有価証券報告書-第15期(平成31年4月1日-令和2年3月31日)
文中における将来に関する事項は、有価証券報告書提出日(2020年6月15日)現在において当社グループが判断したものであります。
当社グループは、積極的なグローバル事業の展開による企業価値の向上に資するために、基準とすべき会計及び財務報告のあり方を検討した結果、資本市場における財務情報の国際的な比較、グループ内での会計処理の統一、グローバル市場における資金調達手段の多様化等を目的として、2014年3月期よりIFRSを適用しております。
当社グループの連結財務諸表の作成には経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額及び開示に影響を与える見積りを必要としており、これらの見積りについて過去の実績等を勘案し合理的に判断しておりますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。
当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表注記 3 重要な会計方針」に記載しております。
(1) 業績等の概要
当社グループの当連結会計年度(自 2019年4月1日 至 2020年3月31日)の連結業績は、次のとおりであります。
<連結業績>(単位:億円)
<主要通貨の日本円への換算レート(期中平均レート)>
売上収益
売上収益は、前連結会計年度比521億円(5.6%)増収の9,818億円となりました。エドキサバン等の主力品の伸長に加え、トラスツズマブ デルクステカン(DS-8201、日米製品名:エンハーツ)に係る収益増(139億円:米国における製品売上及びアストラゼネカ社から受領した契約時一時金並びに開発マイルストン)等により、増収となりました。売上収益に係る為替の減収影響は151億円となりました。
営業利益
営業利益は、前連結会計年度比551億円(65.8%)増益の1,388億円となりました。売上総利益は、売上収益の増収に加え、販売製品の構成比の変化及び高槻工場の譲渡に伴い子会社売却益(188億円)を計上したこと等により、売上原価が減少したため、735億円(13.0%)増益の6,386億円となりました。販売費及び一般管理費は、米国におけるがん事業体制構築に伴う費用や、日本における環境対策費用の増加等により、246億円(8.9%)増加の3,023億円となりました。研究開発費は、アストラゼネカ社とのトラスツズマブ デルクステカン(DS-8201)に係るコストシェア等により、62億円(3.1%)減少の1,975億円となりました。営業利益に係る為替の減益影響は34億円となりました。
税引前利益/親会社の所有者に帰属する当期利益/当期包括利益合計額
税引前利益は、前連結会計年度比553億円(64.5%)増益の1,412億円となりました。
親会社の所有者に帰属する当期利益は、前連結会計年度比357億円(38.2%)増益の1,291億円となりました。前連結会計年度はトラスツズマブ デルクステカン(DS-8201)の戦略的提携に伴い、将来の課税所得見込み額が増加し、繰延税金資産の追加計上が可能となったことから、法人税等がマイナス計上となっておりました。この影響等により、前連結会計年度に比べ法人税率が増加しましたが、親会社の所有者に帰属する当期利益は増益となりました。
当期包括利益合計額は、前連結会計年度比623億円(38.0%)減益の1,016億円となりました。前連結会計年度に、過年度の当社グループの事業再編に係る税金負債を取崩して、その他の包括利益を計上していたこと等から、減益となりました。
なお、新型コロナウイルス感染症による当期の業績への影響は軽微であると判断しております。
<グローバル主力品売上収益>(単位:億円)
オルメサルタンは、独占販売期間満了等の影響により、前連結会計年度比51億円減収の1,008億円となりました。エドキサバンは、日本、欧州等で売上が伸長し、前連結会計年度比363億円増収の1,540億円となりました。当社は、第4期中期経営計画で「エドキサバンの成長」を戦略目標として定めております。進捗及び課題等につきましては、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載しております。
地域別の売上状況は次のとおりであります。
① 日本
日本の売上収益は、前連結会計年度比123億円(2.1%)増収の6,020億円となりました。当社は、第4期中期経営計画で「日本No.1カンパニーとしての成長」を戦略目標として定めております。進捗及び課題等につきましては、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載しております。
[国内医薬事業]
国内医薬事業では、リクシアナ、タリージェ等の主力品の伸長及びオーソライズド・ジェネリック(注1)製品の寄与等により、売上収益は102億円(1.9%)増収の5,335億円となりました。この売上収益には、ワクチン事業の売上収益及び第一三共エスファ㈱が取り扱うジェネリック事業の売上収益が含まれております。
2019年4月にタリージェ(一般名:ミロガバリンベシル酸塩)を末梢性神経障害性疼痛の適応症で、新発売いたしました。
2019年5月にミネブロ(一般名:エサキセレノン)を高血圧症の適応症で、新発売いたしました。
2019年10月にヴァンフリタ(一般名:キザルチニブ塩酸塩)を再発または難治性のFLT3-ITD変異陽性の急性骨髄性白血病の適応症で、新発売いたしました。
