四半期報告書-第23期第3四半期(2022/10/01-2022/12/31)

【提出】
2023/02/13 15:05
【資料】
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【項目】
32項目
文中の将来に関する事項は、当四半期会計期間の末日現在において、当社が判断したものであります。
(1)経営成績の状況
当第3四半期累計期間における世界経済は、インフレの進行やロシアによるウクライナ侵攻の長期化、原材料価格の上昇等により、先行きが不透明な状況が継続しました。国内経済は、緩やかに景気が持ち直す一方で、欧米を中心とした海外経済の減速に留意が必要な状況となりました。
当社が属する医薬品業界におきましては、新型コロナウイルス感染症等の新規感染症への対策とともに、がんや認知症等、世界的に患者数が増えている疾患の治療法の確立が、継続的な重要課題になっております。当社におきましては、創薬領域を中心に、積極的な事業展開を図りました。
各領域における成果は次のとおりです。
① 創薬
当第3四半期累計期間における創薬事業の売上はありませんでしたが、当社の効率的な抗体取得プラットフォームを活用し、主にがん領域で抗体開発を進めております。カドヘリン3(CDH3)及びトランスフェリン受容体(TfR)を標的とする3つの抗体の開発を進めている他、これに続く多くの候補抗体が研究開発段階にあります。当社のパイプラインの開発状況は次のとおりです。
a.PPMX-T002
PPMX-T002はがん細胞で多数発現しているCDH3を標的とする抗体に、イットリウム90(90Y)という放射性同位元素(RI)を標識した抗がん剤候補です。2022年3月より、ペプチドリーム株式会社及び同社子会社のPDRファーマ株式会社(以下「PDRファーマ社」)と、今後の開発についての協議を継続的に行っておりましたが、2022年12月にPDRファーマ社と覚書を締結し、当社主導で開発及び導出活動を進めていくこととなりました。90Yから、さらに有効性の高いRIへの変更も視野に、RI医薬品開発会社とのコラボレーションの実現に取り組んでまいります。
b.PPMX-T003
PPMX-T003は、当社独自のファージライブラリの中から、当社が特許を保有するICOS法というスクリーニング技術を活用して取得したユニークな完全ヒト抗体です。標的は、細胞内への鉄の取り込みに関与し、増殖が盛んながん細胞に極めて多く発現するTfRです。本抗体がTfRに結合すると、がん細胞内への鉄の取り込みを阻害し、それによってがん細胞の増殖を抑制する抗腫瘍効果が得られます。PPMX-T003は、その増殖抑制効果から様々ながんに対する治療効果が期待できると考えられ、鋭意開発を進めております。
TfRは、がん細胞の他に、赤血球の元である赤芽球細胞にも極めて多く発現しています。このため、赤血球が異常に増える疾患である真性多血症(PV)に対して、赤血球数を正常化する効果が期待できることから、まずはPVの治療薬を目指して、国内で第I相試験を実施しております。健常人での第I相試験を経て開始したPV患者さんでの第I相試験(以下「本治験」)では6名を組入れ対象としておりますが、リクルートが当初の想定よりも難航していることから、組入れ基準を実臨床に即して見直しました。その結果、本四半期報告書提出日時点において、3名への投与を開始しております。しかしながら2023年3月期中の6名全員への投与が見通せないため、本治験の完了時期は2024年3月期中となる見込みです。残る3名につきましては、できる限り早期に組入れを完了させるため、治験実施施設の追加を進めております。すでに1か所は施設登録が完了し、他の施設につきましても手続を進めております。
また、アグレッシブNK細胞白血病(ANKL)という超希少疾患に対する治療薬開発については、東海大学との共同研究を進めております。2022年3月には国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)の「創薬支援推進事業・希少疾病用医薬品指定前実用化支援事業」に採択されており、現在は医師主導治験の治験届の提出に向けて、大学や医療機関等との調整を進めております。
この他、急性骨髄性白血病、悪性リンパ腫等の血液がん及び固形がんに対する治療薬としての作用機序を明確化するため、名古屋大学及び群馬大学と共同で臨床効果に関する創薬研究を推進しております。
c.PPMX-T004
PPMX-T004は、CDH3を標的とし、薬剤を結合した抗体薬物複合体(ADC)です。現在、最新の薬物及びこれを結合させるためのリンカー等の最適化の検討を進めております。
ADCは、抗体に結合した薬物を細胞内に取り込ませることで、対象の細胞を特異的に殺傷することができるため、患者さん自身の免疫機能の状態に関わらず高い臨床効果が期待できます。
これらのパイプラインの他、当社は富山大学及び富山県とともに、新型コロナウイルス感染症の様々な変異株に対する治療薬候補であるスーパー中和抗体UT28Kの評価を進めております。現在は助成金の獲得に向けて、治療効果を検証する動物実験を進めております。
