有価証券報告書-第127期(平成29年4月1日-平成30年3月31日)

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2018/06/27 14:27
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135項目
(経営成績等の状況の概要)
(1) 財政状態及び経営成績の概要
当連結会計年度(2017年4月1日~2018年3月31日、以下、「当期」)における世界経済は、米国トランプ政権の通商政策や北朝鮮情勢などのリスクが懸念されたものの、概ね堅調に推移しました。一方、日本経済は輸出の増加や設備投資の回復、底堅い個人消費などに支えられ、緩やかな景気回復が続きました。
このような状況の中で、当社、連結子会社及び持分法適用会社(以下、「当社グループ」)の当期における連結業績は、マテリアル領域においてケミカル事業の交易条件が改善したことに加え、各事業の販売も好調に推移したことなどから、売上高は2兆422億円となり前連結会計年度(以下、「前期」)比1,592億円の増収、営業利益は1,985億円で前期比392億円の増益、経常利益は2,125億円で前期比519億円の増益となりました。また、親会社株主に帰属する当期純利益は、投資有価証券売却益を計上したことや、米国税制改正の影響により法人税等が減少したことなどから、1,702億円で前期比552億円の増益となりました。これにより、売上高は、初めて2兆円を超え、過去最高を更新し、営業利益、経常利益、親会社株主に帰属する当期純利益全ての利益項目についても過去最高を更新しました。
(セグメント別概況)
当社グループの3つの報告セグメント「マテリアル」「住宅」「ヘルスケア」及び「その他」に区分してご説明します。なお、第1四半期連結会計期間より、組織変更に伴い、従来「その他」に含めていた電気供給事業を「マテリアル」セグメントに含めて表示しています。それに伴い、前期比較については、前期の数値を更新後のセグメント区分に組替えた数値で比較しています。
「マテリアル」セグメント
売上高は1兆877億円で前期比1,098億円の増収となり、営業利益は1,219億円で前期比334億円の増益となりました。
繊維事業では、原燃料価格高騰の影響を受けましたが、自動車内装などに使用されるマイクロファイバースエード「ラムース™」を中心に業績が堅調に推移し、前期比増収、微増益となりました。
ケミカル事業の石油化学事業では、アクリロニトリルなどの交易条件が改善し、前期比増収、増益となりました。高機能ポリマー事業では、低燃費タイヤ向け合成ゴムにおいて交易条件が改善したことや、自動車用部品などに使用されるエンジニアリング樹脂の販売数量が増加したことなどから、前期比増収、増益となりました。高機能マテリアルズ事業・消費財事業では、イオン交換膜や電子材料製品などの販売数量が増加したことや、「サランラップ™」の販売が堅調に推移したことなどから、前期比増収、増益となりました。
エレクトロニクス事業のセパレータ事業では、リチウムイオン二次電池用セパレータを中心に各製品の販売数量が大幅に増加したことなどから、前期比増収、増益となりました。電子部品事業では、スマートフォン向けカメラモジュール用電子部品や家電向け磁気センサなどの販売が堅調に推移したことなどから、前期比増収、増益となりました。
なお、繊維事業では、宮崎県延岡市において、昨年9月にマイクロファイバースエード「ラムース™」の製造設備増設を、本年1月にナイロン66繊維「レオナ™」の製造設備増設を決定しました。
ケミカル事業では、昨年7月に、シンガポールにおける低燃費タイヤ向け合成ゴムの製造設備増設を決定しました。また、昨年8月に、中国・常熟市におけるエンジニアリング樹脂のコンパウンド製造工場の建設を決定しました。
エレクトロニクス事業では、本年1月に、滋賀県守山市及び米国・ノースカロライナ州におけるリチウムイオン二次電池用セパレータの製造設備の増設をすることを決定しました。また、本年1月に、当社子会社の旭化成エレクトロニクス㈱が、スウェーデンのガスセンサモジュールメーカーであるSenseair ABの株式を取得する契約を締結しました。
「住宅」セグメント
売上高は6,410億円で前期比220億円の増収となり、営業利益は644億円で前期比3億円の微増益となりました。
住宅事業では、集合住宅「へーベルメゾン™」を中心に引渡単価が上昇しましたが、労務費や広告宣伝費などが増加したことなどから、前期比増収、営業利益は前期並みとなりました。建築請負部門の受注高は、戸建住宅は減少しましたが、集合住宅が増加したことから、前期比1.2%の増加となりました。また、不動産部門では、賃貸管理事業が順調に推移し、リフォーム部門も前期並みの業績で推移したことなどから、前期比増収、増益となりました。
建材事業では、フェノールフォーム断熱材「ネオマフォーム™」などの販売数量が堅調に推移しましたが、原燃料価格高騰の影響を受けたことなどから、前期比増収、減益となりました。
なお、住宅事業では、昨年7月に、オーストラリアにおいて戸建住宅の建築請負を中心とする住宅事業に参入するため、McDonald Jones Homes Pty Ltd.との資本提携を実施しました。
建材事業では、本年1月に、最高性能のフェノールフォーム断熱材「ネオマゼウス™」の販売を開始しました。
「ヘルスケア」セグメント
売上高は2,963億円で前期比261億円の増収となり、営業利益は395億円で前期比75億円の増益となりました。
医薬事業では、骨粗鬆症治療剤「テリボン™」などの販売数量が増加しましたが、排尿障害改善剤「フリバス™」を中心に後発医薬品の影響を受けたことなどから、前期比減収、減益となりました。
医療事業では、為替の効果に加え、各事業とも堅調に推移したことなどから、前期比増収、増益となりました。
クリティカルケア事業では、医療機関向け除細動器の販売数量が大幅に増加し、着用型自動除細動器「LifeVest™」の業績が堅調に推移したことなどから、前期比増収、増益となりました。
なお、医薬事業では、昨年5月に、骨粗鬆症治療剤「テリボン™」の投与期間上限延長の承認を取得しました。
医療事業では、昨年12月に、宮崎県延岡市におけるウイルス除去フィルター「プラノバ™」の紡糸工場新設による中空糸生産能力増強の決定をしました。
「その他」
売上高は173億円で前期比12億円の増収となり、営業利益は19億円で前期比1億円の減益となりました。
当期末の総資産は、売上が好調であったことや期末日が休日であったことの影響で現金及び預金並びに受取手形及び売掛金が増加したことなどから、前期比616億円増加し、2兆3,161億円となりました。
(2) キャッシュ・フローの状況
当期の営業活動によるキャッシュ・フローは2,499億円の収入(前期比809億円の収入の増加)、投資活動によるキャッシュ・フローは1,103億円の支出(前期比204億円の支出の増加)となり、フリー・キャッシュ・フロー(営業活動によるキャッシュ・フローと投資活動によるキャッシュ・フローの合計)は1,396億円の収入となりました。財務活動によるキャッシュ・フローは1,344億円の支出(前期比605億円の支出の増加)となりました。以上の結果、当期末の現金及び現金同等物の残高は、前期に比べ45億円増加し1,486億円となりました。
(生産、受注及び販売の状況)
(1) 生産実績
当社グループ(当社及び連結子会社、以下同じ)の生産品目は広範囲かつ多種多様であり、同種の製品であっても、その容量、構造、形式等は必ずしも一様ではないため、セグメントごとに生産規模を金額あるいは数量で示すことはしていません。
このため、生産の状況については、(経営成績等の状況の概要)における各セグメントの業績に関連付けて示しています。
(2) 受注状況
当社グループは注文住宅に関して受注生産を行っており、その受注状況は次のとおりです。その他の製品については主として見込生産を行っているので、特記すべき受注生産はありません。
セグメントの名称受注高(百万円)前期比(%)受注残高(百万円)前期比(%)
住宅405,581101.2520,860101.0

