有価証券報告書-第129期(平成31年4月1日-令和2年3月31日)

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2020/06/24 12:05
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本項の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの分析は、将来のリスク、不確実性及び仮定を伴う予測情報を含んでいます。これらの記述は、現時点で当社が入手している情報を踏まえた一定の前提条件や見解に基づくものであり、「第2 事業の状況 2 事業等のリスク」等に記載された事項及びその他の要因により、当社グループの実際の業績はこれらの予測された内容とは大幅に異なる可能性があります。
(1) 経営成績等の状況の概要及び経営者の視点による分析・検討内容
① 経営成績
Ⅰ 当社グループ全体
当社グループの当連結会計年度(2019年4月1日~2020年3月31日、以下、「当期」)における連結業績は、「住宅」セグメントは不動産部門が堅調に推移し、「ヘルスケア」セグメントはクリティカルケア事業の順調な拡大により、それぞれ前連結会計年度(以下、「前期」)比増益となりましたが、「マテリアル」セグメントにおいて中国市場成長鈍化、自動車市場減速や石化市況の下落に加え、第4四半期からの新型コロナウイルスによる世界経済悪化の影響を受けたため、売上高は2兆1,516億円となりほぼ前期並み、営業利益は1,773億円で前期比323億円の減益、経常利益は1,840億円で前期比360億円の減益となりました。また、親会社株主に帰属する当期純利益は、固定資産の減損損失や事業構造改善費用の計上等により、1,039億円と前期比436億円の減益となりました。2019年から2021年までの3ヵ年の中期経営計画「Cs+ for Tomorrow 2021」の初年度としては、対前期比減収減益という厳しいスタートとなりました。
「Cs+ for Tomorrow 2021」では、「サステナビリティ」を基本コンセプトとし、「持続可能な社会への貢献」を目指しながら、当社グループの「持続的な企業価値向上」を実現していく好循環を追求することとしました。自動車における「CASE」やAI、IoT等の技術革新、消費者の価値観等がグローバルに急速に変化する中、当社グループは積極的な設備投資やM&A・マーケティング活動の強化などに取り組み、これらの変化に対応してきました。
〈当社グループの業績〉
経営指標2017年度2018年度2019年度前期との
差異
収益性売上高(億円)20,42221,70421,516△188
営業利益(億円)1,9852,0961,773△323
売上高営業利益率(%)9.79.78.2△1.5
EBITDA(億円)3,1193,1362,956△180
売上高EBITDA率(%)15.314.513.7△0.8
親会社株主に帰属する当期純利益(億円)1,7021,4751,039△436
EPS(円)121.93105.6674.85△30.8
資本効率ROIC(%)9.78.86.6△2.2
ROE(%)14.011.17.6△3.5
財務健全性D/Eレシオ0.230.310.520.21


Ⅱ セグメント別
ⅰ 「マテリアル」セグメント(価値提供注力分野:「Environment & Energy」「Mobility」「Life Material」)
売上高は1兆931億円で前期比831億円の減収となり、営業利益は924億円で前期比372億円の減益となりました。新型コロナウイルス感染拡大の影響を含めた市場環境の変動の影響を受けて減益となっているため、市場環境に左右され難い事業ポートフォリオへの転換の重要性を改めて認識しています。
・ 基盤マテリアル事業
売上高:3,350億円(前期比647億円の減収) 営業利益:266億円(前期比265億円の減益)
