有価証券報告書-第103期(平成31年4月1日-令和2年3月31日)

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2020/06/18 13:10
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(1)財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況
当連結会計年度のわが国経済は、雇用・所得環境の改善が続くなど、景気は緩やかな回復基調を維持したものの、新型コロナウイルス感染拡大の影響により、期の終盤にかけて大幅に下押しされ、先行きについても非常に厳しい状況が続くものと予想されます。
このような経済情勢の下におきまして、当社グループでは、2年目に入った中期経営計画「共創136計画」に基づき、引き続き各種施策への取組みを進めてまいりました。
この結果、当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況は次のとおりであります。
① 財政状態
(資産)
当連結会計年度末における資産合計は、9,250億58百万円となり、前連結会計年度末に比べ66億72百万円増加いたしました。これは主に、有価証券の減少等により流動資産その他が58億3百万円減少した一方で、「難波御堂筋センタービル」の取得等により有形固定資産が141億39百万円増加したことによるものであります。
(負債)
当連結会計年度末における負債合計は、6,690億54百万円となり、前連結会計年度末に比べ77億69百万円減少いたしました。これは主に、退職給付に係る負債が20億96百万円増加した一方で、有利子負債残高が106億99百万円減少したことによるものであります。
(純資産)
当連結会計年度末における純資産合計は、2,560億3百万円となり、前連結会計年度末に比べ144億42百万円増加いたしました。これは主に、親会社株主に帰属する当期純利益208億11百万円、剰余金の配当34億円によるものであります。
この結果、自己資本比率は26.4%(前連結会計年度末は25.1%)となりました。
② 経営成績
当連結会計年度におきましては、新型コロナウイルス感染拡大の影響があったものの、不動産業において、なんばスカイオが通年で寄与したことやマンション販売が増加したこと等により、営業収益は2,280億15百万円(前期比0.3%増)となりました。また、前期に住宅開発事業等の見直しに伴う販売用不動産評価損を計上した反動等により、営業利益は352億23百万円(前期比27.0%増)、経常利益は316億77百万円(前期比32.5%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は208億11百万円(前期比59.8%増)となりました。
セグメントごとの経営成績は次のとおりであります。
<運輸業>鉄道事業におきましては、営業面では、昨年4月、南海線のダイヤ改正を実施し、平日朝の特急ラピートを増発するなど、空港アクセスの利便性向上をはかりました。また、昨年10月、消費税率改定に伴う運賃・料金改定を実施するとともに、鋼索線の収支改善を目的とした運賃改定を実施いたしました。沿線活性化施策では、百舌鳥・古市古墳群の世界遺産登録を契機とした旅客需要を喚起するため、国内外向けのプロモーションを実施いたしましたほか、世界遺産高野山と高野山麓エリアへの来訪者層の拡大と回遊性向上をめざし、橋本駅から高野山駅に至る区間を現代の参詣道と位置づけ各駅の付加価値を高めるべく、第一弾として九度山駅におむすびスタンド「くど」を、高野下駅に駅舎ホテル「NIPPONIA HOTEL 高野山 参詣鉄道」を、それぞれ開業するとともに、観光列車「天空」運行開始10周年記念イベントを実施いたしました。さらに、列車の運行情報等をスマートフォンで確認できる「南海アプリ」の配信を開始したほか、高野線における多言語列車放送システムの導入や駅及び一部特急列車への携帯通訳機の配備等、国内外からのお客さまに対する情報発信体制の強化に努めました。施設・車両面では、駅トイレのリニューアルを計画的に推進したほか、南海線において、車両づくりをお客さまと一緒に考える「NANKAI マイトレイン」プロジェクトによりリニューアルした9000系車両の運行を開始するとともに、南海線及び高野線において8300系新造車両30両を投入するなど、旅客サービスの向上に取り組みました。また、特急ラピートの台車にき裂が発見された重大インシデントにつきましては、台車の緊急点検をはじめ、お客さまの信頼の回復に向けた取組みを速やかに実施したほか、踏切道のさらなる安全性向上をはかるため、障害物の検知能力に優れた平面式踏切障害物検知装置を新たに導入いたしました。
バス事業におきましては、関西国際空港において増加するインバウンド関連需要に対応し、空港リムジンバス路線の増便や空港島内輸送の増強を実施したほか、関西国際空港第1ターミナルの券売所において、インバウンド向けモバイル決済サービスを導入いたしました。また、昨年9月から11月までの間、他社との共同運行により京都駅前と高野山とを結ぶ高速バスを試験運行し、行楽シーズンの旅客需要の取込みに努めました。このほか、一般乗合バス路線では、和歌山バス株式会社が運行する路線を対象としてバスロケーションシステムを導入したほか、南海りんかんバス株式会社において、PiTaPaをはじめとする交通系ICカードによる乗車サービスを開始いたしました。
海運業におきましては、和歌山・徳島航路において、昨年12月に新造船「フェリーあい」を就航させ、旅客の安全・安心と快適性の向上をはかりました。
以上のような諸施策を進めましたが、新型コロナウイルス感染拡大の影響により、運輸業の営業収益は1,009億80百万円(前期比1.0%減)となり、営業利益は129億53百万円(前期比13.8%減)となりました。
提出会社の運輸成績
区分単位当連結会計年度
(2019.4~2020.3)対前連結会計年度増減率
営業日数366%
0.3
営業キロキロ154.80.0
客車走行キロ千キロ100,2122.6
旅客人員定期外千人97,774△1.1
定期千人141,6800.5
千人239,454△0.2
運輸収入旅客収入定期外百万円35,073△2.4
定期百万円22,5620.2
百万円57,636△1.4
運輸雑収百万円2,9826.8
収入合計百万円60,618△1.0
乗車効率%31.3-

