し、18,814,088千円に、負債は9,908,382千円増加し、12,497,647千円に、純資産は4,496,998千円増加し、6,316,440千円となりました。
各セグメントの業績は、次の通りです。なお、売上高はセグメント間の内部売上高を含めております。
■「SPEEDA」事業
「SPEEDA」サービスの既存顧客による契約IDの追加及び事業会社による新規導入を中心に、国内外において販売が堅調に推移し、当連結会計年度末におけるID数は2,571ID(国内2,276ID、海外295ID)となり、当サービスにおいて増収増益を達成しております。
また、投資フェーズである「entrepedia」「FORCAS」においては、計画通り成長のための先行投資が進みました。
以上の結果、当該事業の当連結会計年度におけるセグメント売上高は3,963,979千円(前年同期比36.5%増加)、セグメント利益は565,768千円(前年同期比36.2%増加)となりました。
■「NewsPicks」事業
「NewsPicks」サービスにおいては、知名度の向上、自社によるオリジナル記事、動画コンテンツや外部メディアからの優良な記事の配信を通じて会員ユーザー数(注1)、有料課金ユーザー数(注2)共に順調に増加し、有料課金売上が増加いたしました。また、スマートフォン向けの広告に対する需要も高く、広告売上も増加しました。「NewsPicks」サービスの当連結会計年度末における会員ユーザー数は3,801千人、有料課金ユーザー数は95,268人となり、増収増益を達成しております。
また、第3四半期連結会計期間よりQuartz社が「NewsPicks」事業に含まれております。買収後における統合作業は順調に進み、第4四半期連結会計期間において想定通りに広告売上の獲得が進みました。また同社の買収に伴って発生したのれんの償却費を計上しております。
以上の結果、当該事業の当連結会計年度におけるセグメント売上高は5,397,877千円(前年同期比224.8%増加)、セグメント利益は264,557千円(前年同期比102.4%増加)となりました。
(注) 1.会員ユーザー数は、「NewsPicks」サービスに会員登録(簡易登録含む)しているユーザーの総数(延べ人数ではありません。)を指します。
2.有料課金ユーザー数は、「NewsPicks」サービスに会員登録しているユーザーのうち、月額有料サービスを利用しているユーザー数(延べ人数ではありません。)を指し、プレミアム会員及びアカデミア会員によって構成されます。プレミアム会員とは「NewsPicks」オリジナル記事や海外の有料媒体の記事等が閲覧でき、アカデミア会員はプレミアム会員のサービス内容に加え、各界著名人による特別講義の受講、「NewsPicks」選定のアカデミア書籍(毎月1冊)の提供、オンラインでの動画講義(MOOC)等を受けることができます。なお、プレミアム会員はiOS月額1,400円又はiOS以外のプラットフォーム月額1,500円(学割プランは月額500円)、アカデミア会員は月額5,000円です。
3.前連結会計年度において開始したアカデミアプランは、開始初年度における立上がりの状況を開示する目的で会員数を開示してまいりましたが、当第1四半期連結会計期間より非開示としております。当連結会計年度に開始したアカデミアゼミ(一定期間において少人数形式で講義を受講できるプラン)や平成31年1月開始のオンラインでの動画講義(MOOC)等、コミュニティ形成に資する多様なプランを検討しており、アカデミアプランは当該一施策として継続し、引き続き会員数の拡大を図ってまいりたいと考えております。
② キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は前連結会計年度末と比べ2,508,388千円増加し、5,725,643千円となりました。当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動によるキャッシュ・フローは、145,939千円の収入(前年同期は817,707千円の収入)となりました。これは主に、税金等調整前当期純利益888,052千円、のれん償却額239,401千円が計上され、成長に伴う事業規模拡大により未払金が227,104千円、前受収益が272,481千円増加した一方で、これまで持分法適用会社であったNewsPicks USA, LLCの完全子会社化に伴い、段階取得に係る差益が589,296千円計上されたこと、Quartz Media社買収を主要因として売掛債権が1,214,019千円増加したこと等によるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動によるキャッシュ・フローは、6,592,165千円の支出(前年同期は547,685千円の支出)となりました。これは、NewsPicks USA, LLCの完全子会社化に伴う株式取得を主要因として連結の範囲の変更を伴う子会社株式の取得による支出5,873,233千円があったこと、完全子会社化前におけるNewsPicks USA, LLCへの追加投資を主要因として関係会社株式の取得による支出293,012千円があったこと、本社移転を主要因として有形固定資産の取得による支出279,964千円があったこと、株式会社UB Venturesの運営するファンドによる投資活動を主要因として投資有価証券の取得による支出218,011千円があったこと等によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動によるキャッシュ・フローは、8,968,011千円の収入(前年同期は152,126千円の支出)となりました。これは主に、Quartz社買収に際して実施した資金調達及び成長投資資金等を目的として長期借入による収入8,290,000千円、社債の発行による収入510,000千円があったこと等によるものであります。
