有価証券報告書-第30期(平成31年1月1日-令和1年12月31日)

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2020/03/27 12:32
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1.経営成績等の状況の概要
「『税効果会計に係る会計基準』の一部改正」(企業会計基準第28号 平成30年2月16日)等を当連結会計年度の期首から適用しており、財政状態の状況については、当該会計基準等を遡って適用した後の数値で前連結会計年度との比較・分析を行っております。
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の概要は次のとおりりであります。
(1) 経営成績
当連結会計年度におけるわが国経済は、雇用・所得環境の改善が続く一方で、米国と中国との間での貿易摩擦による世界経済の不確実性等が与える国内経済への影響も含め、製造業の業況判断指標(DI)が4四半期連続で悪化の傾向を示す等、景気停滞への懸念が顕在化しつつある状況となりました。
当不動産業界におきましては、用地仕入価格、建築コスト及び人件費の高止まり等の懸念が継続する中で、一部の事業領域で減速感は生じているものの、建設需要も継続していること等から、その市場動向は堅調に推移しております。
このような環境のもと当社グループは、中長期的な経営戦略に基づき、不動産セールス事業、不動産サービス事業、ゼネコン事業、エネルギー事業、ライフケア事業の各分野におけるブランド戦略や各事業の連携をはじめ、グループ全体の更なる成長を加速しております。また、事業の成長を支えるために、「“ライフサポート”のプラットフォーム」のビジネスコンセプトに基づき、利益構成の再編やREIT等の販売チャネルの多様化、先進テクノロジーの研究開発を含めた次世代ビジネスの開発推進といったビジネストランスフォーメーションを進めております。
その結果、当連結会計年度の当社グループの業績は、売上高は957億86百万円(前年同期比14.0%減少)、営業利益は97億54百万円(前年同期比17.6%減少)、経常利益は90億18百万円(前年同期比15.7%減少)、親会社株主に帰属する当期純利益は58億75百万円(前年同期比20.7%減少)となりました。
なお、自己資本につきましては、当連結会計年度末では372億97百万円、自己資本比率は43.4%と高い水準になっております。
セグメント別の業績の概況は次のとおりであります。
当社グループは、今般の業容拡大に伴い各報告セグメントにおけるサービス内容拡充が図られたこと、並びに、今後の事業方針としてお客様の「ライフサポート」に関する商品及びサービスの強化を図ってゆくことから、事業内容をより適切に表現するため、第1四半期連結会計期間よりセグメント名称を変更しております。
「不動産販売事業」及び「不動産管理関連事業」は、従来の事業内容に加え、オーナー様並びに入居者様に必要な商品及びサービスの拡張を総合的に図るため、「不動産セールス事業」及び「不動産サービス事業」に変更しております。また、「介護事業」は、従来の高齢者介護のみに限定することなく、今後、ご家族や当社グループ物件入居者様への生涯を通した様々な生活支援サービス(ライフケア)を展開するプラットフォームの構築を企図し、「ライフケア事業」と名称変更しております。
なお、これらの変更はセグメント名称の変更であり、セグメント情報に与える影響はありません。
① 不動産セールス事業
アパートメント販売では、サラリーマン・公務員層に対し将来の資産形成を目的としたアパートメント経営の提案を行うとともに、厳選したアパートメント用地の確保、新規契約の獲得に努めてまいりました。
アパートメント販売(引渡し)件数は前年同期比では減少となりましたが、当社グループが手がける駅近で利便性の高いデザイナーズ物件は、継続してお客様から高い評価をいただいており、需要自体は底堅く推移しました。
また、マンション販売では、東京エリアにおいて投資用に特化したデザイナーズ仕様の物件を区分販売してまいりました。
これらの結果、売上高は568億36百万円(前年同期比27.0%減少)、セグメント利益は64億56百万円(前年同期比28.2%減少)となりました。
② 不動産サービス事業
賃貸物件のオーナー様より管理を受託している物件の入居率の維持・向上を目指し、広告活動やリーシング力を強化する等入居促進に努め、当連結会計年度末における賃貸管理戸数は36,924戸となりました。
また、分譲マンションの管理組合様より管理を受託している物件の資産価値の維持・向上及び管理組合様向けサービスの向上に努め、当連結会計年度末におけるマンション管理戸数は6,840戸となりました。
その他、家賃等の債務保証は、入居者向け保証件数の拡大に向けた保証プランの充実や新規顧客の獲得を図るとともに保証家賃等の回収率向上に努め、少額短期保険は、保険商品の充実を図り新規契約の獲得に努めてまいりました。
