有価証券報告書-第84期(令和2年4月1日-令和3年3月31日)
(1)経営成績等の状況の概要
① 財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要については「(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容」に含めて記載しております。
② 生産、受注及び販売の実績
a. 生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注)上記の金額は販売価格によっており、消費税等は含まれておりません。
b. 受注実績
当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注)上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
c. 販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注)1.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
2.上記の調整額にはセグメント間の内部売上収益が含まれております。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において当社グループが判断したものであります。
① 重要な会計方針及び見積り
この連結財務諸表の作成にあたって、重要となる事項としては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記」に記載のとおりであります。
② 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
当連結会計年度における当社グループの業績は、次のとおりです。
当連結会計年度は、COVID-19(新型コロナウイルス感染症)拡大を受けて世界各地域における経済・社会活動が制限される状況が継続しました。2020年の世界経済成長率見通しはマイナス3.3%(2021年4月IMF公表)、主要国でプラス成長を維持したのは中国のみとなるなど極めて厳しい状況となりました。当社グループの事業領域においては、第1四半期連結会計期間を底として、第2四半期連結会計期間以降は需要回復の動きが継続しました。しかしながら、当連結会計年度で見ると第1四半期連結会計期間の落ち込みが大きく、この結果、売上収益は、前年度比13.6%減の761,615百万円となりました。
調整後営業損益※は、固定費削減等の実施に加え第2四半期連結会計期間以降の売上収益の回復によって損益の改善が見られました。しかしながら、当連結会計年度で見ると売上収益の減少等の影響により、前年度比19,360百万円減の4,977百万円の損失となりました。
その他の収益については、三菱日立ツール株式会社(現 株式会社MOLDINO)の当社保有の株式を三菱マテリアル株式会社に全て譲渡したことに伴い、特殊鋼製品セグメントにおいて、事業再編等利益として第1四半期連結会計期間に1,971百万円を計上しました。また、米国Waupaca Foundry, Inc.の一部工場を売却したことに伴い、素形材製品セグメントにおいて、事業再編等利益として当第4四半期連結会計期間に1,474百万円を計上しました。その他の費用については、特殊鋼製品セグメントにおいて、航空機エネルギー事業の将来における収益性を見直した結果、第2四半期連結会計期間に6,812百万円、当第4四半期連結会計期間に5,290百万円の減損損失を計上しました。素形材製品セグメントにおいては、米国Waupaca Foundry, Inc.の一部工場について、当第4四半期連結会計期間に5,457百万円の減損損失を計上しました。磁性材料・パワーエレクトロニクスセグメントにおいては、磁性材料事業の将来における収益性を見直した結果、第2四半期連結会計期間に15,657百万円の減損損失を計上しました。また、電線材料セグメントにおいては、自動車部品事業の将来における収益性を見直した結果、第2四半期連結会計期間に2,000百万円の減損損失を計上しました。この結果、営業損益は前年度比10,087百万円悪化し、49,213百万円の損失となりました。税引前当期損益は、前年度比9,974百万円悪化し、50,588百万円の損失、親会社株主に帰属する当期損益は前年度比4,637百万円悪化し、42,285百万円の損失となりました。
なお、当社グループでは中期経営計画における重要経営課題として、キャッシュ・フローの改善と資本効率の向上を掲げ、ROIC(投下資本利益率)による経営管理を導入しております。特に当連結会計年度は、COVID-19拡大により、経営環境の先行きが不透明な状況において、財務の健全性担保のために十分な流動性を確保すること、また、需要等の外部要因に関わらず自社で実効性をあげられる取り組みを着実に推進することが、より一層、重要と考え、運転資本効率を向上するとともに、重点領域に対する厳選投資により投資額の抑制に取り組みました。この結果、当連結会計年度のフリー・キャッシュ・フローは、前年度比で5,237百万円改善しました。
セグメントの業績は、次のとおりです。各セグメントの売上収益は、セグメント間の内部売上収益を含んでおります。当連結会計年度において、当社グループが営む事業の内容について、重要な変更はありません。
特殊鋼製品
当セグメントの売上収益は、前年度比13.3%減の217,420百万円となりました。
売上収益について事業別に見ますと、工具鋼は、2020年12月末までに流通を含めて在庫調整が終了し、当第4四半期連結会計期間からは国内、海外向けともに需要回復の動きが見られましたが、当連結会計年度全体では前年度を下回りました。産機材は、第2四半期連結会計期間以降、自動車関連製品の需要回復が顕著となり、当第4四半期連結会計期間には前年同期並みまで回復しましたが、当連結会計年度全体では前年度を下回りました。航空機エネルギーは、主力の航空機関連材料が民間需要を中心に減少したことにより、前年度を下回りました。電子材は、有機ELパネル関連部材が伸長し、クラッド材がスマートフォンや電池向けで増加したことに加え、当第4四半期連結会計期間より半導体パッケージ材料の需要も立ち上がったことから、電子材全体としては前年度を上回りました。
ロールは、各種ロール、射出成形機用部品、鉄骨構造部品とも、需要が減少したことにより前年度を下回りました。