(2) 生産、受注及び販売の実績
① 生産実績
生産に該当する事項がないため、生産実績に関する記載はしておりません。
② 受注実績
受注生産を行っていないため、受注実績に関する記載はしておりません。また、「NewsPicks」事業における広告サービスにおいて受注はありますが、受注から役務提供までの期間が短いため、受注状況に関する記載を省略しております。
③ 販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 1.セグメント間取引については相殺消去しております。
2.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
3.前連結会計年度及び当連結会計年度の主な相手先別販売実績及び当該販売実績に対する割合については、その割合が100分の10以上に該当する相手先がないため、記載を省略しております。
(3) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析は以下のとおりであります。文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものであります。
① 重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成に当たって、決算日における資産・負債の報告数値及び報告期間における収益・費用の報告数値に影響を与える見積り及び仮定の設定を行っております。当該見積りにつきましては、過去の実績や状況に応じて合理的と考えられる各種の要因に関して仮定設定、情報収集を行い、見積金額を算出しておりますが、実際の結果は見積り自体に不確実性があるために、これらの見積りと異なる可能性があります。
当社グループの連結財務諸表の作成にあたって採用している重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項」に記載しております。
② 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
(売上高)
当連結会計年度の売上高は、前連結会計年度に比較して4,774,358千円増加し、9,340,256千円となりました。グループ売上高が増加した背景としては「SPEEDA」事業、「NewsPicks」事業における既存サービスの売上高が堅調に推移したこと、Quartz社の買収により事業規模が拡大したことが挙げられます。「SPEEDA」事業については国内外のID獲得が堅調に推移し月額利用料による売上高が増加したこと、「NewsPicks」事業については、有料会員数の堅調な推移に伴う有料課金売上の増加に加え、スマートフォン向け広告の高い需要及び「NewsPicks」の媒体としての知名度向上を背景に広告売上が拡大致しました。また、Quartz社については、買収後における統合作業が順調に進み、想定通りに広告売上の獲得が進みました。
(売上原価、売上総利益)
当連結会計年度の売上原価は、前連結会計年度に比較して1,476,275千円増加し、3,567,949千円となりました。これは主に、「SPEEDA」、「entrepedia」及び「FORCAS」の開発・運営費用並びに「NewsPicks」「Quartz」の編集に係る人件費・外注費が増加したことによるものであります。
以上の結果、当連結会計年度の売上総利益は、前連結会計年度に比較して3,298,082千円増加し、5,772,306千円となりました。
(販売費及び一般管理費、営業損益)
当連結会計年度の販売費及び一般管理費は、前連結会計年度に比較して3,013,829千円増加し、4,942,069千円となりました。これは主に、Quartz社買収に伴い販売費及び一般管理費の総額が増加したこと、「SPEEDA」事業及び「NewsPicks」国内事業について事業規模が拡大し、人件費、広告宣伝費等が増加したこと、また国内本社のオフィス移転により支払家賃が増加したこと等によるものであります。
以上の結果、当連結会計年度の営業利益は、前連結会計年度に比較して284,253千円増加し、830,237千円となりました。
(営業外損益、経常損益)
