四半期報告書-第22期第1四半期(令和3年4月1日-令和3年6月30日)

【提出】
2021/08/13 15:05
【資料】
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【項目】
31項目
文中の将来に関する事項は、当四半期会計期間の末日現在において、当社が判断したものであります。なお、当社は、前第1四半期累計期間については四半期財務諸表を作成していないため、前年同四半期累計期間との比較分析は行っておりません。
(1) 経営成績の状況
当第1四半期累計期間における世界経済は、引き続き新型コロナウイルス感染症の影響を受けました。ワクチンの接種が進む一方、変異株による感染症の再拡大も懸念されております。
当社が属する医薬品業界におきましては、こうした新たな感染症への対策とともに、がんや認知症等、世界的に患者数が増えている疾患の治療法の確立が、継続的な重要課題になっております。このような状況下、当社は創薬領域を中心に、事業の積極的な推進を図りました。各領域における当第1四半期累計期間の事業活動の概況は次のとおりです。
① 創薬
当社の効率的な抗体取得プラットフォームを活用し、アンメット・メディカル・ニーズを満たすべく、主にがん領域で抗体開発を進めております。シーズ探索で得られた候補抗体のうち、多面的な検討から先ず選別されたGPC3、CDH3、トランスフェリン受容体をそれぞれ標的とする抗体のパイプライン4本を有しており、これに続く多くの候補抗体が研究開発段階にあります。当社のパイプラインの開発状況は次のとおりです。なお、当第1四半期累計期間における創薬の売上はありませんでした。
a.PPMX-T002
PPMX-T002は細胞間接着因子と考えられているCDH3を標的としています。2011年に当社と実施許諾契約を締結した富士フイルム株式会社(以下富士フイルム社)によって、放射性同位体(RI)を標識した抗がん剤として開発が進められています。進行性固形がん患者さんに対して、富士フイルム社が米国にて行った第Ⅰ相試験では、PPMX-T002の抗体が、投与された患者さんのがん組織に集積することが認められたほか、一部症例においては腫瘍の縮小が確認されました。2019年より第Ⅰ相試験を拡大し、最大耐容用量で症例数を増やして、日本の厚生労働省の定める第Ⅱ相試験相当が実施されています。
さらに、2020年4月からは富士フイルム富山化学株式会社により、国内での第I相試験も進められています。
b.PPMX-T003
PPMX-T003は、当社独自のファージライブラリ及びスクリーニング技術であるICOS法を用いたファージディスプレイ法により取得したユニークな完全ヒト抗体であり、トランスフェリン受容体(TfR)を標的とします。TfRは細胞内への鉄の取り込みに関与しており、増殖が盛んながん細胞に多く発現しています。本抗体がTfRに結合すると、がん細胞内への鉄の取り込みを阻害し、それによってがん細胞の増殖を抑制する抗腫瘍効果が得られます。PPMX-T003は、その増殖抑制効果から様々ながんに対する治療効果が期待できると考えられ、鋭意開発を進めております。
TfRは、赤血球の元である赤芽球細胞にも多く発現しています。このため、赤血球が異常に増える疾患である真性多血症(PV)に対して、赤血球数を正常化する効果が期待されることから、まずはPVの治療薬を目指して、2019年11月に国内で第I相試験を開始いたしました。2021年3月には、健常人での安全性とともに、赤芽球の減少が確認できたことから、次のステップとしてPV患者さんでの第I相試験を実施するため、2021年5月31日に独立行政法人医薬品医療機器総合機構に治験計画届を提出いたしました。
さらに、急性骨髄性白血病、悪性リンパ腫等の血液がん及び固形がんに対する治療薬としての作用機序を明確化するため、国立大学法人東海国立大学機構 名古屋大学、学校法人藤田学園 藤田医科大学及び国立大学法人 群馬大学と共同で臨床効果に関する創薬研究を推進しております。
c.PPMX-T004
PPMX-T004は、PPMX-T002と同じCDH3を標的としており、薬物を標識した抗体薬物複合体(ADC)をコンセプトとしています。ADCは抗体に標識した薬物を細胞内に取り込ませることで、対象とした細胞を特異的に殺傷することができるため、患者さん自身の免疫機能の状態に関わらず高い臨床効果が期待できます。また、RIを使用していないため、使用する設備の制約も受けません。なお、導出先との契約により、開発状況は開示しておりません。
d.PPMX-T001
PPMX-T001は、肝臓がんで高い発現率が見られるGPC3を標的としています。2006年に特許を受ける権利等を譲渡した中外製薬株式会社によって、肝臓がん等治療薬として「GC33」及び「ERY974」という2種類の異なった形態での薬剤開発が進められています。GC33は、単剤は第Ⅰ相試験で患者さんでの有効性が確認されましたが、第Ⅱ相試験は、主要評価項目が未達となり、現在、試験は実施されておりません。一方、免疫療法薬のアテゾリズマブとの併用による第Ⅰ相試験では、患者さんでの有効性が確認されたことが学会で発表されております。また、ERY974(抗GPC3-抗CD3)は、2つの標的に同時に結合することができるバイスペシフィック抗体で、米国及び欧州での第Ⅰ相試験が2019年8月に終了し、現在は国内で第I相試験が進められております。さらに、日本及び台湾でERY974とアテゾリズマブ及び血管新生阻害剤のベバシズマブ併用の第I相臨床試験も開始されております。
