有価証券報告書-第130期(令和2年4月1日-令和3年3月31日)

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2021/06/25 14:42
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本項の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの分析は、将来のリスク、不確実性及び仮定を伴う予測情報を含んでいます。これらの記述は、現時点で当社が入手している情報を踏まえた一定の前提条件や見解に基づくものであり、「2 事業等のリスク」等に記載された事項及びその他の要因により、当社グループの実際の業績はこれらの予測された内容とは大幅に異なる可能性があります。
(1) 経営成績等の状況の概要及び経営者の視点による分析・検討内容
① 経営成績
Ⅰ 当社グループ全体
当社グループの当連結会計年度(2020年4月1日~2021年3月31日、以下、「当期」)における世界経済は、米中対立に加えて、第1四半期を中心に、世界的なCOVID-19感染拡大の影響による都市封鎖や外出自粛などにより経済活動が停滞し、第2四半期から景気が回復基調に転じたものの、年間を通じて世界のGDPがマイナスに転じるなど、大変厳しい経済環境でした。
このような経営環境を受けて、当社グループの連結業績は、「ヘルスケア」セグメントはCOVID-19の治療等に貢献する事業を中心に前連結会計年度(以下、「前期」)比増収増益となりましたが、「マテリアル」セグメントにおけるCOVID-19感染拡大による世界経済悪化及び住宅領域における消費増税やCOVID-19による影響があったことから、売上高は2兆1,061億円となり前期比456億円の減収、営業利益は1,718億円で前期比55億円の減益、経常利益は1,780億円で前期比60億円の減益となりました。また、親会社株主に帰属する当期純利益は、半導体工場火災の影響等による特別損失の計上やVeloxis Pharmaceuticals, Inc.の組織再編に伴う税金費用の一時的な増加により、798億円と前期比242億円の減益となりました。その結果、EPS(1株当たりの当期純利益)は57.49円と前期比17.36円の減少となりました。
資本効率については、2020年度はROIC:4.9%と前期比1.7%の減少、ROE:5.6%と前期比2.0%の減少となりました。当期の資本効率低下の主な原因は、営業利益及び親会社株主に帰属する当期純利益が、上述のVeloxis Pharmaceuticals, Inc.の組織再編に伴うグループ内資産譲渡益課税による税金費用の計上により減少したことに加え、前期のVeloxis Pharmaceuticals, Inc.の買収等に伴い総資産が増加したことによるものです。
〈当社グループの業績〉
経営指標2018年度2019年度2020年度前期との
差異
収益性売上高(億円)21,70421,51621,061△456
営業利益(億円)2,0961,7731,718△55
売上高営業利益率(%)9.78.28.2△0.0
EBITDA(億円)3,1362,9563,051+95
売上高EBITDA率(%)14.513.714.5+0.8
親会社株主に帰属する当期純利益(億円)1,4751,039798△242
EPS(円)105.6674.8557.49△17.36
資本効率ROIC(%)8.86.64.9△1.7
ROE(%)11.17.65.6△2.0
財務健全性D/Eレシオ0.310.520.45△0.07


Ⅱ セグメント別
ⅰ 「マテリアル」セグメント(価値提供注力分野:「Environment & Energy」「Mobility」「Life Material」)
第1四半期を中心に、COVID-19感染拡大の影響による自動車関連市場の需要減少や石化製品市況の悪化の影響を受け、第2四半期から需要や市況の回復等を背景に業績が回復したものの、売上高は9,912億円で前期比1,019億円の減収、営業利益は665億円で前期比259億円の減益となりました。
・ 基盤マテリアル事業
