有価証券報告書-第95期(平成31年4月1日-令和2年3月31日)
(1) 経営成績等の状況の概要及び経営者の視点による分析・検討内容
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要及び経営者の視点による分析・検討内容は次のとおりであります。
(注)「経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」に記載している金額のうち、「(1) 経営成績等の状況の概要及び経営者の視点による分析・検討内容 ⑤ キャッシュ・フロー」は、消費税等を含んだ金額であります。
① 経営成績
(単位:百万円)
(海外相場、為替)
当期の世界経済は、米中貿易摩擦などを背景に、景気は減速基調で推移し、第4四半期連結会計期間に顕在化した新型コロナウイルスの世界的な感染拡大により、景気の先行き不透明感が更に強まりました。
為替相場については、世界的な景気減速に加え、日米間の金利差が縮小したことなどを背景に、概ね円高ドル安で推移したことで、平均為替レートは前期と比べ円高となりました。
主要非鉄金属価格につきましては、世界経済の見通し悪化などにより、銅価格は概ね下落基調で推移しましたが、金価格は概ね上昇基調で推移しました。ニッケル価格は、インドネシアの鉱石輸出規制の前倒しによる供給懸念などにより第2四半期連結会計期間では一時的に上昇しましたが、第3四半期連結会計期間以降は需要低迷が懸念されたことなどにより下落基調で推移しました。この結果、銅の平均価格は前期を下回りましたが、ニッケル及び金の平均価格は前期を上回りました。
材料事業の関連業界におきましては、米中貿易摩擦や新型コロナウイルスの感染拡大による需要不振があったものの、当社の車載用電池向け部材の需要は堅調に推移しました。スマートフォン市場は、普及率の向上と成熟化により成長が頭打ちとなっており、更に新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受け、部材の在庫調整が懸念され始めました。
このような状況のなか、当期の連結売上高は、銅価格の下落や円高などにより、前期に比べ39,593百万円減少し、872,615百万円となりました。
連結税引前当期利益は、持分法による投資損益が好転しましたが、減収に加え、円高による為替差損益の変動などで金融収益が悪化したことなどにより、前期に比べ10,336百万円減少し、79,035百万円となりました。
親会社の所有者に帰属する当期利益は、連結税引前当期利益が減少したことなどにより、前期に比べ6,190百万円減少し、60,600百万円となりました。
セグメントの業績は、次のとおりであります。
(資源セグメント)
(単位:百万円)
セグメント利益は銅価格の下落などにより前期を下回りました。
主要鉱山の概況は以下のとおりであります。
菱刈鉱山は順調な操業を継続し、販売鉱石の含有金量は計画通り、前期並みの6tとなりました。
モレンシー銅鉱山(米国)の生産量は、カソード生産の好調などにより前期を上回り、461千tとなりました。(うち非支配持分を除く当社持分は25.0%)
セロ・ベルデ銅鉱山(ペルー)の生産量は、給鉱品位の低下などにより前期を下回り、455千tとなりました。(うち非支配持分を除く当社持分は16.8%)
シエラゴルダ銅鉱山(チリ)の生産量は、鉱石処理量の増加及び給鉱品位の上昇などにより前期を上回り、108千tとなりました。(うち非支配持分を除く当社持分は31.5%)
(製錬セグメント)
(単位:百万円)
(当社の主な製品別生産量)
(注)生産量には、受委託分を含めて表示しております。
セグメント利益は、銅価格は下落したものの、ニッケル及び金価格が上昇したこと、並びに、太平金属工業株式会社の事業撤退に伴い土地及び建物を売却したことによる売却益などにより、前期を上回りました。
また、電気銅の生産量は東予工場の定期炉修により前期を下回ったものの、電気ニッケルの生産量は前期を上回りました。
Coral Bay Nickel Corporationの生産量は、設備トラブルなどにより前期を下回りましたが、Taganito HPAL Nickel Corporationの生産量は、前期と比べ操業状況が改善したため前期を上回りました。
(材料セグメント)
(単位:百万円)
セグメント利益は、車載用途向けの需要の増加を背景として電池材料の販売量が増加したものの、在庫評価影響による悪化に加え、粉体材料の販売量の減少及び結晶材料における顧客の在庫調整などにより、前期を下回りました。
② 経営成績に重要な影響を与える要因について
