有価証券報告書-第98期(平成28年4月1日-平成29年3月31日)

【提出】
2017/06/16 12:13
【資料】
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【項目】
126項目

対処すべき課題

(1) 会社の経営の基本方針
当社グループは、「印刷を基盤に培った固有技術を核とする事業活動を通して、広く社会との相互信頼に基づいた≪共生≫を目指す」ことを企業理念としています。企業理念に掲げる≪共生≫のあり方は、当社グループとステークホルダーがともに自らの明確なビジョンを持ち、その実現に向けて互いに影響し合い、ともに価値ある未来を創造することを意図しています。こうした当社の基本的な考え方はブランドステートメント“Empowering Your Vision”に表現されています。
こうした企業理念のもと、私たちが大切にすべき価値観を以下のとおり定めています。
① Growth Based on Customer Satisfaction
私たちは、常に新しいお客さま価値を創造し、成長の原動力とします。
② Commitment to Results
私たちは、チャレンジングな目標を持ち、成果を出します。
③ Magnify Leadership
私たちは、組織や立場の違いを超えて、困難を突破するリーダーシップを発揮します。
④ Diverse Capabilities
私たちは、組織の能力を高め、成長の原動力となるような多様性を尊重します。
⑤ Sustainability Through Integrity
私たちは、グローバル社会の一員として、個人の尊厳を大切にし、公正な事業活動を行います。
(2) 中長期的な会社の経営戦略と目標とする経営指標
当社グループは持続的な成長を目指し、2015年4月から事業ポートフォリオの組み換えを基本戦略とする第5次中期経営計画(2015年度~2017年度)を運用しています。
その骨子は以下のとおりです。
① 中期ビジョン
「印刷技術に新たなコア技術を獲得・融合し、グローバル成長市場で事業ポートフォリオの組み換えを完成させる。」
② 第5次中期経営計画の概要
ⅰ 事業ポートフォリオの組み換えを徹底
・ 製品・市場ポートフォリオの組み換え
・ 不採算分野からの撤退
・ サプライチェーンにおける垂直統合の推進
・ 新たなコア技術の取り込み
・ M&Aを活用した成長
ⅱ 企業理念体系の実践
・ 社員の日々の行動やプロセスに落とし込む
③ 第5次中期経営計画の定量目標(2017年度)
ⅰ 連結売上高: 1,500億円
ⅱ 営業利益: 120億円
ⅲ ROE: 10%以上
ⅳ ROIC: 8%以上
ⅴ 新事業・新製品の売上高比率: 35%以上
※当社は、2017年度より決算期を3月31日から12月31日に変更し、当社グループの決算期を12月31日に統一します。従って、決算期変更の経過期間となる2017年度は、2017年4月1日から2017年12月31日までの9カ月決算となります。上記、第5次中期経営計画の定量目標は、決算期変更の決定以前に設定したものであり、2017年4月1日から2018年3月31日の12カ月間における目標数値となります。
(3) 会社の対処すべき課題
次期のグローバル経済情勢については、緩やかな景気の回復が続くことが期待されています。ただし、アメリカの政策動向やイギリスのEU離脱問題などに伴う先行きの不透明感には引き続き留意が必要です。わが国の経済についても、景気は緩やかな回復基調が続く見込みですが、海外経済や為替の動向には留意する必要があります。
次期は2015年4月1日にスタートした第5次中期経営計画の最終年度となります。当社グループは、中期ビジョンに掲げる「印刷技術に新たなコア技術を獲得・融合し、グローバル成長市場で事業ポートフォリオの組み換えを完成させる」ことを目指します。
主力のディバイス事業においては大型の新規受注が量産フェーズに移行し、全社の業績を牽引することが期待されます。一方、産業資材事業においては自動車や蒸着紙の分野の売上高が着実に拡大する見込みであるほか、ライフイノベーション事業ではGraphic Controlsグループの連結が通期で業績寄与するなど、事業ポートフォリオの組み換えによる成長は、第5次中期経営計画の想定どおりに進展する見通しです。
