半期報告書-第25期(2024/04/01-2025/03/31)

【提出】
2024/11/14 15:34
【資料】
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【項目】
32項目
文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において、当社が判断したものであります。
(1)経営成績の状況
当中間会計期間における世界経済は、中国経済の先行き懸念、ウクライナ情勢や中東情勢等から、不透明な状況が継続しました。国内経済は、足踏みも見られたものの緩やかな回復基調となりましたが、物価上昇や海外景気の下振れに注意が必要な状況が続きました。
当社が属する医薬品業界におきましては、新規感染症への対策や、がんや認知症等、世界的に患者数が増えている疾患の治療法の確立が、継続的な重要課題になっております。当社におきましては、創薬領域を中心に、積極的な事業展開を図りました。各領域における成果は次のとおりです。
① 創薬
当中間会計期間における売上はありませんでしたが、当社の抗体取得プラットフォームを活用し、主にがん領域で抗体開発を進めております。カドヘリン3(CDH3)及びトランスフェリン受容体1(TfR1)を標的とする3つの抗体の開発を継続して進めているほか、これに続く候補抗体が研究開発段階にあります。また、次世代の創薬に向けて、効率性を向上させる抗体取得技術の整備や、当社ファージライブラリの改良を継続的に進めております。当社のパイプラインの開発状況は次のとおりです。
a.PPMX-T002
PPMX-T002は、がん細胞で多数発現しているCDH3を標的とする抗体に、イットリウム90(90Y)という放射性同位元素(RI)を標識した抗がん剤候補です。がん細胞上の標的に抗体が集積し、90Yが放射線を照射してがん細胞を殺傷する仕組みです。導出先の富士フイルム株式会社(以下「富士フイルム社」)の事業方針の変更により、2022年3月に実施権が返還されており、新たな医薬品候補として開発を進めております。なお、富士フイルム社の子会社が米国で行った拡大第I相試験においては、本抗体が標的のがん細胞へ集積することが確認されております。当社は現在、RI医薬品開発会社への導出に向けて、90Yから、最も高い有効性が期待されるアクチニウム225(225Ac)を中心にRIの変更を検討し、導出先候補と開発戦略を詰めております。
b.PPMX-T003
PPMX-T003は、当社独自のファージライブラリの中から、当社が特許を保有するICOS法というスクリーニング技術を活用して取得したユニークな完全ヒト抗体です。標的は、細胞内への鉄の取り込みに関与し、増殖が盛んながん細胞に極めて多く発現するTfR1です。本抗体がTfR1に結合すると、がん細胞内への鉄の取り込みを阻害し、それによってがん細胞の増殖を抑制する抗腫瘍効果が得られます。PPMX-T003は、その増殖抑制効果から様々ながんに対する治療効果が期待できると考えられ、鋭意研究開発を進めております。
TfR1は、がん細胞のほかに、赤芽球細胞(赤血球になる前の細胞)にも極めて多く発現しています。このため、まずは赤血球が異常に増える疾患である真性多血症(PV)を対象疾患と定めて第I相試験を国内で実施し、2024年6月に終了しました。本書提出日現在、当該試験の全データの固定化を終えて、治験総括報告書作成を進めております。
なお、2024年7月に行われたThe 14th JSH International Symposium 2024ではデータが固定していた5名の被験者で主要評価項目の安全性・薬物動態が確認され、副次的評価項目の瀉血不要期間の延長が示唆されたことが報告されました。
本剤はまた、アグレッシブNK細胞白血病(ANKL)という超希少疾患に対する有効な治療薬となる可能性も見出されております。国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)の「創薬支援推進事業・希少疾病用医薬品指定前実用化支援事業」への採択を受けて実施されている医師主導第I/Ⅱ相試験では、2023年9月に最初の2名の被験者に投与が行われました。広島大学病院を中心に、治験実施施設を全国7か所に設けて、対象患者さんが見つかった際にはすぐに治験に参加いただき、治験薬を投与できる体制を整えております。
このほか、急性骨髄性白血病、悪性リンパ腫等の血液がん及び固形がんに対する治療薬としての作用機序を明確化するため、名古屋大学等と共同で創薬研究を推進しております。
c.PPMX-T004
PPMX-T004は、CDH3を標的とする、薬剤を結合した抗体薬物複合体(ADC)です。ADCは、抗体に結合した薬物を細胞内に取り込ませることで、対象のがん細胞を特異的に殺傷することができるため、患者さん自身の免疫機能の状態に関わらず高い臨床効果が期待できます。
当社は、PPMX-T004の抗体に結合させる最新の薬物及びリンカー等の最適な組み合わせを検討する中で、試験管での試験で見出した有望な組み合わせについて、マウスによる実験でも高い抗腫瘍効果を認めました。これを受けて、現在はサルによる予備毒性試験を進めておりますが、薬効と毒性のバランスを最適化した組み合わせの決定に、当初想定より時間を要しております。決定時期は来期となる見込みです。
なお、当社は本書提出日現在、UBE株式会社とADCに関する共同研究契約を締結し、PPMX-T004のみならず、様々なADCの探索研究を進めております。
② 抗体研究支援
抗体研究支援の売上高は、一部の案件で納期の期ずれが発生したため、3,788千円(前年同期比50.3%減)となりました。
③ 抗体・試薬販売
抗体・試薬販売の売上高は55,602千円(前年同期比28.4%増)となり、順調に推移しました。また、ADC研究用の新製品として、抗MMAE抗体も発売を開始したほか、今期中に新サービスの提供も予定しております。PTX3迅速計測キットの開発も湧永製薬株式会社と共同で継続的に進めております。