(注) 上記の金額には、消費税等は含まれていません。
(3) 販売実績
当期における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
セグメントの名称販売実績(百万円)前期比(%)
マテリアル1,087,720111.6
住宅640,988103.6
ヘルスケア296,258109.7
その他17,25191.1
合計2,042,216108.5

(注) 1 セグメント間の取引については、相殺消去しています。
2 上記の金額には、消費税等は含まれていません。
3 前期及び当期において、主要な販売先として記載すべきものはありません。
4 第1四半期連結会計期間より、組織変更に伴い、従来「その他」に含めていた電気供給事業を「マテリアル」セグメントに含めて表示しています。それに伴い、前期比較については、前期の数値を更新後のセグメント区分に組替えた数値で比較しています。

(経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容)
文中における将来に関する事項は、有価証券報告書提出日(2018年6月27日)現在において当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社、以下同じ)が判断したものです。
(1) 重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されています。この連結財務諸表を作成するにあたり重要となる会計方針については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載されているとおりです。
当社グループは、退職給付会計、税効果会計、貸倒引当金、たな卸資産の評価、投資その他の資産の評価、訴訟等の偶発事象などに関して、過去の実績や当該取引の状況に照らして、合理的と考えられる見積り及び判断を行い、その結果を資産・負債の帳簿価額及び収益・費用の金額に反映して連結財務諸表を作成していますが、実際の結果は見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。
(2) 財政状態の分析
(流動資産)
流動資産は、受取手形及び売掛金が386億円、たな卸資産が130億円増加したことなどから、前期比644億円増加し、9,590億円となりました。
(固定資産)
固定資産は、投資有価証券が307億円増加したものの、無形固定資産が482億円減少したことなどから、前期比28億円減少し、1兆3,572億円となりました。
(流動負債)
流動負債は、支払手形及び買掛金が239億円、未払法人税等が135億円増加したものの、コマーシャル・ペーパーが360億円、1年内償還予定の社債が200億円減少したことなどから、前期比57億円減少し、5,891億円となりました。
(固定負債)
固定負債は、長期借入金が494億円、繰延税金負債が141億円減少したことなどから、前期比697億円減少し、4,218億円となりました。
(有利子負債)
有利子負債は、前期比1,011億円減少し、3,017億円となりました。
(純資産)
純資産は、配当の支払391億円があったものの、親会社株主に帰属する当期純利益を1,702億円計上したことなどから、当期末の純資産は前期末の1兆1,681億円から1,371億円増加し、1兆3,052億円になりました。
その結果、1株当たり純資産額は前期比97円75銭増加し922円11銭となり、自己資本比率は前期末の51.1%から55.6%となりました。D/Eレシオは、前期末から0.12ポイント改善し、0.23となりました。