(注) 乗車効率の算出は 延人キロ/(客車走行キロ×平均定員)によります。
営業成績
業種当連結会計年度(2019.4~2020.3)
営業収益対前連結会計年度増減率
百万円%
鉄道事業68,439△1.0
軌道事業1,547△2.7
バス事業27,001△1.3
海運業2,0550.4
貨物運送業4,246△3.3
車両整備業5,0253.8
調整額△7,336-
営業収益計100,980△1.0

<不動産業>不動産賃貸業におきましては、なんばスカイオ、パークスタワーをはじめとする沿線の各物件や東大阪及び北大阪流通センター内各施設の収益性の維持向上に努めましたほか、今春の開業に向け、北大阪流通センター再開発の第1期計画を推進いたしました。また、業容の拡大をはかるため、なんばエリアにおいて収益物件の取得を進めたほか、昨年9月、新今宮において日本初の外国人就労支援・交流施設「YOLO BASE」を開業するなど、なんばターミナルエリアと新今宮エリアを結ぶ南北軸の形成・充実に注力いたしました。一方、駅を拠点としたまちづくりを進めるため、南海堺東ビル北館7階及び8階フロアのリニューアルを実施し、利便性・目的性の高い店舗の集積をはかりました。
不動産販売業におきましては、南海橋本林間田園都市において、新街区「三石台ソラトモリ」の街びらきを行ったほか、南海くまとり・つばさが丘等で宅地及び戸建住宅の分譲を進めました。また、当社沿線にあっては北野田及び和歌山大学前、沿線外では大阪市淀川区、堺市西区及び大阪府富田林市において、当社グループの分譲マンションブランド「ヴェリテ」シリーズを展開いたしました。
この結果、不動産業の営業収益は、なんばスカイオが通年で寄与したことやマンション販売が増加したこと等により、434億86百万円(前期比17.7%増)となり、営業利益は、前期に住宅開発事業等の見直しに伴う販売用不動産評価損を計上した反動等もあり、138億32百万円(前期比189.6%増)となりました。
営業成績
業種当連結会計年度(2019.4~2020.3)
営業収益対前連結会計年度増減率
百万円%
不動産賃貸業31,05612.8
不動産販売業12,85524.7
調整額△426-
営業収益計43,48617.7