以上の結果、当中間会計期間の売上高は59,390千円(前年同期比16.6%増)となりました。研究開発費は、PPMX-T003のANKLの医師主導第I/Ⅱ相試験やPVの第I相試験の実施等により304,980千円となり、営業損失は414,460千円(前年同期は営業損失444,252千円)となりました。また、業務受託料等2,007千円を営業外収益として計上した一方、為替差損10,552千円及び新株予約権の行使による増資に伴う租税公課等4,238千円を営業外費用として計上した結果、経常損失は427,243千円(前年同期は経常損失429,084千円)となりました。なお、当社が保有する固定資産につきまして「固定資産の減損に係る会計基準」に基づく減損損失として66,959千円を特別損失に計上したことにより、中間純損失は495,433千円(前年同期は中間純損失633,487千円)となりました。
なお、当社は医薬品事業のみの単一セグメントであるため、セグメント別の記載を省略しております。
(売上原価、売上総利益)
当中間会計期間の売上原価は、4,350千円となりました。この結果、当中間会計期間の売上総利益は、55,039千円(前年同期比20.4%増)となりました。
(販売費及び一般管理費、営業損失)
当中間会計期間の販売費及び一般管理費は、469,499千円となりました。そのうち、研究開発費は304,980千円となりました。
この結果、営業損失は、414,460千円(前年同期は営業損失444,252千円)となりました。
(営業外収益、営業外費用、経常損失)
当中間会計期間の営業外収益は、2,007千円となりました。主なものは、業務受託料1,772千円であります。
当中間会計期間の営業外費用は、14,790千円となりました。主なものは、為替差損10,552千円であります。
この結果、経常損失は、427,243千円(前年同期は経常損失429,084千円)となりました。
(特別利益、特別損失)
当中間会計期間の特別利益はありません。
当中間会計期間の特別損失は、66,959千円となりました。これは、固定資産の減損損失66,959千円を計上したためであります。減損損失は、当社の事業の特性上、現段階では、将来の収入の不確実性が高いことから医薬品事業に係る固定資産の回収可能額をゼロとし、帳簿価額と備忘価額との差額66,959千円を減損損失として特別損失に計上したものであります。
これらの結果を受け、当中間会計期間の中間純損失は、495,433千円(前年同期は中間純損失633,487千円)となりました。
(2)財政状態の状況
(資産)
当中間会計期間末の総資産は、前事業年度末に比べ497,514千円増加し、2,191,325千円となりました。主に、新株予約権の行使による株式の発行等により現金及び預金が545,029千円増加したことによるものであります。
(負債)
当中間会計期間末の負債は、前事業年度末に比べ57,605千円増加し、353,070千円となりました。主に、AMEDの「創薬支援推進事業・希少疾病用医薬品指定前実用化支援事業」への採択により交付された助成金である長期預り金が50,000千円、未払金が21,121千円それぞれ増加した一方、未払費用が20,318千円減少したことによるものであります。
(純資産)
当中間会計期間末の純資産は、前事業年度末に比べ439,909千円増加し、1,838,254千円となりました。主に、資本金と資本準備金が465,129千円それぞれ増加した一方、中間純損失により利益剰余金が495,433千円減少したことによるものであります。
(3)キャッシュ・フローの状況
当中間会計期間末における現金及び現金同等物は、前事業年度末に比べ545,029千円増加し、2,086,449千円となりました。
当中間会計期間における各キャッシュ・フローの状況と要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動によるキャッシュ・フローは、312,460千円の支出となりました。主に、AMEDからの助成金である長期預り金等による増加があった一方、税引前中間純損失494,203千円の計上等による減少があったことによるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動によるキャッシュ・フローは、52,089千円の支出となりました。これは、研究開発用の有形固定資産の取得による支出によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動によるキャッシュ・フローは、919,892千円の収入となりました。主に、新株予約権の行使による株式の発行による収入928,750千円等によるものであります。
(4)会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
前事業年度の有価証券報告書に記載した「経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」中の重要な会計方針及び見積りに記載した会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定の記載について重要な変更はありません。
(5)経営方針・経営戦略等
当中間会計期間において、当社が定めている経営方針・経営戦略等について重要な変更はありません。
(6)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
当中間会計期間において、当社が対処すべき事業上及び財務上の課題について重要な変更はありません。
(7)研究開発活動
当中間会計期間における研究開発活動の金額は、304,980千円であります。
なお、当中間会計期間において、当社の主な研究開発活動の状況に重要な変更はありません。