② 抗体研究支援
当第3四半期累計期間における抗体研究支援の売上高は4,380千円で、新型コロナウイルス感染症拡大による影響を受けた前年同期の85千円と比べて大きく改善しました。
③ 抗体・試薬販売
当第3四半期累計期間における抗体・試薬販売の売上高は65,288千円(前年同期比33.1%増)で、順調に進捗しました。また、新型コロナウイルス感染症による肺炎等、血管炎症を伴う各種疾患の重症化を予測するためのPTX3迅速計測キットの開発に向けて、共同研究契約を締結した湧永製薬株式会社とともに引き続き開発を進めております。
以上の結果、当第3四半期累計期間の売上高は69,668千円(前年同期比41.8%増)となりました。
損益につきましては、営業損失は475,763千円(前年同期は営業損失357,545千円)、経常損失は468,313千円(前年同期は経常損失372,746千円)、四半期純損失は562,254千円(前年同期は四半期純損失393,873千円)となりました。
また、当社は医薬品事業のみの単一セグメントであるため、セグメント別の記載を省略しております。
(売上原価)
当第3四半期累計期間の売上原価は、3,453千円となりました。
(販売費及び一般管理費)
当第3四半期累計期間の販売費及び一般管理費は、541,978千円となりました。そのうち、研究開発費は323,663千円となりました。
(営業外収益、営業外費用)
当第3四半期累計期間の営業外収益は、7,468千円となりました。主なものは、為替差益7,114千円であります。
当第3四半期累計期間の営業外費用は、19千円となりました。
(特別利益、特別損失)
当第3四半期累計期間の特別利益の計上はありません。
当第3四半期累計期間の特別損失は、92,495千円となりました。これは、当社の事業の特性上、現段階では、将来の収入の不確実性が高いことから、医薬品事業に係る固定資産の回収可能価額をゼロと評価し、帳簿価額を備忘価額まで減額し、当該減少額との差額92,495千円を減損損失として計上したものです。
(2)財政状態の状況
(資産)
当第3四半期会計期間末の総資産は、前事業年度末に比べ555,370千円減少し、2,745,159千円となりました。主に、ANKLの治験準備費用の前渡金や貯蔵品が増加した一方、研究開発費等の支払い及び固定資産取得に係る未払金の支払い等により現金及び預金603,150千円が減少したことによるものであります。
(負債)
当第3四半期会計期間末の負債は、前事業年度末に比べ14,037千円減少し、134,338千円となりました。主に、AMEDの「創薬支援推進事業・希少疾病用医薬品指定前実用化支援事業」への採択により交付された助成金である長期預り金46,487千円、賞与引当金7,353千円、資産除去債務13,609千円を当事業年度より計上した一方、未払金や未払法人税等の支払いにより96,249千円が減少したことによるものであります。
(純資産)
当第3四半期会計期間末の純資産は、前事業年度末に比べ541,333千円減少し、2,610,821千円となりました。主に、新株予約権が20,940千円増加した一方、四半期純損失562,254千円の計上により減少したことによるものであります。
(3)会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社は、賃貸借契約に基づき使用するオフィスについては、退去時における原状回復に係る債務を有しておりますが、当該債務に関する賃借資産の使用期限が明確ではなく、移転等も予定されていなかったことから、資産除去債務を合理的に見積ることができず、当該債務に見合う資産除去債務を計上しておりませんでした。
一方、当社は2022年11月16日開催の取締役会において、本社を移転する決議をいたしました。なお、移転の時期は2023年7月1日を予定しております。これに伴い、退去時に必要とされる原状回復費用及び原状回復義務の履行時期に関して見積りの変更を行いました。この見積りの変更により資産除去債務及び有形固定資産を13,609千円計上し、減価償却費を3,402千円及び減損損失を10,207千円計上した結果、当第3四半期累計期間の営業損失及び経常損失がそれぞれ3,402千円、税引前四半期純損失及び四半期純損失がそれぞれ13,609千円増加しております。
(4)経営方針・経営戦略等
当第3四半期累計期間において、当社が定めている経営方針・経営戦略等について重要な変更はありません。
(5)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
当第3四半期累計期間において、当社が対処すべき事業上及び財務上の課題について重要な変更はありません。
(6)研究開発活動
当第3四半期累計期間における研究開発活動の金額は、323,663千円(前年同期比41.3%増)で、そのうち、PPMX-T003にかかる直接経費は126,147千円であります。詳細については「(1)経営成績の状況」に記載したとおりであります。
なお、当第3四半期累計期間において、当社の主な研究開発活動の状況に重要な変更はありません。