造影剤4製品(オムニパーク、オムニスキャン、ビジパーク、ソナゾイド)の独占的開発及び販売権を米国GEヘルスケア社に返還し、製造販売承認を同社の日本法人であるGEヘルスケアファーマ㈱に2020年3月に承継いたしました。
(注)1.オーソライズド・ジェネリック:先発医薬品メーカーからの許諾を受けて製造される後発医薬品。
[ヘルスケア事業]
ヘルスケア事業の売上収益は、21億円(3.2%)増収の685億円となりました。
<日本の主な売上構成>(単位:億円)
(注)2.ジェネリック事業、ワクチン事業を含む。
<国内医薬主力品売上収益>(単位:億円)
② 北米
北米の売上収益は、前連結会計年度比88億円(5.7%)増収の1,629億円、現地通貨ベースでは、1億1千万米ドル(7.9%)増収の14億9千9百万米ドルとなりました。この売上収益には、第一三共Inc.とアメリカン・リージェントInc.の売上収益が含まれております。
第一三共Inc.は、2019年8月にTURALIO(一般名:ペキシダルチニブ)を腱滑膜巨細胞腫の適応症で、新発売いたしました。また、2020年1月にエンハーツ(一般名:トラスツズマブ デルクステカン)を転移性の乳がんに対する治療として2つ以上の抗HER2療法を受けたHER2陽性の手術不能または転移性乳がんの適応症で、新発売いたしました。当社は、第4期中期経営計画で「米国事業の拡大」を戦略目標として定めております。進捗及び課題等につきましては、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載しております。
第一三共Inc.では、ウェルコール等が減収となりました。
アメリカン・リージェントInc.では、インジェクタファー、ヴェノファー等が増収となりました。
<第一三共Inc.主力品売上収益>(単位:百万米ドル)
(注)3.ベニカー/ベニカーHCT、エイゾール、トライベンゾール及びオルメサルタンのオーソライズド・ジェネリック
<アメリカン・リージェントInc.主力品売上収益>(単位:百万米ドル)
③ 欧州
欧州の売上収益は、前連結会計年度比69億円(7.8%)増収の955億円、現地通貨ベースでは9千9百万ユーロ(14.4%)増収の7億8千9百万ユーロとなりました。オルメサルタン及び配合剤、エフィエント等が減収となったものの、リクシアナが伸長いたしました。
<第一三共ヨーロッパGmbH主力品売上収益>(単位:百万ユーロ)
(注)4.オルメテック/オルメテックプラス、セビカー及びセビカーHCT
④ アジア・中南米
アジア・中南米の売上収益は、前連結会計年度比107億円(12.0%)増収の983億円となりました。なお、この売上収益には、海外ラインセンシーへの売上収益等が含まれております。
中国では、合成抗菌剤クラビット並びにオルメサルタン及び配合剤等の主力品が増収となりました。
中国で、2019年8月にリクシアナを新発売いたしました。
地域別売上収益構成比は次のとおりであります。

(2) 生産、受注及び販売の実績
① 生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと次のとおりであります。
(注)1.金額は正味販売価格によっております。
2.上記金額には消費税等を含めておりません。
3.生産実績が前年同期比で大きく減少しておりますが、主には、2019年10月1日に第一三共プロファーマ㈱の
高槻工場を太陽ホールディングス㈱に譲渡したことによるものであります。
② 受注実績
当社グループは、主に販売計画に基づいて生産計画を策定し、これにより生産を行っております。受注生産は一部の連結子会社で行っておりますが、受注残高の金額に重要性はないため、記載を省略しております。
③ 販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと次のとおりであります。
(注)1.主な相手先別の販売実績及び総販売実績に対する割合は次のとおりであります。
2.上記金額には消費税等を含めておりません。
(3) 資本の財源及び資金の流動性についての分析
① 財務戦略の基本的な考え方
当社グループは、「がんに強みを持つ先進的グローバル創薬企業」となることを2025年ビジョンとして掲げ、研究開発活動、ライセンス活動に取り組んでおります。当社グループでは、引き続き堅固な財務基盤を維持していくと共に、資本の効率化に努め、戦略的に資金を配分して参ります。2018年10月に第4期中期経営方針を見直し、2018年3月期から2022年3月期の5年間の新たなキャッシュ配分目標を策定いたしました。中期経営方針の期間中、ADCフランチャイズの治験薬・製品の需要増に備え、2020~2022年度において新たに1,000億円以上の設備投資を計画しており、また、研究開発投資として3つのADCプロジェクトに集中投資し、合計で1兆1,000億円規模の研究開発投資を積極的に行っていきます。その他、5,000億円規模の事業開発投資資金もあわせ、成長投資を継続し2025年度経営目標として掲げるがん事業の売上収益目標5,000億円以上を達成していきます。株主還元については、安定的な配当と機動的な自己株式取得を継続して参ります。また、親会社所有者帰属持分比率は現状の60%程度を保ちつつ最適資本構成の実現にも努めて参ります。
② 資金調達の方法及び状況
当社グループは、円滑な事業活動に必要なレベルの流動性の確保と財務の健全性・安定性維持を資金調達の基本的な考えとしており、手元資金及び外部資金を有効に活用しております。当社グループは、戦略的投資もしくは資金調達にあたって外部借入への依存度合いを測る目的から、手元流動性残高(現預金及び短期投資債券等)から有利子負債を控除した、ネット・キャッシュを重視しております。