主な要因として、資源・製錬セグメントは、非鉄金属価格及び為替レートの変動、材料セグメントは、市場動向の変化が挙げられます。詳細及び他の要因につきましては、「第2 事業の状況 2 事業等のリスク」に記載のとおりであります。
③ 財政状態
(単位:百万円)
当連結会計年度末の資産合計は前連結会計年度末に比べて減少しました。主な増減は次のとおりであります。現金及び現金同等物が増加したものの、その他の金融資産(非流動)に含まれる長期貸付金がIAS第28号「関連会社及び共同支配企業に対する投資」(以下「IAS第28号」という。)の改訂の影響により減少しました。また、その他の金融資産(非流動)に含まれる投資有価証券が保有株式の時価下落により減少しました。さらに、棚卸資産、営業債権及びその他の債権が減少しました。
負債合計は前連結会計年度末に比べ減少しました。主な増減は次のとおりであります。社債の発行があったものの、営業債務及びその他の債務、保有株式の評価差額に係る繰延税金負債が減少しました。
資本合計は、前連結会計年度末に比べ減少しました。主な増減は次のとおりであります。利益剰余金がIAS第28号の改訂による期首残高の減額により減少しました。また、保有株式に係るその他の包括利益を通じて公正価値で測定する金融資産が減少しました。
④ 財務指標
当社グループは、2019年度から2021年度までの3年間を対象とする「18中計」に基づき、さらなる企業価値・株主共同の利益の向上に邁進しております。
「18中計」においては、財務体質の健全性を示す指標として連結自己資本比率50%以上の維持、株主還元の指標として連結配当性向35%以上といたしました。当連結会計年度の親会社所有者帰属持分比率は58.3%となり、連結配当性向は35.4%となりました。
⑤ キャッシュ・フロー
(単位:百万円)
当連結会計年度の営業活動によるキャッシュ・フローは、税引前当期利益、営業債務及びその他の債務が減少したものの、棚卸資産、営業債権及びその他の債権が減少したことなどから、前連結会計年度に比べて収入が増加しました。
投資活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度にケブラダ・ブランカ銅鉱山(チリ)への参入に伴う長期貸付けによる多額の支出があったことなどから、前連結会計年度に比べて支出が減少しました。
財務活動によるキャッシュ・フローは、当連結会計年度は前連結会計年度と同様に社債を発行したものの、前連結会計年度は社債の償還などにより支出となりましたが、当連結会計年度は発行のみであったことなどから収入となりました。
⑥ 資本の財源及び資金の流動性
a)財務戦略の基本的な考え方
当社グループは、財務戦略の策定にあたり、コンシステンシー(経営の連続性)が重要であり、成長戦略の遂行と事業基盤の強化、そして、戦略を着実に収益化することが企業価値向上につながると考えています。当社グループでは、中長期の投資とリスクに備えて常に財務の健全性の保持に努めると同時に、収益性と資産効率の改善で中長期的に、ROAやROEを上昇させることを目指しています。
一方で、資源や製錬のプロジェクトでは、投資の回収が始まるまで一定期間を要することが通常です。このようなプロジェクトを進めながら、短期的なROAやROEを高めるだけの施策を取ることは、事業の性質上困難です。 そのため中長期でROA、ROEを高めていくことを目指しています。「18中計」ではフリーキャッシュ・フローが3カ年累計で-1,100億円となる見込みですが、CCC(キャッシュ・コンバージョン・サイクル)改善によるキャッシュ・フロー創出、グループ内CMS(キャッシュ・マネジメント・システム)等による資金効率化により財務体質強化を図り、さらなる大型プロジェクトやM&Aに備え、自己資本比率50%、格付「ダブルAマイナス」(㈱日本格付研究所(JCR))を維持し、今後の事業継続と成長投資に向けた投資余力を着実に高めていく考えです。また、同様に財務体質の強化により非鉄金属相場や為替などの事業環境の変動に備えてまいります。
b)資金調達と流動性マネジメント
当社は事業活動を支える資金調達に際して、低コストでかつ安定的に資金を確保することを目標として取り組んでいます。資金調達にあたっては、社債等の直接金融と銀行借入等の間接金融のバランスを見極めつつ、その時々のマーケット状況での有利手段を追求しています。資源・製錬事業における海外大型プロジェクトでは、現地のカントリーリスクにさらされることも多く、政府系金融機関による各種支援メニューや複数の金融機関による協調型融資の活用、プロジェクトファイナンスの組成など、その都度最適な資金調達方法を検討しております。
また、当社はそのような大型プロジェクトも含めた将来の設備投資等の資金需要に対応しつつ、経営の安定化から一定の手元流動性を維持することも必要であると考えています。
