有価証券報告書-第81期(令和3年1月1日-令和3年12月31日)

【提出】
2022/03/31 15:15
【資料】
PDFをみる
【項目】
131項目
(1)業績等の概要
① 財政状態及び経営成績の状況
2021年の世界経済は、新型コロナウイルス感染症の再拡大のなかにおいてもワクチンの普及とともに経済活動が段階的に再開されたことで、全体としては回復基調となりました。一方、経済活動の再開に伴う需要の急増により、半導体などの部材不足、原油・天然ガスなどの資源価格の上昇、サプライチェーンの混乱による調達、物流コストの高騰など、当社グループの経営環境は大変厳しいものとなりました。
インダストリアル事業では、経済活動の再開で原油・天然ガスの価格は上昇したものの原油採掘の投資の動きは鈍く原油・ガス採掘などの上流分野の需要回復は遅れています。一方、産業ガスやLNG向け設備投資は動き始めており、海洋環境規制の高まりを背景とした船舶向けLNG燃料供給システムの受注が大幅に拡大しています。航空宇宙事業は人の移動の再開に伴い小型機(単通路機)を中心とした民間航空機需要が回復し始めてきたことで製品出荷は徐々に回復しています。中・大型機の部品生産の回復は当面見込めないものの、コロナ禍を受けて航空機産業のサプライチェーンの見直しや部品製造の素材、製法の見直しが本格的に進もうとしており、当社グループの技術開発力や生産能力に期待した新規の引合いが増加しています。業績は2021年を底に回復に転ずると見込んでいます。医療部門では、国内の血液透析装置需要が引き続き活発に推移し、海外市場でも装置需要の回復が見られた一方で、供給面においては、ベトナム・ホーチミンの当社血液回路工場が、2021年7月以降ホーチミン市における新型コロナウイルス感染症蔓延による当局の指導により稼働の制限を余儀なくされました。2021年末までに、当工場の稼働率はほぼ正常な水準まで回復できたものの、他社品調達に伴う調達コストの増加や、航空便利用による物流費の高騰の影響を受け、医療部門の営業利益は大きく減少することとなりました。ヘルスケア事業は、据置型空間除菌消臭装置の国内需要の伸びが一服する中、他社類似製品の市場参入やその価格競争など競争環境の激化に加えて、海外市場進出の遅れもあり、前年を下回る業績となりました。
この結果、当連結会計年度の当社グループ業績は、受注高185,249百万円(前年同期比15.0%増)、売上収益167,759百万円(同5.8%増)、営業利益3,125百万円(同69.4%減)と、増収減益となりました。税引前利益は、主に為替相場が米ドル、ユーロとも円安基調で推移したことに伴う外貨建て資産・負債の評価による為替差益の計上により3,952百万円(同56.3%減)となりました。また、当連結会計年度に税務当局からの更正処分による追徴税額1,768百万円を法人所得税費用に計上したことなどにより、親会社の所有者に帰属する当期利益は221百万円(同96.6%減)となりました。
セグメントの業績(内部取引控除前)は次のとおりです。
工業部門
<インダストリアル事業>経済活動の段階的な再開のなか、移行エネルギーとして急拡大するLNG需要ですが、中長期的にも新興国中心にその拡大は継続すると見込んでおり、また石油化学市場などの下流分野も中国などが依然活況を見せています。
産業ガス・LNG関連事業のClean Energy&Industrial Gasグループ(CE&IGグループ)は、海洋の環境規制強化に伴う世界的なLNG燃料船の需要増加を捉えLNG燃料船関連の受注を大きく伸ばせたことで、過去最高の受注額を達成しました。一方、売上収益はアフターサービスなどで増加したものの、増産に備えた体制構築費用や次世代エネルギーに向けた研究開発費用など経費支出の増加、2020年に一部事業の売却益を計上したこともあり、前年同期比では増収減益となりました。また、LEWA社は、上流分野向けの売上収益の落ち込みがあるものの、下流分野の石油化学市場やアフターセールスの強化などへの事業ポートフォリオの転換が奏功し、石油化学市場向けの販売好調や、アフターセールス事業の下支えで、LEWA社全体では減収となるも前年並みの営業利益を維持しています。
インダストリアル事業全体では、市場が拡大するLNG燃料船ビジネスの大きな受注により、受注額は大きく拡大していますが、2022年以降の売上収益に寄与する受注が多いことや宮崎インダストリアル工場稼働に伴う減価償却費の増加等が影響し増収減益となりました。その他、電子部品製造機器事業は、スマートフォンや電気自動車向け需要が右肩上がりで伸長しており、事業規模は小さいながら中国、台湾市場を中心にMLCC向け装置の受注は好調に推移しています。
中長期的には、石油関連事業については、グループ・協力会社の販売網を生かしつつ、下流分野や医薬など新たな分野への事業領域の拡大とアフターセールスの強化に継続して取り組んでまいります。産業ガス・LNG関連事業は、2021年受注済のLNG動力船関連の着実な生産・出荷とさらなる受注獲得に取り組みながら、中国、アジアの受入基地や中東、ロシアの液化・輸出基地への投資に向けて、宮崎のクライオジェニックポンプ試験設備の活用、当社グループ内の協業を更に進めながら、ビジネスの拡大を図ってまいります。また、宮崎工場では、設計・調達・生産プロセスの改善を通じて生産性向上と収益性改善へ取り組んでまいります。脱炭素社会の到来を見据えた事業領域の創出に向けては、当社グループが先行する液化水素・アンモニアなど次世代エネルギーに向けたポンプの要素技術と実用化技術の開発を加速し、合わせて米国市場における乗用車・商用車向け水素ステーションビジネスの事業拡大を着実に進めてまいります。