<流通業>ショッピングセンターの経営におきましては、なんばパークスにおいて、本年3月、リニューアルを実施し、商業施設初出店を含む新たな店舗を誘致するとともに、パークスガーデンにおいて、ウッドデッキスペースの新設をはじめ、周辺のオフィスワーカーにもご利用いただけるようWi-Fiのアクセスポイントを増設するなど、既存顧客の来館頻度の維持向上と新規顧客の獲得をはかりました。このほか、各施設において、時季に適した多様な集客イベントを開催し、国内外からの来館者数の増加に努めました。
駅ビジネス事業におきましては、N.KLASS及びショップ南海等の各施設において、施設ごとの立地・特色に応じた店舗の誘致をはかり、鮮度及び魅力の維持向上に努めました。
以上のような諸施策を進めましたが、新型コロナウイルス感染拡大の影響もあり、流通業の営業収益は323億48百万円(前期比3.4%減)となりましたものの、前期にはショッピングセンターのリニューアル関連費用の計上があったこともあり、営業利益は38億35百万円(前期比3.2%増)となりました。
営業成績
業種当連結会計年度(2019.4~2020.3)
営業収益対前連結会計年度増減率
百万円%
ショッピングセンターの経営14,944△0.9
駅ビジネス事業19,167△2.3
その他879△41.9
調整額△2,642-
営業収益計32,348△3.4

<レジャー・サービス業>遊園事業におきましては、みさき公園において、昨年3月の事業撤退発表後、お客さまに同園での最後の思い出を残していただけるよう各種施策に取り組み、本年3月31日をもって同園の運営を終了いたしました。
ホテル・旅館業におきましては、昨年4月、旧ホテル中の島を個人向け小規模高級和風リゾート「碧き島の宿 熊野別邸 中の島」としてリブランドオープンいたしました。
ビル管理メンテナンス業におきましては、既存管理物件において提供するサービスの品質向上に努めるとともに、商業施設、ホテル及び公共施設等の新規管理物件の受託と設備工事の受注に努めました。
ボートレース施設賃貸業におきましては、大型ビジョンを更新するなど、来場者へのサービスの向上に努める一方、購買者層の拡大をはかるため、インターネット投票による舟券販売に注力いたしました。
この結果、レジャー・サービス業の営業収益は429億81百万円(前期比8.4%増)となり、営業利益は27億62百万円(前期比43.7%増)となりました。
営業成績
業種当連結会計年度(2019.4~2020.3)
営業収益対前連結会計年度増減率
百万円%
遊園事業1,15413.3
旅行業2,0661.6
ホテル・旅館業48589.1
ボートレース施設賃貸業5,3800.5
ビル管理メンテナンス業27,59210.0
葬祭事業3,0704.4
その他5,5567.4
調整額△2,324-
営業収益計42,9818.4

<建設業>建設業におきましては、民間住宅工事のほか、ホテル、高齢者向け施設等の民間非住宅工事や公共工事の受注活動に注力いたしました。
以上のような諸施策を進めましたが、完成工事高の減少により、営業収益は411億11百万円(前期比9.0%減)となり、営業利益は23億4百万円(前期比13.2%減)となりました。
営業成績
業種当連結会計年度(2019.4~2020.3)
営業収益対前連結会計年度増減率
百万円%
建設業41,154△9.0
調整額△43-
営業収益計41,111△9.0

<その他の事業>その他の事業におきましては、営業収益は35億3百万円(前期比30.7%増)となり、営業利益は2億12百万円(前期比37.9%増)となりました。
営業成績
業種当連結会計年度(2019.4~2020.3)
営業収益対前連結会計年度増減率
百万円%
その他3,50830.5
調整額△4-
営業収益計3,50330.7