事業全体では、水島地区のナフサクラッカーの臨時修理や誘導品の製造設備の定期修理に加えて、下期に発生したナフサクラッカーの設備トラブルを起因とする操業度悪化による減益の影響が出ています。また、石油輸出国機構(OPEC)プラスの会合において協調減産協議が決裂に終わったことや新型コロナウイルス感染拡大の影響による世界的な経済危機などにより石油製品、石化製品の需要が減少したことを受け、ナフサ等の市況価格が下落し、在庫受払差も減益の要因となりました。事業規模が大きいアクリロニトリル事業については、市況価格の下落による在庫受払差に加えて、本製品の主力工場である韓国のTongsuh Petrochemical Corporationにおいては韓国ウォン安の影響により減益となっています。販売価格フォーミュラの改善を進め、安定的な収益を創出できるよう努めていきます。基盤マテリアル事業では、引き続きナフサ等の市況価格や自動車や電子機器等の川下のサプライチェーンにおける需要が不透明であるため、状況を注視していく必要があると認識しています。
・ パフォーマンスプロダクツ事業
売上高:4,361億円(前期比210億円の減収) 営業利益:337億円(前期比136億円の減益)
本事業は、繊維、エンジニアリング樹脂や合成ゴム等、自動車用途の素材の割合が大きいため、その業績はグローバルでの自動車生産台数の増減の影響を強く受けます。当期は、前期に買収したSage Automotive Interiors, Inc.の連結子会社化による利益貢献がありましたが、自動車市場の低迷に加え、米中貿易摩擦による中国市場低迷の影響を受けた他、第4四半期からの新型コロナウイルス感染拡大の影響による全体的な需要の落ち込みなどから自動車用途、衛生材料用途、衣料用途の製品で販売数量が減少しています。また、各事業における固定費の増加等の減益要因もありました。今後においては、コロナ禍後の自動車市場の構造変化を見極め、変化するニーズに対応できる高付加価値型事業へのシフトを加速していきたいと考えています。また、合成ゴム事業においては、販売量の減少に加えて、原料市況悪化や汎用分野での競争激化を理由とした交易条件の悪化により収益性が低下したことを受けて、シンガポールの合成ゴム製造設備にて174億円の減損損失を計上しました。より付加価値の高い次世代品の開発・拡販にリソースを集中し、早期立ち上げによって収益性の改善を図っていきたいと考えています。
・ スペシャルティソリューション事業
売上高:3,166億円(前期比42億円の減収) 営業利益:304億円(前期比26億円の減益)
事業規模が大きいリチウムイオン電池用セパレータの業績は、環境対応車を中心とした自動車やスマートフォン等民生機器、また蓄電システム(ESS)等の需要動向に影響を受けます。湿式タイプの「ハイポア™」は環境対応車向けの需要が拡大する中、生産能力増強が寄与し、販売数量が増加しました。一方、乾式タイプの「セルガード™」は韓国でのESS火災の影響による需要減少が継続したことなどにより、販売量が減少しました。ESS向けのリチウムイオン電池用セパレータについては一時的には需要が減少しましたが、クリーンエネルギーの需要は引き続き伸びていくものと考えており、今後も需要の拡大を見込んでいます。また、5G用の情報通信機器向けの需要が拡大し、電子材料は順調に推移する一方、スペシャルティソリューション事業全体として円高によるマイナスの影響を受けました。
・ 「マテリアル」セグメントの主な活動内容
「Environment & Energy」分野においては、リチウムイオン電池用セパレータ「ハイポア™」等の能力増強を進めています。
「Mobility」分野では、未来の自動車の快適空間を提案することを目的に車室空間のコンセプトモック「AKXY™ POD」の制作・展示等の活動を通し、ソリューション提供力を強化しました。また、自動車内装材、家具、IT機器アクセサリーなど様々な用途向けの人工皮革「ラムース™」の生産能力増強を実施し、さらには前期に買収したSage Automotive Interiors, Inc.が欧州自動車市場における事業拡大と基盤強化を目的に、大手自動車シートサプライヤーであるAdient plcの自動車内装ファブリック事業の買収契約を締結し、着実にバリューチェーン展開を進めています。
ⅱ 「住宅」セグメント(価値提供注力分野:「Home & Living」)
売上高は7,044億円で前期比447億円の増収となり、営業利益は727億円で前期比45億円の増益となり、セグメント全体では、売上高、営業利益とも過去最高となりました。
・ 住宅事業
売上高:6,493億円(前期比446億円の増収) 営業利益:674億円(前期比39億円の増益)