手元資金としては、事業展開に伴う資金需要に対する機動的な対応のため、十分な現金及び現金同等物を保有しております。適正な現金及び現金同等物の保有額は、月商の3ヶ月程度を考えており、これを超える部分については企業価値向上に資する事業戦略投資に対する資金として確保しております。これらは金融情勢などを勘案しつつ、安全性並びに流動性の極めて高い短期金融商品で運用しております。
外部からの資金調達の手段としては、直接金融または間接金融の多様な手段の中から、その時々の市場環境を考慮したうえで当社にとって有利な手段を機動的に選択し、資金調達を行っております。直接金融としては、国内社債発行登録枠として3,000億円及びコマーシャル・ペーパー発行枠として1,500億円を有しております。2016年には超低金利の環境を活かし、国内ヘルスケアセクターでは初となる償還年限が20年、30年の超長期無担保社債を発行し、1,000億円の長期低コスト資金を確保いたしました。また、間接金融としては、当社は取引先金融機関と良好な取引関係を維持しており、複数の銀行から最長10年の資金調達をしております。これらの長期借入では、年限を分散させることで借り換えリスクの低減を図っております。また、複数の銀行との間で当座貸越契約および200億円のコミットメントラインを設定し、緊急時の流動性担保の手段も確保しております。
なお、円滑な外部資金調達を行なうため、当社は株式会社格付け投資情報センター(R&I)と、ムーディーズ・ジャパン株式会社(Moody’s)の2社から格付けを取得しております。
当連結会計年度末時点での当社の長期及び短期の信用格付けは次のとおりであります。
(注)1 2019年5月31日、格付投資情報センター(R&I)の長期発行体格付は、AA/ネガティブから、AA/安定的になり、格付けの方向性が改善しております。
なお、100%連結子会社は、原則として銀行などの外部からの資金調達を行わず、親会社もしくは現地法人などの資金調達拠点を通じたキャッシュ・マネジメント・サービスやグループ・ファイナンスの活用により、資金調達の集約と資金効率化、流動性の確保を図っております。
③ 財政状態及びキャッシュ・フローの状況の分析
(ⅰ)財政状態
当連結会計年度末における資産合計は前連結会計年度末から176億円増加の2兆1,056億円となりました。
トラスツズマブ デルクステカン(DS-8201、日米製品名:エンハーツ)の戦略的提携の契約一時金の入金やオルメサルタンに係る訴訟の和解金の保険金入金等により営業債権及びその他の債権が1,102億円減少し、さらに、その他の金融資産(流動資産)が704億円、その他の金融資産(非流動資産)が169億円それぞれ減少いたしました。一方で、主に営業債権及びその他の債権の入金等により現金及び現金同等物が1,810億円増加し、IFRS第16号「リース」の適用に伴い当期首に使用権資産を追加で認識したこと等により有形固定資産が180億円増加したほか、連結納税制度の導入に伴い繰延税金資産を計上したこと等により繰延税金資産が199億円増加いたしました。
当連結会計年度末における負債合計は前連結会計年度末から390億円減少の7,993億円となりました。
IFRS第16号「リース」の適用に伴い当期首にリース負債を追加で認識したこと等により、その他の金融負債(流動負債)が90億円、その他の金融負債(非流動負債)が314億円それぞれ増加しました。一方で、オルメサルタンに係る訴訟の和解金の支払等により営業債務及びその他の債務が418億円減少したほか、社債等の長短振替等により、社債及び借入金(非流動負債)が368億円減少いたしました。なお、当連結会計年度において社債を400億円償還しております。
当連結会計年度末における資本合計は前連結会計年度末から566億円増加の1兆3,063億円となりました。配当金の支払による減少があった一方で、当期利益の計上等により利益剰余金が888億円増加いたしました。
以上の結果、親会社所有者帰属持分比率は62.0%となり、前連結会計年度末より2.2%増加いたしました。

当社グループでは、資産適正化によってノンコア資産の圧縮を図り、総資産回転率を向上させるとともに、企業価値の向上に繋がるフリー・キャッシュの創出に努めております。不動産を含む保有する資産については、事業活動上の重要性と代替可能性だけでなく、ライフサイクルコストや事業継続計画を考慮し、ノンコア資産の売却を適切なタイミングで実施しております。2019年度は、日本橋ビルの売却及び高槻工場の譲渡を実施いたしました。今後も事業ポートフォリオの見直しを進め、ノンコア資産の圧縮に努めて参ります。
(ⅱ)キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物は、1,810億円増加の4,242億円となりました。各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動によるキャッシュ・フローは、1,966億円の収入(前連結会計年度は920億円の収入)となりました。
税引前利益1,412億円、減価償却費及び償却費526億円等の非資金項目の他、トラスツズマブ デルクステカン(DS-8201、日米製品名:エンハーツ)の戦略的提携の契約一時金の収入等により営業債権及びその他の債権の増減額が1,102億円となりました。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動によるキャッシュ・フローは、817億円の収入(前連結会計年度は1,425億円の支出)となりました。
