有価証券報告書-第132期(2023/04/01-2024/03/31)
当社グループの財政状態及び経営成績は次の通りです。なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、判断したものであります。
なお、当社グループの業績管理は、事業セグメント損益及び営業損益により行われております。事業セグメント損益は、売上収益から売上原価、販売費及び一般管理費を控除して算出しております。
(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績」という。)の状況の概要は次の通りであります。
①経営成績の状況
当連結会計年度における世界経済は、新型コロナウイルス感染症の影響が緩和し社会活動の正常化が進んだものの、長期化するウクライナ情勢に加え中東情勢の緊迫化や、中国経済の低迷、欧米における金融引き締め、円安の進行など、景気の先行きは依然として不透明な状況が続いております。
当社グループに関連する事業環境は、プリンティング市場では、欧米及び中国において市況が低迷しております。マシナリー事業の関連分野は、産業機器においては内需・外需ともに緩やかに回復しているものの厳しい状況が継続し、工業用ミシンにおいても景気後退の懸念を受け、依然としてアジア向けのアパレル設備投資需要が低迷しております。ドミノ事業の関連分野は、景気減速の影響を受け、設備投資需要が軟化しました。ニッセイ事業の関連分野は、主に中国の市況悪化により、工場の自動化に向けた設備投資の先送りが継続しました。家庭用ミシンは、各地域で巣ごもり需要が収束したことに加え、インフレなどの影響を受け、市況が低迷しております。国内におけるカラオケ市場は、新型コロナウイルス感染症の5類移行に伴い、客足の回復が進んでいます。
このような状況の中、当連結会計年度における当社グループの連結業績は、P&S事業では、通信・プリンティング機器本体の販売が減少したものの、消耗品の販売増や為替のプラス影響により増収となりました。マシナリー事業では、産業機器、工業用ミシンともに市況低迷の影響を受け、大幅な減収となりました。ドミノ事業では、景気減速の影響を受けたものの、為替のプラス影響に加え消耗品が堅調に推移し、増収となりました。ニッセイ事業では、設備投資需要の低迷により、減収となりました。P&H事業では、米州を中心とした市況の低迷により、減収となりました。N&C事業では、カラオケ店舗への客足の回復に伴い増収となりました。
これらの結果、売上収益は、前期比0.9%の増収となる822,930百万円となりました。事業セグメント利益は、販促費及び販管費が増加したものの、物流コストの減少や価格対応の効果に為替のプラス影響が加わり、前期比25.1%の大幅な増益となる75,579百万円となりました。営業利益は、ドミノ事業におけるのれんの一部の減損損失を計上したことなどにより、前期比10.1%の減益となる49,792百万円、親会社の所有者に帰属する当期利益は、前期比19.0%の減益となる31,645百万円となりました。
*平均為替レート(連結)は次の通りであります。
当期 米ドル :144.40円 ユーロ :156.80円
前期 米ドル :134.95円 ユーロ :141.24円
セグメント別の業績は、次の通りであります。
1)プリンティング・アンド・ソリューションズ事業
売上収益 514,942百万円(前期比+3.7%)
〇通信・プリンティング機器 448,563百万円(前期比+3.1%)
インクジェット複合機、レーザー複合機・プリンターともに消耗品は堅調に推移したものの、製品本体は主に中国や欧米において市況低迷の影響を受け、販売が減少しました。全体では、為替のプラス影響があり、増収となりました。
〇ラベリング 66,379百万円(前期比+7.7%)
供給制約があった前年と比較して製品本体が堅調に推移したことに加え、為替のプラス影響により、増収となりました。
事業セグメント利益 62,526百万円(前期比+68.6%)
営業利益 61,011百万円(前期比+67.4%)
販促費及び販管費が増加したものの、物流コストの減少や通信・プリンティング機器の消耗品の売上増、価格対応の効果に為替のプラス影響も加わり、大幅な増益となりました。
2)マシナリー事業
売上収益 77,372百万円(前期比△19.7%)
〇産業機器 43,079百万円(前期比△29.7%)
中国・アジアを中心に自動車・一般機械市場向けの設備投資需要が低迷し、大幅な減収となりました。
〇工業用ミシン 34,293百万円(前期比△2.3%)
工業用ミシンは、アジアのアパレル向け設備投資需要が引き続き低調に推移し、販売が減少しました。一方で、ガーメントプリンターは、主に米州で販売が増加しました。全体では、為替のプラス影響があったものの、減収となりました。
事業セグメント利益 2,213百万円(前期比△76.8%)
営業利益 2,301百万円(前期比△76.6%)
減収により、大幅な減益となりました。
3)ドミノ事業
売上収益 109,643百万円(前期比+8.7%)
景気減速の影響を受け製品本体の販売は減少したものの、為替が円安に推移したことによるプラス影響に加え、消耗品が堅調に推移し、増収となりました。
事業セグメント利益 5,071百万円(前期比△9.0%)
