有価証券報告書-第7期(令和2年4月1日-令和3年3月31日)
(1) 分析の前提
財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析は、当社グループの連結財務諸表に基づいて実施されております。当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。
連結財務諸表の作成にあたっては一部に見積りによる金額を含んでおりますが、見積りにつきましては、過去実績や状況に応じ合理的と考えられる要因等に基づいており、妥当性についての継続的な評価を行っています。しかしながら、見積り特有の不確実性があるため、実際の結果はこれらの見積りと異なる場合があります。連結財務諸表に影響を与え、より重要な経営判断や見積りを必要とする会計方針は以下のとおりであります。
a. 貸倒引当金
債権の貸倒による損失に備えるため、一般債権については貸倒実績率により、貸倒懸念債権等特定の債権につ
いては個別に回収可能性を検討し、回収不能見込額を計上しております。
相手先の財政状態が悪化し支払能力が低下した場合、追加の引当金を計上する可能性があります。
b. 固定資産の減損
市場価格、営業活動から生ずる損益等から減損の兆候が識別された場合、将来の事業計画等を考慮して、減損
損失の認識の判定を行い、減損損失を認識すべきであると判定した場合は帳簿価額を回収可能価額まで減額し、減損損失を計上しております。
将来の市況悪化等により事業計画が修正される場合、減損処理を行う可能性があります。
c. 投資有価証券・関係会社株式
時価のない投資有価証券又は関係会社株式を所有しており、実質価額が取得原価に比べ50%程度以上下落した
場合には、回復可能性等を考慮して減損処理を行うこととしております。
実質価額は、一般に公正妥当と認められる会計基準に準拠して作成した各関係会社の財務諸表を基礎とした1
株当たりの純資産額、若しくは1株当たりの純資産額に取得時において認識した超過収益力を反映させた金額と
しております。なお、超過収益力については、四半期毎に、会社の業績等を把握するとともに将来の事業計画に
基づく決算予測数値との比較分析を実施すること等により、当該超過収益力の毀損の有無を確認しております。
なお、将来の市況悪化または投資先の業績不振等により、現在の帳簿価額に反映されていない損失が生じ、減
損処理を行う可能性があります。
d. 繰延税金資産
財務諸表と税務上の資産または負債の額に相違が発生する場合、将来減算一時差異に係る税効果について、繰
延税金資産を計上しております。繰延税金資産のうち、実現が不確実であると考えられる金額に対し評価性引当
額を計上して繰延税金資産を減額しております。
繰延税金資産の実現の可能性により、評価性引当額が変動し損益に影響を及ぼす可能性があります。
なお、上記a〜dについては、国内外における新型コロナウイルスの感染拡大に伴う影響について、2022年3月期にわたって影響が続くものと仮定し、足元の実績をもとに当初の事業計画値に反映し会計上の見積りを行っております。
当社グループの連結財務諸表作成にあたって採用しているその他の重要な会計方針は、「第5 経理の状況1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項 (連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)及び(重要な会計上の見積り)」に記載しております。
当社グループはAP事業の単一セグメントであるため、セグメント別の記載を省略しております。
本項に記載した将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものであります。
(2) 当社グループの事業に影響を与える経営環境に対する評価
当社グループは、機械(コンピュータやロボット)の「眼」に相当するAP(人工知覚)のアルゴリズムを専門とするDeepTech(深層技術)の研究開発を行っております。AP(人工知覚)は機械の「脳」に相当するAI(人工知能)と並んで相互補完するDeep Tech(深層技術)として、機械を自律的に機能する方向に進化させる技術であります。今後幅広い産業での応用と普及を見込んでおり、特定の技術領域や産業での利用に限定されず幅広い範囲で引続き高成長が見込まれると考えております。
このような状況下、当社グループはAP(人工知覚)の基幹技術の一つであるSLAM の独自開発を続けており、AI(人工知能)やIoT(Internet of Things)との技術融合に向けたMachine Perception(機械知覚)、Deep Perception(深層知覚)及びNeural Perception Network(知覚ニューラルネットワーク)に関する研究開発も進めてまいりました。半導体メーカーや技術商社・インテグレータを含む国内外の先端技術企業との提携の拡大もあり、ToFセンサーとのセンサーフュージョン等SLAMをソフトウェアライセンス化した更なるアルゴリズム性能の高度化・機能向上に加えて、新しいソフトウェア技術としてLiDAR SLAMの提供を開始するなど、販売チャンネルと技術ラインナップの拡大は順調に進捗しております。