<航空宇宙事業>Withコロナでの経済活動の再開が進む中、民間航空機需要は、小型機(単通路機)の回復が顕著となっています。一方、中・大型機(双通路機)の需要は依然低調であるため、サプライチェーンを含めた航空機産業の生産構造の見直しが迫られています。こうしたなか、当社ベトナム・ハノイ工場の実績・生産能力が高く評価され、従来、中・大型機向け部品製造が中心であった当該工場を活用した小型機向けの新規部品製造の引合いや受注が増加しています。
当社グループでは、市場の変化が著しいなかにあってもその変化に迅速に対応しながら、航空機メーカーと共同で次世代機用の材料や製法開発を進めるとともに、次世代交通手段eVTOLや水素を燃料とする航空機の実用化、小型人工衛星といった新市場創出へ向けた取組みを開始しています。
事業基盤の強化については、国内生産機能の宮崎への集約は計画通り完了し、収益力改善に向けたコスト削減や生産効率化を更に進めていくとともに、宮崎・ベトナムにおける生産体制の再構築等、事業体質の強化を引き続き図ってまいります。
以上の結果、工業部門の受注高は112,939百万円(前年同期比21.2%増)、売上収益は96,547百万円(同5.2%増)、セグメント利益は4,315百万円(同33.5%減)となりました。
医療部門
<メディカル事業>メディカル事業は、国内血液透析市場において、2019年から販売している主力の高機能血液透析装置の評価が高く、また感染症対策として病室や個室での透析治療の需要が急速に高まったこともあって装置販売が好調に推移しました。また、当社血液透析装置との組み合わせにより付加価値を提供できる血液回路や粉末型人工腎臓透析用剤など消耗品の販売も引き続き堅調です。海外市場では、新型コロナウイルス感染症拡大による血液透析装置の需要停滞からの回復が見られる欧州などで、前年同期比で装置販売は増加、中国市場についても堅調に推移しました。
一方、営業利益面では、一過性の各国許認可対応費用に加えて、研究開発費、米国市場本格進出に向けた体制構築費など先行投資が増加する結果となりました。加えて、新型コロナウイルス感染症の拡大による世界的なサプライチェーンの混乱と停滞は、部材不足や部材調達費、物流費の高騰をもたらし、当社の事業環境にも大きな影響を与えています。特にベトナム・ホーチミンの当社血液回路工場では、2021年7月以降感染拡大防止に向けた当局の指導により工場稼働の制限を余儀なくされました。2021年末までに、当工場の稼働率はほぼ正常な水準まで回復できたものの、他社品調達に伴う調達コストの増加や、航空便利用による物流費の高騰の影響を受け、医療部門の営業利益は大きく減少することとなりました。こうしたなか、透析医療の生命線とも言える血液回路の供給者としての責務を全うしていくため、当社連結子会社である宮崎日機装に血液回路工場を建設し、製造プロセスの自動化と効率化を行なうことで、国内市場へ高品質な製品を安定供給できる体制を構築することを決定しました。
深紫外線LED技術を活用したヘルスケア事業は、据置型空間除菌消臭装置のラインアップ拡充やキャンペーンの実施などにより販売活動を強化してきましたが、需要の伸びが一服するなかで、他社類似製品の市場参入やその価格競争など競争環境の激化、海外市場本格進出も各国の規格に対応した製品開発に時間を要していることから、前年同期比で減収となりました。一方、交通機関や建設・不動産などのインフラ市場における事業者との応用開発・協業の引き合いは継続しており、設備組み込み型のビジネスが今後の事業展開の中心となっていく方向が鮮明になりつつあります。このため、直近の需要動向や競争環境の変化を踏まえ、今後の販売予測を保守的に見直した結果、据置型商品について一部棚卸資産の評価損を計上しております。
以上の結果、医療部門の受注高は74,241百万円(前年同期比9.0%増)、売上収益は73,143百万円(同9.2%増)、セグメント利益は3,044百万円(同60.2%減)となりました。
今後、国内血液透析市場においては、高機能血液透析装置「Siシリーズ」の価値訴求による市場浸透とサービス体制の強化を継続し市場シェア拡大を目指します。海外市場においては、中国市場のビジネス拡大に継続して取り組むとともに、2022年下期には米国市場への本格展開を開始します。また、稼ぐ力の強化に向けて、足元の原材料・部品不足や物流費高騰影響の最小化、更なる生産効率化と経費節減に取り組んでまいります。供給面では、コロナ禍によるサプライチェーンの断絶・混乱を踏まえ、血液回路の生産・供給体制の強化・再構築として、2024年稼働を目指して、国内市場向けの宮崎血液回路工場の建設計画を進めております。当工場の設立を通じて、血液回路製品の商品構成を見直し、型式の集約を進め、急激な需給の変動にも対応できる生産体制を構築してまいります。加えて、2022年にはベトナム・クワンガイの新血液回路工場が稼働予定であり、米国市場へ向けた生産体制を整備します。