第1四半期を中心に、COVID-19感染拡大の影響による世界的な経済活動の停滞により、石化製品の需要減少や石化市況の下落があり、第2四半期より市場、市況ともに回復傾向ではありましたが、各製品の販売数量減や期首に製品市況が急激に下落したことに伴う在庫受払差により、減益となりました。主力事業であるアクリロニトリル事業では、販売数量の減少に加えて、市況下落による交易条件の悪化による減益となっています。第2四半期以降は、需要の回復に伴い、販売量及び市況ともに改善が見られました。なお、同事業では、販売価格の原材料連動フォーミュラ化を進めるなど、市況の影響を受けにくい安定的な収益を創出できるよう努めています。
・ パフォーマンスプロダクツ事業
本事業は、繊維、エンジニアリング樹脂や合成ゴム等、自動車用途の製品の割合が大きいため、その業績は、グローバルでの自動車生産台数増減の影響を強く受けます。第1四半期を中心にCOVID-19感染拡大の影響により、自動車の生産台数が減少したことから自動車用途の製品の販売量が減少しました。加えて、衣料市場でも、外出機会の減少に伴う衣服の需要減少により、衣料向け繊維製品の販売量が減少したことを受けて、減収減益となりました。自動車用途の製品については、第2四半期より需要の回復が続いています。一方、衣料向け繊維製品については、各国の都市封鎖や外出自粛などによる衣料市場の低迷が続いています。また、衛生材料向け繊維製品については、医療用ガウンやマスク向けなどの需要が、一定の水準で継続しており、堅調に推移しています。
・ スペシャルティソリューション事業
リチウムイオン電池用セパレータの業績は、電気自動車等の環境対応車やスマートフォン等の民生機器、また蓄電システム(ESS)等の需要動向に影響を受けます。第1四半期を中心に、COVID-19感染拡大の影響による自動車の生産台数の減少により、自動車向けの鉛蓄電池用セパレータや機能性コーティング材料、電子部品等の販売量が減少しました。加えて、下期には、当社の子会社での半導体工場火災があり、電子部品の販売数量が減少しましたが、巣ごもり需要等による電子機器の需要増加により、リチウムイオン電池用セパレータや電子材料製品が好調に推移したことから、減収の一方で増益となりました。なお、セパレータ事業については、湿式タイプの「ハイポア™」は民生機器や環境対応車向けの需要が拡大する中、生産能力増強が寄与し、販売数量を伸ばすとともに、乾式タイプの「セルガード®」も、韓国での蓄電システム(ESS)火災による需要減少から復調し、販売数量が増加しました。
ⅱ 「住宅」セグメント(価値提供注力分野:「Home & Living」)
不動産部門は堅調に推移しましたが、2019年10月の消費増税による受注減少やCOVID-19感染拡大の影響による、建築請負部門及びリフォームの落ち込みにより、売上高は6,926億円で前期比118億円の減収、営業利益は635億円で前期比92億円の減益となりました。
・ 住宅事業
建築請負部門においては、前期の消費増税前の需要増加の反動や、COVID-19感染拡大の影響による住宅展示場の閉鎖等、新規集客・受注活動の制限による引渡棟数の減少により、減収減益となりました。また、リフォーム部門においても、COVID-19感染拡大の影響による受注減少により、減収減益となりました。一方、不動産部門においては、大型の分譲住宅の販売が好調に推移し、利益率が向上したことに加えて、賃貸管理事業も堅調に推移したため、増収増益となりました。
・ 建材事業
COVID-19感染拡大の影響による建築着工の延期や中止があったことで販売数量が減少し、減収減益となりました。
ⅲ 「ヘルスケア」セグメント(価値提供注力分野:「Health Care」)
COVID-19感染拡大の影響を受け、営業活動に制約が生じましたが、クリティカルケア事業で人工呼吸器の需要が大きく伸長したことに加えて、医薬・医療事業も堅調に推移したことにより、売上高は4,079億円で前期比701億円の増収、営業利益は676億円で前期比241億円の増益となりました。
・ 医薬・医療事業
医薬事業においては、前期に買収したVeloxis Pharmaceuticals, Inc.買収に伴う無形固定資産等の償却費の増加や、COVID-19感染拡大の影響によるMR(医療情報担当者)の活動制限がありましたが、活動が制約されたことによる販促費用の減少や、「テリボン®オートインジェクター」、「ケブザラ®」の販売数量が伸びたこと、さらには、慢性疼痛薬「AK1780」に関するライセンス契約一時金を、ELY LILLY AND COMPANYより受領したことにより、増収増益となりました。医療事業においては、生物学的製剤の市場拡大に加えて、COVID-19治療薬関連の需要の増加により、ウイルス除去フィルター「プラノバ™」の販売数量が増加し、増収増益となりました。