調整後営業利益は、主力の工具鋼や産機材の需要が減少したこと等により、前年度比4,663百万円減の811百万円となりました。また、営業損益は、2020年4月1日付で三菱日立ツール株式会社(現 株式会社MOLDINO)の当社保有の株式を三菱マテリアル株式会社に全て譲渡したことに伴い、その他の営業収益に事業再編等利益として第1四半期連結会計期間に1,971百万円を計上しました。また、航空機エネルギー事業の将来における収益性を見直した結果、その他の費用として第2四半期連結会計期間に6,812百万円、当第4四半期連結会計期間に5,290百万円の減損損失を計上しました。この結果、前年度比19,561百万円減の11,976百万円の損失となりました。
素形材製品
当セグメントの売上収益は、前年度比17.3%減の247,939百万円となりました。
売上収益について事業別に見ますと、自動車鋳物のうち、鋳鉄製品は、第1四半期連結会計期間にCOVID-19の拡大に伴い世界各地域の主要顧客が操業を停止したことにより、同期間を底として大きく落ち込みました。その後、各地域の自動車販売台数の回復や各主要顧客の再稼働が順次立ち上がったこと等に伴い、当社グループの事業も回復基調が継続しました。しかしながら、北米を中心に当第4四半期連結会計期間で自動車向け半導体の供給不足に伴う完成車メーカーの生産調整の影響を受けました。当連結会計年度全体では前年度を下回りました。耐熱鋳造部品も需要回復の動きを受け、第3四半期連結会計期間以降、前年同期を上回って推移しましたが、当連結会計年度全体で見ると第1四半期連結会計期間の落ち込みが大きく前年度を下回りました。アルミホイールについては、事業から撤退することを決定し、2020年9月末に生産を終了しました。この結果、自動車鋳物全体として前年度を下回りました。
配管機器のうち、半導体製造装置用機器は、設備投資需要の回復等により前年度を上回りました。主力の継手類は、国内の住宅着工戸数や大規模建設工事案件の減少等により、前年度を下回りました。この結果、配管全体としては前年度を下回りました。
調整後営業損益は、主力の自動車鋳物の需要が減少したことにより、前年度比11,902百万円悪化し、12,812百万円の損失となりました。また、営業損益は、その他の収益に米国Waupaca Foundry, Inc.の一部工場を売却したことに伴い、事業再編等利益として当第4四半期連結会計期間に1,474百万円を計上しました。また、その他の費用として、米国Waupaca Foundry, Inc.の一部工場について、当第4四半期連結会計期間に5,457百万円の減損損失を計上しました。この結果、前年度比9,906百万円悪化し、19,128百万円の損失となりました。
磁性材料・パワーエレクトロニクス
当セグメントの売上収益は、前年度比9.1%減の106,142百万円となりました。
売上収益について事業別に見ますと、磁性材料は希土類磁石、フェライト磁石とも、第1四半期連結会計期間を底として需要が大きく落ち込みましたが、第2四半期連結会計期間以降は自動車用電装部品の需要回復が継続しました。さらに第3四半期連結会計期間からはFA・ロボットやエレクトロニクス関連需要も回復基調となったことから、当第4四半期連結会計期間においては、前年同期を上回りましたが、当連結会計年度全体では前年度を下回りました。
パワーエレクトロニクスのうち、軟磁性材料およびその応用品は、サーバー機器等の情報通信向けが堅調でしたが、変圧器用のアモルファス金属材料が減少した結果、前年度を下回りました。一方、セラミックス製品は、医療機器向けの需要が伸長しましたが、通信機器向けが減少したことにより、前年度並みとなりました。この結果、パワーエレクトロニクス全体としては前年度を下回りました。
調整後営業利益は、前年度比1,076百万円増の2,481百万円となりました。また、営業損益は、第2四半期連結会計期間において磁性材料事業の将来における収益性を見直した結果、その他の費用に15,657百万円の減損損失を計上しましたが、2020年3月期第2四半期連結会計期間においてその他の費用として42,581百万円の減損損失を計上していたこと等の影響により、前年度比28,666百万円改善し、14,084百万円の損失となりました。
電線材料
当セグメントの売上収益は、前年度比11.3%減の189,244百万円となりました。
売上収益について事業別に見ますと、電線のうち、機器用電線はFA・ロボット向けが増加したほか、第5世代移動通信システム(5G)基地局向け等が堅調に推移し、前年度を上回りました。一方、鉄道車両用電線は、国内向けの需要が減少しましたが、中国向けの需要が増加したことにより、前年度を上回りました。医療向けでは、ケーブルは前年度並みでしたが、チューブの需要が減少したことにより、前年度を下回りました。また、巻線は、第3四半期連結会計期間以降、自動車向けを中心に需要の回復が見られましたが、当連結会計年度全体では前年度を下回りました。この結果、電線全体としては前年度を下回りました。
自動車部品は、自動車市場の回復を受けて、自動車用電装部品を中心に需要が回復し、第3四半期連結会計期間以降は、前年同期を上回って推移しました。しかしながら、当連結会計年度全体で見ると第1四半期連結会計期間の落ち込みが大きく、前年度を下回りました。
調整後営業利益は、電線、自動車部品とも需要が減少したことにより、前年度比2,109百万円減の4,560百万円となりました。営業利益は、自動車部品事業の将来における収益性を見直した結果、その他の費用として、第2四半期連結会計期間において2,000百万円の減損損失を計上したため、前年度比3,425百万円減の1,832百万円となりました。
その他
当セグメントの売上収益は、前年度比24.2%減の2,555百万円となり、調整後営業利益は前年度比125百万円増の879百万円となりました。また、営業利益は、前年度比758百万円増の1,268百万円となりました。
※当社グループは、事業再編等の影響を排除した経営の実態を表示するため、連結損益計算書に表示している営業損失からその他の収益、その他の費用を除いた指標である調整後営業利益を記載しています。調整後営業利益は、当社の親会社である日立製作所を中心とする日立グループ統一の利益指標です。
③ 経営成績に重要な影響を与える要因について
「2 事業等のリスク」に記載のとおりであります。
④ 財政状態等の概要
a. 資産、負債及び資本の状況
当連結会計年度末における当社グループの財政状態として、連結財政状態計算書における増減を分析すると、以下のとおりであります。