当社は、手元流動性の水準を考えるにあたり、流動性リスクとして連結売上高1.5カ月分と半年以内返済予定の借入金等の合計額を想定し、これに対し、現金・預金及び現金同等物(以下「手元現預金」)及びコマーシャルペーパー発行可能枠の未使用額を合わせた金額で賄うことで対応することとしています。また、金融市場の動向によりコマーシャルペーパーによる調達が一時的に困難になるリスクも想定し、発行に際してはコミットメントライン契約に基づく借入限度額の範囲内にとどめることを原則としています。
さらに、手元現預金が中長期にわたり必要額に満たなくなると想定される場合には、社債の発行や金融機関からの借入金等を通じて、必要な現預金残高を確保することを考えております。
なお、当社は、日本国内の市場においてJCRから「ダブルAマイナス」の長期発行体格付及び「J-ワンプラス」の国内CP格付を取得しており、資金調達にあたっては十分な信用力を保持しております。また、主要な国内金融機関と円貨及び外貨でのコミットメントライン契約を締結しており、金融・資本市場の流動性が逼迫した状況下でも、コミットメントラインを使用することによって十分な流動性を確保することができると考えております。
⑦ 重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、「連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則」(1976年大蔵省令第28号)第93条の規定によりIFRSに準拠して作成しております。連結財務諸表の作成にあたり、必要と思われる見積りは合理的な基準に基づいて実施しております。重要な会計方針及び見積りの詳細につきましては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 3.重要な会計方針 及び 4.重要な会計上の見積り及び見積りを伴う判断」に記載のとおりであります。
(2) 生産、受注及び販売の実績
① 生産実績及び受注実績
当社グループの生産・販売品目は広範囲かつ多種多様であり、また連結会社間の取引が複雑で、報告セグメントごとの生産実績及び受注実績を正確に把握することは困難なため、当社の主要な品目等についてのみ「(1) 経営成績等の状況の概要及び経営者の視点による分析・検討内容」において、各報告セグメントの業績に関連付けて記載しております。
② 販売実績
当連結会計年度における販売実績を報告セグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注)1.セグメント間の販売実績は、各セグメントに含めて表示しております。
2.主な相手先別の販売実績及び総販売実績に対する割合は次のとおりであります。
3.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要及び経営者の視点による分析・検討内容は次のとおりであります。
(注)「経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」に記載している金額のうち、「(1) 経営成績等の状況の概要及び経営者の視点による分析・検討内容 ⑤ キャッシュ・フロー」は、消費税等を含んだ金額であります。
① 経営成績
(単位:百万円)
売上高 | 税引前当期利益 | 親会社の所有者に 帰属する当期利益 | |
当連結会計年度 | 872,615 | 79,035 | 60,600 |
前連結会計年度 | 912,208 | 89,371 | 66,790 |
増減 | △39,593 | △10,336 | △6,190 |
増減率(%) | △4.3 | △11.6 | △9.3 |
(海外相場、為替)
単位 | 前連結会計年度 | 当連結会計年度 | 増減 (△は減少) | |
銅 | $/t | 6,341 | 5,860 | △481 |
金 | $/TOZ | 1,263.1 | 1,462.3 | 199.2 |
ニッケル | $/lb | 5.85 | 6.35 | 0.50 |
為替(TTM) | 円/$ | 110.92 | 108.74 | △2.18 |
当期の世界経済は、米中貿易摩擦などを背景に、景気は減速基調で推移し、第4四半期連結会計期間に顕在化した新型コロナウイルスの世界的な感染拡大により、景気の先行き不透明感が更に強まりました。
為替相場については、世界的な景気減速に加え、日米間の金利差が縮小したことなどを背景に、概ね円高ドル安で推移したことで、平均為替レートは前期と比べ円高となりました。