・ クリティカルケア事業
COVID-19感染拡大の影響による人工呼吸器の特需があり、販売数量が増加したこと等から、増収増益となりました。
Ⅲ 生産、受注及び販売の状況
ⅰ 生産実績
当社グループの生産品目は広範囲かつ多種多様であり、同種の製品であっても、その容量、構造、形式等は必ずしも一様ではないため、セグメントごとに生産規模を金額あるいは数量で示すことはしていません。
このため、生産の状況については、「Ⅱ セグメント別」における各セグメントの業績に関連付けて示しています。
ⅱ 受注状況
当社グループは注文住宅に関して受注生産を行っており、その受注状況は次のとおりです。その他の製品については主として見込生産を行っているため、特記すべき受注生産はありません。
セグメントの名称受注高(百万円)前期比(%)受注残高(百万円)前期比(%)
住宅326,57381.6527,51591.2

(注) 上記の金額には、消費税等は含まれていません。
ⅲ 販売実績
当期における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
セグメントの名称販売実績(百万円)前期比(%)
マテリアル991,22790.7
住宅692,63998.3
ヘルスケア407,904120.8
その他14,28187.7
合計2,106,05197.9

(注) 1 セグメント間の取引については、相殺消去しています。
2 上記の金額には、消費税等は含まれていません。
3 前期及び当期において、主要な販売先として記載すべきものはありません。
② 財政状態
当期末の総資産は、設備投資の増加や上場株式の時価上昇などにより、前期比967億円増加し、2兆9,189億円となりました。
流動資産は、現金及び預金が138億円、受取手形及び売掛金が76億円、たな卸資産が36億円増加したことなどから、前期比293億円増加し、1兆1,368億円となりました。
固定資産は、繰延税金資産が234億円、無形固定資産が209億円減少したものの、有形固定資産が636億円、投資有価証券が419億円増加したことなどから、前期比673億円増加し、1兆7,822億円となりました。
流動負債は、支払手形及び買掛金が109億円増加したものの、短期借入金が1,311億円、コマーシャル・ペーパーが550億円減少したことなどから、前期比1,394億円減少し、7,032億円となりました。
固定負債は、退職給付に係る負債が155億円、繰延税金負債が119億円減少したものの、長期借入金が912億円、社債が500億円増加したことなどから、前期比1,250億円増加し、7,212億円となりました。
有利子負債は、前期比449億円減少し、6,590億円となりました。
純資産は、配当金の支払458億円があったものの、親会社株主に帰属する当期純利益を798億円計上したことや為替換算調整勘定が374億円、その他有価証券評価差額金が249億円、退職給付に係る調整累計額が129億円増加したことなどから、前期末の1兆3,835億円から1,111億円増加し、1兆4,945億円になりました。
その結果、1株当たり純資産は前期比77.92円増加し1,057.61円となり、自己資本比率は前期末の48.2%から50.3%となりました。D/Eレシオは前期末から0.07ポイント低下し0.45となりました。
③ キャッシュ・フローの状況
Ⅰ キャッシュ・フローの状況
当期のフリー・キャッシュ・フロー(営業活動によるキャッシュ・フローと投資活動によるキャッシュ・フローの合計額)は、税金等調整前当期純利益などを源泉とした収入が固定資産の取得や法人税等の支払による支出などを上回り、959億円の収入となりました。財務活動によるキャッシュ・フローでは、短期借入金の返済などにより、959億円の支出となりました。