設備投資や無形資産の取得による支出があった一方で、定期預金の払戻による収入や高槻工場譲渡による収入371億円及び日本橋ビル売却に伴う収入139億円等がありました。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動によるキャッシュ・フローは、配当金の支払454億円及び社債の償還400億円等により、916億円の支出(前連結会計年度は662億円の支出)となりました。

今後も、エドキサバン等の主力品を中心に、営業キャッシュ・フローの確実な創出に努めつつ、政策保有株式やノンコア資産の売却による、キャッシュの創出にも努めて参ります。そして、これらのキャッシュを源泉に、ADCパイプラインを中心とした研究開発投資及び製造設備投資等を積極的に進め、がん事業の早期確立と最大化を図ります。
また、当社は、持続的な企業価値の向上を図るため、株主還元方針は、2016年度から2022年度において、総還元性向を期間中100%以上、配当金は普通配当を年間70円以上とし、配当は安定的に行い、自己株式取得を機動的に実施することとしております。なお、2020年度においては、1株当たり年間81円(株式分割前ベース)の配当を予定しております。
(4) 経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループは、2022年度の計数目標として、売上収益1兆1,000億円、営業利益1,650億円、ROE8%以上を目指しております。また、がん事業への投資を強化することで、2025年度のがん事業売上収益目標は5,000億円以上を目指しております。
当連結会計年度においては、売上収益9,818億円、営業利益1,388億円、ROE10.1%となりました。なお、目標達成に向けた主な取り組み課題と実績については、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載しております。
(5) 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、IFRSに基づいて作成しております。連結財務諸表の作成にあたり行った重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 4 重要な会計上の判断、見積り及び仮定」に記載しております。
当社グループは、積極的なグローバル事業の展開による企業価値の向上に資するために、基準とすべき会計及び財務報告のあり方を検討した結果、資本市場における財務情報の国際的な比較、グループ内での会計処理の統一、グローバル市場における資金調達手段の多様化等を目的として、2014年3月期よりIFRSを適用しております。
当社グループの連結財務諸表の作成には経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額及び開示に影響を与える見積りを必要としており、これらの見積りについて過去の実績等を勘案し合理的に判断しておりますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。
当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表注記 3 重要な会計方針」に記載しております。
(1) 業績等の概要
当社グループの当連結会計年度(自 2019年4月1日 至 2020年3月31日)の連結業績は、次のとおりであります。
<連結業績>(単位:億円)
前連結会計年度 (自 2018年4月1日 至 2019年3月31日) | 当連結会計年度 (自 2019年4月1日 至 2020年3月31日) | 増減 | |
売上収益 | 9,297 | 9,818 | 521 5.6% |
営業利益 | 837 | 1,388 | 551 65.8% |
税引前利益 | 858 | 1,412 | 553 64.5% |
親会社の所有者に帰属する 当期利益 | 934 | 1,291 | 357 38.2% |
当期包括利益合計額 | 1,639 | 1,016 | △623 △38.0% |
<主要通貨の日本円への換算レート(期中平均レート)>
前連結会計年度 (自 2018年4月1日 至 2019年3月31日) | 当連結会計年度 (自 2019年4月1日 至 2020年3月31日) | |
米ドル/円 | 110.91 | 108.75 |
ユーロ/円 | 128.40 | 120.83 |
売上収益
売上収益は、前連結会計年度比521億円(5.6%)増収の9,818億円となりました。エドキサバン等の主力品の伸長に加え、トラスツズマブ デルクステカン(DS-8201、日米製品名:エンハーツ)に係る収益増(139億円:米国における製品売上及びアストラゼネカ社から受領した契約時一時金並びに開発マイルストン)等により、増収となりました。売上収益に係る為替の減収影響は151億円となりました。
営業利益
営業利益は、前連結会計年度比551億円(65.8%)増益の1,388億円となりました。売上総利益は、売上収益の増収に加え、販売製品の構成比の変化及び高槻工場の譲渡に伴い子会社売却益(188億円)を計上したこと等により、売上原価が減少したため、735億円(13.0%)増益の6,386億円となりました。販売費及び一般管理費は、米国におけるがん事業体制構築に伴う費用や、日本における環境対策費用の増加等により、246億円(8.9%)増加の3,023億円となりました。研究開発費は、アストラゼネカ社とのトラスツズマブ デルクステカン(DS-8201)に係るコストシェア等により、62億円(3.1%)減少の1,975億円となりました。営業利益に係る為替の減益影響は34億円となりました。