主要非鉄金属価格につきましては、世界経済の見通し悪化などにより、銅価格は概ね下落基調で推移しましたが、金価格は概ね上昇基調で推移しました。ニッケル価格は、インドネシアの鉱石輸出規制の前倒しによる供給懸念などにより第2四半期連結会計期間では一時的に上昇しましたが、第3四半期連結会計期間以降は需要低迷が懸念されたことなどにより下落基調で推移しました。この結果、銅の平均価格は前期を下回りましたが、ニッケル及び金の平均価格は前期を上回りました。
材料事業の関連業界におきましては、米中貿易摩擦や新型コロナウイルスの感染拡大による需要不振があったものの、当社の車載用電池向け部材の需要は堅調に推移しました。スマートフォン市場は、普及率の向上と成熟化により成長が頭打ちとなっており、更に新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受け、部材の在庫調整が懸念され始めました。
このような状況のなか、当期の連結売上高は、銅価格の下落や円高などにより、前期に比べ39,593百万円減少し、872,615百万円となりました。
連結税引前当期利益は、持分法による投資損益が好転しましたが、減収に加え、円高による為替差損益の変動などで金融収益が悪化したことなどにより、前期に比べ10,336百万円減少し、79,035百万円となりました。
親会社の所有者に帰属する当期利益は、連結税引前当期利益が減少したことなどにより、前期に比べ6,190百万円減少し、60,600百万円となりました。
セグメントの業績は、次のとおりであります。
(資源セグメント)
(単位:百万円)
前連結会計年度 | 当連結会計年度 | 増減 | 増減率(%) | |
売上高 | 130,078 | 114,861 | △15,217 | △11.7 |
セグメント利益 | 47,320 | 37,956 | △9,364 | △19.8 |
セグメント利益は銅価格の下落などにより前期を下回りました。
主要鉱山の概況は以下のとおりであります。
菱刈鉱山は順調な操業を継続し、販売鉱石の含有金量は計画通り、前期並みの6tとなりました。
モレンシー銅鉱山(米国)の生産量は、カソード生産の好調などにより前期を上回り、461千tとなりました。(うち非支配持分を除く当社持分は25.0%)
セロ・ベルデ銅鉱山(ペルー)の生産量は、給鉱品位の低下などにより前期を下回り、455千tとなりました。(うち非支配持分を除く当社持分は16.8%)
シエラゴルダ銅鉱山(チリ)の生産量は、鉱石処理量の増加及び給鉱品位の上昇などにより前期を上回り、108千tとなりました。(うち非支配持分を除く当社持分は31.5%)
(製錬セグメント)
(単位:百万円)
前連結会計年度 | 当連結会計年度 | 増減 | 増減率(%) | |
売上高 | 637,779 | 614,031 | △23,748 | △3.7 |
セグメント利益 | 40,935 | 48,257 | 7,322 | 17.9 |
(当社の主な製品別生産量)
製品 | 単位 | 前連結会計年度 | 当連結会計年度 | 増減 (△は減少) |
銅 | t | 454,177 | 399,399 | △54,778 |
金 | kg | 21,351 | 17,933 | △3,418 |
電気ニッケル | t | 56,674 | 58,813 | 2,139 |
フェロニッケル | t | 12,887 | 13,539 | 652 |
(注)生産量には、受委託分を含めて表示しております。
セグメント利益は、銅価格は下落したものの、ニッケル及び金価格が上昇したこと、並びに、太平金属工業株式会社の事業撤退に伴い土地及び建物を売却したことによる売却益などにより、前期を上回りました。
また、電気銅の生産量は東予工場の定期炉修により前期を下回ったものの、電気ニッケルの生産量は前期を上回りました。
Coral Bay Nickel Corporationの生産量は、設備トラブルなどにより前期を下回りましたが、Taganito HPAL Nickel Corporationの生産量は、前期と比べ操業状況が改善したため前期を上回りました。
(材料セグメント)
(単位:百万円)
前連結会計年度 | 当連結会計年度 | 増減 | 増減率(%) | |
売上高 | 219,396 | 228,635 | 9,239 | 4.2 |
セグメント利益 | 13,780 | 5,274 | △8,506 | △61.7 |
セグメント利益は、車載用途向けの需要の増加を背景として電池材料の販売量が増加したものの、在庫評価影響による悪化に加え、粉体材料の販売量の減少及び結晶材料における顧客の在庫調整などにより、前期を下回りました。
② 経営成績に重要な影響を与える要因について