ヘルスケア事業は、国内市場の価格戦略を見直し、据置型空間除菌消臭装置の抜本的な販売の立て直しを図ってまいります。組込型空間除菌消臭装置は、鉄道や建設・不動産などインフラ分野の事業者との協業ビジネスに本格参入してまいります。
② キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度の営業活動によるキャッシュ・フローは3,594百万円となりました。税引前利益の計上とたな卸資産の増加が主な要因です。
当連結会計年度の投資活動によるキャッシュ・フローは△14,557百万円となりました。有形固定資産の取得による支出が主な要因です。
当連結会計年度の財務活動によるキャッシュ・フローは9,449百万円となりました。借入による収入が借入金の返済による支出を上回ったことが主な要因です。
これらの結果、現金及び現金同等物の当連結会計年度末残高は、前連結会計年度末に比べて457百万円増加し、29,027百万円となりました。
(2)生産、受注及び販売の実績
① 生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
セグメントの名称生産高(百万円)前年同期比(%)
工業部門85,759+3.2
医療部門30,370△16.8
合計116,129△2.9

(注)1.セグメント間取引については、相殺消去しています。
2.金額は、販売価格によっています。
3.上記の金額には、消費税等は含まれていません。
② 受注実績
当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
セグメントの名称受注高(百万円)前年同期比(%)受注残高(百万円)前年同期比(%)
工業部門111,014+19.464,933+33.9
医療部門74,234+9.06,089+22.0
合計185,249+15.071,023+32.8

(注)1.セグメント間取引については、相殺消去しています。
2.上記の金額には、消費税等は含まれていません。
③ 販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
セグメントの名称販売高(百万円)前年同期比(%)
工業部門94,623+3.3
医療部門73,136+9.2
合計167,759+5.8

(注)1.セグメント間取引については、相殺消去しています。
2.上記の金額には、消費税等は含まれていません。
(3)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりです。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものです。
① 重要な会計方針及び見積もり
本連結財務諸表の作成にあたって採用する重要な会計方針及び見積もりは、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記」をご参照ください。
② 財政状態
ⅰ)資産
当連結会計年度末の資産合計は298,963百万円となり、前連結会計年度末に比べて26,068百万円増加しました。有形固定資産の増加が主な要因です。
ⅱ)負債
当連結会計年度末の負債合計は204,763百万円となり、前連結会計年度末に比べ20,047百万円増加しました。借入金の増加が主な要因です。
ⅲ)資本
当連結会計年度末の資本合計は94,199百万円となり、前連結会計年度末に比べて6,020百万円増加しました。在外営業活動体の換算差額の影響が主な要因です。
③ 経営成績
当連結会計年度の経営成績の分析につきましては、「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)業績等の概要 ① 財政状態及び経営成績の状況」に記載のとおりです。
④ キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況の分析につきましては、「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)業績等の概要 ② キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりです。
⑤ 資本の財源及び資金の流動性
ⅰ)資金需要
当社グループの資金需要は、主として、設備新設、改修等に係る投資や、製品製造のための材料及び部品等の製造費用、販売費及び一般管理費等の運転資金です。
ⅱ)資金の源泉
当社グループは、営業活動によるキャッシュ・フローによって得られた資金の活用及び、金融機関からの借入による資金調達を行なっています。
ⅲ)流動性
当社グループは、引き続き営業活動によるキャッシュ・フロー、金融機関からの借入による資金調達により、事業の拡大に必要な資金を確保できるものと考えています。
当社グループの資金管理は、当社が国内子会社を対象とした資金集中管理を実施し、海外子会社も含めたグループ全体の資金効率の向上を図っています。