このように、当社の事業領域は印刷の枠組みを超えて大きく進化・拡大を続けていることから、当社は2017年10月6日付で社名を日本写真印刷株式会社からNISSHA株式会社に変更いたします。
なお、当社は財務および事業の方針の決定を支配する者のあり方に関する基本方針を定めており、その内容等(会社法施行規則第118条第3号に掲げる事項)は次のとおりです。
株式会社の支配に関する基本方針
Ⅰ.基本方針の内容
上場会社・公開会社である当社の株式は、自由な取引が認められており、当社は、会社の支配権の移転を伴うような大規模な株式の買付提案またはこれに類似する行為に応じるか否かの判断は、最終的には、株主のみなさまのご意思に基づき行われるべきものであると考えております。従いまして、大規模な株式の買付提案であっても、当社グループの企業価値・株主のみなさまの共同の利益に資するものであれば、これを一概に否定するものではありません。
当社では、企業価値や株主のみなさまの共同の利益を確保・向上させるためには、当社の企業理念を礎とし、未来志向型企業として常に価値ある製品・サービスを提供することを通じて社会に貢献することが必要不可欠であると考えております。具体的には、グローバルベースで成長市場を捕捉し、他社にはできないものづくりを通じて当社ならではの付加価値の高い製品・サービスを提供し続けること、そして絶え間ない研究開発・技術開発によってこれまで培ってきた印刷技術の概念を打ち破ることが、当社の企業価値・株主のみなさまの共同の利益の確保・向上につながるものと考えております。
当社の財務および事業の方針の決定を支配する者は、このような基本的な考え方を十分に理解し、当社の企業価値・株主のみなさまの共同の利益を中・長期的に確保し、向上させる者でなければならないと考えております。
従いまして、上記のような基本的な考え方を十分に理解せず、当社の企業価値・株主のみなさまの共同の利益に資さない不適切な当社株式の大規模な買付提案またはこれに類似する行為を行う者は、当社の財務および事業の方針の決定を支配する者として不適切であると考え、当社はそれを抑止するための取り組みが必要不可欠であると考えております。
Ⅱ. 基本方針の実現に資する特別な取り組み
当社は、1929年に京都の地で創業して高級美術印刷を志向し、高品位な印刷技術によって「高級美術印刷の日写」と呼ばれる確固たるブランドを築きました。一方、1960年代以降、当社は紙への印刷だけではいずれ成長に限界が来るとの危機感から「水と空気以外には何にでも印刷する」という強い決意で事業領域の拡大に取り組み、現在の産業資材事業・ディバイス事業を誕生させました。そして1990年代の後半以降、コンシューマー・エレクトロニクスに関連する産業がグローバルベースで高い成長を遂げる中、当社はこの分野に経営資源を集中し、事業規模の拡大を実現しました。しかし、2008年の世界的な金融危機(リーマンショック)以降、コンシューマー・エレクトロニクスの分野では、製品需要の急激な変動や製品・サービスの低価格化が常態化するようになりました。
2015年度から運用が開始された第5次中期経営計画において、当社は「印刷技術に新たなコア技術を獲得・融合し、グローバル成長市場で事業ポートフォリオの組み換えを完成させる」ことを中期ビジョンに掲げ、コンシューマー・エレクトロニクス業界への過度な依存を是正し、バランスの取れた事業・製品ポートフォリオを再構築する、「組み換え」の戦略に着手しています。また、当社では、中期経営計画の進捗を捕捉するための経営管理指標として、ROEおよびROICを採用し、第5次中期経営計画ではROE10%以上、ROIC8%以上を目標としています。
前述のとおり、当社は創業以来、経営者の強いリーダーシップのもと、経営環境の変化に合わせて、これに適応した戦略を実践してきました。当社はこの強いリーダーシップとともにコーポレートガバナンスを強化することにより、迅速かつ果断な意思決定が促進され、同時に経営の透明性、公正性を確保することができると考えており、コーポレートガバナンスを重要な経営課題と認識しています。