2020年11月には、グローバルにおける機動的な執行体制及びDeep Tech(深層技術)投資を中心とした中長期とSLAM商用化ライセンス拡大に向けた短期の2軸における経営体制を更に強化するため、複数代表取締役体制へと移行いたしました。当社取締役COOであった項大雨が代表取締役CEOに就任、当社グループの事業経営を統括し、創業者である代表取締役大野智弘は、創業メンバーである当社CTO John Williamsと共に短期的な商用化ライセンス拡大に加えて、中長期における非連続的な成長に向けてのM&Aを含むDeep Tech(深層技術)の強化及び同領域の拡大を担当いたします。また、代表取締役CEOである項大雨が当社グループ会社独ミュンヘン工科大学発コンピュータビジョン企業Artisense Corporation(本社:米国カリフォルニア州、以下、「アーティセンス社」といいます。)の取締役CEOを兼任することにより、Kudan SLAMとは異なるDirect Visual SLAMという別アプローチによる次世代アルゴリズムに加えて、Gaussian-Newton net(GN-Net)と呼ばれる深層学習との融合技術を強みとするアーティセンス社とのグループ一体としての技術連携を加速し、アルゴリズム性能の更なる向上の実現を図るほか、より高度な技術応用と市場の開拓・拡大を目指してまいります。
市場の成長性が極めて高い自動運転領域、モバイルセンサー領域、デジタルマップ領域や、一度採用されることで技術が広範囲かつ爆発的に拡散されることが見込まれる半導体・センサー領域を中心に事業開発のターゲット先の大型化・集中を引き続き徹底すると共に、アーティセンス社との連携を含むグローバルでの顧客基盤の拡大やDeep Tech投資の案件リサーチの拡充を継続してまいります。
(3) 経営成績等の状況の概要及び経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討
① 経営成績
アーティセンス社との技術統合により、グローバルでの技術優位性において従来より築いてきた AP(人工知覚)における専業独立企業としての独占的なポジションをより強化することができ、累積案件数の幅・件数拡大と同時に中長期的な製品化の早期化及び収益機会拡大に寄与する案件ポートフォリオの質の向上も達成しました。一方で、SLAM技術評価・製品化検討案件から製品化を見据えた事業領域・大型案件への注力により、技術的なフィット(技術視点での顧客製品企画への適性とそれに伴う最終製品化の見込み)ないし注力領域の範囲外の案件継続の減少が生じております。また、新型コロナウイルス感染症の影響やアーティセンス社を中心とする一部研究開発スケジュールの遅延による案件の予算縮小・凍結や遅延が生じ、第4四半期以降はアーティセンス社の新技術である『VINS(Visual-Inertial Navigation System)』の提供開始及び当社との共同案件の増加、市況の回復により売上高の回復が続いているものの、当連結会計年度全体としては対前連結会計年度で売上高が大きく減少する結果となっております。
グローバル規模での体制拡大に伴い、販売費及び一般管理費は488,582千円(前年同期比20.1%増)に増加し、主な内訳は人件費206,045千円、経費及び償却費184,352千円、研究開発費98,185千円であります。
その他、急激なポンド・ユーロ高に起因する為替差益96,705千円、アーティセンス社に対する投融資の評価減及び期中損益の取り込みによる持分法による投資損失1,232,246千円が発生しております。(なお、個別決算においては、アーティセンス社に対する投融資の評価減として関係会社株式評価損788,276千円及び貸倒引当金繰入額486,489千円を計上しております。)
この結果、当連結会計年度の売上高は127,864千円(前年同期比72.0%減)、営業損失は451,171千円(前年同期は営業利益9,378千円)、経常損失は1,575,840千円(前年同期は経常損失12,341千円)、親会社株主に帰属する当期純損失は1,608,900千円(前年同期は親会社株主に帰属する当期純損失29,320千円)となりました。
当社グループの販売実績、主要な顧客に関する情報は、次のとおりであります。なお、生産実績、受注実績については、当社グループは生産に関する事項が無く、また、受注生産を行っていないため、記載はしておりません。
(単位:千円)
| セグメントの名称 | 販売高 | 前年同期比(%) |
| AP事業 | 127,864 | △72.0% |
| 合計 | 127,864 | △72.0% |
(単位:千円)
| 顧客 | 前連結会計年度 | 当連結会計年度 | ||
| 販売高 | 割合 | 販売高 | 割合 | |
| 株式会社ザクティ | 75,000 | 16.4% | ― | ―% |
| 国際航業株式会社 | 75,000 | 16.4% | ― | ―% |
| 株式会社NTTドコモ | 85,000 | 18.6% | ― | ―% |
| ソフトバンク株式会社 | ― | ―% | 71,800 | 56.2% |