(3) 経営成績の分析
(売上高と営業利益)
当期の売上高は、2兆422億円で前期比1,592億円の増収となりました。海外売上高は、7,677億円で「マテリアル」セグメントを中心に前期比1,113億円増加し、売上高に占める海外売上高の割合は、37.6%で前期比2.7ポイント増加しました。国内売上高については、「マテリアル」セグメントや「住宅」セグメントを中心に前期比479億円増加し、1兆2,745億円となりました。
当期の営業利益は、1,985億円で前期比392億円の増益となりました。当期の売上原価率は68.2%と前期比0.6ポイントの改善となりました。また、売上高販管費率は、販管費が231億円増加したものの、売上高が増加したことから、22.1%と前期比0.6ポイントの改善となりました。なお、売上高営業利益率は、9.7%と前期比1.3ポイントの改善となりました。
(営業外損益と経常利益)
当期の営業外損益は、141億円の利益で、前期の14億円の利益から127億円改善しました。これは、持分法による投資損益の改善があったことなどによるものです。この結果、経常利益は2,125億円で、前期比519億円の増益となりました。
(特別損益)
当期の特別損益は、58億円の利益で、前期の32億円の損失から90億円改善しました。これは、事業構造改善費用15億円、固定資産処分損63億円、減損損失22億円などによる特別損失を99億円計上した一方で、投資有価証券売却益152億円などによる特別利益を157億円計上したことによるものです。
(親会社株主に帰属する当期純利益)
経常利益の2,125億円に特別損益58億円を加えた結果、税金等調整前当期純利益は2,183億円となりました。ここから税金費用461億円(法人税、住民税及び事業税632億円から法人税等調整額171億円を控除した額)及び非支配株主に帰属する当期純利益19億円を控除した親会社株主に帰属する当期純利益は1,702億円で、前期比552億円の増益となりました。
この結果、1株当たり当期純利益金額は121円93銭となり、前期比39円59銭増加しました。
(4) キャッシュ・フローの分析
当期のフリー・キャッシュ・フロー(営業活動によるキャッシュ・フローと投資活動によるキャッシュ・フ
ローの合計額)は、税金等調整前当期純利益や減価償却費を源泉とした収入が、固定資産の取得や法人税等の
支払などによる支出を上回り、1,396億円の収入となりました。財務活動によるキャッシュ・フローでは、配
当金の支払などにより、1,344億円の支出となりました。
以上の結果、現金及び現金同等物の期末残高は、前期比45億円増加し、1,486億円となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当期の営業活動によるキャッシュ・フローは、法人税等の支払495億円及び売上債権の増加390億円などの支出があったものの、税金等調整前当期純利益2,183億円、減価償却費954億円などの収入があったことから、2,499億円の収入(前期比809億円の収入の増加)となりました。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当期の投資活動によるキャッシュ・フローは、貸付金の回収による収入306億円、投資有価証券の売却による収入178億円などがあったものの、有形固定資産の取得による支出829億円、貸付による支出453億円、無形固定資産の取得による支出134億円、投資有価証券の取得による支出116億円などがあったことから、1,103億円の支出(前期比204億円の支出の増加)となりました。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当期の財務活動によるキャッシュ・フローは、長期借入れによる収入154億円などの収入があったものの、配当金の支払391億円、コマーシャル・ペーパーの減少360億円、短期借入金の減少289億円、長期借入金の返済による支出235億円及び社債の償還による支出200億円などがあったことから、1,344億円の支出(前期比605億円の支出の増加)となりました。
(5) 財務政策について
コスト競争力の向上、製品力の向上、事業構造改善などによる収益力強化、グループファイナンスの活用や適正在庫水準の維持等による資金効率化などにより、フリー・キャッシュ・フローの拡大を目指します。また、資金調達活動については、当社グループを取り巻く金融情勢に機動的に対応し、金融機関借入、社債、コマーシャル・ペーパーなど多様な調達手段により、より安定的で低コストの資金調達を目指します。
これらの資金を中期経営計画「Cs for Tomorrow 2018」の戦略の柱である「成長・収益性の追求」、「新事業の創出」、「グローバル展開の加速」による事業拡大のための戦略投資資金及び株主の皆様への配当原資等に活用していきます。
これらの施策を進めることにより、当社グループの企業価値向上、株主の皆様への利益還元を図る一方、財務規律にも配慮し、健全な財務体質の維持を目指していきます。