有価証券報告書-第6期(平成31年4月1日-令和2年3月31日)

【提出】
2020/06/23 15:01
【資料】
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【項目】
132項目

(1) 分析の前提
財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析は、当社グループの連結財務諸表に基づいて実施されております。当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。
連結財務諸表の作成にあたっては一部に見積りによる金額を含んでおりますが、見積りにつきましては、過去実績や状況に応じ合理的と考えられる要因等に基づいており、妥当性についての継続的な評価を行っています。しかしながら、見積り特有の不確実性があるため、実際の結果はこれらの見積りと異なる場合があります。連結財務諸表に影響を与え、より重要な経営判断や見積りを必要とする会計方針は以下のとおりであります。
a. 貸倒引当金
債権の貸倒による損失に備えるため、一般債権については貸倒実績率により、貸倒懸念債権等特定の債権につ
いては個別に回収可能性を検討し、回収不能見込額を計上しております。
相手先の財政状態が悪化し支払能力が低下した場合、追加の引当金を計上する可能性があります。
b. 固定資産の減損
市場価格、営業活動から生ずる損益等から減損の兆候が識別された場合、将来の事業計画等を考慮して、減損
損失の認識の判定を行い、必要に応じて回収可能価額まで減損処理を行うこととしております。
将来の市況悪化等により事業計画が修正される場合、減損処理を行う可能性があります。
c. 投資有価証券
時価のない有価証券を所有しており、実質価額が取得原価に比べ50%程度以上下落した場合には、回復可能性
等を考慮して減損処理を行うこととしております。
なお、将来の市況悪化または投資先の業績不振等により、現在の帳簿価額に反映されていない損失が生じ、減
損処理を行う可能性があります。
d. 繰延税金資産
財務諸表と税務上の資産または負債の額に相違が発生する場合、将来減算一時差異に係る税効果について、繰
延税金資産を計上しております。繰延税金資産のうち、実現が不確実であると考えられる金額に対し評価性引当
額を計上して繰延税金資産を減額しております。
繰延税金資産の実現の可能性により、評価性引当額が変動し損益に影響を及ぼす可能性があります。
なお、上記a〜dについては、国内外における新型コロナウイルスの感染拡大に伴う影響について、2021年3月期にわたって影響が続くものと仮定し、足元の実績をもとに当初の事業計画値に反映し会計上の見積りを行っております。
当社グループの連結財務諸表作成にあたって採用しているその他の重要な会計方針は、「第5 経理の状況1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表注記事項連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項」に記載しております。
当社グループはAP事業の単一セグメントであるため、セグメント別の記載を省略しております。
本項に記載した将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものであります。
(2) 当社グループの事業に影響を与える経営環境に対する評価
当社グループは、機械(コンピュータやロボット)の「眼」に相当するAP(人工知覚)のアルゴリズムを専門とするDeepTech(深層技術)の研究開発を行っております。AP(人工知覚)は機械の「脳」に相当するAI(人工知能)と並んで相互補完するDeep Tech(深層技術)として、機械を自律的に機能する方向に進化させる技術であります。今後幅広い産業での応用と普及を見込んでおり、特定の技術領域や産業での利用に限定されず幅広い範囲で引続き高成長が見込まれると考えております。
このような状況下、当社グループはAP(人工知覚)の基幹技術の一つであるSLAM の独自開発を続けており、AI(人工知能)やIoT(Internet of Things)との技術融合に向けたMachine Perception(機械知覚)、Deep Perception(深層知覚)及びNeural Perception Network(知覚ニューラルネットワーク)に関する研究開発も進めてまいりました。半導体メーカーや技術商社・インテグレータを含む国内外の先端技術企業との提携の拡大もあり、ToFセンサーとのセンサーフュージョン等SLAM をソフトウェアライセンス化した更なるアルゴリズム性能の高度化・機能向上に加えて、新しいソフトウェア技術としてLiDAR SLAMの提供を開始するなど、販売チャンネルと技術ラインナップの拡大は順調に進捗しております。2020年1月には、アーティセンス社の子会社化に向けた株式取得も行い、当社グループとは異なるDirect Visual SLAMというアプローチによる次世代アルゴリズムや、Gaussian-Newton netと呼ばれる深層学習との融合技術を強みとする同社グループとの技術連携により、更なるアルゴリズム性能の向上を実現し、より高度な技術応用と市場の開拓を目指してまいります。
また、北米・中国・日本を中心とした大手企業に対する更なる顧客基盤の拡大や欧州におけるDeepTech投資の案件リサーチの拡充に向けて、事業開発人員の補強及び2020年1月に米国子会社の設立を行いました。市場の成長性が極めて高い自動運転領域、モバイルセンサー領域、デジタルマップ領域や、一度採用されることで技術が広範囲かつ爆発的に拡散されることが見込まれる半導体・センサー領域を中心に事業開発のターゲット先の大型化・集中を引き続き徹底してまいります。
(3) 経営成績等の状況の概要及び経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討
① 経営成績
中長期の事業成長を見据えた長期案件に注力する経営体制への転換等の影響により、ライセンスフィーの他マイルストーン毎に収受する取引が増加し、受注から納品までの期間が長期に亘り売上計上まで時間を要する大型契約が増加しております。また、新型コロナウイルスによる感染症の拡大によって、中国や欧州におけるプロジェクトの縮小や延期が相次いで発生いたしました。その一方で、販売チャンネル・技術ラインナップの順調な拡大を背景に、進行中の開発案件は件数・金額規模共に着実に増加しており、当連結会計年度も売上高は拡大を続けております。
グローバル規模での体制拡大に伴い、販売費及び一般管理費は406,765千円(前年同期比76.0%増)に増加し、主な内訳は人件費155,889千円、経費及び償却費165,826千円、研究開発費85,049千円であります。
その他、新型コロナウイルスの影響により、ポンド・ユーロ安に起因する為替差損が18,977千円及び将来経済の不透明な状況を保守的に考慮し、国内の業務資本提携先への出資に対し投資有価証券評価損15,993千円が発生しております。
この結果、当連結会計年度の売上高は456,343千円(前年同期比21.3%増)、営業利益は9,378千円(前年同期比92.4%減)、経常損失は12,341千円(前年同期は経常利益103,532千円)、親会社株主に帰属する当期純損失は29,320千円(前年同期は親会社株主に帰属する当期純利益103,242千円)となりました。
当社グループの販売実績、主要な顧客に関する情報は、次のとおりであります。なお、生産実績、受注実績については、当社グループは生産に関する事項が無く、また、受注生産を行っていないため、記載はしておりません。
(単位:千円)
セグメントの名称販売高前年同期比(%)
AP事業456,343+21.3%
合計456,343+21.3%