建築請負部門においては、物件の大型化等により平均単価は上昇しましたが、新型コロナウイルス影響による年度末の戸建住宅の引渡棟数減少や業務委託費等の固定費増加により減益となりました。一方、不動産部門においては、分譲住宅の引渡戸数が増加し、賃貸管理事業での管理戸数の増加や空室率の改善があったことなどから、増益となりました。リフォーム部門において、下期は消費税増税の影響で需要が減速しましたが、上期末の消費税増税の駆け込み効果の影響が上回ったことなどで、増益となり、住宅事業全体で増益となりました。新型コロナウイルス感染拡大の影響により受注残高が落ちているため、今後は状況を注視していくとともに、ITを活用したデジタルマーケティング等による集客、受注活動の推進等を実施していきます。
・ 建材事業
売上高:551億円(前期比1億円の増収) 営業利益:56億円(前期比9億円の増益)
販売条件の改善や住宅用途の断熱材の販売量の増加などにより増収増益となりました。
・ 「住宅」セグメントの主な活動内容
「Home & Living」分野においては新事業の取り組みを着実に進めてきました。要介護期向けサービス付高齢者住宅「Village Riche(ヴィラージュリーシュ)™」を展開し、シニア向けのサービス提供を拡充しました。また、中高層事業では、「ヘーベルハウス™」で培った技術を継承した工業化ビルディングとしての安全性や安心感により着実に建築実績が増えています。さらに海外事業については、北米・豪州共に事業は順調に推移しており、2018年11月に買収した北米のErickson Framing Operations LLCでは工場の生産能力増強や建築現場の安全性向上等当社グループとの事業統合も順調に進んでいます。
ⅲ 「ヘルスケア」セグメント(価値提供注力分野:「Health Care」)
売上高は3,378億円で前期比216億円の増収となり、営業利益は435億円で前期比17億円の増益となりました。
・ 医薬・医療事業
売上高:1,333億円(前期比22億円の減収) 営業利益:178億円(前期比6億円の減益)
医薬事業においては、「テリボン®凍結乾燥製剤」や長期収載品の販売数量は減少しましたが、「テリボン®オートインジェクター」の販売開始や「ケブザラ®」の販売数量が伸びたことに加え、研究開発費等の固定費の減少により増益となりました。一方、医療事業においては、ウイルス除去フィルター「プラノバ™」等の販売数量は増加しましたが、固定費の増加や為替の影響により減益となり、医薬・医療事業全体で減益となりました。
・ クリティカルケア事業
売上高:2,045億円(前期比238億円の増収) 営業利益:257億円(前期比23億円の増益)
医療機関向けをはじめとした除細動器等の販売数量が順調に伸びたことや米国のAEDメーカーであるCardiac Science Corporationを連結子会社化したこと、着用型自動除細動器「LifeVest®」等の事業が堅調に推移したことなどにより、増収増益となりました。
・ 「ヘルスケア」セグメントの主な活動内容
「Health Care」の分野においては、当社グループ会社であるZOLL Medical CorporationがCardiac Science Corporationの買収手続きを完了しました。これによりZOLL Medical Corporationが手掛ける救命救急医療領域においてAED製品群が拡充され、より多くの救命に貢献できることになりました。また、米国の製薬企業であるVeloxis Pharmaceuticals, Inc.を買収しました。これにより米国医薬品市場における事業基盤を獲得し、グローバル化を加速させていきます。
Ⅲ 生産、受注及び販売の状況
ⅰ 生産実績
当社グループの生産品目は広範囲かつ多種多様であり、同種の製品であっても、その容量、構造、形式などは必ずしも一様ではないため、セグメントごとに生産規模を金額あるいは数量で示すことはしていません。
このため、生産の状況については、「Ⅱ セグメント別」における各セグメントの業績に関連付けて示しています。
ⅱ 受注状況
当社グループは注文住宅に関して受注生産を行っており、その受注状況は次のとおりです。その他の製品については主として見込生産を行っているので、特記すべき受注生産はありません。
セグメントの名称受注高(百万円)前期比(%)受注残高(百万円)前期比(%)
住宅400,34488.7578,217100.6

