有価証券報告書-第104期(平成30年4月1日-平成31年3月31日)

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2019/06/26 15:05
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当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概況並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次の通りである。
(1)経営成績
当連結会計年度におけるわが国経済は、企業収益は改善に足踏みが見られるが、設備投資や雇用情勢の改善が継続するなど緩やかな回復基調で推移した。
世界経済(連結対象期間1-12月)については、米国の保護主義的な政策の影響やEU諸国の政治動向などが懸念されるなか、米国では個人消費や設備投資が増加するなど良好に推移した。また、欧州では失業率の低下や個人消費の増加傾向が続くなど景気は緩やかに回復した。一方、中国では緩やかな減速が見られた。
当社および当社グループにおいては、販売は総じて順調に推移したが、原料価格の高騰や南米の鮭鱒養殖事業において前年の稚魚の斃死の影響などがあり、厳しい事業環境となった。
このような状況下で当連結会計年度の営業成績は、売上高は7,121億11百万円(前期比348億18百万円増)、営業利益は216億85百万円(前期比15億55百万円減)、経常利益は253億58百万円(前期比7億74百万円増)、親会社株主に帰属する当期純利益は153億79百万円(前期比18億54百万円減)となった。
なお、当連結会計年度の期首より、在外子会社等の収益及び費用については、各社の決算日の直物為替相場により円貨に換算する方法から、期中平均為替相場により円貨に換算する方法に変更したため、遡及適用後の数値で前連結会計年度との比較を行っている。また、当連結会計年度の期首より、セグメント別の経営成績をより適切に把握するため、セグメントに帰属する販売費及び一般管理費の配賦基準を見直している。
(単位:百万円)
売上高営業利益経常利益親会社株主に帰属する
当期純利益
2019年
3月期
712,11121,68525,35815,379
2018年
3月期
677,29323,24024,58317,234
前期増減34,818△1,555774△1,854
前期比105.1%93.3%103.2%89.2%

セグメント別の経営成績は次のとおりである。
(単位:百万円)
売上高前期増減前期比営業利益前期増減前期比
水産事業289,9916,132102.2%10,292△73293.4%
食品事業342,32817,067105.2%11,906△1,01192.2%
ファイン事業26,513649102.5%2,61267102.7%
物流事業16,663302101.8%1,99059103.1%
その他36,61410,667141.1%1,156△13089.9%
全社経費---%△6,27219297.0%
合計712,11134,818105.1%21,685△1,55593.3%