資産合計は972,249百万円で、前連結会計年度末に比べ5,517百万円減少しました。流動資産は462,558百万円で、前連結会計年度末に比べ56,439百万円増加しました。これは主に現金及び現金同等物が56,986百万円増加したこと等によるものです。非流動資産は509,691百万円で、前連結会計年度末に比べ61,956百万円減少しました。有形固定資産が47,647百万円減少しておりますが、これは主に、30,469百万円の減損損失を計上したこと等によるものです。加えて、のれん及び無形資産が6,743百万円減少しておりますが、これは主に、5,388百万円の減損損失を計上したこと等によるものです。また、持分法で会計処理されている投資が17,582百万円減少しておりますが、これは主に、当社が保有する三菱日立ツール株式会社(現 株式会社MOLDINO)の発行済株式の総数の49%を2020年4月1日付をもって、株式譲渡したため、持分法適用の範囲より除外された影響によるものです。
負債合計は480,131百万円で、前連結会計年度末に比べ25,218百万円増加しました。これは主に、償還期長期債務及び長期債務が11,731百万円減少した一方、買入債務が23,999百万円、短期借入金が19,463百万円増加したこと等によるものです。資本合計は492,118百万円で、前連結会計年度末に比べ30,735百万円減少しました。これは主にその他の包括利益累計額が17,295百万円増加した一方、利益剰余金が47,932百万円減少したこと等によるものです。
b. キャッシュ・フロー
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)は、営業活動及び投資活動の結果得られた資金が財務活動で使用した資金を上回ったことにより、前連結会計年度末に比べ56,986百万円増加し、99,339百万円となりました。
当連結会計年度末における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりです。
(営業活動に関するキャッシュ・フロー)
営業活動の結果得られた資金は、52,586百万円となりました。これは主に当期損失が42,556百万円に対して、減価償却費及び無形資産償却費が50,407百万円、減損損失が35,857百万円、運転資金の減少による26,960百万円の収入等によるものです。
(投資活動に関するキャッシュ・フロー)
投資活動の結果得られた資金は、2,191百万円となりました。これは主に有形固定資産の取得により29,129百万円
を支出した一方、主に当社が保有する三菱日立ツール株式会社(現 株式会社MOLDINO)の発行済株式の総数の49%を
2020年4月1日付をもって株式譲渡したことに伴う、有価証券等(子会社及び持分法で会計処理されている投資を含
む)の売却による26,329百万円の収入等によるものです。
(財務活動に関するキャッシュ・フロー)
財務活動に使用した資金は、1,096百万円となりました。これは主に長期借入債務の調達による36,749百万円の収入及び短期借入金が18,569百万円純増した一方、長期借入債務の償還が50,839百万円、配当金の支払により5,570百万円を支出したこと等によるものです。
c. 資本の財源及び資金の流動性についての分析
ⅰ)概況
日立金属グループは、中期経営計画において2022年度調整後営業利益率8%、ROIC(Return on Invested Capital:投下資本利益率)8%を目標としております。資本コスト7.5%を上回るROICを確保し、資本効率の向上を図るとともに、フリー・キャッシュ・フローの最大化に注力しております。
また、不採算製品からの撤退や拠点の統廃合等の事業構造改革、徹底した原価低減・経費縮減、人件費の適正化等のコスト構造改革に取り組み、需要変動に強い収益構造に変革します。さらに、事業ごとのグローバルの競争環境におけるベンチマーク分析を踏まえ、セグメントごとに事業の新陳代謝を加速し、成長と基盤事業のポートフォリオ最適化を図ります。中期経営計画の着実な実行により早期の業績回復と将来の成長投資の原資を確保できる収益基盤への変革を推進します。中期経営計画の概要及び2020年度の進捗状況は、「1経営方針、経営環境及び対処すべき課題等(2)対処すべき課題②中期経営計画とその進捗」をご参照ください。
なお、今後、株式会社BCJ-52による当社の普通株式に対する公開買付け等(以下、「本公開買付け」といいます。)が予定されております。本公開買付け及びその後に予定される一連の取引により、同社は当社を完全子会社とすることを企図しております。これにより、当社は日立グループから離脱し、当社普通株式は上場廃止となる予定です。本取引後当社は新パートナーの下で改革を進めることにより、これまで以上の意思決定のスピードアップや、投資資金の獲得、また外部知見の導入を行い、当社の競争力と収益力を回復させ、再成長により企業価値の向上をめざします。
現在の主要な取り組みと2020年度の実績値は以下のとおりです。
ⅱ)資本効率の向上
当社グループの資本コストは7.5%と算定していますが、足元ではROICが資本コストを下回る状況です。このため、需要変動に強い収益構造を構築するために、コスト削減により損益分岐点の引き下げを行い、利益拡大と投下資本の圧縮によって早期にROICの改善を図ってまいります。
利益拡大については、引き続き、高付加価値製品、成長事業の拡大、IoTを利活用したモノづくり改革による品質改善や原価低減を実施します。加えて、ITを活用した間接業務改革等による固定費削減等も推進しています。また、低収益・ノンコア事業の縮小・撤退・切り離し等により、事業ポートフォリオを継続的に見直しております。
投下資本の圧縮については、CCC(Cash Conversion Cycle:運転資金手持日数)の短縮に向け、IoTを利活用した最適生産計画の策定や当社グループ内人財交流により優秀事例の共有を進めています。棚卸資産については、当社では製造拠点と調達部門には材料在庫を、製造拠点と事業本部には仕掛品・製品等の生産棚卸資産を、国内外販社と事業本部には流通在庫を、各々の責任区分として在庫管理体制をとっております。これに加え、コーポレートの横ぐし機能強化により、売上見通しに基づき的確な棚卸資産管理を迅速に行う体制を構築し、一段の在庫圧縮に努めCCCのさらなる短縮をめざします。また、「改革人材養成講座」の開設により改善のプロとなる人財を育成し、生産現場から棚卸資産、適正在庫の管理を徹底する取り組みを実施しています。2020年度末のCCC実績値は、棚卸資産の適正化に重点的に取り組みましたが、第1四半期を中心にCOVID-19の影響を受け、売上収益が大きく減少したこと、第4四半期では想定を上回る需要回復への対応のため生産が拡大したことや原料価格の高騰等により89.1日(2019年度実績対比+2日)となりました。