(注) 上記の金額には、消費税等は含まれていません。
ⅲ 販売実績
当期における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
セグメントの名称販売実績(百万円)前期比(%)
マテリアル1,093,14592.9
住宅704,423106.8
ヘルスケア337,788106.8
その他16,29089.2
合計2,151,64699.1

(注) 1 セグメント間の取引については、相殺消去しています。
2 上記の金額には、消費税等は含まれていません。
3 前期及び当期において、主要な販売先として記載すべきものはありません。
Ⅳ サステナビリティに関する活動実績
当社グループの中期経営計画「Cs+ for Tomorrow 2021」で掲げている「サステナビリティの追求」に向けて、2019年度には、サステナビリティに関する活動を進めていくための体制整備及びテーマの推進を実施しました。
ⅰ サステナビリティに関する活動を推進するための体制整備
2019年4月にサステナビリティ推進部を社長直下組織として新設した他、12月には社長を委員長とし、技術機能部門総括、経営管理機能部門総括、事業領域担当の各役員他を委員とするサステナビリティ推進委員会を設置しました。サステナビリティ推進委員会では、リスク・コンプライアンス委員会、レスポンシブル委員会等の関連する委員会との連携を取りながら、ESG全般に関する議論と方針立案等を進めています。
ⅱ サステナビリティテーマの推進
・ 地球温暖化ガスの削減
当社グループでは、事業活動にともなう地球温暖化ガスの売上高当たりの排出量を、2030年度に2013年度対比で35%削減することを目標と定めました。そして、生産プロセスにおける効率の向上の他、エネルギーからのCO2排出の削減に取り組みました。具体的には、当社グループが保有する火力発電所のうち、石炭を燃料とするものについて、CO2排出の少ない液化天然ガス(LNG)に転換するための工事を開始しました。さらに、当社グループが保有する水力発電設備について、今後数十年から百年に亘って活用し続けられるよう、設備の更新と効率化のための工事に着手しました。
また、当社グループでは、事業を通じて世界の地球温暖化ガス排出削減に貢献することも、当社グループの事業活動からの排出削減と並ぶ重点テーマとしています。特に排出削減効果が期待できる製品・サービスについては、第三者の視点も入れて明らかにし、「環境貢献製品」として展開をしていくこととしました。2019年度においては、6つの事業、製品を「環境貢献製品」としました。
なお、当社グループでは、気候変動が企業の財務に与える影響を明示すべきとする「TCFD提言」に賛同の上、検討を進めた他、「住宅」セグメントにおいては、旭化成ホームズ㈱が事業活動で使用する電気を全て再生可能エネルギーとすることを目指すイニシアティブ「RE100」に登録するなど、地球温暖化問題を経営課題と捉えて取り組みを進めています。
・ プラスチックごみ問題の解決
当社グループでは、海洋に流出したプラスチックやマイクロプラスチックが地球環境や生態系に悪影響を及ぼすことを防止するため、各種の取り組みを進めています。まず、マイクロプラスチックが海洋においていかに生成されるのか、実態を把握することが有効な対策のために必要であることから、九州大学と共同で実態解明に向けた研究を進めました。また、いわゆる3R(Reduce, Reuse, Recycle)がプラスチック全般において求められることを踏まえ、最も広く用いられている汎用プラスチックのポリエチレンについて、福岡大学、消費財メーカー、成型メーカー、リサイクル業者等サプライチェーンを含む幅広い関係者でリサイクル技術の開発に取り組みました。さらには、JaIME(海洋プラスチック問題対応協議会)、CLOMA(クリーン・オーシャン・マテリアル・アライアンス)、一般社団法人 日本化学工業協会等のアライアンスや業界団体を通じて、プラスチックごみ問題解決への取り組みを推進しました。
ⅲ レスポンシブル・ケア活動