主な要因として、資源・製錬セグメントは、非鉄金属価格及び為替レートの変動、材料セグメントは、市場動向の変化が挙げられます。詳細及び他の要因につきましては、「第2 事業の状況 2 事業等のリスク」に記載のとおりであります。
③ 財政状態
(単位:百万円)
前連結会計年度末 | 当連結会計年度末 | 増減 | |
資産合計 | 1,797,701 | 1,719,690 | △78,011 |
負債合計 | 646,421 | 608,830 | △37,591 |
資本合計 | 1,151,280 | 1,110,860 | △40,420 |
当連結会計年度末の資産合計は前連結会計年度末に比べて減少しました。主な増減は次のとおりであります。現金及び現金同等物が増加したものの、その他の金融資産(非流動)に含まれる長期貸付金がIAS第28号「関連会社及び共同支配企業に対する投資」(以下「IAS第28号」という。)の改訂の影響により減少しました。また、その他の金融資産(非流動)に含まれる投資有価証券が保有株式の時価下落により減少しました。さらに、棚卸資産、営業債権及びその他の債権が減少しました。
負債合計は前連結会計年度末に比べ減少しました。主な増減は次のとおりであります。社債の発行があったものの、営業債務及びその他の債務、保有株式の評価差額に係る繰延税金負債が減少しました。
資本合計は、前連結会計年度末に比べ減少しました。主な増減は次のとおりであります。利益剰余金がIAS第28号の改訂による期首残高の減額により減少しました。また、保有株式に係るその他の包括利益を通じて公正価値で測定する金融資産が減少しました。
④ 財務指標
当社グループは、2019年度から2021年度までの3年間を対象とする「18中計」に基づき、さらなる企業価値・株主共同の利益の向上に邁進しております。
「18中計」においては、財務体質の健全性を示す指標として連結自己資本比率50%以上の維持、株主還元の指標として連結配当性向35%以上といたしました。当連結会計年度の親会社所有者帰属持分比率は58.3%となり、連結配当性向は35.4%となりました。
⑤ キャッシュ・フロー
(単位:百万円)
前連結会計年度 | 当連結会計年度 | 増減 | |
営業活動によるキャッシュ・フロー | 114,744 | 136,545 | 21,801 |
投資活動によるキャッシュ・フロー | △142,354 | △70,334 | 72,020 |
財務活動によるキャッシュ・フロー | △29,047 | 9,149 | 38,196 |
換算差額 | 588 | △1,091 | △1,679 |
現金及び現金同等物の期首残高 | 137,330 | 81,261 | △56,069 |
現金及び現金同等物の期末残高 | 81,261 | 155,530 | 74,269 |
当連結会計年度の営業活動によるキャッシュ・フローは、税引前当期利益、営業債務及びその他の債務が減少したものの、棚卸資産、営業債権及びその他の債権が減少したことなどから、前連結会計年度に比べて収入が増加しました。
投資活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度にケブラダ・ブランカ銅鉱山(チリ)への参入に伴う長期貸付けによる多額の支出があったことなどから、前連結会計年度に比べて支出が減少しました。
財務活動によるキャッシュ・フローは、当連結会計年度は前連結会計年度と同様に社債を発行したものの、前連結会計年度は社債の償還などにより支出となりましたが、当連結会計年度は発行のみであったことなどから収入となりました。
⑥ 資本の財源及び資金の流動性
a)財務戦略の基本的な考え方
当社グループは、財務戦略の策定にあたり、コンシステンシー(経営の連続性)が重要であり、成長戦略の遂行と事業基盤の強化、そして、戦略を着実に収益化することが企業価値向上につながると考えています。当社グループでは、中長期の投資とリスクに備えて常に財務の健全性の保持に努めると同時に、収益性と資産効率の改善で中長期的に、ROAやROEを上昇させることを目指しています。
一方で、資源や製錬のプロジェクトでは、投資の回収が始まるまで一定期間を要することが通常です。このようなプロジェクトを進めながら、短期的なROAやROEを高めるだけの施策を取ることは、事業の性質上困難です。 そのため中長期でROA、ROEを高めていくことを目指しています。「18中計」ではフリーキャッシュ・フローが3カ年累計で-1,100億円となる見込みですが、CCC(キャッシュ・コンバージョン・サイクル)改善によるキャッシュ・フロー創出、グループ内CMS(キャッシュ・マネジメント・システム)等による資金効率化により財務体質強化を図り、さらなる大型プロジェクトやM&Aに備え、自己資本比率50%、格付「ダブルAマイナス」(㈱日本格付研究所(JCR))を維持し、今後の事業継続と成長投資に向けた投資余力を着実に高めていく考えです。また、同様に財務体質の強化により非鉄金属相場や為替などの事業環境の変動に備えてまいります。