以上のほか、上記各事業の基盤づくりの一環として、加太線沿線の遊休不動産をリノベーションし、新たなまちづくりを実践していくワークショップ「リノベーションスクール@加太」を開催いたしましたほか、南海沿線の若手後継者による事業承継や起業の意識を醸成するため、自治体、経済団体、大学及び金融機関等との連携による支援のフレームワーク構築の一環として、「南海沿線アトツギソン」を主催するなど、沿線価値の向上に注力いたしました。
なお、新型コロナウイルス感染症による影響は以下の通りです。
セグメント当連結会計年度(2019.4~2020.3)
営業収益
(百万円)
営業利益
(百万円)
主な内訳(百万円)
運輸業△2,910△2,756(営業収益)鉄道事業 △1,958 バス事業 △812
(営業利益)鉄道事業 △1,919 バス事業 △693
不動産業△131△116(営業収益)不動産賃貸業 △131
(営業利益)不動産賃貸業 △116
流通業△606△217(営業収益)駅ビジネス事業 △436 ショッピングセンターの経営 △169
(営業利益)駅ビジネス事業 △ 82 ショッピングセンターの経営 △134
レジャー・
サービス業
△418△250(営業収益)ボートレース施設賃貸業 △220 旅行業 △124
(営業利益)ボートレース施設賃貸業 △110 旅行業 △ 92
合計△4,067△3,341

③ キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ48億33百万円減少し、170億30百万円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果得られた資金は589億35百万円(前連結会計年度は387億29百万円の獲得)となりました。これは主に、税金等調整前当期純利益305億27百万円のほか、減価償却費287億86百万円等によるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果使用した資金は489億15百万円(前連結会計年度は452億19百万円の使用)となりました。これは主に、固定資産の取得による支出559億81百万円のほか、工事負担金等受入による収入60億47百万円等によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果使用した資金は148億53百万円(前連結会計年度は86億32百万円の獲得)となりました。これは主に、長期借入れによる収入215億55百万円のほか、長期借入金の返済による支出303億54百万円等によるものであります。
④ 生産、受注及び販売の実績
当社グループ(当社及び連結子会社)の受注及び販売品目につきましては多種多様であり、セグメントごとに金額及び数量で示すことはしておりません。
このため生産、受注及び販売の実績につきましては、「②経営成績」におけるセグメントごとの経営成績に関連付けて示しております。
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
① 経営成績等に重要な影響を与える要因
経営成績等に重要な影響を与える要因につきましては、「2 事業等のリスク」に記載の通りであります。
② 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等の進捗状況
「南海グループ経営ビジョン2027」の第一段階として、2018年度からの3年間を「将来の成長のための布石を打つ」ための「基盤整備期」と位置づけ、さまざまなステークホルダーと連携し新たな価値を「共に創っていく」ことをめざした中期経営計画「共創136計画」を推進しております。
本計画においては、「営業利益」、「有利子負債残高/EBITDA倍率」を重要な経営指標として位置づけ、各種施策に取り組んでおります。当連結会計年度において、「(1)財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況 ② 経営成績」に記載の各種施策に取り組んだ結果、当連結会計年度末における各指標の進捗状況は以下のとおりとなりました。
経営指標前連結会計年度
(2018年度)
当連結会計年度
(2019年度)
営業利益(※1)287億円361億円
有利子負債残高/EBITDA(※2)倍率8.5倍7.2倍