税引前利益/親会社の所有者に帰属する当期利益/当期包括利益合計額
税引前利益は、前連結会計年度比553億円(64.5%)増益の1,412億円となりました。
親会社の所有者に帰属する当期利益は、前連結会計年度比357億円(38.2%)増益の1,291億円となりました。前連結会計年度はトラスツズマブ デルクステカン(DS-8201)の戦略的提携に伴い、将来の課税所得見込み額が増加し、繰延税金資産の追加計上が可能となったことから、法人税等がマイナス計上となっておりました。この影響等により、前連結会計年度に比べ法人税率が増加しましたが、親会社の所有者に帰属する当期利益は増益となりました。
当期包括利益合計額は、前連結会計年度比623億円(38.0%)減益の1,016億円となりました。前連結会計年度に、過年度の当社グループの事業再編に係る税金負債を取崩して、その他の包括利益を計上していたこと等から、減益となりました。
なお、新型コロナウイルス感染症による当期の業績への影響は軽微であると判断しております。
<グローバル主力品売上収益>(単位:億円)
一般名 | 前連結会計年度 (自 2018年4月1日 至 2019年3月31日) | 当連結会計年度 (自 2019年4月1日 至 2020年3月31日) | 増減 |
トラスツズマブ デルクステカン抗悪性腫瘍剤 (抗HER2抗体薬物複合体) | 1 | 140 | 139 - |
エドキサバン抗凝固剤 | 1,177 | 1,540 | 363 30.9% |
オルメサルタン高血圧症治療剤 | 1,059 | 1,008 | △51 △4.8% |
プラスグレル 抗血小板剤 | 232 | 181 | △51 △21.9% |
オルメサルタンは、独占販売期間満了等の影響により、前連結会計年度比51億円減収の1,008億円となりました。エドキサバンは、日本、欧州等で売上が伸長し、前連結会計年度比363億円増収の1,540億円となりました。当社は、第4期中期経営計画で「エドキサバンの成長」を戦略目標として定めております。進捗及び課題等につきましては、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載しております。
地域別の売上状況は次のとおりであります。
① 日本
日本の売上収益は、前連結会計年度比123億円(2.1%)増収の6,020億円となりました。当社は、第4期中期経営計画で「日本No.1カンパニーとしての成長」を戦略目標として定めております。進捗及び課題等につきましては、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載しております。
[国内医薬事業]
国内医薬事業では、リクシアナ、タリージェ等の主力品の伸長及びオーソライズド・ジェネリック(注1)製品の寄与等により、売上収益は102億円(1.9%)増収の5,335億円となりました。この売上収益には、ワクチン事業の売上収益及び第一三共エスファ㈱が取り扱うジェネリック事業の売上収益が含まれております。
2019年4月にタリージェ(一般名:ミロガバリンベシル酸塩)を末梢性神経障害性疼痛の適応症で、新発売いたしました。
2019年5月にミネブロ(一般名:エサキセレノン)を高血圧症の適応症で、新発売いたしました。
2019年10月にヴァンフリタ(一般名:キザルチニブ塩酸塩)を再発または難治性のFLT3-ITD変異陽性の急性骨髄性白血病の適応症で、新発売いたしました。
造影剤4製品(オムニパーク、オムニスキャン、ビジパーク、ソナゾイド)の独占的開発及び販売権を米国GEヘルスケア社に返還し、製造販売承認を同社の日本法人であるGEヘルスケアファーマ㈱に2020年3月に承継いたしました。
(注)1.オーソライズド・ジェネリック:先発医薬品メーカーからの許諾を受けて製造される後発医薬品。
[ヘルスケア事業]
ヘルスケア事業の売上収益は、21億円(3.2%)増収の685億円となりました。
<日本の主な売上構成>(単位:億円)
区分 | 前連結会計年度 (自 2018年4月1日 至 2019年3月31日) | 当連結会計年度 (自 2019年4月1日 至 2020年3月31日) | 増減 |
国内医薬事業(注)2 | 5,233 | 5,335 | 102 1.9% |
ヘルスケア事業 | 664 | 685 | 21 3.2% |
(注)2.ジェネリック事業、ワクチン事業を含む。
<国内医薬主力品売上収益>(単位:億円)
製品名 | 前連結会計年度 (自 2018年4月1日 至 2019年3月31日) | 当連結会計年度 (自 2019年4月1日 至 2020年3月31日) | 増減 |
リクシアナ抗凝固剤 | 649 | 830 | 181 27.8% |
ネキシウム抗潰瘍剤 | 783 | 798 | 15 1.9% |
メマリーアルツハイマー型認知症治療剤 | 502 | 505 | 3 0.6% |
プラリア骨粗鬆症治療剤・関節リウマチに伴う 骨びらんの進行抑制剤 | 274 | 309 | 36 13.0% |
テネリア 2型糖尿病治療剤 | 253 | 247 | △6 △2.4% |
ロキソニン 消炎鎮痛剤 | 305 | 283 | △22 △7.3% |