営業損失 24,071百万円(前期 営業損失 5,787百万円)
事業セグメント利益は、為替が英ポンド高に推移したことによるマイナス影響に加え、営業活動の強化や基幹業務システムの刷新に伴い販管費が増加したことなどにより、減益となりました。営業利益は、のれんの一部の減損損失を計上したことにより、大幅な赤字となりました。英ポンド高の進行によるマイナス影響や、金利上昇を受けた割引率の上昇に加え、デジタル印刷機市場における成長が想定より遅れていることなどを受けて今後の事業計画を慎重に見直したことによるものです。
4)ニッセイ事業
売上収益 20,830百万円(前期比△11.3%)
設備投資需要の低迷により、減速機・歯車ともに販売が低調に推移し、減収となりました。
事業セグメント利益 1,019百万円(前期比△46.4%)
営業利益 991百万円(前期比△45.5%)
減収により、大幅な減益となりました。
5)パーソナル・アンド・ホーム事業
売上収益 50,480百万円(前期比△1.0%)
為替のプラス影響があったものの、米州を中心とした市況低迷により、主に中高級機の販売が減少し、減収となりました。
事業セグメント利益 2,516百万円(前期比△56.5%)
営業利益 2,478百万円(前期比△57.6%)
中高級機の販売減少による製品ミックスの悪化や販促費及び販管費の増加などにより、大幅な減益となりました。
6)ネットワーク・アンド・コンテンツ事業
売上収益 38,098百万円(前期比+8.1%)
客足の回復によるカラオケ店舗の売上増加に加え、新製品投入に伴いカラオケ機器の販売が堅調に推移し、増収となりました。
事業セグメント利益 1,623百万円(前期比+255.1%)
営業利益 1,660百万円(前期比+103.7%)
増収効果により、大幅な増益となりました。
②財政状態の状況
資産合計は、のれん及び無形資産が減少した一方、現金及び現金同等物、有形固定資産が増加したことなどにより、前連結会計年度末に比べ45,623百万円増加し、896,109百万円となりました。
負債合計は、社債及び借入金が減少したことなどにより前連結会計年度末に比べ25,817百万円減少し、227,988百万円となりました。
資本合計は、親会社の所有者に帰属する当期利益による利益剰余金の増加、在外営業活動体の換算差額の影響などにより前連結会計年度末に比べ71,440百万円増加し、668,121百万円となりました。
当期における期末為替レートは、次の通りであります。
米ドル : 151.41円 ユーロ : 163.24円
③キャッシュ・フローの状況
キャッシュ・フローの状況については、現金及び現金同等物(以下「資金」)は、営業活動により141,028百万円増加、投資活動により42,068百万円減少、財務活動により61,584百万円減少等の結果、当連結会計年度末は前連結会計年度末と比べ47,103百万円増加し、166,146百万円となりました。
当期における各キャッシュ・フローの状況とその主な要因は、次の通りです。
1)営業活動によるキャッシュ・フロー
税引前利益は52,523百万円で、減価償却費及び償却費47,537百万円、減損損失28,325百万円など、非資金損益の調整などによる資金の増加、営業債権及びその他の債権の減少による資金の増加3,351百万円、棚卸資産の減少による資金の増加34,417百万円、営業債務及びその他の債務の減少による資金の減少15,070百万円などがあり、法人所得税の支払額9,200百万円などを差し引いた結果、141,028百万円の資金の増加となりました。
2)投資活動によるキャッシュ・フロー
有形固定資産の取得による支出38,015百万円、無形資産の取得による支出9,470百万円、投資不動産の売却による収入3,000百万円などにより、42,068百万円の資金の減少となりました。
3)財務活動によるキャッシュ・フロー
短期借入金の増減による支出15,616百万円、長期借入金の返済による支出19,997百万円、リース負債の返済による支出8,543百万円、配当金の支払額17,421百万円などにより、61,584百万円の資金の減少となりました。
④生産、受注及び販売の状況
1)生産実績
当社グループの生産実績は、販売実績と近似しておりますので、記載を省略しております。
2)受注実績
当社グループの生産活動は、その多くを見込生産で行っておりますので、受注実績は記載しておりません。
3)販売実績
当社グループの販売実績は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記6.セグメント情報」をご参照下さい。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討事項
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次の通りであります。
①重要性がある会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、「連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則」(昭和51年大蔵省令第28号)第93条の規定により、IFRSに準拠して作成されております。