当連結会計年度の営業外収益は、前連結会計年度に比較して3,980千円増加し、15,221千円となりました。また当連結会計年度の営業外費用は、前連結会計年度に比較して273,286千円増加し、312,056千円となりました。営業外費用については、創業2年目となるDow Jones社との合弁会社NewsPicks USA, LLCの人件費及び広告宣伝費拡大を主要因として、持分法による投資損失が増加したことなどが増加要因として挙げられます。
以上の結果、当連結会計年度の経常利益は、前連結会計年度に比較して14,947千円増加し、533,402千円となりました。
(注)「第2 事業の状況 4 経営上の重要な契約等 NewsPicks USA社の完全子会社化」に記載の通り、平成30年10月において、同社を完全子会社化しております。
(特別損益、親会社株主に帰属する当期純利益)
当連結会計年度の特別利益は、前連結会計年度に比較して634,672千円増加し、635,355千円となりました。これは主に、NewsPicks USA, LLCの完全子会社化に伴い、同社株式の段階取得に係る差益589,296千円が発生したことによるものです。
この結果、税金等調整前当期純利益は、前連結会計年度に比較して368,913千円増加し、888,052千円となり、親会社株主に帰属する当期純利益は、前連結会計年度に比較して172,898千円増加し、610,932千円となりました。
③ 財政状態の分析
(資産の部)
資産合計は、前連結会計年度末と比較して14,405,380千円増加し、18,814,088千円となりました。これは、流動資産が4,887,142千円増加したこと、無形固定資産が9,164,390千円増加したことによるものであります。流動資産の増加は、主に成長投資資金等の目的で資金調達を実施したこと等に伴い現金及び預金が2,508,388千円増加、Quartz社の買収による子会社化等により受取手形及び売掛金が増加したことによるものであります。固定資産の増加は、主にQuartz社の買収、NewsPicks USA, LLCの完全子会社化により、のれんが9,144,195千円増加したこと、株式会社UB Venturesの運営するファンドによる投資活動等により投資有価証券が216,539千円増加したことによるものであります。
(負債の部)
負債合計は、前連結会計年度末と比較して9,908,382千円増加し、12,497,647千円となりました。これは、流動負債が2,033,841千円増加したこと、固定負債が7,874,541千円増加したことによるものであります。流動負債の増加は、調達による有利子負債増加に伴い1年内償還予定の社債が102,000千円増加、1年内返済予定の長期借入金が390,009千円増加したこと、既存ビジネスの成長及びM&Aによる資産及び負債の取込により未払金が493,817千円増加、未払費用が252,600千円増加したこと、SPEEDA事業における売上高成長により前受収益が271,274千円増加したこと、固定負債の増加は、調達による有利子負債増加に伴い社債が378,000千円増加、長期借入金が7,447,430千円増加したことによるものであります。
(純資産の部)
純資産合計は、前連結会計年度末と比較して4,496,998千円増加し、6,316,440千円となりました。これは主に、Quartz社の買収に際しての株式発行等により資本金が1,402,669千円、資本剰余金が1,492,449千円増加したこと、親会社株主に帰属する当期純利益の計上に伴い利益剰余金が610,932千円増加したことによるものであります。
④ 資本の財源及び資金の流動性についての分析
当連結会計年度におけるキャッシュ・フローの状況の分析については、「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ② キャッシュ・フローの状況」に記載しております。
当社グループにおける各事業はシステムを利用したプラットフォームサービスの提供を主としており、多額の設備投資などは必要とせず、主たる資金需要は人件費や広告宣伝費などの運転資金となっております。収益基盤の確立した既存ビジネスの獲得するキャッシュ・フローを原資に、新規に開始するビジネスの運転資金を賄うことを基本方針としておりますが、足元における米国事業の成長投資資金については、既存ビジネスによる獲得資金に加え、金融機関からの借入によって賄っております。
当連結会計年度においては、Quartz社買収に係る取得対価の一部である現金対価50百万米ドルについて金融機関から借入による調達を実施しました。当社と致しましては、財務基盤の充実が重要であると考えておます。当該買収と同時に自己資本を増強することを目的に、第三者割当による新株予約権の発行による資金調達を行うこととしましたが、株価動向によっては新株予約権の行使が進まない可能性や当初想定していた資金調達に時間を要する可能性があります。そのような場合は、その時点における金融環境、当社の事業環境及び財務状況に鑑みて、別途の手段による資金調達も選択肢として検討してまいります。
⑤ 経営成績に重要な影響を与える要因について
当社グループの将来の財政状態及び経営成績に重要な影響を与えるリスク要因については、「第2 事業の状況 2 事業等のリスク」に記載しております。
⑥ 経営戦略の現状と見通し