当社グループは従来、提供する製品・サービスのすべてのライフサイクルにおいて、環境・安全・健康・品質に配慮する「レスポンシブル・ケア活動」を実施してきています。2019年度は、環境活動においては、上記のテーマのほか、環境保全及び生物多様性保全活動を行い、安全活動においては、従業員の安全行動の徹底や製造プロセスの設備改善を、また、健康活動においては、従業員の健康増進と生産性向上を目的とした健康経営推進の整備等を行いました。製品安全を含む品質活動においては、事業責任者と品質保証の課題確認を行い、品質保証体制の強化、品質管理や品質保証の人財育成のための従業員教育の充実、現場での品質監査、確認点検などの実効性のある活動を進めました。
ⅳ その他の基盤的活動等
当社グループはコンプライアンスを重視し、事業・業務に関する法令・諸規則や社内ルールの遵守を徹底しています。また、事業活動において、社会的な規範を含むより高いレベルの企業倫理を実践し、グループ理念に基づくグループバリュー(共通の価値観)にかなった「誠実な行動」を目指しています。その実効性を高めるため、2019年度はコンプライアンス教育を実施したほか、グループ行動規範の読み合わせ活動を各部署で行いました。また、健全なサプライチェーンの構築のため、原材料・設備資材・工事等の取引先とのコミュニケーションを進め、さらには物流機能の安定化に向けたホワイト物流推進運動への賛同を実施しました。
② 財政状態
(総資産)
総資産は、Veloxis Pharmaceuticals A/SやCardiac Science Corporationを買収したことや「住宅」セグメントでのたな卸資産の増加、設備投資の増加等により、前期比2,228億円増加し、2兆7,980億円となりました。
(流動資産)
流動資産は、「住宅」セグメントにおける開発中物件の増加や新型コロナウイルスの影響による引き渡し遅れなどによりたな卸資産が505億円、「ヘルスケア」セグメントでの堅調な業績により現金及び預金が141億円増加したこと等から、前期比560億円増加し、1兆1,074億円となりました。
(固定資産)
固定資産は、投資有価証券が517億円減少したものの、Veloxis Pharmaceuticals A/SやCardiac Science Corporationを買収したことやリチウムイオン電池用セパレータ等での拡大投資等により無形固定資産が1,555億円、有形固定資産が323億円、繰延税金資産が224億円増加したこと等から、前期比1,667億円増加し、1兆6,905億円となりました。
(流動負債)
流動負債は、支払手形及び買掛金が492億円減少したものの、短期借入金が1,781億円、コマーシャル・ペーパーが620億円増加したこと等から、前期比1,607億円増加し、8,425億円となりました。
(固定負債)
固定負債は、社債が400億円、長期借入金が193億円増加したこと等から、前期比813億円増加し、5,720億円となりました。
(有利子負債)
有利子負債は、前期比2,794億円増加し、7,038億円となりました。
(純資産)
純資産は、親会社株主に帰属する当期純利益を1,039億円計上したものの、配当金の支払487億円があったことや、その他有価証券評価差額金が349億円、為替換算調整勘定が290億円減少したこと、自己株式の取得100億円があったことなどから、前期末の1兆4,027億円から193億円減少し、1兆3,835億円になりました。
その結果、1株当たり純資産は前期比9.82円減少し979.69円となり、自己資本比率は前期末の53.6%から48.6%となりました。D/Eレシオは前期末から0.21ポイント上昇し0.52となりました。
③ キャッシュ・フローの状況
Ⅰ キャッシュ・フローの状況
当期のフリー・キャッシュ・フロー(営業活動によるキャッシュ・フローと投資活動によるキャッシュ・フローの合計額)は、固定資産の取得や連結範囲の変更を伴う子会社株式の取得による支出等による支出が税金等調整前当期純利益等を源泉とした収入を上回り、1,937億円の支出となりました。