IFRSに準拠した連結財務諸表の作成において、経営者は、会計方針の適用並びに資産、負債、収益及び費用の金額に影響を及ぼす判断、見積り及び仮定を行うことが要求されております。当社グループの判断、見積り及び仮定は合理的であると考えておりますが、実際の業績は、これらの見積りとは異なる場合があります。
なお、当社グループの連結財務諸表において採用する重要性がある会計方針及び見積りは、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 3.重要性がある会計方針」及び「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 4.重要な会計上の見積り及び見積りを伴う判断」に記載しております。
②当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
1)当連結会計年度の経営成績
経営成績は、「(1)経営成績等の状況の概要 ①経営成績の状況」をご参照下さい。
2)経営成績に重要な影響を与える要因
経営成績に重要な影響を与える要因については、「3 事業等のリスク」をご参照下さい。
3)経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標
中期戦略「CS B2024」では、最終年度である2024年度の業績目標を売上収益8,000億円、営業利益率10.0%以上、ROE10.0%以上としています。
期間中に為替が急激に円安に推移したことなどを受け、中期戦略「CS B2024」2年目である当連結会計年度の実績は、売上収益については8,229億円で既に目標を達成しています。しかしながら、ドミノ事業におけるのれんの一部の減損損失を計上したことなどにより、営業利益率は6.1%、ROEは5.0%となりました。
平均為替レート(連結)は次の通りであります。
当期 米ドル :144.40円 ユーロ :156.80円
CS B2024 策定時 米ドル :108.00円 ユーロ :125.00円
中期戦略「CS B2024」における、経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標としては、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (2)中長期的な経営戦略」をご参照下さい。
4)セグメントごとの財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
事業セグメントごとの経営成績の状況については、「(1)経営成績等の状況の概要 ①経営成績の状況」をご参照下さい。
5)当社グループの資本の財源及び資金の流動性
当社グループは、現在及び将来の事業活動のために適切な水準の流動性維持及び、柔軟で効率的な資金の確保を財務活動の重要な方針としております。この方針に従って、当社グループは、グループ会社が保有する資金をグループ内で効率よく活用するキャッシュマネジメントシステムを構築し運用しております。資金の偏在をならし、グループ全体で借入を極力削減する体制を整えております。
流動性管理
当社グループは、現金及び現金同等物を手元流動性と位置付けております。当連結会計年度末現在、当社グループは、売上収益の約2ヶ月分に相当する現金及び現金同等物166,146百万円を保有しております。
当社グループは、当社及び金融子会社などの資金調達拠点を通じたキャッシュマネジメントシステムの活用により、資金の効率化を図り、流動性を確保しております。
これにより、季節的な資金需要の変動、事業環境リスク等を考慮の上、通年にわたり十分な手元流動性を確保していると考えております。
資金調達
運転資金等の短期資金は、原則として期限が1年以内の短期借入金を現地通貨で調達することとし、生産設備等の長期資金は、内部留保資金の他、固定金利の長期借入金及び社債等で調達することを基本方針としております。当連結会計年度末現在、長期借入金の残高は600百万円であり、通貨は日本円であります。
当社は、株式会社格付投資情報センターから格付けを取得しております。当連結会計年度末現在、発行体格付けがA、コマーシャルペーパーがa-1であります。金融・資本市場へのアクセスを保持するため、一定水準の格付けの維持は重要と考えております。
当社グループでは、営業活動によりキャッシュ・フローを生み出す能力に加えて、手元流動性、健全な財務体質により、当社グループの成長を維持するために必要な運転資金及び設備投資・研究開発資金等を確保することが可能と考えております。
資金の需要動向
中期戦略「CS B2024」では、事業ポートフォリオの変革と、持続可能な未来に向けた経営基盤の変革実現に向けた先行投資枠として総額1,500億円を設定しました。この投資枠を活用して、「事業ポートフォリオの変革」に向けては、産業用領域やインクジェット技術に関わる各種の機能、拠点の強化、M&A等の戦略投資を行っていきます。
未来に向けた先行投資を行う一方で、中期戦略「CS B2024」における基本方針に基づき株主利益還元を実施してまいります。
これらの資金需要に対応するため、営業キャッシュ・フローの獲得、また、必要に応じて、成長投資のための資金調達を機動的に実施する方針であります。