加えて、賃貸仲介機能を強化すべく、㈱バッチリ賃貸を設立する等、更なるサービスの拡充を進めております。
これらの結果、売上高は162億8百万円(前年同期比22.7%増加)、セグメント利益は34億56百万円(前年同期比34.5%増加)となりました。
③ ゼネコン事業
㈱小川建設は、明治42年創業の老舗ゼネコンであり、110年を超える歴史と技術、信頼と実績により、既存顧客からのリピート受注のみならず幅広い顧客への営業活動が奏功し新規受注を増加させている他、受注済みの請負工事の進捗も順調に推移いたしました。
その結果、売上高は186億58百万円(前年同期比10.7%増加)、セグメント利益は16億49百万円(前年同期比6.7%増加)となりました。
④ エネルギー事業
LPガスの小売販売では、当連結会計年度末において供給世帯数が35,737世帯、電力の小売販売では、当連結会計年度末において契約が20,667件となり順調に増加いたしました。
その結果、売上高は24億76百万円(前年同期比32.3%増加)、セグメント利益は5億98百万円(前年同期比55.1%増加)となりました。
⑤ ライフケア事業
ライフケア事業は、サービス付き高齢者向け住宅、通所介護(デイサービス)施設、認知症対応型グループホーム及び小規模多機能型居宅介護施設を主として保有・運営を行う他、訪問介護サービス及び居宅介護支援事業等のサービス提供を行い、各施設の入居率の維持・向上を図るとともに、介護関連サービスの更なる充実に努めてまいりました。一方、業界の慢性的な人材不足を受け、介護人材確保のための採用費用が増加いたしました。
これらの結果、売上高は15億29百万円(前年同期比5.3%増加)、セグメント利益は1億66百万円(前年同期比14.4%減少)となりました。
⑥ その他
その他は、主に海外事業として、上海、シンガポールにおける不動産の賃貸・売買仲介事業の他、インドネシアの首都ジャカルタ中心部において投資用アパートメント事業(桜テラス)を開発から施工までの一貫体制で展開してまいりました。あわせて、インドネシアにおいては外資系初となる投資運用業ラインセンスを取得したことにより、REIT組成を念頭に置いた人員体制やシステムの構築を図る等、積極的な先行投資を推進してまいりました。
これらの結果、売上高は77百万円(前年同期比40.4%減少)、セグメント損失は2億95百万円(前年同期はセグメント利益1億78百万円)となりました。
(2) 財政状態
(資産の部)
当連結会計年度末の総資産は、前連結会計年度末に比べて151億73百万円減少し、859億57百万円となりました。この主な要因は、現金及び預金が61億48百万円増加したものの、販売用不動産が148億53百万円、不動産事業支出金が60億72百万円減少したことによるものであります。
(負債の部)
当連結会計年度末の負債は、前連結会計年度末に比べて200億2百万円減少し、485億46百万円となりました。この主な要因は、短期借入金が158億33百万円、長期借入金が26億7百万円減少したことによるものであります。
(純資産の部)
当連結会計年度末の純資産は、前連結会計年度末に比べて48億28百万円増加し、374億11百万円となりました。この主な要因は、親会社株主に帰属する当期純利益の計上等により利益剰余金が48億52百万円増加したことによるものであります。
(3) キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ62億80百万円増加し、286億53百万円となりました。
なお、当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は、次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動によるキャッシュ・フローは、281億36百万円の収入(前連結会計年度は8億19百万円の支出)となりました。これは主に、たな卸資産の減少額209億53百万円、税金等調整前当期純利益の計上額90億50百万円といった増加要因が、法人税等の支払額43億37百万円といった減少要因を上回ったことによるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動によるキャッシュ・フローは、11億32百万円の支出(前連結会計年度は7億25百万円の支出)となりました。これは主に有形固定資産の取得による支出9億55百万円が生じたことによるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動によるキャッシュ・フローは、207億27百万円の支出(前連結会計年度は8億54百万円の収入)となりました。これは主に、長期借入れによる収入58億77百万円といった増加要因があった一方、短期借入金の純減少額146億77百万円、長期借入金の返済による支出97億39百万円及び配当金の支払額10億22百万円といった減少要因があったことによるものであります。