| エレマテック株式会社 | ― | ―% | 16,936 | 13.2% |
(注)前連結会計年度又は当連結会計年度の総販売実績に対する割合が10%未満の場合、該当する連結会計年度の実績値の記載を省略しております。
② 財政状態
(資産)
当連結会計年度末における流動資産は1,359,662千円(前連結会計年度末比667,828千円増)となりました。これは主に、現金及び預金が増加(同734,509千円増)、売掛金が減少(同115,596千円減)したことによるものであります。
また、固定資産は180,677千円(前連結会計年度末比529,822千円減)となりました。これは主に、投資有価証券(同303,887千円減)及び長期貸付金(同212,108千円減)が減少したことによるものであります。
以上の結果、資産合計は1,540,339千円(前連結会計年度末比138,005千円増)となりました。
(負債)
当連結会計年度末における流動負債は81,881千円(前連結会計年度末比231,770千円減)となりました。これは主に、ファンズ株式会社が運営する「Funds」による資金調達の返済により預り金が減少(同236,477千円減)したことによるものであります。
また、固定負債は-千円(前連結会計年度末比164,824千円減)となりました。これは長期借入金が減少(同164,824千円減)したことによるものであります。
以上の結果、負債合計は81,881千円(前連結会計年度末比396,594千円減)となりました。
(純資産)
当連結会計年度末における純資産は、1,458,458千円(前連結会計年度末比534,599千円増)となりました。これは主に、株式発行に伴う資本金及び資本準備金の増加(計2,220,078千円増)、親会社株主に帰属する当期純損失(1,608,900千円)によるものであります。
③ キャッシュ・フロー
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動によるキャッシュ・フローは、349,811千円の支出(前年同期は130,798千円の支出)となりました。これは主に、税金等調整前当期純損失1,600,129千円及び持分法による投資損失1,232,246千円によるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動によるキャッシュ・フローは、705,604千円の支出(前年同期は739,124千円の支出)となりました。これは主に、投資有価証券の取得による支出478,505千円及び貸付けによる支出217,140千円によるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動によるキャッシュ・フローは1,777,535千円の収入(前年同期は503,355千円の収入)となりました。これは、主に株式の発行による収入2,210,586千円、預り金の返済による支出235,964千円及び長期借入金の返済による支出207,832千円によるものです。
以上の他、現金及び現金同等物に係る換算差額の影響もあり、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は前連結会計年度末と比べ734,509千円増加し、1,230,979千円となりました。
④ 資本の財源及び資金の流動性に関する分析
当社グループは、円滑な事業活動に必要なレベルの流動性の確保と財務の健全性・安定性維持を資金政策の基本方針とし、事業展開および研究開発に係る資金需要に対して機動的に対応できるだけの十分な現金及び現金同等物の保有を図っております。
当社グループは、アルゴリズムの研究開発による事業を行っていることから運転資金の大部分は研究開発費を含む人件費関連コストであり、かつ少数の従業員での事業展開を行ってきております。したがって、必要となる運転資金の水準は相対的に低く、資金需要を満たすための資金は、原則として、営業活動によるキャッシュ・フローを財源としますが、ロボティクス・自動運転・ドローン等多くの産業で自動化技術のニーズが高まりAP(人工知覚)関連産業の規模拡大が見込まれる中で、AP(人工知覚)市場における専業独立企業としての独占的なシェアの維持・更なる拡大を推進するための中長期的な経営体制を構築するため、金融機関からの借入・新規株式発行を含む資金調達の実行を検討致しました。
このような方針の元、銀行との当座貸越契約・コミットメントライン契約による合計3億円の資金調達ラインの確保に加えて、2020年6月の資金調達を目的としたBofA証券株式会社への新株予約権の割当てにより、最大で900,000株相当(当リリース時点株価において最大約50億円の想定)の新株予約権を発行しました。当資金調達により、アーティセンス社を含めた今後の当社グループにおいて、今後益々希少となり獲得が困難となるSLAMを専門とする研究者・エンジニアの維持・拡充、グローバル販売拠点における事業開発人員の拡充、プロダクト・ソリューション開発の拡大のためのパートナー企業への出資、GrandSLAMの開発・実用化に加えてさらなるDeep Tech(深層技術)の開発及び出資の推進等を進めて、当社グループの中長期における飛躍的な成長を目指してまいります。