当社は、執行役員制度を導入し、取締役会が担うべき戦略策定および経営監視機能と、執行役員が担うべき業務執行機能との分化を図っています。また、取締役会のダイバーシティーを推進し、現在の取締役会は、独立性の高い社外取締役4名を含む取締役8名(社外取締役比率50%、女性比率12.5%)で構成されています。社外取締役は他社での企業経営の経験や、コーポレートガバナンス、経営戦略、事業戦略、IT、金融経済全般に関する高い見識などから有益な指摘、意見を述べており、取締役会の議論は活性化しています。また、2015年10月には、当社はコーポレートガバナンス基本方針を制定しました。当社はその基本方針に基づき、社外取締役が過半数を占めかつ委員長を務める指名・報酬委員会を設置し、社外取締役の知見を活用することで役員の選任や報酬に関して客観性と公正性の確保を図るとともに、取締役会の実効性の評価を年1回実施し、取締役会の機能のさらなる向上に努めています。
当社は、以上の取り組みを継続して実行することによって、当社の企業価値・株主のみなさまの共同の利益の確保・向上を実現できるものと考えています。
Ⅲ. 基本方針に照らして不適切な者によって当社の財務および事業の方針の決定が支配されることを防止するための取り組み
当社は、2016年5月12日開催の当社取締役会において、当社の企業価値・株主のみなさまの共同の利益のより一層の確保・向上を目的として、当社株式の大規模買付行為に関する対応方針の一部改定(以下、「本プラン」といいます。)を決議し、2016年6月17日開催の第97期定時株主総会において株主のみなさまにご承認いただきました。
本プランは、当社が発行者である株券等について、保有者の株券等保有割合が20%以上となる買付け、もしくは、当社が発行者である株券等について、公開買付けに係る株券等の株券等所有割合およびその特別関係者の株券等所有割合の合計が20%以上となる公開買付けに該当する行為もしくはこれに類似する行為(以下、「買付等」といいます。)を行うまたは行うことを提案する者(以下、「買付者等」といいます。)が現れた場合に、当該買付等に応じるべきか否かを株主のみなさまが判断し、あるいは当社取締役会が代替案を提示するために必要な情報や時間を確保すること、株主のみなさまのために買付者等との交渉を行うこと等を可能とすることを目的とし、その実現のために必要な手続を定めています。買付者等が本プランにおいて定められた手続に従うことなく買付等を行う場合、または、買付者等による買付等が当社の企業価値・株主のみなさまの共同の利益を著しく損なうと判断される場合は、一定の対抗措置を実施することがあります。
本プランの詳細につきましては、当社ウェブサイトをご参照ください。
Ⅳ. 上記の取り組みについての取締役会の判断
上記Ⅱ.の取り組みは、当社の企業価値・株主のみなさまの共同の利益を確保・向上させるための施策であり、その結果が株主および投資家のみなさまによる当社株式の評価に適正に反映されることにより、当社の企業価値・株主のみなさまの共同の利益を著しく損なうおそれのある買付等は困難になるものと考えられます。
上記Ⅲ.の取り組みは、当社の企業価値・株主のみなさまの共同の利益を確保・向上させるための手続を定めるものです。また、本プランにおいては、(ⅰ)株主総会において株主のみなさまのご承認を得て導入されたものであることに加え、一定の場合には対抗措置の実施または不実施につき株主のみなさまのご意思を確認する仕組みが設けられていること、(ⅱ)株主総会で選任された取締役で構成される取締役会の決議によりいつでも本プランを廃することができること、(ⅲ)当社取締役会の恣意的判断を排除するため、独立委員会を設置し、取締役会は独立委員会の勧告を最大限尊重して意思決定を行うものとしていること、(ⅳ)本プランの発動に関する合理的な客観的要件が設定されていること等が定められております。
従いまして、上記Ⅱ.およびⅢ.の取り組みは、いずれも、基本方針に沿うものであり、株主のみなさまの共同の利益の確保・向上に資するものであり、また、当社の役員の地位の維持を目的とするものではないと考えております。