① 水産事業
水産事業については、漁撈事業、養殖事業、加工・商事事業を営んでいる。
<当連結会計年度の概況>水産事業では売上高は2,899億91百万円(前期比61億32百万円増)となり、営業利益は102億92百万円(前期比7億32百万円減)となった。
漁撈事業:前期比で増収、増益
<日本>・かつおやさばなどの漁獲が好調だったことにより増収・増益となった。
<南米>・価格の高い魚の漁獲増や販売価格の上昇もあり増収・増益となった。
養殖事業:前期比で減収、減益
<日本>・ぶりは、夏場でも品質の良い「若ぶり」(注1)の販売尾数の増加や販売価格の上昇があったが、まぐろの販売価格低迷に加え赤潮被害の影響や、鮭鱒の生産コストの上昇などもあり減収・減益となった。
<南米>・鮭鱒は、前年の稚魚の斃死の影響により販売数量が大幅に減少したが、生産コストの低減に努め、減益幅を抑えることができた。
加工・商事事業:前期比で増収、増益
<日本>・すりみや飼料油飼の販売は好調に推移したものの、えびの販売価格下落や鮭鱒の仕入価格上昇などにより増収・減益となった。
<北米>・かにの取扱量の減少による減収もあったが、すりみや助子の販売価格上昇や労務コスト削減効果もあり増益となった。
<ヨーロッパ>・販売エリアの拡大など順調に推移したことにより増収・増益となった。
② 食品事業
食品事業については、加工事業およびチルド事業を営んでいる。
<当連結会計年度の概況>食品事業では売上高は3,423億28百万円(前期比170億67百万円増)となり、営業利益は119億6百万円(前期比10億11百万円減)となった。
加工事業:前期比で増収、減益
<日本>・冷凍食品の米飯や野菜、練り製品を中心に販売が伸長したが、すりみなど原料価格の上昇もあり増収・減益となった。
<北米>・家庭用冷凍食品のコスト削減効果があったが、業務用冷凍食品の生産性悪化などがあり減収・減益となった。
<ヨーロッパ>・生産体制の整備が進み、魚を中心とした惣菜商品の販売が好調に推移し増収となったが、原料価格の上昇などにより減益となった。
チルド事業:前期比で増収、減益
<日本>・コンビニエンスストア業界の再編による供給店舗の増加に加え、おにぎり・弁当・麺類の販売が伸長したことにより増収となったが、新工場の竣工に伴う減価償却費や立ち上げ費用が発生し減益となった。
③ ファイン事業
ファイン事業については、医薬原料、機能性原料(注2)、機能性食品(注3)、および医薬品、診断薬の生産・販売を行っている。
<当連結会計年度の概況>ファイン事業では売上高は265億13百万円(前期比6億49百万円増)となり、営業利益は26億12百万円(前期比67百万円増)となった。
<医薬原料、機能性原料、機能性食品>・乳児用粉ミルクに添加するDHAなどの機能性原料の販売が国内外とも堅調に推移したことに加え、特定保健用食品「イマークS」など通信販売の広告宣伝費削減もあり増収・増益となった。
<臨床診断薬、産業検査薬、医薬品>・診断薬事業の販売が好調に推移し増収となったが、化粧品事業の売却の影響などにより減益となった。
④ 物流事業
物流事業については、冷蔵倉庫事業、配送事業、通関事業を営んでいる。
<当連結会計年度の概況>物流事業では売上高は166億63百万円(前期比3億2百万円増)となり、営業利益は19億90百万円(前期比59百万円増)となった。
・労務費や電力料などのコストが増加したが、営業再開した冷蔵庫の影響や既存冷蔵庫の在庫量が堅調に推移し増収・増益となった。
(注1)産卵時期を早めることで春から夏に旬を迎える養殖ぶり。夏場でも品質の良いぶりの出荷が可能と
なっている。(「黒瀬の若ぶり」は当社が保有するブランド名。)
(注2)サプリメントの原料や乳児用粉ミルク等に添加する素材として使用されるEPA・DHAなど。
(注3)主に通信販売している特定保健用食品「イマークS」やEPA・DHAなどのサプリメント。
その他
(売上原価、販売費及び一般管理費)
売上原価は前期比360億83百万円増の5,733億85百万円となった。販売費及び一般管理費は、給料及び手当が9億48百万円増加し、広告宣伝費が4億56百万円減少したため、前期比2億89百万円増の1,170億39百万円となった。
(営業外収益・営業外費用)
営業外収益は前期比19億53百万円増の55億59百万円となった。これは主として持分法による投資利益が14億26百万円増加したことなどによるものである。
営業外費用は前期比3億75百万円減の18億87百万円となった。これは主として支払利息が2億56百万円減少したことなどによるものである。
(特別利益・特別損失)
特別利益は前期比41億84百万円減の11億44百万円となった。これは主として投資有価証券売却益が38億22百万円減少したことなどによるものである。
特別損失は前期比18億95百万円減の18億98百万円となった。これは主として減損損失が6億70百万円減少し、災害による損失が6億32百万円減少したことなどによるものである。
(親会社株主に帰属する当期純利益)
親会社株主に帰属する当期純利益は前期比18億54百万円減の153億79百万円となり、前期の1株当たり当期純利益55円33銭に対し、49円41銭になった。
生産、受注及び販売の実績は、次の通りである。
① 生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと次の通りである。
セグメントの名称金額(百万円)前期比(%)
水産事業107,9171.5
食品事業296,6064.3
ファイン事業22,27513.2
合計426,7994.0

(注) 1.金額は、販売価格による。
2.上記の金額には、消費税等は含まれていない。
② 受注実績
受注生産は行っていない。
③ 販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと次の通りである。
セグメントの名称金額(百万円)前期比(%)
水産事業289,9912.2
食品事業342,3285.2
ファイン事業26,5132.5
物流事業16,6631.8
その他36,61441.1
合計712,1115.1

(注) 1.セグメント間の取引については相殺消去している。
2.主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合
相手先前連結会計年度当連結会計年度
金額(百万円)割合(%)金額(百万円)割合(%)
三菱食品株式会社80,99811.981,18211.4