経営戦略の現状と見通しについては、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載しております。
⑦ 経営者の問題認識と今後の方針について
当社グループが今後業容を拡大し、より高品質なサービスを継続的に提供していくためには、経営者は「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載の課題に対処していく必要があると認識しております。それらの課題に対応するため、経営者は常に市場におけるニーズや事業環境の変化に関する情報の入手及び分析を行い、現在及び将来における事業環境を認識したうえで、当社グループの経営資源を最適に配分し、最適な解決策を実施していく方針であります。
① 財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度における我が国経済は、人手不足を背景とした省力化投資が活発化しており、緩やかな景気回復となりました。夏季から初秋にかけては豪雨や地震、台風など自然災害の影響で、一部製造業の生産ラインが停止するなど短期的に国内経済が停滞しましたが、その後は力強い回復が見られました。他方、世界経済は米中貿易戦争や原油価格高騰などの影響が見られたものの、グローバル経済をけん引する米国経済と中国経済は底堅く推移しております。米国は雇用の改善や減税政策が所得の増加に繋がり、個人消費は堅調に推移しております。中国の成長スピードは鈍化しているものの、内需拡大を国策に掲げ、新たな経済段階へと向かっております。
当社グループを取り巻く経営環境につきましては、国内情報サービス業の売上高規模は平成30年においては11兆5,183億円(前年比1.7%増加)と7年連続で成長を続けております(経済産業省「特定サービス産業動態統計調査(平成31年1月公表)」)。また、スマートフォンの個人保有率は平成29年において60.9%(前年比4.1ポイント増)と普及が進んでいます(総務省「平成29年通信利用動向調査(平成30年6月公表)」)。更に、モバイル広告の市場規模は平成30年において1兆181億円と前年比で122.4%と拡大しています(株式会社D2C、株式会社サイバー・コミュニケーションズ(CCI)、株式会社電通の共同調査「2018年 日本の広告費 インターネット広告媒体費 詳細分析(平成31年3月公表)」)。また、米国においては米国内のインターネット広告市場は880億米ドル(1ドル113円換算で9兆9,940億円)と前年比で121.4%と拡大しています(PwC及びIABによる共同調査「IAB internet advertising revenue report(平成30年5月公表)」)。
このような環境の下、当社グループの当連結会計年度の状況といたしまして、既存事業の売上高が引き続き堅調に推移したことに加え、平成30年7月に買収した米国のQuartz社が連結範囲に含まれたことにより事業規模が拡大いたしました。その結果、売上高は9,340,256千円(前年同期比104.6%増加)と大幅に増加いたしました。また、既存事業において堅調に収益を獲得したこと、米国事業については季節的変動の影響が大きく、第4四半期における売上高が年間売上高の大きな割合を占めますが、当該売上が想定通り獲得されたことにより収益獲得に寄与し、EBITDAは1,187,676千円(前年同期比99.5%増加)、営業利益は830,237千円(前年同期比52.1%増加)となりました。また、NewsPicks USA, LLC(以下「NewsPicks USA社」という。)における先行投資による持分法投資損失の影響などにより、経常利益は533,402千円(前年同期比2.9%増加)、Quartz社の買収に要した買収関連費用の特別損失を計上する一方、これまで持分法適用会社であったNewsPicks USA, LLCの完全子会社化に伴い、特別利益として段階取得に係る差益を計上した影響などにより、親会社株主に帰属する当期純利益は610,932千円(前年同期比39.5%増加)となりました。
なお、資産・負債・純資産のいずれも、上述の買収を主要因として増加しており、前連結会計年度末に比べ、資産は14,405,380千円増加し、18,814,088千円に、負債は9,908,382千円増加し、12,497,647千円に、純資産は4,496,998千円増加し、6,316,440千円となりました。
各セグメントの業績は、次の通りです。なお、売上高はセグメント間の内部売上高を含めております。
■「SPEEDA」事業
「SPEEDA」サービスの既存顧客による契約IDの追加及び事業会社による新規導入を中心に、国内外において販売が堅調に推移し、当連結会計年度末におけるID数は2,571ID(国内2,276ID、海外295ID)となり、当サービスにおいて増収増益を達成しております。
また、投資フェーズである「entrepedia」「FORCAS」においては、計画通り成長のための先行投資が進みました。
以上の結果、当該事業の当連結会計年度におけるセグメント売上高は3,963,979千円(前年同期比36.5%増加)、セグメント利益は565,768千円(前年同期比36.2%増加)となりました。
■「NewsPicks」事業