一方、借入等による収入があったことから、現金及び現金同等物の期末残高は、前期末に比べて243億円増加し2,048億円となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当期の営業活動によるキャッシュ・フローは、法人税等の支払604億円、たな卸資産の増加520億円等の支出があったものの、税金等調整前当期純利益1,559億円、減価償却費960億円等の収入があったことから、1,245億円の収入(前期比876億円の収入の減少)となりました。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当期の投資活動によるキャッシュ・フローは、投資有価証券の売却による収入235億円等があったものの、有形固定資産の取得による支出1,384億円、Veloxis Pharmaceuticals A/SやCardiac Science Corporation買収等の連結範囲の変更を伴う子会社株式の取得による支出1,758億円等があったことから、3,182億円の支出(前期比1,192億円の支出の増加)となりました。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当期の財務活動によるキャッシュ・フローは、配当金の支払額487億円、社債の償還による支出200億円等があったものの、短期借入金の増加1,720億円、コマーシャル・ペーパーの増加620億円、長期借入れによる収入458億円等があったことから、2,219億円の収入(前期比2,045億円の収入の増加)となりました。
当社グループの連結キャッシュ・フローの推移
(単位:億円)
2017年度2018年度2019年度
営業活動によるキャッシュ・フロー①2,4992,1211,245
投資活動によるキャッシュ・フロー②△1,103△1,989△3,182
フリー・キャッシュ・フロー③(①+②)1,396131△1,937
財務活動によるキャッシュ・フロー④△1,3441742,219
現金及び現金同等物に係る換算差額⑤△95△41
現金及び現金同等物の増減額⑥(③+④+⑤)42311242
現金及び現金同等物の期首残高⑦1,4411,4861,805
連結の範囲の変更に伴う増減額⑧381
現金及び現金同等物の期末残高(⑥+⑦+⑧)1,4861,8052,048

Ⅱ 流動性と資金調達の源泉
2021年3月31日に終了する連結会計年度については、市場環境の透明度が改善するまでは、設備投資や投融資につき慎重に判断していくことや手元資金の確保、機動的な資金調達手段の手当てなどにより、適切なキャッシュ・マネジメントに注力していきます。
また、定量的な業績の見通しは困難な状況ですが、「住宅」セグメント、「ヘルスケア」セグメントが安定的なキャッシュ・フローを創出することを見込んでいます。加えて、財務規律の強化や事業ポートフォリオ転換を通じた収益体質の強化にも取り組み、更なるキャッシュ創出、確保にも努めていきます。財務・資本政策については、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (1) 経営方針・経営戦略等 ② 当社グループ全体の経営方針・経営戦略等 Ⅲ 財務・資本政策」もご参照下さい。
ⅰ 資金調達の基本方針
当社グループでは、D/Eレシオ0.5程度を目安に健全な財務体質を維持しており、これを背景に必要な事業資金を安定的に調達しています。 足元では、新型コロナウイルス感染拡大の影響について見通しが不透明な状況にあるため、資金状況と金融市場環境を注視しつつ、手元資金を通常時以上に厚く保有することで、十分な流動性を確保しています。また、コロナウイルス影響のさらなる深刻化、長期化のリスクに備えて、銀行との融資枠契約(コミットメントライン)の締結など、機動的な資金調達手段の手当・確保を進める一方、設備投資・投融資の抑制や、経費支出の削減・見直しを行うなど、キャッシュマネジメントを強化し、財務健全性の維持に注力しています。
ⅱ 資金管理体制
当社グループでは、CMS(キャッシュ・マネジメント・システム)を導入しており、国内外の金融子会社、海外現地法人などにおいて集中的な資金調達を行い、子会社へ資金供給するというグループファイナンスの考え方を基本としています。グローバル展開の発展とグループ経営の深化の視点から、今後も連結べ―スでの資金管理体制のさらなる充実を図ります。
(2) 重要な判断を要する会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されています。この連結財務諸表を作成するにあたり重要となる会計方針については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載されているとおりです。
