有価証券報告書-第81期(平成29年4月1日-平成30年3月31日)

【提出】
2018/06/19 16:15
【資料】
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【項目】
56項目
(1)経営成績等の状況の概要
①財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要については「(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容」に含めて記載しております。
②生産、受注及び販売の実績
a. 生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称金額(百万円)前年同期比(%)
特殊鋼製品318,40926.5
磁性材料113,46018.1
素形材製品365,4368.8
電線材料236,9570.6
報告セグメント計1,034,26212.5
その他--
合計1,034,26212.5

(注)上記の金額は販売価格によっており、消費税等は含まれておりません。
b. 受注実績
当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称金額(百万円)前年同期比(%)
特殊鋼製品299,23121.0
磁性材料107,3074.7
素形材製品362,6886.8
電線材料235,589△2.1
報告セグメント計1,004,8158.0
その他2,6433.2
合計1,007,4588.0

(注)上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
c. 販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称金額(百万円)前年同期比(%)
特殊鋼製品290,59919.5
磁性材料106,1316.4
素形材製品360,0538.0
電線材料230,532△1.0
報告セグメント計987,3158.6
その他3,41715.3
調整額△2,429△30.7
合計988,3038.5

(注)1.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
2.上記の調整額にはセグメント間の内部売上収益が含まれております。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において当社グループが判断したものであります。
①重要な会計方針及び見積り
この連結財務諸表の作成にあたって、重要となる事項としては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記」に記載のとおりであります。
②当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
当連結会計年度における世界経済は、先進国を中心に緩やかに回復しました。米国では雇用環境が改善するとともに、個人消費や設備投資が増加し、景気の着実な回復が継続しました。欧州では、ユーロ圏を中心に設備投資や生産に持ち直しの動きが見られる等、景気の緩やかな回復が続きました。中国では各種政策の効果により景気の持ち直しの動きが継続したほか、他のアジア新興国経済も総じて緩やかな回復傾向が続きました。こうした中、我が国の経済は、世界経済の回復を受けて輸出や設備投資が持ち直すとともに、雇用・所得環境の改善が継続し、景気は緩やかな回復基調となりました。
当社グループの関連業界をみますと、自動車は、新車販売台数が米国では前年同期と比べて減少しましたが、国内では新型車が需要をけん引する形で伸長し、中国・欧州も堅調に推移しました。鉄鋼は、自動車や産業機械をはじめとする製造業部門を中心に需要が増加しました。住宅着工戸数は、米国は増加しましたが、国内は減少傾向となりました。エレクトロニクス関連では、携帯端末の出荷台数が伸長しました。
このような状況のもと、当連結会計年度における当社グループの業績は主力製品を中心に需要が増加したことに加え、原材料価格上昇(価格スライド制)や為替が円安になった影響により、売上収益は前年同期に比べ8.5%増の988,303百万円となりました。また、利益面では売上収益の増加に伴う利益の増加や原価低減活動の効果等がありましたが、耐熱鋳造部品、アルミホイールの収益性低下や原材料価格上昇に伴うコストの増加により、前年同期と比べ調整後営業利益は853百万円減の65,130百万円となりました。営業利益は、前連結会計年度にその他の収益として事業再編等利益を計上していたことや、当連結会計年度はその他の費用として減損損失を計上したこと等により、前年同期比で21,941百万円減の46,326百万円となりました。税引前当期利益は前年同期比19,031百万円減の46,985百万円、親会社株主に帰属する当期利益は前年同期比8,383百万円減の42,210百万円となりました。
セグメントの業績は、次のとおりです。各セグメントの売上収益は、セグメント間の内部売上収益を含んでおります。
なお、2017年4月1日付で、従来の「高級金属製品」は「特殊鋼製品」に、「高級機能部品」は「素形材製品」にセグメント名称を変更しております。このセグメント名称変更によるセグメント情報に与える影響はありません。
また、2017年7月1日付で、「特殊鋼製品」における電池用材料事業の強化等を目的として、連結子会社である株式会社SHカッパープロダクツ他1社(以下、「SHカッパープロダクツ等」)の所属するセグメント区分を「電線材料」から「特殊鋼製品」に変更いたしました。これに伴い、SHカッパープロダクツ等の当連結会計年度(2017年4月1日~2018年3月31日)の業績は「特殊鋼製品」セグメントに計上しております。