なお、現状ではROICが資本コストを大きく上回る事業、今後着実に改善していく事業、先行投資が必要なため短期的には下回る事業があります。そのため、事業部門ごとにROICによる管理の浸透を図ることが重要と考えています。現在、事業セグメントごとの利益と投下資本を踏まえてROICの目標を設定することにより、グループ全体のROICの早期改善につなげています。2021年度は経営改革の各アクションプランに落とし込むことで、ROIC経営の実効性をあげていきます。
ⅲ)キャッシュ・フローの改善
キャッシュ・フローについては、利益の拡大、運転資本効率の改善、重点領域に対する厳選投資等により、フリー・キャッシュ・フローの確保に取り組んでおります。
営業キャッシュ・フローは、2020年度実績値は利益減少の影響が大きく526億円(2019年度実績値対比△534億円)となりました。一方、投資キャッシュ・フローについては、2020年度実績値は、業績悪化を受け投資のさらなる絞り込み等を実行したことに加え、旧・三菱日立ツール株式会社(現 株式会社MOLDINO)株式の譲渡収入もあり、22億円(同+587億円)となりました。この結果、フリー・キャッシュ・フローは548億円(同+53億円)と改善し、効果の刈り取りを着実に実行しました。
ⅳ)投資判断プロセスの明確化
設備投資については、プロセスと判断基準を再構築しました。事業本部が行う設備投資では、事前の検討段階からコーポレート部門が参画し、意思決定の前段階での審査プロセスおよび審査部門長の責任を明確化しました。また、従来事業部門に意思決定を委任していた小規模投資についても、意思決定プロセスを見直し管理を強化しております。
投資には、設備の更新や合理化、生産能力の増強や拠点の新設、安全投資などに加え、M&Aなどが含まれますが、通常の投資と戦略投資は、投資判断や投資回収など、定義・区分を分けて実行しています。また、品質不適切行為に関する再発防止等の取り組みの一つとして、人的関与を極力排し、検査データの適切な生成・管理を自動的に行えるシステムを、総計約100億円を投じて構築し、2024年頃までに各製造拠点にて順次導入を進めます。
戦略投資の計画立案にあたっては、キャッシュ・フローを重視し、ディスカウント・キャッシュフロー・メソッドに基づく現在価値評価(正味現在価値(NPV))やROIC・投資回収期間を用いて投資判断の意思決定を行っています。
ⅴ)バランスシートマネジメント
財務体質の改善と資本効率の向上に向け、バランスシートのスリム化を推進しています。CCCの短縮による運転資本の圧縮、日立グループのキャッシュ・プーリング・システム(CPS)の活用による当社グループ全体での余剰資金と借入金の一元化、選択と集中による構造改革を推進しました。2020年度末の総資産は9,722億円(2019年度末比△1%)となりました。
また、成長投資に必要な資金については、事業から創出する資金および手元資金で賄うことを基本方針としています。ただし、成長の機会を逃さないためには、現在のD/Eレシオ0.4倍程度から0.5倍以下を目安に、また、格付けA+(株式会社格付け投資情報センター(Rating and Investment Information, Inc. (R&I))を維持することを念頭に、柔軟に資金調達を行っていきます。
2020年度においては、棚卸資産削減等の運転資本の圧縮や投資キャッシュ・フローの改善等によりネット有利子負債(有利子負債-現金及び現金同等物)を前年度末比492億円削減し、資金の安定化を図りました。また、2021年3月末現在の当社発行の長期社債及び無担保社債は、A+(R&I)格付けとなりました。
ⅵ)キャッシュ・アロケーション
当社グループは、経営環境、業績、将来の事業展開を総合的に勘案し、中長期的な成長のための内部留保と、株主への利益配分を決定することを基本方針としています。
株主価値向上については、TSR(Total Shareholder Return:株主総利回り)の向上を念頭に、事業成長による株価上昇と株主還元のバランスが取れた利益配分をめざします。新中期経営計画においては、高収益・高成長分野へのリソース集中と構造改革・経営基盤強化施策を実行することで、事業の成長による株価上昇とともに、配当性向30%を目途とした安定配当を行います。
自社株買いは、株主還元の有効な方策の一つであると認識していますが、現時点では、投資リターンが高い成長戦略に投資することが合理的であるとの認識から、研究開発や高付加価値製品分野への成長戦略投資による事業の成長・拡大に注力していきます。
なお、2021年4月28日開催の当社取締役会において、株式会社BCJ-52による当社の普通株式に対する公開買付けが行われる予定であることを踏まえて、第84期に係る期末配当並びに第85期に係る中間配当及び期末配当を行わないことを決議いたしました。
(注)「調整後営業利益」は、事業再編等の影響を排除した経営の実態を表示するために、連結損益計算書に表示している営業利益からその他の収益、その他の費用を除いた指標です。
① 財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要については「(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容」に含めて記載しております。
② 生産、受注及び販売の実績
a. 生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
| セグメントの名称 | 金額(百万円) | 前年同期比(%) |
| 特殊鋼製品 | 212,193 | △8.4 |
| 素形材製品 | 240,913 | △17.8 |
| 磁性材料・パワーエレクトロニクス | 106,973 | △1.0 |
| 電線材料 | 189,972 | △8.1 |
| 報告セグメント計 | 750,051 | △10.7 |
| その他 | - | - |
| 合計 | 750,051 | △10.7 |