「NewsPicks」サービスにおいては、知名度の向上、自社によるオリジナル記事、動画コンテンツや外部メディアからの優良な記事の配信を通じて会員ユーザー数(注1)、有料課金ユーザー数(注2)共に順調に増加し、有料課金売上が増加いたしました。また、スマートフォン向けの広告に対する需要も高く、広告売上も増加しました。「NewsPicks」サービスの当連結会計年度末における会員ユーザー数は3,801千人、有料課金ユーザー数は95,268人となり、増収増益を達成しております。
また、第3四半期連結会計期間よりQuartz社が「NewsPicks」事業に含まれております。買収後における統合作業は順調に進み、第4四半期連結会計期間において想定通りに広告売上の獲得が進みました。また同社の買収に伴って発生したのれんの償却費を計上しております。
以上の結果、当該事業の当連結会計年度におけるセグメント売上高は5,397,877千円(前年同期比224.8%増加)、セグメント利益は264,557千円(前年同期比102.4%増加)となりました。
(注) 1.会員ユーザー数は、「NewsPicks」サービスに会員登録(簡易登録含む)しているユーザーの総数(延べ人数ではありません。)を指します。
2.有料課金ユーザー数は、「NewsPicks」サービスに会員登録しているユーザーのうち、月額有料サービスを利用しているユーザー数(延べ人数ではありません。)を指し、プレミアム会員及びアカデミア会員によって構成されます。プレミアム会員とは「NewsPicks」オリジナル記事や海外の有料媒体の記事等が閲覧でき、アカデミア会員はプレミアム会員のサービス内容に加え、各界著名人による特別講義の受講、「NewsPicks」選定のアカデミア書籍(毎月1冊)の提供、オンラインでの動画講義(MOOC)等を受けることができます。なお、プレミアム会員はiOS月額1,400円又はiOS以外のプラットフォーム月額1,500円(学割プランは月額500円)、アカデミア会員は月額5,000円です。
3.前連結会計年度において開始したアカデミアプランは、開始初年度における立上がりの状況を開示する目的で会員数を開示してまいりましたが、当第1四半期連結会計期間より非開示としております。当連結会計年度に開始したアカデミアゼミ(一定期間において少人数形式で講義を受講できるプラン)や平成31年1月開始のオンラインでの動画講義(MOOC)等、コミュニティ形成に資する多様なプランを検討しており、アカデミアプランは当該一施策として継続し、引き続き会員数の拡大を図ってまいりたいと考えております。
② キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は前連結会計年度末と比べ2,508,388千円増加し、5,725,643千円となりました。当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動によるキャッシュ・フローは、145,939千円の収入(前年同期は817,707千円の収入)となりました。これは主に、税金等調整前当期純利益888,052千円、のれん償却額239,401千円が計上され、成長に伴う事業規模拡大により未払金が227,104千円、前受収益が272,481千円増加した一方で、これまで持分法適用会社であったNewsPicks USA, LLCの完全子会社化に伴い、段階取得に係る差益が589,296千円計上されたこと、Quartz Media社買収を主要因として売掛債権が1,214,019千円増加したこと等によるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動によるキャッシュ・フローは、6,592,165千円の支出(前年同期は547,685千円の支出)となりました。これは、NewsPicks USA, LLCの完全子会社化に伴う株式取得を主要因として連結の範囲の変更を伴う子会社株式の取得による支出5,873,233千円があったこと、完全子会社化前におけるNewsPicks USA, LLCへの追加投資を主要因として関係会社株式の取得による支出293,012千円があったこと、本社移転を主要因として有形固定資産の取得による支出279,964千円があったこと、株式会社UB Venturesの運営するファンドによる投資活動を主要因として投資有価証券の取得による支出218,011千円があったこと等によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動によるキャッシュ・フローは、8,968,011千円の収入(前年同期は152,126千円の支出)となりました。これは主に、Quartz社買収に際して実施した資金調達及び成長投資資金等を目的として長期借入による収入8,290,000千円、社債の発行による収入510,000千円があったこと等によるものであります。
(2) 生産、受注及び販売の実績
① 生産実績
生産に該当する事項がないため、生産実績に関する記載はしておりません。
② 受注実績