以上の要因に加え、現金及び現金同等物に係る換算差額などにより、現金及び現金同等物の期末残高は、前期末に比べて115億円増加し2,162億円となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当期の営業活動によるキャッシュ・フローは、法人税等の支払707億円などの支出があったものの、税金等調整前当期純利益1,509億円、減価償却費1,084億円、のれん償却額249億円などの収入があったことから、2,537億円の収入(前期比1,292億円の収入の増加)となりました。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当期の投資活動によるキャッシュ・フローは、投資有価証券の売却による収入203億円などがあったものの、有形固定資産の取得による支出1,333億円、Adient plcの自動車内装ファブリック事業の買収に伴う事業譲受による支出176億円、無形固定資産の取得による支出169億円などがあったことから、1,578億円の支出(前期比1,604億円の支出の減少)となりました。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当期の財務活動によるキャッシュ・フローは、長期借入れによる収入1,435億円、社債の発行による収入500億円などがあったものの、短期借入金の減少1,686億円、コマーシャル・ペーパーの減少550億円、配当金の支払458億円などがあったことから、959億円の支出(前期比3,178億円の支出の増加)となりました。
当社グループの連結キャッシュ・フローの推移
(単位:億円)
2018年度2019年度2020年度
営業活動によるキャッシュ・フロー①2,1211,2452,537
投資活動によるキャッシュ・フロー②△1,989△3,182△1,578
フリー・キャッシュ・フロー③(①+②)131△1,937959
財務活動によるキャッシュ・フロー④1742,219△959
現金及び現金同等物に係る換算差額⑤5△4196
現金及び現金同等物の増減額⑥(③+④+⑤)31124297
現金及び現金同等物の期首残高⑦1,4861,8052,048
連結の範囲の変更に伴う増減額⑧8118
現金及び現金同等物の期末残高(⑥+⑦+⑧)1,8052,0482,162


Ⅱ 流動性と資金調達の源泉
(資本の財源及び資金の流動性について)
2022年3月31日に終了する連結会計年度においては、各セグメントが安定的なキャッシュ・フローを創出することを見込んでいます。加えて、財務規律の強化や事業ポートフォリオ転換などを通じた収益体質の強化にも取り組み、更なるキャッシュの創出に継続的に努めています。
また、当社グループでは、D/Eレシオ0.5程度を目安に健全な財務体質を維持しつつ、これを背景に金融情勢に機動的に対応し、金融機関借入、社債やコマーシャル・ペーパーの発行など多様な調達手段により、安定的かつ低コストの資金調達を図ります。同時に資金の年度別返済の集中を避けることで借り換えリスクの低減も図っています。
これらの資金を、経営基盤の強化・変革、持続可能な社会の実現と企業価値の継続的な向上のための戦略的な投資、及び株主の皆様への還元に活用していきます。
なお、当社グループでは、CMS(キャッシュ・マネジメント・システム)を導入しており、国内外の金融子会社、海外現地法人などにおいて集中的な資金調達を行い、子会社へ資金供給するというグループファイナンスの考え方を基本としています。グローバル拡大への対応とグループ経営の深化の視点から、今後も連結ベースでの資金管理体制の更なる充実と資金効率化を図ります。
(2) 重要な判断を要する会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されています。この連結財務諸表を作成するにあたり重要となる会計方針については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載されているとおりです。
当社グループは、退職給付会計、税効果会計、貸倒引当金、たな卸資産の評価、投資その他の資産の評価、訴訟等の偶発事象などに関して、過去の実績や当該取引の状況に照らして、合理的と考えられる見積り及び判断を行い、その結果を資産・負債の帳簿価額及び収益・費用の金額に反映して連結財務諸表を作成していますが、実際の結果は見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。