(注)上記の金額は販売価格によっており、消費税等は含まれておりません。
b. 受注実績
当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
| セグメントの名称 | 金額(百万円) | 前年同期比(%) |
| 特殊鋼製品 | 226,520 | △9.8 |
| 素形材製品 | 263,526 | △10.5 |
| 磁性材料・パワーエレクトロニクス | 111,829 | △5.8 |
| 電線材料 | 190,807 | △10.2 |
| 報告セグメント計 | 792,682 | △9.6 |
| その他 | 1,775 | △12.4 |
| 合計 | 794,457 | △9.6 |
(注)上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
c. 販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
| セグメントの名称 | 金額(百万円) | 前年同期比(%) |
| 特殊鋼製品 | 217,420 | △13.3 |
| 素形材製品 | 247,939 | △17.3 |
| 磁性材料・パワーエレクトロニクス | 106,142 | △9.1 |
| 電線材料 | 189,244 | △11.3 |
| 報告セグメント計 | 760,745 | △13.6 |
| その他 | 2,555 | △24.2 |
| 調整額 | △1,685 | △29.9 |
| 合計 | 761,615 | △13.6 |
(注)1.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
2.上記の調整額にはセグメント間の内部売上収益が含まれております。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において当社グループが判断したものであります。
① 重要な会計方針及び見積り
この連結財務諸表の作成にあたって、重要となる事項としては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記」に記載のとおりであります。
② 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
当連結会計年度における当社グループの業績は、次のとおりです。
当連結会計年度は、COVID-19(新型コロナウイルス感染症)拡大を受けて世界各地域における経済・社会活動が制限される状況が継続しました。2020年の世界経済成長率見通しはマイナス3.3%(2021年4月IMF公表)、主要国でプラス成長を維持したのは中国のみとなるなど極めて厳しい状況となりました。当社グループの事業領域においては、第1四半期連結会計期間を底として、第2四半期連結会計期間以降は需要回復の動きが継続しました。しかしながら、当連結会計年度で見ると第1四半期連結会計期間の落ち込みが大きく、この結果、売上収益は、前年度比13.6%減の761,615百万円となりました。
調整後営業損益※は、固定費削減等の実施に加え第2四半期連結会計期間以降の売上収益の回復によって損益の改善が見られました。しかしながら、当連結会計年度で見ると売上収益の減少等の影響により、前年度比19,360百万円減の4,977百万円の損失となりました。
その他の収益については、三菱日立ツール株式会社(現 株式会社MOLDINO)の当社保有の株式を三菱マテリアル株式会社に全て譲渡したことに伴い、特殊鋼製品セグメントにおいて、事業再編等利益として第1四半期連結会計期間に1,971百万円を計上しました。また、米国Waupaca Foundry, Inc.の一部工場を売却したことに伴い、素形材製品セグメントにおいて、事業再編等利益として当第4四半期連結会計期間に1,474百万円を計上しました。その他の費用については、特殊鋼製品セグメントにおいて、航空機エネルギー事業の将来における収益性を見直した結果、第2四半期連結会計期間に6,812百万円、当第4四半期連結会計期間に5,290百万円の減損損失を計上しました。素形材製品セグメントにおいては、米国Waupaca Foundry, Inc.の一部工場について、当第4四半期連結会計期間に5,457百万円の減損損失を計上しました。磁性材料・パワーエレクトロニクスセグメントにおいては、磁性材料事業の将来における収益性を見直した結果、第2四半期連結会計期間に15,657百万円の減損損失を計上しました。また、電線材料セグメントにおいては、自動車部品事業の将来における収益性を見直した結果、第2四半期連結会計期間に2,000百万円の減損損失を計上しました。この結果、営業損益は前年度比10,087百万円悪化し、49,213百万円の損失となりました。税引前当期損益は、前年度比9,974百万円悪化し、50,588百万円の損失、親会社株主に帰属する当期損益は前年度比4,637百万円悪化し、42,285百万円の損失となりました。
なお、当社グループでは中期経営計画における重要経営課題として、キャッシュ・フローの改善と資本効率の向上を掲げ、ROIC(投下資本利益率)による経営管理を導入しております。特に当連結会計年度は、COVID-19拡大により、経営環境の先行きが不透明な状況において、財務の健全性担保のために十分な流動性を確保すること、また、需要等の外部要因に関わらず自社で実効性をあげられる取り組みを着実に推進することが、より一層、重要と考え、運転資本効率を向上するとともに、重点領域に対する厳選投資により投資額の抑制に取り組みました。この結果、当連結会計年度のフリー・キャッシュ・フローは、前年度比で5,237百万円改善しました。
セグメントの業績は、次のとおりです。各セグメントの売上収益は、セグメント間の内部売上収益を含んでおります。当連結会計年度において、当社グループが営む事業の内容について、重要な変更はありません。
特殊鋼製品
当セグメントの売上収益は、前年度比13.3%減の217,420百万円となりました。
売上収益について事業別に見ますと、工具鋼は、2020年12月末までに流通を含めて在庫調整が終了し、当第4四半期連結会計期間からは国内、海外向けともに需要回復の動きが見られましたが、当連結会計年度全体では前年度を下回りました。産機材は、第2四半期連結会計期間以降、自動車関連製品の需要回復が顕著となり、当第4四半期連結会計期間には前年同期並みまで回復しましたが、当連結会計年度全体では前年度を下回りました。航空機エネルギーは、主力の航空機関連材料が民間需要を中心に減少したことにより、前年度を下回りました。電子材は、有機ELパネル関連部材が伸長し、クラッド材がスマートフォンや電池向けで増加したことに加え、当第4四半期連結会計期間より半導体パッケージ材料の需要も立ち上がったことから、電子材全体としては前年度を上回りました。