受注生産を行っていないため、受注実績に関する記載はしておりません。また、「NewsPicks」事業における広告サービスにおいて受注はありますが、受注から役務提供までの期間が短いため、受注状況に関する記載を省略しております。
③ 販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称 | 金額(千円) | 前年同期比(%) |
「SPEEDA」事業 | 3,963,979 | 136.5 |
「NewsPicks」事業 | 5,376,277 | 323.6 |
合計 | 9,340,256 | 204.6 |
(注) 1.セグメント間取引については相殺消去しております。
2.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
3.前連結会計年度及び当連結会計年度の主な相手先別販売実績及び当該販売実績に対する割合については、その割合が100分の10以上に該当する相手先がないため、記載を省略しております。
(3) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析は以下のとおりであります。文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものであります。
① 重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成に当たって、決算日における資産・負債の報告数値及び報告期間における収益・費用の報告数値に影響を与える見積り及び仮定の設定を行っております。当該見積りにつきましては、過去の実績や状況に応じて合理的と考えられる各種の要因に関して仮定設定、情報収集を行い、見積金額を算出しておりますが、実際の結果は見積り自体に不確実性があるために、これらの見積りと異なる可能性があります。
当社グループの連結財務諸表の作成にあたって採用している重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項」に記載しております。
② 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
(売上高)
当連結会計年度の売上高は、前連結会計年度に比較して4,774,358千円増加し、9,340,256千円となりました。グループ売上高が増加した背景としては「SPEEDA」事業、「NewsPicks」事業における既存サービスの売上高が堅調に推移したこと、Quartz社の買収により事業規模が拡大したことが挙げられます。「SPEEDA」事業については国内外のID獲得が堅調に推移し月額利用料による売上高が増加したこと、「NewsPicks」事業については、有料会員数の堅調な推移に伴う有料課金売上の増加に加え、スマートフォン向け広告の高い需要及び「NewsPicks」の媒体としての知名度向上を背景に広告売上が拡大致しました。また、Quartz社については、買収後における統合作業が順調に進み、想定通りに広告売上の獲得が進みました。
(売上原価、売上総利益)
当連結会計年度の売上原価は、前連結会計年度に比較して1,476,275千円増加し、3,567,949千円となりました。これは主に、「SPEEDA」、「entrepedia」及び「FORCAS」の開発・運営費用並びに「NewsPicks」「Quartz」の編集に係る人件費・外注費が増加したことによるものであります。
以上の結果、当連結会計年度の売上総利益は、前連結会計年度に比較して3,298,082千円増加し、5,772,306千円となりました。
(販売費及び一般管理費、営業損益)
当連結会計年度の販売費及び一般管理費は、前連結会計年度に比較して3,013,829千円増加し、4,942,069千円となりました。これは主に、Quartz社買収に伴い販売費及び一般管理費の総額が増加したこと、「SPEEDA」事業及び「NewsPicks」国内事業について事業規模が拡大し、人件費、広告宣伝費等が増加したこと、また国内本社のオフィス移転により支払家賃が増加したこと等によるものであります。
以上の結果、当連結会計年度の営業利益は、前連結会計年度に比較して284,253千円増加し、830,237千円となりました。
(営業外損益、経常損益)
当連結会計年度の営業外収益は、前連結会計年度に比較して3,980千円増加し、15,221千円となりました。また当連結会計年度の営業外費用は、前連結会計年度に比較して273,286千円増加し、312,056千円となりました。営業外費用については、創業2年目となるDow Jones社との合弁会社NewsPicks USA, LLCの人件費及び広告宣伝費拡大を主要因として、持分法による投資損失が増加したことなどが増加要因として挙げられます。
以上の結果、当連結会計年度の経常利益は、前連結会計年度に比較して14,947千円増加し、533,402千円となりました。
(注)「第2 事業の状況 4 経営上の重要な契約等 NewsPicks USA社の完全子会社化」に記載の通り、平成30年10月において、同社を完全子会社化しております。
(特別損益、親会社株主に帰属する当期純利益)