当社グループは、退職給付会計、税効果会計、貸倒引当金、たな卸資産の評価、投資その他の資産の評価、訴訟等の偶発事象などに関して、過去の実績や当該取引の状況に照らして、合理的と考えられる見積り及び判断を行い、その結果を資産・負債の帳簿価額及び収益・費用の金額に反映して連結財務諸表を作成していますが、実際の結果は見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。
当社グループの財政状態又は経営成績に対して重大な影響を与え得る会計上の見積り及び判断が必要となる項目は以下のとおりです。なお、新型コロナウイルス感染症の影響に関する仮定についての情報は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(追加情報)」に記載しています。
① たな卸資産の評価
当社グループで保有するたな卸資産は取得原価をもって貸借対照表価額とし、収益性の低下により期末における回収可能価額が取得原価よりも下落している場合には、回収可能価額までたな卸資産の評価を切り下げています。回収可能価額は、商品及び製品については正味売却価額に基づき、原材料等については再調達原価に基づいています。経営者は、たな卸資産の評価に用いられた方法及び前提条件は適切であると判断しています。ただし、当社グループは、主に「マテリアル」セグメントを中心として市場価格の変動リスクにさらされており、将来、新型コロナウイルス感染症拡大等による経営環境の悪化等により市場価格が下落した場合にはたな卸資産の簿価を切下げることになります。
② 有形固定資産及び無形固定資産(のれんを含む)の減損
当社グループは、有形固定資産及び無形固定資産(のれんを含む)について、帳簿価額が回収できない可能性を示す事象や状況の変化が生じた場合に、減損の兆候があるものとして、減損損失の認識の判定を行っています。減損の存在が相当程度に確実と判断した場合、減損損失の測定を行い、当該資産の帳簿価額を回収可能価額まで減額し、当該減少額を減損損失として計上しています。回収可能価額は、使用価値と正味売却価額のうち、いずれか高い金額としています。使用価値は、将来の市場の成長度合い、収益と費用の予想、資産の予想使用期間、割引率等の前提条件に基づき将来キャッシュ・フローを見積ることにより算出しています。
経営者は、減損の兆候及び減損損失の認識に関する判断、及び回収可能価額の見積りに関する評価は合理的であると判断しています。ただし、新型コロナウイルス感染症拡大等による予測不能な市場環境の悪化等により有形固定資産及び無形固定資産(のれんを含む)の評価に関する見積りの前提が変化した場合には、減損損失を計上する可能性があります。
③ 繰延税金資産の評価
当社グループは、繰延税金資産のうち、回収可能性に不確実性があり、将来において回収が見込まれない金額を評価性引当額として設定しています。繰延税金資産の回収可能性については、課税所得及びタックスプランニングの見積りにより計上していますが、特に課税所得の見積りには将来に関する予測や情報が含まれています。将来の予測や情報に基づき、繰延税金資産の一部または全部が回収できない可能性が高いと判断した場合には、将来回収が可能と判断される額までを繰延税金資産に計上しています。経営者は、繰延税金資産の回収可能性の判断及び前提となる課税所得やタックスプランニングの見積りは適切であると判断しています。ただし、将来、新型コロナウイルス感染症拡大等による経営環境の悪化等により、想定していた課税所得が見込まれなくなった場合は、評価性引当額を設定することにより繰延税金資産が取崩される可能性があります。
④ 退職給付債務及び費用
当社グループは主として従業員の確定給付制度に基づく退職給付債務及び費用について、割引率、昇給率、退職率、死亡率、年金資産の長期期待運用収益率等の前提条件を用いた数理計算により算出しています。割引率は測定日時点における、従業員の給付が実行されるまでの予想平均期間に応じた長期国債利回りに基づき決定し、各前提条件については定期的に見直しを行っています。長期期待運用収益率については、過去の年金資産の運用実績及び将来見通しを基礎として決定しています。
経営者は、年金数理計算上用いられた方法及び前提条件は適切であると判断しています。ただし、前提条件を変更した場合、あるいは前提条件と実際の数値に差異が生じた場合には、数理計算上の差異が発生し、当社グループの退職給付債務及び費用に影響を与える可能性があります。