ロールは、各種ロール、射出成形機用部品、鉄骨構造部品とも、需要が減少したことにより前年度を下回りました。
調整後営業利益は、主力の工具鋼や産機材の需要が減少したこと等により、前年度比4,663百万円減の811百万円となりました。また、営業損益は、2020年4月1日付で三菱日立ツール株式会社(現 株式会社MOLDINO)の当社保有の株式を三菱マテリアル株式会社に全て譲渡したことに伴い、その他の営業収益に事業再編等利益として第1四半期連結会計期間に1,971百万円を計上しました。また、航空機エネルギー事業の将来における収益性を見直した結果、その他の費用として第2四半期連結会計期間に6,812百万円、当第4四半期連結会計期間に5,290百万円の減損損失を計上しました。この結果、前年度比19,561百万円減の11,976百万円の損失となりました。
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素形材製品
当セグメントの売上収益は、前年度比17.3%減の247,939百万円となりました。
売上収益について事業別に見ますと、自動車鋳物のうち、鋳鉄製品は、第1四半期連結会計期間にCOVID-19の拡大に伴い世界各地域の主要顧客が操業を停止したことにより、同期間を底として大きく落ち込みました。その後、各地域の自動車販売台数の回復や各主要顧客の再稼働が順次立ち上がったこと等に伴い、当社グループの事業も回復基調が継続しました。しかしながら、北米を中心に当第4四半期連結会計期間で自動車向け半導体の供給不足に伴う完成車メーカーの生産調整の影響を受けました。当連結会計年度全体では前年度を下回りました。耐熱鋳造部品も需要回復の動きを受け、第3四半期連結会計期間以降、前年同期を上回って推移しましたが、当連結会計年度全体で見ると第1四半期連結会計期間の落ち込みが大きく前年度を下回りました。アルミホイールについては、事業から撤退することを決定し、2020年9月末に生産を終了しました。この結果、自動車鋳物全体として前年度を下回りました。
配管機器のうち、半導体製造装置用機器は、設備投資需要の回復等により前年度を上回りました。主力の継手類は、国内の住宅着工戸数や大規模建設工事案件の減少等により、前年度を下回りました。この結果、配管全体としては前年度を下回りました。
調整後営業損益は、主力の自動車鋳物の需要が減少したことにより、前年度比11,902百万円悪化し、12,812百万円の損失となりました。また、営業損益は、その他の収益に米国Waupaca Foundry, Inc.の一部工場を売却したことに伴い、事業再編等利益として当第4四半期連結会計期間に1,474百万円を計上しました。また、その他の費用として、米国Waupaca Foundry, Inc.の一部工場について、当第4四半期連結会計期間に5,457百万円の減損損失を計上しました。この結果、前年度比9,906百万円悪化し、19,128百万円の損失となりました。
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磁性材料・パワーエレクトロニクス
当セグメントの売上収益は、前年度比9.1%減の106,142百万円となりました。
売上収益について事業別に見ますと、磁性材料は希土類磁石、フェライト磁石とも、第1四半期連結会計期間を底として需要が大きく落ち込みましたが、第2四半期連結会計期間以降は自動車用電装部品の需要回復が継続しました。さらに第3四半期連結会計期間からはFA・ロボットやエレクトロニクス関連需要も回復基調となったことから、当第4四半期連結会計期間においては、前年同期を上回りましたが、当連結会計年度全体では前年度を下回りました。
パワーエレクトロニクスのうち、軟磁性材料およびその応用品は、サーバー機器等の情報通信向けが堅調でしたが、変圧器用のアモルファス金属材料が減少した結果、前年度を下回りました。一方、セラミックス製品は、医療機器向けの需要が伸長しましたが、通信機器向けが減少したことにより、前年度並みとなりました。この結果、パワーエレクトロニクス全体としては前年度を下回りました。
調整後営業利益は、前年度比1,076百万円増の2,481百万円となりました。また、営業損益は、第2四半期連結会計期間において磁性材料事業の将来における収益性を見直した結果、その他の費用に15,657百万円の減損損失を計上しましたが、2020年3月期第2四半期連結会計期間においてその他の費用として42,581百万円の減損損失を計上していたこと等の影響により、前年度比28,666百万円改善し、14,084百万円の損失となりました。
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電線材料
当セグメントの売上収益は、前年度比11.3%減の189,244百万円となりました。
売上収益について事業別に見ますと、電線のうち、機器用電線はFA・ロボット向けが増加したほか、第5世代移動通信システム(5G)基地局向け等が堅調に推移し、前年度を上回りました。一方、鉄道車両用電線は、国内向けの需要が減少しましたが、中国向けの需要が増加したことにより、前年度を上回りました。医療向けでは、ケーブルは前年度並みでしたが、チューブの需要が減少したことにより、前年度を下回りました。また、巻線は、第3四半期連結会計期間以降、自動車向けを中心に需要の回復が見られましたが、当連結会計年度全体では前年度を下回りました。この結果、電線全体としては前年度を下回りました。
自動車部品は、自動車市場の回復を受けて、自動車用電装部品を中心に需要が回復し、第3四半期連結会計期間以降は、前年同期を上回って推移しました。しかしながら、当連結会計年度全体で見ると第1四半期連結会計期間の落ち込みが大きく、前年度を下回りました。
調整後営業利益は、電線、自動車部品とも需要が減少したことにより、前年度比2,109百万円減の4,560百万円となりました。営業利益は、自動車部品事業の将来における収益性を見直した結果、その他の費用として、第2四半期連結会計期間において2,000百万円の減損損失を計上したため、前年度比3,425百万円減の1,832百万円となりました。