(単位:千円)
顧客前連結会計年度当連結会計年度
販売高割合販売高割合
株式会社ザクティ75,00019.9%75,00016.4%
国際航業株式会社75,00019.9%75,00016.4%
ソニーセミコンダクタソリューションズ株式会社40,55610.8%25,0435.5%
株式会社NTTドコモ34,4109.1%85,00018.6%

② 財政状態
(資産)
当連結会計年度末における流動資産は691,834千円(前連結会計年度末比235,626千円減)となりました。これは主に、現金及び預金が減少(同371,798千円減)、売掛金が増加(同143,815千円増)したことによるものであります。
また、固定資産は710,499千円(前連結会計年度末比706,954千円増)となりました。これは主に、投資有価証券(同305,866千円増)及び長期貸付金(同388,862千円増)が増加したことによるものであります。
以上の結果、資産合計は1,402,334千円(前連結会計年度末比471,327千円増)となりました。
(負債)
当連結会計年度末における流動負債は313,651千円(前連結会計年度末比274,780千円増)となりました。これは主に、1年内返済予定の長期借入金の増加(同43,008千円増)及びファンズ株式会社が運営する「Funds」による資金調達235,964千円により預り金が増加(同237,971千円増)したことによるものであります。
また、固定負債は164,824千円(前連結会計年度末比164,824千円増)となりました。これは長期借入金(同164,824千円増)が増加したことによるものであります。
以上の結果、負債合計は478,475千円(前連結会計年度末比439,604千円増)となりました。
(純資産)
当連結会計年度末における純資産は、923,858千円(前連結会計年度末比31,723千円増)となりました。これは主に、株式発行に伴う資本金及び資本準備金の増加(計60,808千円増)、親会社株主に帰属する当期純損失(29,320千円)によるものであります。
③ キャッシュ・フロー
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動によるキャッシュ・フローは、130,798千円の支出(前年同期は110,383千円の収入)となりました。これは主に、売上債権の増加145,104千円によるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動によるキャッシュ・フローは、739,124千円の支出(前年同期は445千円の支出)となりました。これは主に、投資有価証券の取得による支出329,771千円及び貸付けによる支出395,612千円によるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動によるキャッシュ・フローは503,355千円の収入(前年同期は590,863千円の収入)となりました。これは、主に預り金の受入れによる収入235,964千円及び長期借入れによる収入215,000千円によるものです。
以上の他、現金及び現金同等物に係る換算差額の影響もあり、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は前連結会計年度末と比べ371,798千円減少し、496,470千円となりました。
④ 資本の財源及び資金の流動性に関する分析
当社グループは、円滑な事業活動に必要なレベルの流動性の確保と財務の健全性・安定性維持を資金政策の基本方針とし、事業展開および研究開発に係る資金需要に対して機動的に対応できるだけの十分な現金及び現金同等物の保有を図っております。
当社グループは、アルゴリズムの研究開発による事業を行っていることから運転資金の大部分は研究開発費を含む人件費関連コストであり、かつ少数の従業員での事業展開を行ってきております。したがって、必要となる運転資金の水準は相対的に低く、資金需要を満たすための資金は、原則として、営業活動によるキャッシュ・フローを財源としますが、ロボティクス・自動運転・ドローン等多くの産業で自動化技術のニーズが高まりAP(人工知覚)関連産業の規模拡大が見込まれる中で、AP(人工知覚)市場における専業独立企業としての独占的なシェアの維持・更なる拡大を推進するための中長期的な経営体制を構築するため、金融機関からの借入・新規株式発行を含む資金調達の実行を検討致しました。
このような方針の元、銀行との当座貸越契約・コミットメントライン契約による合計3億円の資金調達ラインの確保に加えて、2020年6月の資金調達を目的としたメリルリンチ日本証券への新株予約権の割当てにより、最大で900,000株相当(当リリース時点株価において最大約50億円の想定)の新株予約権を発行しました。当資金調達により、アーティセンス社を含めた今後の当社グループにおいて、今後益々希少となり獲得が困難となるSLAMを専門とする研究者・エンジニアの維持・拡充、グローバル販売拠点における事業開発人員の拡充、プロダクト・ソリューション開発の拡大のためのパートナー企業への出資、GrandSLAMの開発・実用化に加えてさらなるDeep Tech(深層技術)の開発及び出資の推進等を進めて、当社グループの中長期における飛躍的な成長を目指してまいります。