(4) 経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループは、中期的な経営戦略の実現のため柔軟な経営判断を行えるよう、特定の経営指標を目標として定めておりません。なお、当連結会計年度の売上高、営業利益、経常利益及び親会社株主に帰属する当期純利益の計画に対する達成状況は、以下のとおりであります。
(単位:千円)
2019年12月期
連結会計年度
(実績)
2019年12月期
連結業績予想
(2019年2月15日開示)
達成率2019年12月期
連結業績予想
(2019年12月2日開示)
達成率
売上高95,786,91590,000,000106.4%95,000,000100.8%
営業利益9,754,7438,600,000113.4%10,000,00097.5%
経常利益9,018,5928,000,000112.7%9,000,000100.2%
親会社株主に帰属する当期純利益5,875,0465,600,000104.9%6,100,00096.3%

(5) 受注及び販売の実績
① 受注実績
当社グループは、不動産セールス事業、不動産サービス事業、ゼネコン事業、エネルギー事業、ライフケア事業及びその他の事業を行っておりますが、受注実績は不動産セールス事業及びゼネコン事業についてのみ記載しております。
セグメントの名称金額(千円)前年同期比(%)
不動産セールス事業21,868,50031.8%
内、アパートメント販売5,155,12010.5%
内、マンション販売16,713,38084.0%
ゼネコン事業19,372,41797.9%
41,240,91746.6%

(注) 金額には、消費税等は含まれておりません。
② 販売実績
セグメントの名称金額(千円)前年同期比(%)
不動産セールス事業56,836,65573.0%
内、アパートメント販売36,498,32660.1%
内、マンション販売20,338,328118.1%
不動産サービス事業16,208,050122.7%
ゼネコン事業18,658,008110.7%
エネルギー事業2,476,808132.3%
ライフケア事業1,529,416105.3%
その他77,97559.6%
合計95,786,91586.0%

(注) 1 セグメント間の取引については、相殺消去しております。
2 金額には、消費税等は含まれておりません。
3 主な相手先別の販売実績及び総販売実績に対する割合は、10%未満のため記載を省略しております。
③ 受注残高
セグメントの名称金額(千円)前年同期比(%)
不動産セールス事業13,549,83227.9%
内、アパートメント販売12,800,90329.0%
内、マンション販売748,92917.1%
ゼネコン事業15,176,752104.9%
28,726,58545.6%

(注) 金額には、消費税等は含まれておりません。
2.経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであり、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
(1) 重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている企業会計の基準に基づき作成しております。この連結財務諸表の作成にあたりまして、必要と思われる見積りは、「連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項」の「会計方針に関する事項」に記載のとおりであり、合理的な基準に基づき実施しております。
なお、当社グループの連結財務諸表の作成において、損益又は資産の状況に影響を与える見積り、判断は、過去の実績やその時点で入手可能な情報に基づいた合理的と考えられる要因を考慮した上で実施しておりますが、結果として、このような見積りと実績が異なる場合があります。
(2) 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する分析・検討内容
「1.経営成績等の状況の概要」に記載しております。
(3) 経営成績に重要な影響を与える要因について
「第2 事業の状況 2 事業等のリスク」に記載しております。
(4) 経営戦略の現状と見通しについて
「1.経営成績等の状況の概要」に記載しております。
また、今後の見通しとしては、世界経済の不確実性等が与える国内経済への影響も含め、景気停滞への懸念が顕在化しつつあるものの、雇用・所得環境の改善が継続しており、当不動産業界におきましても一部の事業領域で減速感は生じているものの、その市場動向は堅調に推移しております。