イナビル 抗インフルエンザウイルス剤 | 182 | 193 | 11 5.9% |
ランマーク がん骨転移による骨病変治療剤 | 164 | 179 | 15 9.1% |
エフィエント 抗血小板剤 | 139 | 140 | 1 0.7% |
レザルタス 高血圧症治療剤 | 155 | 146 | △9 △5.8% |
カナリア 2型糖尿病治療剤 | 92 | 128 | 36 38.8% |
ビムパット抗てんかん剤 | 66 | 112 | 46 70.0% |
オムニパーク 造影剤 | 120 | 103 | △17 △13.9% |
オルメテック 高血圧症治療剤 | 149 | 117 | △32 △21.5% |
タリージェ疼痛治療剤 | - | 80 | 80 - |
② 北米
北米の売上収益は、前連結会計年度比88億円(5.7%)増収の1,629億円、現地通貨ベースでは、1億1千万米ドル(7.9%)増収の14億9千9百万米ドルとなりました。この売上収益には、第一三共Inc.とアメリカン・リージェントInc.の売上収益が含まれております。
第一三共Inc.は、2019年8月にTURALIO(一般名:ペキシダルチニブ)を腱滑膜巨細胞腫の適応症で、新発売いたしました。また、2020年1月にエンハーツ(一般名:トラスツズマブ デルクステカン)を転移性の乳がんに対する治療として2つ以上の抗HER2療法を受けたHER2陽性の手術不能または転移性乳がんの適応症で、新発売いたしました。当社は、第4期中期経営計画で「米国事業の拡大」を戦略目標として定めております。進捗及び課題等につきましては、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載しております。
第一三共Inc.では、ウェルコール等が減収となりました。
アメリカン・リージェントInc.では、インジェクタファー、ヴェノファー等が増収となりました。
<第一三共Inc.主力品売上収益>(単位:百万米ドル)
製品名 | 前連結会計年度 (自 2018年4月1日 至 2019年3月31日) | 当連結会計年度 (自 2019年4月1日 至 2020年3月31日) | 増減 |
エンハーツ抗悪性腫瘍剤 (抗HER2抗体薬物複合体) | - | 30 | 30 - |
オルメサルタン(注)3高血圧症治療剤 | 97 | 91 | △6 △6.5% |
ウェルコール高コレステロール血症治療剤 ・2型糖尿病治療剤 | 121 | 84 | △37 △30.5% |
(注)3.ベニカー/ベニカーHCT、エイゾール、トライベンゾール及びオルメサルタンのオーソライズド・ジェネリック
<アメリカン・リージェントInc.主力品売上収益>(単位:百万米ドル)
製品名 | 前連結会計年度 (自 2018年4月1日 至 2019年3月31日) | 当連結会計年度 (自 2019年4月1日 至 2020年3月31日) | 増減 |
インジェクタファー鉄欠乏性貧血治療剤 | 399 | 477 | 78 19.7% |
ヴェノファー 鉄欠乏性貧血治療剤 | 261 | 285 | 24 9.3% |
③ 欧州
欧州の売上収益は、前連結会計年度比69億円(7.8%)増収の955億円、現地通貨ベースでは9千9百万ユーロ(14.4%)増収の7億8千9百万ユーロとなりました。オルメサルタン及び配合剤、エフィエント等が減収となったものの、リクシアナが伸長いたしました。
<第一三共ヨーロッパGmbH主力品売上収益>(単位:百万ユーロ)
製品名 | 前連結会計年度 (自 2018年4月1日 至 2019年3月31日) | 当連結会計年度 (自 2019年4月1日 至 2020年3月31日) | 増減 |
リクシアナ抗凝固剤 | 357 | 509 | 153 42.9% |
オルメサルタン(注)4高血圧症治療剤 | 213 | 203 | △10 △4.7% |
エフィエント抗血小板剤 | 44 | 21 | △24 △53.1% |
(注)4.オルメテック/オルメテックプラス、セビカー及びセビカーHCT
④ アジア・中南米
アジア・中南米の売上収益は、前連結会計年度比107億円(12.0%)増収の983億円となりました。なお、この売上収益には、海外ラインセンシーへの売上収益等が含まれております。
中国では、合成抗菌剤クラビット並びにオルメサルタン及び配合剤等の主力品が増収となりました。
中国で、2019年8月にリクシアナを新発売いたしました。
地域別売上収益構成比は次のとおりであります。

(2) 生産、受注及び販売の実績
① 生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと次のとおりであります。
セグメントの名称 | 金額(百万円) | 前年同期比(%) |
医薬事業 | 470,332 | 91.6 |
合計 | 470,332 | 91.6 |
(注)1.金額は正味販売価格によっております。
2.上記金額には消費税等を含めておりません。
3.生産実績が前年同期比で大きく減少しておりますが、主には、2019年10月1日に第一三共プロファーマ㈱の
高槻工場を太陽ホールディングス㈱に譲渡したことによるものであります。
② 受注実績
当社グループは、主に販売計画に基づいて生産計画を策定し、これにより生産を行っております。受注生産は一部の連結子会社で行っておりますが、受注残高の金額に重要性はないため、記載を省略しております。
③ 販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと次のとおりであります。