当社グループの財政状態又は経営成績に対して重大な影響を与え得る会計上の見積り及び判断が必要となる項目は以下のとおりです。なお、COVID-19の影響に関する仮定についての情報は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(追加情報)」に記載しています。また、連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しています。
① たな卸資産の評価
当社グループで保有するたな卸資産は取得原価をもって貸借対照表価額とし、収益性の低下により期末における回収可能価額が取得原価よりも下落している場合には、回収可能価額までたな卸資産の評価を切り下げています。回収可能価額は、商品及び製品については正味売却価額に基づき、原材料等については再調達原価に基づいています。経営者は、たな卸資産の評価に用いられた方法及び前提条件は適切であると判断しています。ただし、当社グループは、主に「マテリアル」セグメントを中心として市場価格の変動リスクに晒されており、将来、経営環境の悪化等により市場価格が下落した場合にはたな卸資産の簿価を切り下げることになります。
② 企業結合取引の結果取得した無形固定資産の企業結合日時点における時価
当社グループは、企業結合取引の結果取得した無形固定資産の企業結合日時点における時価について、コスト・アプローチ、マーケット・アプローチ、インカム・アプローチなどの合理的に算定された価額を基礎として算定しています。
経営者は、無形固定資産の時価の見積りに用いられた、事業計画に含まれる将来の販売数量の見込みや割引率等についての主要な仮定について合理的であると判断しています。
③ 有形固定資産及び無形固定資産(のれんを含む)の減損
当社グループは、有形固定資産及び無形固定資産(のれんを含む)について、帳簿価額が回収できない可能性を示す事象や状況の変化が生じた場合に、減損の兆候があるものとして、減損損失の認識の判定を行っています。減損の存在が相当程度に確実と判断した場合、減損損失の測定を行い、当該資産の帳簿価額を回収可能価額まで減額し、当該減少額を減損損失として計上しています。回収可能価額は、使用価値と正味売却価額のうち、いずれか高い金額としています。使用価値は、将来の市場の成長度合い、収益と費用の予想、資産の予想使用期間、割引率等の前提条件に基づき将来キャッシュ・フローを見積もることにより算出しています。
経営者は、減損の兆候及び減損損失の認識に関する判断、及び回収可能価額の見積りに関する評価は合理的であると判断しています。ただし、予測不能な市場環境の悪化等により有形固定資産及び無形固定資産(のれんを含む)の評価に関する見積りの前提に重要な変化が生じた場合には、減損損失を計上する可能性があります。
④ 繰延税金資産の評価
当社グループは、繰延税金資産のうち、回収可能性に不確実性があり、将来において回収が見込まれない金額を評価性引当額として設定しています。繰延税金資産の回収可能性については、課税所得及びタックスプランニングの見積りにより計上していますが、特に課税所得の見積りには将来に関する予測や情報が含まれています。将来の予測や情報に基づき、繰延税金資産の一部又は全部が回収できない可能性が高いと判断した場合には、将来回収が可能と判断される額までを繰延税金資産に計上しています。経営者は、繰延税金資産の回収可能性の判断及び前提となる課税所得やタックスプランニングの見積りは適切であると判断しています。ただし、将来、経営環境の悪化等により、想定していた課税所得が見込まれなくなった場合は、評価性引当額を設定することにより繰延税金資産が取崩される可能性があります。
⑤ 退職給付債務及び費用
当社グループは主として従業員の確定給付制度に基づく退職給付債務及び費用について、割引率、昇給率、退職率、死亡率、年金資産の長期期待運用収益率等の前提条件を用いた数理計算により算出しています。割引率は測定日時点における、従業員の給付が実行されるまでの予想平均期間に応じた長期国債利回りに基づき決定し、各前提条件については定期的に見直しを行っています。長期期待運用収益率については、過去の年金資産の運用実績及び将来見通しを基礎として決定しています。
経営者は、年金数理計算上用いられた方法及び前提条件は適切であると判断しています。ただし、前提条件を変更した場合、あるいは前提条件と実際の数値に差異が生じた場合には、数理計算上の差異が発生し、当社グループの退職給付債務及び費用に影響を与える可能性があります。