アパートメント販売の次期計画につきましては、単身者の増加傾向も相俟って、引き続き底堅い需要が見込まれます。マンション販売につきましては、2020年の首都圏におけるマンション年間供給戸数が、2019年より2.4%増加の32,000戸程度と予測されており(㈱不動産経済研究所調べ)、株式・債券市場に対する不透明感が高まってきている中において安定的投資商品としての相対的優位性の高まりをみせております。当社グループにおきましてもマンション販売は次期以降も安定的に利益を創出する事業基盤として位置付けていけるものと考えております。不動産セールス事業は、主に東京23区内で当社グループが開発する賃貸住宅不動産等でのREIT組成に向けた準備等、不動産ファンド商品の拡充を進めており、金融機関の個人向け融資の情勢等に影響されない新たな収益モデルにより次期以降の業績に力強く貢献できるものと認識しております。
ゼネコン事業は、東京五輪後の完成工事分の受注も順調であるため、国内受注は引き続き好調に推移することを見込むとともに、海外においてはインドネシアでの施工アドバイスも行ってまいります。不動産サービス事業及びエネルギー事業は好調を維持しており、ストックビジネスとして一層の拡大を図ってまいります。ライフケア事業は、当社グループが運営するサービス付き高齢者向け住宅がほぼ100%近い入居率で推移する等、当社グループのサービスに対しお客様から高いご支持を頂いております。また、2019年にインドネシアの大学と人材に関する提携を開始したことに続き、今後も業界の慢性的な人材不足を補う介護人材の育成や、その他幅広い分野での人材確保・育成及び紹介・派遣等も視野にライフケア事業の一環として模索してまいります。その他、海外事業といたしましては、インドネシアにおいて不動産ファンド運営に係るライセンスを2019年7月に認可を受けて以降、REITの組成・販売準備に入っており、自社開発物件のREITへの売却益や、REITの運営手数料等の売上げを積み上げていく見通しです。国内においては、不動産テクノロジーを活用したIoTやアプリの開発を加速させてまいります。
当社グループはアパートメント販売以外の事業で既に営業利益の約80%を構成しており、当社グループが個人向けアパートメント販売に依存することなく、事業間の相乗効果(シナジー)が効率的かつ安定的に発揮され、いかなる経済環境の変化にも柔軟に対応できる経営基盤が構築されつつあり、引き続きビジネストランスフォーメーションを加速させ、持続的な企業価値の向上に努めてまいります。
(5) 資本の財源及び資金の流動性についての分析
キャッシュ・フローの分析については、「1.経営成績等の状況の概要」に記載しております。
また、当社グループの資金需要のうち主なものは、不動産セールス事業の土地仕入及び建築資金、ゼネコン事業の運転資金等であります。当社グループは、事業活動に必要な資金を安定的に維持・確保するため、自己資金を活用する他、金融機関より借入金や社債によって調達しており、金利情勢に注意を払いつつ、適切なコストで安定的に資金を確保することを基本方針としております。
なお、主要取引行等とは調達枠を設けた融資契約を締結する等、資金調達における流動性を補完するとともに、金融機関と良好な関係を維持継続してまいります。
(6) 経営者の問題認識と今後の方針について
当社グループは、これまで、個人のサラリーマン層が抱える定年退職後の経済不安の解消を目的に、将来へ向けての資産づくりの手段として、現行のアパートメント経営の提案を進めてまいりました。今後は、個人向け販売に加え、不動産ファンドやREIT向け販売も行い、個人向け融資の情勢等に左右されにくい不動産セールス事業の体制を構築するとともに、新たな収益モデルとして、組成した不動産ファンドやREITを機関投資家向けに販売することや、小口化してクラウドファンディングの活用等による販売チャネルの多様化を推し進め、様々な属性のお客様との接点を増やすことで顧客ベースの拡大を図ってまいります。不動産サービス事業等のストックビジネスも引き続き利益構成の比重を増やし、景気に左右されにくい安定収益源として、より一層強固に取り組んでまいります。
一方、ライフケア事業(介護分野)では、急速に進行する高齢化、それに伴う労働力不足の問題に対しては、インドネシアの大学との人材に関する提携を拡充させ、早期に人材確保・育成スキームを確固にしてまいります。テクノロジーの活用については、M&Aを含めた体制の拡充を進め、当社グループが提唱する、「誰もが平等に、簡単に、安全に不動産を活用できる世界、“REaaS”(Real Estate as a Service:リアーズ、不動産のサービス化)」を推進してまいります。
当社グループ全体といたしましては、積極的なM&A等も視野にビジネスの拡大とグローバル化を進め、30年にわたり築いてきた当社グループのビジネスモデルをひとつのビジネスプラットフォームとして再定義しプレゼンス強め、国内外でブランドバリューを高めてまいります。