セグメントの名称 | 金額(百万円) | 前年同期比(%) |
医薬事業 | 981,793 | 105.6 |
合計 | 981,793 | 105.6 |
(注)1.主な相手先別の販売実績及び総販売実績に対する割合は次のとおりであります。
相手先 | 前連結会計年度 | 当連結会計年度 | ||
金額(百万円) | 割合(%) | 金額(百万円) | 割合(%) | |
アルフレッサ ホールディングス 株式会社及びそのグループ会社 | 195,578 | 21.0 | 196,146 | 20.0 |
株式会社スズケン及びそのグループ会社 | 93,697 | 10.1 | 95,459 | 9.7 |
2.上記金額には消費税等を含めておりません。
(3) 資本の財源及び資金の流動性についての分析
① 財務戦略の基本的な考え方
当社グループは、「がんに強みを持つ先進的グローバル創薬企業」となることを2025年ビジョンとして掲げ、研究開発活動、ライセンス活動に取り組んでおります。当社グループでは、引き続き堅固な財務基盤を維持していくと共に、資本の効率化に努め、戦略的に資金を配分して参ります。2018年10月に第4期中期経営方針を見直し、2018年3月期から2022年3月期の5年間の新たなキャッシュ配分目標を策定いたしました。中期経営方針の期間中、ADCフランチャイズの治験薬・製品の需要増に備え、2020~2022年度において新たに1,000億円以上の設備投資を計画しており、また、研究開発投資として3つのADCプロジェクトに集中投資し、合計で1兆1,000億円規模の研究開発投資を積極的に行っていきます。その他、5,000億円規模の事業開発投資資金もあわせ、成長投資を継続し2025年度経営目標として掲げるがん事業の売上収益目標5,000億円以上を達成していきます。株主還元については、安定的な配当と機動的な自己株式取得を継続して参ります。また、親会社所有者帰属持分比率は現状の60%程度を保ちつつ最適資本構成の実現にも努めて参ります。
② 資金調達の方法及び状況
当社グループは、円滑な事業活動に必要なレベルの流動性の確保と財務の健全性・安定性維持を資金調達の基本的な考えとしており、手元資金及び外部資金を有効に活用しております。当社グループは、戦略的投資もしくは資金調達にあたって外部借入への依存度合いを測る目的から、手元流動性残高(現預金及び短期投資債券等)から有利子負債を控除した、ネット・キャッシュを重視しております。
手元資金としては、事業展開に伴う資金需要に対する機動的な対応のため、十分な現金及び現金同等物を保有しております。適正な現金及び現金同等物の保有額は、月商の3ヶ月程度を考えており、これを超える部分については企業価値向上に資する事業戦略投資に対する資金として確保しております。これらは金融情勢などを勘案しつつ、安全性並びに流動性の極めて高い短期金融商品で運用しております。
外部からの資金調達の手段としては、直接金融または間接金融の多様な手段の中から、その時々の市場環境を考慮したうえで当社にとって有利な手段を機動的に選択し、資金調達を行っております。直接金融としては、国内社債発行登録枠として3,000億円及びコマーシャル・ペーパー発行枠として1,500億円を有しております。2016年には超低金利の環境を活かし、国内ヘルスケアセクターでは初となる償還年限が20年、30年の超長期無担保社債を発行し、1,000億円の長期低コスト資金を確保いたしました。また、間接金融としては、当社は取引先金融機関と良好な取引関係を維持しており、複数の銀行から最長10年の資金調達をしております。これらの長期借入では、年限を分散させることで借り換えリスクの低減を図っております。また、複数の銀行との間で当座貸越契約および200億円のコミットメントラインを設定し、緊急時の流動性担保の手段も確保しております。
なお、円滑な外部資金調達を行なうため、当社は株式会社格付け投資情報センター(R&I)と、ムーディーズ・ジャパン株式会社(Moody’s)の2社から格付けを取得しております。
当連結会計年度末時点での当社の長期及び短期の信用格付けは次のとおりであります。
長期 | 短期 | |
格付投資情報センター(R&I) | AA/安定的(注1) | a-1+ |
ムーディーズ・ジャパン(Moody's) | A2/安定的 | - |
(注)1 2019年5月31日、格付投資情報センター(R&I)の長期発行体格付は、AA/ネガティブから、AA/安定的になり、格付けの方向性が改善しております。
なお、100%連結子会社は、原則として銀行などの外部からの資金調達を行わず、親会社もしくは現地法人などの資金調達拠点を通じたキャッシュ・マネジメント・サービスやグループ・ファイナンスの活用により、資金調達の集約と資金効率化、流動性の確保を図っております。
③ 財政状態及びキャッシュ・フローの状況の分析
(ⅰ)財政状態
当連結会計年度末における資産合計は前連結会計年度末から176億円増加の2兆1,056億円となりました。
トラスツズマブ デルクステカン(DS-8201、日米製品名:エンハーツ)の戦略的提携の契約一時金の入金やオルメサルタンに係る訴訟の和解金の保険金入金等により営業債権及びその他の債権が1,102億円減少し、さらに、その他の金融資産(流動資産)が704億円、その他の金融資産(非流動資産)が169億円それぞれ減少いたしました。一方で、主に営業債権及びその他の債権の入金等により現金及び現金同等物が1,810億円増加し、IFRS第16号「リース」の適用に伴い当期首に使用権資産を追加で認識したこと等により有形固定資産が180億円増加したほか、連結納税制度の導入に伴い繰延税金資産を計上したこと等により繰延税金資産が199億円増加いたしました。
