有価証券報告書-第196期(平成27年4月1日-平成28年3月31日)

【提出】
2016/06/23 15:32
【資料】
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【項目】
130項目

対処すべき課題

当社は、人々の健康で豊かな生活のために、研究開発を基盤とした新たな価値の創造により、広く社会に貢献することを企業理念としております。この理念を実現するために、「グローバルレベルで戦える研究開発型企業」および「最先端の技術で医療に貢献」とのビジョンを設定しました。そのビジョンの実現に向け、平成25年度から平成29年度までの5カ年の第三期中期経営計画(以下「第三期中計」)を策定し、また、平成27年10月の大日本住友製薬株式会社発足10周年にあたり、グローバルスローガン「Innovation today, healthier tomorrows」を制定いたしました。
本年で第三期中計を策定して4年目を迎えますが、国内事業での新製品の上市遅延、主力品の売上の伸び悩み、後発医薬品の使用促進に伴う想定以上の長期収載品の売上減少等により、事業環境は大幅に悪化しており、その対応が喫緊の課題となっております。また、現在の当社グループの収益の柱である「ラツーダ」の平成30年度の独占販売期間満了に伴う損益への影響を最小限にとどめるとともに、その後の再成長を確固たるものにするための投資も戦略的に進める必要があります。このように激変する事業環境のもと、当社は、第三期中計における平成29年度の経営目標を以下のとおり修正いたしました。
(単位:億円)
従来目標
(平成29年度)
修正目標
(平成29年度)
売上高4,5004,400
(うち医薬品事業)(4,000)(3,950)
営業利益800500
EBITDA1,100750
研究開発費850850

(注)EBITDAは、支払利息、法人税等、減価償却費および特別損益を控除する前の利益であります。
当社グループは、この経営目標の達成および持続的成長に向け、全社一丸となって以下の経営課題に積極的に取り組んでまいります。
(1) CSR経営の推進
CSR経営の推進は、当社グループが持続的に成長していくために最も重要な経営課題であります。コンプライアンスの徹底、実効性の高いコーポレートガバナンス体制および透明性の高い経営の追求、国内外での社会貢献活動、女性の活躍推進などのダイバーシフィケーション、多様なステークホルダーとのコミュニケーションなどを推進してまいります。
(2) 事業基盤の強化
事業環境の変化に対し、機動的に事業構造を転換できるようにするため、引き続き、人件費および一般経費の合理化、資産効率の向上、組織の簡素化の推進等により経営効率を追求してまいります。これらに加え、強い企業文化を構築し、強い社員を育成することにより事業基盤の強化を図ってまいります。
(3) 各地域セグメントにおける戦略および事業活動
日本では、「アイミクス」、「ロナセン」および「トレリーフ」の伸長を図るとともに、昨年から鳥居薬品株式会社とのプロモーション提携を開始したそう痒症改善剤「レミッチ」および日本イーライリリー株式会社との提携により販売を開始した2型糖尿病治療薬「トルリシティ」を早期に拡大することにより、薬価改定や長期収載品の売上減少の影響を最小限にとどめるよう努めてまいります。さらに、後発医薬品の使用促進が加速度的に進む国内事業環境の変化に対応し、利益の最大化に資する高効率な事業運営体制の構築に早急に取り組んでまいります。
北米では、売上高10億米ドルを達成した「ラツーダ」のさらなる伸長を図るとともに、「アプティオム」および「ブロバナ」の成長により、事業の拡大を図ってまいります。
中国では、引き続き「メロペン」の販売を中心に事業規模の維持に努めてまいります。
欧州では、「ラツーダ」の事業展開について、新たなパートナーとの提携を含め、あらゆる選択肢の検討を進めてまいります。
(4) 研究開発戦略
研究開発については、後期開発品の開発を最優先に進めてまいります。領域別では、精神神経領域およびがん領域に注力してまいりますが、希少疾患などの治療薬のない疾患分野や再生医療・細胞医薬といった新規分野にも積極的に経営資源を投入してまいります。
精神神経領域では、北米においてdasotralineの開発等を、また、日本ではルラシドン塩酸塩、「ロナセン」の経皮吸収型製剤およびレビー小体型認知症(DLB)に伴うパーキンソニズムを対象とした「トレリーフ」の開発等を積極的に行ってまいります。
がん領域では、がん幹細胞性に対する阻害剤としてファースト・イン・クラスのnapabucasinについて、胃または食道胃接合部腺がんを対象とした併用での国際共同第Ⅲ相臨床試験に最大限注力し、米国および日本での平成29年度中の申請を目指してまいります。さらに、平成27年度より開始した結腸直腸がんを対象とした併用での国際共同第Ⅲ相臨床試験なども積極的に進めてまいります。
治療薬のない疾患分野では、米国のインターセプト・ファーマシューティカルズ・インクから導入したobeticholic acid(開発コード:DSP-1747)について、非アルコール性脂肪肝炎(NASH)を対象とした開発を推進してまいります。
細胞医薬では、サンバイオ・インク(以下「サンバイオ社」)から導入したSB623の開発を推進いたします。再生医療では、眼疾患領域でiPS細胞を用いた世界初の事業化を目指し、株式会社ヘリオスとの共同開発を加速させ、併せて、株式会社サイレジェンにおいて、生産および販売促進体制構築に向けた検討を推進してまいります。また、国立研究開発法人理化学研究所とのiPS細胞由来立体網膜を用いた網膜変性疾患の再生医療の共同研究を進めてまいります。眼疾患以外の領域では、京都大学iPS細胞研究所および株式会社日立製作所とのヒトiPS細胞を用いたパーキンソン病に対する再生医療の実用化に向けた共同研究、慶應義塾大学および国立病院機構大阪医療センターとのiPS細胞由来神経前駆細胞を用いた脊髄損傷の再生医療の共同研究などの取組を強化してまいります。
(5) 株主還元および財務戦略
当社は、企業価値と株主価値の持続的かつ一体的な向上を基本方針としており、株主への還元については、安定的な配当に加えて、業績向上に連動した増配を行ってまいります。
財務戦略については、順次有利子負債の返済を進めておりますが、持続的な成長のために、必要に応じてレバレッジの活用などによりキャッシュを確保し、製品および開発品の導入ならびに国内事業、北米事業、新規事業等への新規投資を積極的に進めてまいります。
(6) リスクへの対応
これらの事業計画を進めるうえにおいては、コンプライアンス違反により社会的信用を失うリスク、新製品開発の遅延または中止のリスク、市販後に予期せぬ副作用が発生するリスク、訴訟に関わるリスク、操業停止のリスク等の様々なリスクがあります。
当社は、リスクマネジメント委員会、コンプライアンス委員会などを通じてリスク管理を強化し、リスクの未然防止および低減に努めてまいります。なお、これらのリスクが顕在化した場合には、機動的に対策を講じることにより、影響を最小限にとどめるように努めてまいります。