② 抗体研究支援
当第1四半期累計期間における抗体研究支援の売上はありませんでした。
③ 抗体・試薬販売
研究用抗体の販売は、ほぼ計画通りに進捗しました。また、PTX3測定キット(血管炎症マーカー)を用いた、新型コロナウイルス感染症による肺炎重症化予測診断キットの開発も進めております。
この結果、当第1四半期累計期間における売上高は15,799千円、営業損失は115,855千円、経常損失は134,707千円、四半期純損失は141,006千円となりました。なお、「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日)等の適用による経営成績への影響はありません。
経営成績の分析については、次のとおりです。
(売上高)
当第1四半期累計期間における売上高は、抗体・試薬販売が、ほぼ計画通りに進捗し、15,799千円となりました。
(売上原価、売上総利益)
当第1四半期累計期間の売上原価は、179千円となりました。この結果、当第1四半期累計期間の売上総利益は、15,619千円となりました。
(販売費及び一般管理費、営業損失、経常損失、四半期純損失)
当第1四半期累計期間の販売費及び一般管理費は、131,475千円となりました。そのうち、研究開発費は69,805千円となりました。
この結果、営業損失は、115,855千円となりました。
(営業外収益、営業外費用、経常損失)
当第1四半期累計期間の営業外収益は、4千円となりました。主なものは、受取利息3千円であります。
当第1四半期累計期間の営業外費用は、18,856千円となりました。主なものは、上場関連費用9,531千円及び公募増資に係る租税公課9,244千円であります。
この結果、経常損失は、134,707千円となりました。
(特別利益、特別損失、当期純損失)
当第1四半期累計期間の特別利益の計上はありません。
当第1四半期累計期間の特別損失は、5,817千円となりました。当社の事業の特性上、現段階では、将来の収入の不確実性が高いことから、医薬品事業に係る固定資産の帳簿価額の回収可能額をゼロとし、帳簿価額と備忘価額との差額5,817千円を減損損失として特別損失に計上しました。
これらの結果を受け、当第1四半期累計期間の四半期純損失は、141,006千円となりました。
なお、セグメントの業績については、当社の事業セグメントは医薬品事業のみの単一セグメントであるため、記載を省略しております。
(2) 財政状態の状況
(資産)
当第1四半期会計期間末の総資産は、前事業年度末に比べ2,510,310千円増加し、3,628,936千円となりました。
主な要因は、当社株式の東京証券取引所マザーズ市場への上場に伴う公募増資により調達した現金及び預金2,641,320千円によるものであります。
(負債)
当第1四半期会計期間末の負債は、前事業年度末に比べ9,997千円増加し、44,910千円となりました。
主な要因は、当社株式の東京証券取引所マザーズ市場への上場に伴う主幹事証券会社等への未払金の増加によるものであります。
(純資産)
当第1四半期会計期間末の純資産は、前事業年度末に比べ2,500,313千円増加し、3,584,026千円となりました。
四半期純損失141,006千円の計上により利益剰余金が減少した一方、当社株式の東京証券取引所マザーズ市場への上場に伴う公募増資により資本金及び資本準備金がそれぞれ1,320,660千円増加したことによるものであります。
(3) 会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
前事業年度の有価証券報告書に記載した「経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」中の重要な会計方針及び見積りに記載した会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定の記載について重要な変更はありません。
(4) 経営方針・経営戦略等
当第1四半期累計期間において、当社が定めている経営方針・経営戦略等について重要な変更はありません。
(5) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
当第1四半期累計期間において、当社が対処すべき事業上及び財務上の課題について重要な変更はありません。
(6) 研究開発活動
当第1四半期累計期間における研究開発活動の金額は、69,805千円であります。
なお、当第1四半期累計期間において、当社の主な研究開発活動の状況に重要な変更はありません。