以下の前年同期との比較において、前年同期の数値を変更後のセグメント区分に組み替えた数値で比較しております。なお、2017年1月5日付けで連結子会社化した株式会社SHカッパープロダクツの業績は前第4四半期連結会計期間(2017年1月1日~2017年3月31日)より計上しております。
特殊鋼製品
当セグメントの売上収益は、前年同期比19.5%増の290,599百万円となり、調整後営業利益は前年同期比4,328百万円増加し、27,865百万円となりました。また、営業利益は、前年同期比3,956百万円増加し、26,127百万円となりました。
特殊鋼については、工具鋼は、国内向け、アジア向けともに需要が回復し、前年同期を上回りました。産業機器材料は、自動車関連の環境親和製品が増加したことに加え、その他産業部材でも半導体関連装置向け部材が好調だったことにより、前年同期と比べて伸長しました。電子材料は、半導体パッケージ材料が好調となったことに加え、電池用材料や有機ELパネル関連部材が増加した結果、前年同期を大きく上回りました。航空機関連材料およびエネルギー関連材料は低調となりました。
各種ロールについては、高付加価値製品に経営資源を集中することを目的に、2016年9月に中国子会社の生産を打ち切りました。一方、射出成形機用部品は、携帯端末の需要増加を受けて好調となりました。この結果、ロール全体としては前年同期と比べて増加しました。
軟質磁性材料およびその応用品については、応用品が携帯端末や自動車向けの需要増加により堅調となりましたが、アモルファス金属材料が減少したことにより、全体としては前年同期を下回りました。
磁性材料
当セグメントの売上収益は、前年同期比6.4%増の106,131百万円となり、調整後営業利益は前年同期比279百万円増加し、9,593百万円となりました。また、営業利益は、一部子会社事業の収益性の低下による減損損失の計上等によりその他の費用が増加したため、前年同期比2,015百万円減少し、7,286百万円となりました。
希土類磁石については、電動パワーステアリングおよびハイブリッド自動車等向けの自動車用電装部品の需要が増加しました。また、産業機器関連もロボット向けや、有機ELパネルおよび半導体等の設備投資関連の需要増加を受けて好調でした。この結果、全体としても前年同期を上回りました。
フェライト磁石については、自動車生産の伸びに伴い自動車用電装部品が好調となり、家電用部品も堅調に推移したため、前年同期と比べ増加しました。
素形材製品
当セグメントの売上収益は、前年同期比8.0%増の360,053百万円となりましたが、耐熱鋳造部品やアルミホイールの収益性の低下により、調整後営業利益は前年同期比5,654百万円減少し、11,799百万円となりました。営業利益はアルミホイール事業に関する減損損失の計上等によりその他の費用が増加したため前年同期比15,313百万円減少し、607百万円となりました。
自動車用鋳物については、北米では、ピックアップトラック等のライトトラック向けや乗用車向けが減少した一方で、商用車や農業機械・建設機械向けの需要が増加しました。また、アジアでも自動車需要の伸長に伴い増加しました。この結果、自動車用鋳物全体としては前年同期と比較して増加しました。
耐熱鋳造部品は、米国・欧州・アジア・国内向けともに売上収益は前年同期を上回りましたが、生産性に関する課題等により、利益面では前年同期を下回りました。
アルミホイールは、北米の乗用車需要が減少した影響や生産性に関する課題等により、前年同期を下回りました。
配管機器については、継手類は、米国において住宅着工戸数が増加したことや、国内において大規模建設工事案件が増加したことにより堅調となりました。また、半導体関連需要の増加を受けて半導体製造装置用機器が好調となりました。この結果、配管機器全体としては前年同期を上回りました。
電線材料
当セグメントの売上収益は事業ポートフォリオ刷新を目的とした事業再編の影響により前年同期比1.0%減の230,532百万円となりましたが、注力分野の増加に伴い調整後営業利益は前年同期比266百万円増加し、14,947百万円となりました。また、営業利益は、前連結会計年度にその他の収益として事業再編等利益を計上していたことや、当連結会計年度はその他の費用が増加したこと等により、前年同期比8,876百万円減少し、11,183百万円となりました。
電線については、鉄道車両用電線が中国向けをはじめとして大きく伸長しました。また、機器用電線は半導体製造装置向けやFA・ロボット向け等が増加したほか、巻線も自動車向けや産業機械向けが好調となりました。
機能品については、自動車用電装部品が各種センサや、電動パーキングブレーキおよびハイブリッド自動車向けのハーネスが伸長し、ブレーキホースも堅調となりました。医療用プローブケーブルは、海外向けの需要が増加し、前年同期を上回りました。
その他
当セグメントの売上収益は、前年同期比15.3%増の3,417百万円となり、調整後営業利益は前年同期比129百万円減少し、124百万円となりました。また、営業利益は、前年同期比220百万円減少し、111百万円となりました。
(注)当社グループは、事業再編等の影響を排除した経営の実態を表示するため、連結損益計算書に表示している営業利益からその他の収益、その他の費用を除いた指標である調整後営業利益を記載しています。
③経営成績に重要な影響を与える要因について
「2 事業等のリスク」に記載のとおりであります。
④財政状態等の概要
a.資産、負債及び資本の状況
当連結会計年度末における当社グループの財政状態として、連結財政状態計算書における増減を分析すると、以下のとおりであります。
資産合計は1,058,832百万円で、前連結会計年度末に比べ18,442百万円増加しました。流動資産は484,032百万円で、前連結会計年度末に比べ7,863百万円減少しました。これは主に売上債権が32,060百万円、棚卸資産が36,646百万円増加した一方、現金及び現金同等物が84,499百万円減少したこと等によるものです。非流動資産は574,800百万円で、前連結会計年度に比べ26,305百万円増加しました。これは主に有形固定資産が30,651百万円増加した一方、のれん及び無形資産が9,299百万円減少したこと等によるものです。