当連結会計年度末における負債合計は前連結会計年度末から390億円減少の7,993億円となりました。
IFRS第16号「リース」の適用に伴い当期首にリース負債を追加で認識したこと等により、その他の金融負債(流動負債)が90億円、その他の金融負債(非流動負債)が314億円それぞれ増加しました。一方で、オルメサルタンに係る訴訟の和解金の支払等により営業債務及びその他の債務が418億円減少したほか、社債等の長短振替等により、社債及び借入金(非流動負債)が368億円減少いたしました。なお、当連結会計年度において社債を400億円償還しております。
当連結会計年度末における資本合計は前連結会計年度末から566億円増加の1兆3,063億円となりました。配当金の支払による減少があった一方で、当期利益の計上等により利益剰余金が888億円増加いたしました。
以上の結果、親会社所有者帰属持分比率は62.0%となり、前連結会計年度末より2.2%増加いたしました。

当社グループでは、資産適正化によってノンコア資産の圧縮を図り、総資産回転率を向上させるとともに、企業価値の向上に繋がるフリー・キャッシュの創出に努めております。不動産を含む保有する資産については、事業活動上の重要性と代替可能性だけでなく、ライフサイクルコストや事業継続計画を考慮し、ノンコア資産の売却を適切なタイミングで実施しております。2019年度は、日本橋ビルの売却及び高槻工場の譲渡を実施いたしました。今後も事業ポートフォリオの見直しを進め、ノンコア資産の圧縮に努めて参ります。
(ⅱ)キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物は、1,810億円増加の4,242億円となりました。各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動によるキャッシュ・フローは、1,966億円の収入(前連結会計年度は920億円の収入)となりました。
税引前利益1,412億円、減価償却費及び償却費526億円等の非資金項目の他、トラスツズマブ デルクステカン(DS-8201、日米製品名:エンハーツ)の戦略的提携の契約一時金の収入等により営業債権及びその他の債権の増減額が1,102億円となりました。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動によるキャッシュ・フローは、817億円の収入(前連結会計年度は1,425億円の支出)となりました。
設備投資や無形資産の取得による支出があった一方で、定期預金の払戻による収入や高槻工場譲渡による収入371億円及び日本橋ビル売却に伴う収入139億円等がありました。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動によるキャッシュ・フローは、配当金の支払454億円及び社債の償還400億円等により、916億円の支出(前連結会計年度は662億円の支出)となりました。

今後も、エドキサバン等の主力品を中心に、営業キャッシュ・フローの確実な創出に努めつつ、政策保有株式やノンコア資産の売却による、キャッシュの創出にも努めて参ります。そして、これらのキャッシュを源泉に、ADCパイプラインを中心とした研究開発投資及び製造設備投資等を積極的に進め、がん事業の早期確立と最大化を図ります。
また、当社は、持続的な企業価値の向上を図るため、株主還元方針は、2016年度から2022年度において、総還元性向を期間中100%以上、配当金は普通配当を年間70円以上とし、配当は安定的に行い、自己株式取得を機動的に実施することとしております。なお、2020年度においては、1株当たり年間81円(株式分割前ベース)の配当を予定しております。
(4) 経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループは、2022年度の計数目標として、売上収益1兆1,000億円、営業利益1,650億円、ROE8%以上を目指しております。また、がん事業への投資を強化することで、2025年度のがん事業売上収益目標は5,000億円以上を目指しております。
当連結会計年度においては、売上収益9,818億円、営業利益1,388億円、ROE10.1%となりました。なお、目標達成に向けた主な取り組み課題と実績については、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載しております。
2016年度 | 2017年度 | 2018年度 | 2019年度 | 2022年度 | |
実績 | 実績 | 実績 | 実績 | 目標 | |
売上収益 | 9,551億円 | 9,602億円 | 9,297億円 | 9,818億円 | 1兆1,000億円 |
営業利益 | 889億円 | 763億円 | 837億円 | 1,388億円 | 1,650億円 |
ROE | 4.4% | 5.2% | 7.8% | 10.1% | 8%以上 |
(5) 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、IFRSに基づいて作成しております。連結財務諸表の作成にあたり行った重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 4 重要な会計上の判断、見積り及び仮定」に記載しております。