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その他
当セグメントの売上収益は、前年度比24.2%減の2,555百万円となり、調整後営業利益は前年度比125百万円増の879百万円となりました。また、営業利益は、前年度比758百万円増の1,268百万円となりました。
※当社グループは、事業再編等の影響を排除した経営の実態を表示するため、連結損益計算書に表示している営業損失からその他の収益、その他の費用を除いた指標である調整後営業利益を記載しています。調整後営業利益は、当社の親会社である日立製作所を中心とする日立グループ統一の利益指標です。
③ 経営成績に重要な影響を与える要因について
「2 事業等のリスク」に記載のとおりであります。
④ 財政状態等の概要
a. 資産、負債及び資本の状況
当連結会計年度末における当社グループの財政状態として、連結財政状態計算書における増減を分析すると、以下のとおりであります。
資産合計は972,249百万円で、前連結会計年度末に比べ5,517百万円減少しました。流動資産は462,558百万円で、前連結会計年度末に比べ56,439百万円増加しました。これは主に現金及び現金同等物が56,986百万円増加したこと等によるものです。非流動資産は509,691百万円で、前連結会計年度末に比べ61,956百万円減少しました。有形固定資産が47,647百万円減少しておりますが、これは主に、30,469百万円の減損損失を計上したこと等によるものです。加えて、のれん及び無形資産が6,743百万円減少しておりますが、これは主に、5,388百万円の減損損失を計上したこと等によるものです。また、持分法で会計処理されている投資が17,582百万円減少しておりますが、これは主に、当社が保有する三菱日立ツール株式会社(現 株式会社MOLDINO)の発行済株式の総数の49%を2020年4月1日付をもって、株式譲渡したため、持分法適用の範囲より除外された影響によるものです。
負債合計は480,131百万円で、前連結会計年度末に比べ25,218百万円増加しました。これは主に、償還期長期債務及び長期債務が11,731百万円減少した一方、買入債務が23,999百万円、短期借入金が19,463百万円増加したこと等によるものです。資本合計は492,118百万円で、前連結会計年度末に比べ30,735百万円減少しました。これは主にその他の包括利益累計額が17,295百万円増加した一方、利益剰余金が47,932百万円減少したこと等によるものです。
b. キャッシュ・フロー
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)は、営業活動及び投資活動の結果得られた資金が財務活動で使用した資金を上回ったことにより、前連結会計年度末に比べ56,986百万円増加し、99,339百万円となりました。
当連結会計年度末における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりです。
(営業活動に関するキャッシュ・フロー)
営業活動の結果得られた資金は、52,586百万円となりました。これは主に当期損失が42,556百万円に対して、減価償却費及び無形資産償却費が50,407百万円、減損損失が35,857百万円、運転資金の減少による26,960百万円の収入等によるものです。
(投資活動に関するキャッシュ・フロー)
投資活動の結果得られた資金は、2,191百万円となりました。これは主に有形固定資産の取得により29,129百万円
を支出した一方、主に当社が保有する三菱日立ツール株式会社(現 株式会社MOLDINO)の発行済株式の総数の49%を
2020年4月1日付をもって株式譲渡したことに伴う、有価証券等(子会社及び持分法で会計処理されている投資を含
む)の売却による26,329百万円の収入等によるものです。
(財務活動に関するキャッシュ・フロー)
財務活動に使用した資金は、1,096百万円となりました。これは主に長期借入債務の調達による36,749百万円の収入及び短期借入金が18,569百万円純増した一方、長期借入債務の償還が50,839百万円、配当金の支払により5,570百万円を支出したこと等によるものです。
c. 資本の財源及び資金の流動性についての分析
ⅰ)概況
日立金属グループは、中期経営計画において2022年度調整後営業利益率8%、ROIC(Return on Invested Capital:投下資本利益率)8%を目標としております。資本コスト7.5%を上回るROICを確保し、資本効率の向上を図るとともに、フリー・キャッシュ・フローの最大化に注力しております。
また、不採算製品からの撤退や拠点の統廃合等の事業構造改革、徹底した原価低減・経費縮減、人件費の適正化等のコスト構造改革に取り組み、需要変動に強い収益構造に変革します。さらに、事業ごとのグローバルの競争環境におけるベンチマーク分析を踏まえ、セグメントごとに事業の新陳代謝を加速し、成長と基盤事業のポートフォリオ最適化を図ります。中期経営計画の着実な実行により早期の業績回復と将来の成長投資の原資を確保できる収益基盤への変革を推進します。中期経営計画の概要及び2020年度の進捗状況は、「1経営方針、経営環境及び対処すべき課題等(2)対処すべき課題②中期経営計画とその進捗」をご参照ください。
なお、今後、株式会社BCJ-52による当社の普通株式に対する公開買付け等(以下、「本公開買付け」といいます。)が予定されております。本公開買付け及びその後に予定される一連の取引により、同社は当社を完全子会社とすることを企図しております。これにより、当社は日立グループから離脱し、当社普通株式は上場廃止となる予定です。本取引後当社は新パートナーの下で改革を進めることにより、これまで以上の意思決定のスピードアップや、投資資金の獲得、また外部知見の導入を行い、当社の競争力と収益力を回復させ、再成長により企業価値の向上をめざします。
現在の主要な取り組みと2020年度の実績値は以下のとおりです。
ⅱ)資本効率の向上
当社グループの資本コストは7.5%と算定していますが、足元ではROICが資本コストを下回る状況です。このため、需要変動に強い収益構造を構築するために、コスト削減により損益分岐点の引き下げを行い、利益拡大と投下資本の圧縮によって早期にROICの改善を図ってまいります。