b)資金調達と流動性マネジメント
当社は事業活動を支える資金調達に際して、低コストでかつ安定的に資金を確保することを目標として取り組んでいます。資金調達にあたっては、社債等の直接金融と銀行借入等の間接金融のバランスを見極めつつ、その時々のマーケット状況での有利手段を追求しています。資源・製錬事業における海外大型プロジェクトでは、現地のカントリーリスクにさらされることも多く、政府系金融機関による各種支援メニューや複数の金融機関による協調型融資の活用、プロジェクトファイナンスの組成など、その都度最適な資金調達方法を検討しております。
また、当社はそのような大型プロジェクトも含めた将来の設備投資等の資金需要に対応しつつ、経営の安定化から一定の手元流動性を維持することも必要であると考えています。
当社は、手元流動性の水準を考えるにあたり、流動性リスクとして連結売上高1.5カ月分と半年以内返済予定の借入金等の合計額を想定し、これに対し、現金・預金及び現金同等物(以下「手元現預金」)及びコマーシャルペーパー発行可能枠の未使用額を合わせた金額で賄うことで対応することとしています。また、金融市場の動向によりコマーシャルペーパーによる調達が一時的に困難になるリスクも想定し、発行に際してはコミットメントライン契約に基づく借入限度額の範囲内にとどめることを原則としています。
さらに、手元現預金が中長期にわたり必要額に満たなくなると想定される場合には、社債の発行や金融機関からの借入金等を通じて、必要な現預金残高を確保することを考えております。
なお、当社は、日本国内の市場においてJCRから「ダブルAマイナス」の長期発行体格付及び「J-ワンプラス」の国内CP格付を取得しており、資金調達にあたっては十分な信用力を保持しております。また、主要な国内金融機関と円貨及び外貨でのコミットメントライン契約を締結しており、金融・資本市場の流動性が逼迫した状況下でも、コミットメントラインを使用することによって十分な流動性を確保することができると考えております。
⑦ 重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、「連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則」(1976年大蔵省令第28号)第93条の規定によりIFRSに準拠して作成しております。連結財務諸表の作成にあたり、必要と思われる見積りは合理的な基準に基づいて実施しております。重要な会計方針及び見積りの詳細につきましては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 3.重要な会計方針 及び 4.重要な会計上の見積り及び見積りを伴う判断」に記載のとおりであります。
(2) 生産、受注及び販売の実績
① 生産実績及び受注実績
当社グループの生産・販売品目は広範囲かつ多種多様であり、また連結会社間の取引が複雑で、報告セグメントごとの生産実績及び受注実績を正確に把握することは困難なため、当社の主要な品目等についてのみ「(1) 経営成績等の状況の概要及び経営者の視点による分析・検討内容」において、各報告セグメントの業績に関連付けて記載しております。
② 販売実績
当連結会計年度における販売実績を報告セグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称 | 当連結会計年度(百万円) | 前連結会計年度比(%) |
資源 | 114,861 | △11.7 |
製錬 | 614,031 | △3.7 |
材料 | 228,635 | 4.2 |
報告セグメント計 | 957,527 | △3.0 |
その他 | 10,020 | 13.0 |
調整額 | △94,932 | 13.1 |
連結財務諸表計上額 | 872,615 | △4.3 |
(注)1.セグメント間の販売実績は、各セグメントに含めて表示しております。
2.主な相手先別の販売実績及び総販売実績に対する割合は次のとおりであります。
相手先 | 前連結会計年度 | 当連結会計年度 | ||
金額(百万円) | 割合(%) | 金額(百万円) | 割合(%) | |
パナソニック㈱ | 179,529 | 19.7 | 178,966 | 20.5 |
3.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。