(※1)営業利益+受取配当金
(※2)営業利益+受取配当金+減価償却費
当連結会計年度につきましては、運輸業を中心に新型コロナウイルス感染拡大による影響が大きかったものの、不動産業においてなんばスカイオが通年で寄与したことや、第3四半期まで空港関連輸送が好調に推移したこともあり、記載の結果となりました。翌連結会計年度においては、新型コロナウイルス感染拡大の長期化が懸念されるなど不透明な要素があり、業績への影響を合理的に算定することが困難であることから、現時点において2020年度の業績予想は未定としております。
③ 資本の財源及び資金の流動性に係る情報
a.資金調達の方法及び状況
資金調達につきましては、鉄道事業等における設備投資に対する㈱日本政策投資銀行からの借入金のほか、社債及び金融機関からの借入金など、市場の環境や金利の動向等を総合的に勘案したうえで決定しております。
また、資金調達手法の一つとして複数の金融機関との間でコミットメントライン契約を締結しております。
さらに、当社グループの資金効率向上のため、キャッシュマネジメントシステム(CMS)を導入し、極力グループ内資金を有効活用する仕組みを構築しております。
このほか、大規模自然災害等が発生した場合の対処として、震災対応型コミットメントライン契約を締結しております。
足元は新型コロナウイルス感染拡大による鉄道事業等の現金収入の急減を受け、本年3月以降は、手元資金確保を最優先とした資金調達を実施しております。この事業環境が長期化した場合の収支悪化や不透明な資金調達環境を鑑み、さらなる資金調達手段の多様化と流動性資金の確保に向けて取り組んでおります。
b.資金需要の動向
「南海グループ経営ビジョン2027」達成に向けた10年間(2018年度~2027年度)は、基本的には営業キャッシュ・フローを成長投資に優先配分し、収益力向上を通じた財務体質の強化をめざすこととしておりますが、足元は新型コロナウイルス感染拡大を受け、コスト削減を徹底するとともに、事態収束に目途がつくまでの間、安全性・緊急性を判断した上で設備投資の抑制に努めております。
なお、当連結会計年度における各セグメントの設備投資等の概要については、「第3 設備の状況」に記載のとおりであります。
配当の基本方針は、長期にわたる安定的な経営基盤の確保と財務体質の強化に努めつつ、収益のさらなる向上をはかることにより安定的な配当を実施することとしております(配当政策については、「第4 提出会社の状況 3 配当政策」をご覧下さい。)。なお、内部留保資金は、鉄道事業の安全対策を中心とする設備投資のほか、当社グループの持続的な成長のための投資、財務体質の強化等に充当する考えであります。
④ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。連結財務諸表の作成にあたり、経営者は、決算日における資産・負債及び報告期間における収入・費用の金額並びに開示に影響を与える見積り及び予測を行わなければなりません。これらの見積りについては、過去の実績や状況等に応じ合理的だと考えられる様々な要因に基づき見積り及び判断を行っておりますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。
なお、当社グループの連結財務諸表で採用されている重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載のとおりであります。
当連結会計年度における、会計上の見積りを行う上での新型コロナウイルス感染症の影響に関する仮定については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(追加情報)」に記載のとおりであります。
当社グループで特に重要であると考える会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定には、以下のようなものがあります。
a.固定資産の減損損失
当社グループは、管理会計上の区分を基礎に、事業毎又は物件毎に資産のグルーピングを行い、収益性が著しく低下した資産グループについて、固定資産の帳簿価額を回収可能価額まで減損し、当該減少額を減損損失として計上することとしております。回収可能価額は、資産グループの事業計画に基づく将来キャッシュ・フロー、割引率、正味売却価額など多くの前提条件に基づいて算出しております(当該見積りに用いた仮定については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(連結損益計算書関係)」に記載しております。)。これらの前提条件は長期的な見積りに基づくため、将来の当該資産グループを取り巻く経営環境の変化による収益性の変動や市況の変動により、回収可能価額を著しく低下させる変化が見込まれた場合、減損損失の計上が必要となる可能性があります。
b.退職給付に係る資産・負債
当社グループは、退職給付債務および費用について、年金資産の長期期待運用収益率や割引率等数理計算上で設定される仮定に基づいて算出しております(当該見積りに用いた仮定については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(退職給付関係)」に記載しております。)。これらの仮定と実際の結果との差額は累計され、将来の会計期間にわたって費用化されます。使用した仮定は妥当なものと考えておりますが、実際の結果との差異又は仮定自体の変更が生じた場合には、損益及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
c.繰延税金資産
当社グループは、繰延税金資産について、将来の利益計画に基づいた課税所得が十分に確保でき、回収可能性があると判断した将来減算一時差異等について算出しております。繰延税金資産の回収可能性は将来の課税所得の見積りに依存するため、その見積額の前提条件や仮定に変更が生じた場合には、繰延税金資産が増額又は減額され、損益及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
d.完成工事高及び完成工事原価
完成工事高及び完成工事原価について、当連結会計年度末までの進捗部分について成果の確実性が認められる工事については工事進行基準(工事の進捗率の見積りは原価比例法)を、その他の工事については工事完成基準を適用しております。工事進行基準対象工事につきましては将来の発生原価を合理的に見積っておりますが、この見積りの基礎となる実施予算金額が、建設資材及び労務外注の調達遅れや価格高騰、市況の変動等も含め、工事着工後の状況の変化により大きく変動した場合は、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。