当連結会計年度の特別利益は、前連結会計年度に比較して634,672千円増加し、635,355千円となりました。これは主に、NewsPicks USA, LLCの完全子会社化に伴い、同社株式の段階取得に係る差益589,296千円が発生したことによるものです。
この結果、税金等調整前当期純利益は、前連結会計年度に比較して368,913千円増加し、888,052千円となり、親会社株主に帰属する当期純利益は、前連結会計年度に比較して172,898千円増加し、610,932千円となりました。
③ 財政状態の分析
(資産の部)
資産合計は、前連結会計年度末と比較して14,405,380千円増加し、18,814,088千円となりました。これは、流動資産が4,887,142千円増加したこと、無形固定資産が9,164,390千円増加したことによるものであります。流動資産の増加は、主に成長投資資金等の目的で資金調達を実施したこと等に伴い現金及び預金が2,508,388千円増加、Quartz社の買収による子会社化等により受取手形及び売掛金が増加したことによるものであります。固定資産の増加は、主にQuartz社の買収、NewsPicks USA, LLCの完全子会社化により、のれんが9,144,195千円増加したこと、株式会社UB Venturesの運営するファンドによる投資活動等により投資有価証券が216,539千円増加したことによるものであります。
(負債の部)
負債合計は、前連結会計年度末と比較して9,908,382千円増加し、12,497,647千円となりました。これは、流動負債が2,033,841千円増加したこと、固定負債が7,874,541千円増加したことによるものであります。流動負債の増加は、調達による有利子負債増加に伴い1年内償還予定の社債が102,000千円増加、1年内返済予定の長期借入金が390,009千円増加したこと、既存ビジネスの成長及びM&Aによる資産及び負債の取込により未払金が493,817千円増加、未払費用が252,600千円増加したこと、SPEEDA事業における売上高成長により前受収益が271,274千円増加したこと、固定負債の増加は、調達による有利子負債増加に伴い社債が378,000千円増加、長期借入金が7,447,430千円増加したことによるものであります。
(純資産の部)
純資産合計は、前連結会計年度末と比較して4,496,998千円増加し、6,316,440千円となりました。これは主に、Quartz社の買収に際しての株式発行等により資本金が1,402,669千円、資本剰余金が1,492,449千円増加したこと、親会社株主に帰属する当期純利益の計上に伴い利益剰余金が610,932千円増加したことによるものであります。
④ 資本の財源及び資金の流動性についての分析
当連結会計年度におけるキャッシュ・フローの状況の分析については、「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ② キャッシュ・フローの状況」に記載しております。
当社グループにおける各事業はシステムを利用したプラットフォームサービスの提供を主としており、多額の設備投資などは必要とせず、主たる資金需要は人件費や広告宣伝費などの運転資金となっております。収益基盤の確立した既存ビジネスの獲得するキャッシュ・フローを原資に、新規に開始するビジネスの運転資金を賄うことを基本方針としておりますが、足元における米国事業の成長投資資金については、既存ビジネスによる獲得資金に加え、金融機関からの借入によって賄っております。
当連結会計年度においては、Quartz社買収に係る取得対価の一部である現金対価50百万米ドルについて金融機関から借入による調達を実施しました。当社と致しましては、財務基盤の充実が重要であると考えておます。当該買収と同時に自己資本を増強することを目的に、第三者割当による新株予約権の発行による資金調達を行うこととしましたが、株価動向によっては新株予約権の行使が進まない可能性や当初想定していた資金調達に時間を要する可能性があります。そのような場合は、その時点における金融環境、当社の事業環境及び財務状況に鑑みて、別途の手段による資金調達も選択肢として検討してまいります。
⑤ 経営成績に重要な影響を与える要因について
当社グループの将来の財政状態及び経営成績に重要な影響を与えるリスク要因については、「第2 事業の状況 2 事業等のリスク」に記載しております。
⑥ 経営戦略の現状と見通し
経営戦略の現状と見通しについては、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載しております。
⑦ 経営者の問題認識と今後の方針について
当社グループが今後業容を拡大し、より高品質なサービスを継続的に提供していくためには、経営者は「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載の課題に対処していく必要があると認識しております。それらの課題に対応するため、経営者は常に市場におけるニーズや事業環境の変化に関する情報の入手及び分析を行い、現在及び将来における事業環境を認識したうえで、当社グループの経営資源を最適に配分し、最適な解決策を実施していく方針であります。