(2)財政状態
「『税効果会計に係る会計基準』の一部改正」(企業会計基準第28号 平成30年2月16日)等を当連結会計年
度の期首から適用しており、財政状態の状況については、当該会計基準等を遡って適用した後の数値で前連結
会計年度との比較・分析を行っている。
流動資産は前期比55億51百万円減の2,476億3百万円、固定資産は12億30百万円増の2,303億9百万円、総資産は前期比43億20百万円減の4,779億13百万円となった。
流動資産は、前連結会計年度末に比べて2.2%減少し、2,476億3百万円となった。これは現金及び預金が137億64百万円減少し、受取手形及び売掛金が40億72百万円増加し、仕掛品が44億56百万円増加したことなどによる。
固定資産は、前連結会計年度末に比べて0.5%増加し、2,303億9百万円となった。これは有形固定資産が47億42百万円増加したことなどによる。
この結果、総資産は、前連結会計年度末に比べて0.9%減少し、4,779億13百万円となった。
流動負債は前期比101億69百万円減の2,026億99百万円、固定負債は32億2百万円減の1,090億54百万円、負債は前期比133億72百万円減の3,117億54百万円となった。
流動負債は、前連結会計年度末に比べて4.8%減少し、2,026億99百万円となった。これは短期借入金が109億79百万円減少し、支払手形及び買掛金が47億67百万円増加したことなどによる。
固定負債は、前連結会計年度末に比べて2.9%減少し、1,090億54百万円となった。これは長期借入金が18億27百万円減少し、退職給付に係る負債が15億0百万円減少したことなどによる。
この結果、負債合計は、前連結会計年度末に比べて4.1%減少し、3,117億54百万円となった。
純資産合計は、前連結会計年度末に比べて90億51百万円増加し、1,661億58百万円となった。親会社株主に帰属する当期純利益を153億79百万円計上したこと、為替換算調整勘定が29億22百万円減少したことなどによる。
以上により当連結会計年度末のROAは3.5%になった。なお、中期経営計画「MVIP+(プラス)2020」では、KPIとして「ROA 4.5%」を設定している。
(3)キャッシュ・フロー
現金及び現金同等物は、前連結会計年度末比81億53百万円減少し、161億65百万円となった。
営業活動によるキャッシュ・フローは、当連結会計年度の税金等調整前当期純利益246億5百万円(前期比15億15百万円減)、減価償却費182億72百万円(前期比6億72百万円増)、売上債権の増加51億36百万円(前期比24億47百万円減)、たな卸資産の増加80億86百万円(前期比24億47百万円減)、仕入債務の増加54億26百万円(前期比30億21百万円減)などの結果、246億93百万円の収入(前期比36億31百万円収入減)となった。
投資活動によるキャッシュ・フローは、日本クッカリー㈱における新工場竣工などの有形固定資産の取得による支出219億17百万円(前期比48億60百万円減)、投資有価証券の売却による収入16億67百万円(前期比49億94百万円減)、投資有価証券の取得による支出25億53百万円(前期比23億71百万円増)などにより、168億3百万円の支出(前期比47億36百万円支出減)となった。
財務活動によるキャッシュ・フローは、短期借入金の純減額119億18百万円(前期比107億37百万円減)、長期借入れによる収入156億33百万円(前期比193億55百万円減)、長期借入金の返済による支出154億47百万円(前期比224億71百万円減)などにより、159億56百万円の支出(前期比78億0百万円支出増)となった。
(資本の財源及び資金の流動性についての分析)
中期経営計画「MVIP+(プラス)2020」では、3年間で営業キャッシュフローと現預金の活用で約1,200億円を創出し、成長ドライバーを中心に約900億円の投資を行うことにしている。初年度の当連結会計年度では営業キャッシュフローと現預金の有効活用により229億97百万円の設備投資、117億32百万円の借入金の返済を行った。
(4) 重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されている。この連結財務諸表の作成にあたっては、決算日における資産・負債の報告数値、報告期間における収入・費用の報告数値に影響を与える見積りを行っており、貸倒引当金、たな卸資産、有価証券、退職給付に係る負債、法人税等などに関する見積り及び判断に対して継続的に評価を行っている。実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの結果と異なる可能性がある。
(5) 今後の方針について
当社は、2018年度より、新たに策定した新中期経営計画「MVIP+(プラス)2020」を推進する。取組みの詳細については、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載している。