利益拡大については、引き続き、高付加価値製品、成長事業の拡大、IoTを利活用したモノづくり改革による品質改善や原価低減を実施します。加えて、ITを活用した間接業務改革等による固定費削減等も推進しています。また、低収益・ノンコア事業の縮小・撤退・切り離し等により、事業ポートフォリオを継続的に見直しております。
投下資本の圧縮については、CCC(Cash Conversion Cycle:運転資金手持日数)の短縮に向け、IoTを利活用した最適生産計画の策定や当社グループ内人財交流により優秀事例の共有を進めています。棚卸資産については、当社では製造拠点と調達部門には材料在庫を、製造拠点と事業本部には仕掛品・製品等の生産棚卸資産を、国内外販社と事業本部には流通在庫を、各々の責任区分として在庫管理体制をとっております。これに加え、コーポレートの横ぐし機能強化により、売上見通しに基づき的確な棚卸資産管理を迅速に行う体制を構築し、一段の在庫圧縮に努めCCCのさらなる短縮をめざします。また、「改革人材養成講座」の開設により改善のプロとなる人財を育成し、生産現場から棚卸資産、適正在庫の管理を徹底する取り組みを実施しています。2020年度末のCCC実績値は、棚卸資産の適正化に重点的に取り組みましたが、第1四半期を中心にCOVID-19の影響を受け、売上収益が大きく減少したこと、第4四半期では想定を上回る需要回復への対応のため生産が拡大したことや原料価格の高騰等により89.1日(2019年度実績対比+2日)となりました。
なお、現状ではROICが資本コストを大きく上回る事業、今後着実に改善していく事業、先行投資が必要なため短期的には下回る事業があります。そのため、事業部門ごとにROICによる管理の浸透を図ることが重要と考えています。現在、事業セグメントごとの利益と投下資本を踏まえてROICの目標を設定することにより、グループ全体のROICの早期改善につなげています。2021年度は経営改革の各アクションプランに落とし込むことで、ROIC経営の実効性をあげていきます。
ⅲ)キャッシュ・フローの改善
キャッシュ・フローについては、利益の拡大、運転資本効率の改善、重点領域に対する厳選投資等により、フリー・キャッシュ・フローの確保に取り組んでおります。
営業キャッシュ・フローは、2020年度実績値は利益減少の影響が大きく526億円(2019年度実績値対比△534億円)となりました。一方、投資キャッシュ・フローについては、2020年度実績値は、業績悪化を受け投資のさらなる絞り込み等を実行したことに加え、旧・三菱日立ツール株式会社(現 株式会社MOLDINO)株式の譲渡収入もあり、22億円(同+587億円)となりました。この結果、フリー・キャッシュ・フローは548億円(同+53億円)と改善し、効果の刈り取りを着実に実行しました。
ⅳ)投資判断プロセスの明確化
設備投資については、プロセスと判断基準を再構築しました。事業本部が行う設備投資では、事前の検討段階からコーポレート部門が参画し、意思決定の前段階での審査プロセスおよび審査部門長の責任を明確化しました。また、従来事業部門に意思決定を委任していた小規模投資についても、意思決定プロセスを見直し管理を強化しております。
投資には、設備の更新や合理化、生産能力の増強や拠点の新設、安全投資などに加え、M&Aなどが含まれますが、通常の投資と戦略投資は、投資判断や投資回収など、定義・区分を分けて実行しています。また、品質不適切行為に関する再発防止等の取り組みの一つとして、人的関与を極力排し、検査データの適切な生成・管理を自動的に行えるシステムを、総計約100億円を投じて構築し、2024年頃までに各製造拠点にて順次導入を進めます。
戦略投資の計画立案にあたっては、キャッシュ・フローを重視し、ディスカウント・キャッシュフロー・メソッドに基づく現在価値評価(正味現在価値(NPV))やROIC・投資回収期間を用いて投資判断の意思決定を行っています。
ⅴ)バランスシートマネジメント
財務体質の改善と資本効率の向上に向け、バランスシートのスリム化を推進しています。CCCの短縮による運転資本の圧縮、日立グループのキャッシュ・プーリング・システム(CPS)の活用による当社グループ全体での余剰資金と借入金の一元化、選択と集中による構造改革を推進しました。2020年度末の総資産は9,722億円(2019年度末比△1%)となりました。
また、成長投資に必要な資金については、事業から創出する資金および手元資金で賄うことを基本方針としています。ただし、成長の機会を逃さないためには、現在のD/Eレシオ0.4倍程度から0.5倍以下を目安に、また、格付けA+(株式会社格付け投資情報センター(Rating and Investment Information, Inc. (R&I))を維持することを念頭に、柔軟に資金調達を行っていきます。
2020年度においては、棚卸資産削減等の運転資本の圧縮や投資キャッシュ・フローの改善等によりネット有利子負債(有利子負債-現金及び現金同等物)を前年度末比492億円削減し、資金の安定化を図りました。また、2021年3月末現在の当社発行の長期社債及び無担保社債は、A+(R&I)格付けとなりました。
ⅵ)キャッシュ・アロケーション
当社グループは、経営環境、業績、将来の事業展開を総合的に勘案し、中長期的な成長のための内部留保と、株主への利益配分を決定することを基本方針としています。
株主価値向上については、TSR(Total Shareholder Return:株主総利回り)の向上を念頭に、事業成長による株価上昇と株主還元のバランスが取れた利益配分をめざします。新中期経営計画においては、高収益・高成長分野へのリソース集中と構造改革・経営基盤強化施策を実行することで、事業の成長による株価上昇とともに、配当性向30%を目途とした安定配当を行います。
自社株買いは、株主還元の有効な方策の一つであると認識していますが、現時点では、投資リターンが高い成長戦略に投資することが合理的であるとの認識から、研究開発や高付加価値製品分野への成長戦略投資による事業の成長・拡大に注力していきます。
なお、2021年4月28日開催の当社取締役会において、株式会社BCJ-52による当社の普通株式に対する公開買付けが行われる予定であることを踏まえて、第84期に係る期末配当並びに第85期に係る中間配当及び期末配当を行わないことを決議いたしました。
(注)「調整後営業利益」は、事業再編等の影響を排除した経営の実態を表示するために、連結損益計算書に表示している営業利益からその他の収益、その他の費用を除いた指標です。