負債合計は488,640百万円で、前連結会計年度末に比べ3,004百万円減少しました。これは主に買入債務が22,209百万円、その他の金融負債が14,015百万円増加した一方、償還期長期債務及び長期債務が純額で34,515百万円、繰延税金負債が5,453百万円減少したこと等によるものです。資本合計は570,192百万円で、前連結会計年度末に比べ21,446百万円増加しました。これは主に利益剰余金が31,111百万円増加したこと等によるものです。
b.キャッシュ・フロー
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)は、投資活動および財務活動で使用した資金が営業活動の結果得られた資金を上回ったことにより、前連結会計年度末に比べ84,499百万円減少し、54,912百万円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりです。
(営業活動に関するキャッシュ・フロー)
営業活動の結果得られた資金は、39,133百万円となりました。これは主に当期利益が42,075百万円、減価償却費及び無形資産償却費が46,138百万円あった一方、棚卸資産等の運転資金の増加による支出が48,343百万円あったこと等によるものです。
(投資活動に関するキャッシュ・フロー)
投資活動に使用した資金は、75,080百万円となりました。これは主に有形固定資産の取得による支出が76,265百万円あったこと等によるものです。
(財務活動に関するキャッシュ・フロー)
財務活動に使用した資金は、47,562百万円となりました。これは主に長期借入債務の償還が35,239百万円、配当金の支払が11,294百万円あったこと等によるものです。
c.資本の財源及び資金の流動性についての分析
当社グループでは、成長投資に必要な資金は、事業が生み出す営業キャッシュ・フロー及び手元流動性資金で賄うことを基本とし、それを超える投資規模の場合には、金融・資本市場から調達することも選択肢の一つとし、成長への機会損失とならないよう、堅実かつ柔軟な資金調達を行うものとしております。
2018年3月31日に終了した事業年度においては、利益の増加や運転資金の増減により創出した資金を、主に成長基盤の強化に向けた設備投資に充当しました。一方で長期借入金の返済も行い、資金の安定化を図りました。
また、当社は当社連結子会社との間で、キャッシュ・プーリング・システム(以下、CPS)を運営しており、日立金属グループにおける運転資金のマネジメントを行っております。国内連結子会社は原則として外部借入を行わず、CPSによって資金調達を行うこととしています。これにより日立金属グループ全体での余剰資金と借入金の一元化を図り、資金効率の向上に努めております。米国・中国子会社においても同様のCPSを導入しており、米国・中国内グループ会社における資金の集中管理を行っております。
なお、当社グループの重要な資本的支出の予定は、「第3 設備の状況 3 設備の新設、除却等の計画」に記載のとおりであります。
⑤経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等の達成・進捗状況について
当社グループは、2018年度中期経営計画において、収益力向上を伴うグローバルでの事業拡大をめざしております。このため、売上収益、調整後営業利益(率)を重要な指標として位置づけております。「2018年度中期経営計画」の最終年度にあたる2019年3月期の目標は、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおりであります。
当連結会計年度における売上収益は988,303百万円(前年同期比8.5%増)、調整後営業利益は65,130百万円(前年同期比853百万円減少)となり、調整後営業利益率は6.6%(前年同期比0.6ポイント減少)となっております。当社グループは、「2018年度中期経営計画」の実行により、当該指標の目標達成に取り組んでまいります。
(注)「調整後営業利益」は、事業再編等の影響を排除した経営の実態を表示するために、連結損益計算書に
表示している営業利益からその他の収益、その他の費用を除いた指標です。
(3)経営成績等の状況の概要に係る主要な項目における差異に関する情報
IFRSにより作成した連結財務諸表における主要な項目と日本基準により作成した場合の連結財務諸表におけるこれらに相当する項目との差異に関する事項
(従業員給付)
IFRSでは、確定給付型企業年金制度及び退職一時金制度から生じる再測定は、その他の包括利益にて認識しております。再測定は、確定給付制度債務にかかる数理計算上の差異、制度資産にかかる収益(制度資産にかかる利息収益の金額を除く)等により構成されております。過去勤務費用は直ちに純損益として認識しております。また、勤務費用は発生時に純損益として認識し、純利息費用は確定給付費用(資産)の純額に割引率を乗じた金額を純損益として認識しております。
一方、日本基準では、数理計算上の差異及び過去勤務費用のうち、当期の費用として認識しなかった部分をその他の包括利益累計額にて認識し、将来の一定期間にわたり純損益として認識しております。また、勤務費用、利息費用、及び期待運用収益を純損益として認識しております。
この影響により、当連結会計年度にて、IFRSでは日本基準に比べて「売上原価」及び「販売費及び一般管理費」合計が約5億円減少しております。
(のれん)
IFRSでは、のれんの償却は行われておりません。一方、日本基準では、のれんは投資効果が発現すると合理的に見積られる期間にわたって規則的に償却をしております。
この影響により、当連結会計年度にて、IFRSでは日本基準に比べて「販売費及び一般管理費」が約66億円減少しております。