有価証券報告書-第104期(令和2年4月1日-令和3年3月31日)
(1)財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況
当連結会計年度のわが国経済は、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、2度にわたり緊急事態宣言が発出され、経済活動が抑制されるなど、極めて厳しい状況のうちに推移いたしました。
この結果、当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況は次のとおりであります。
① 財政状態
(資産)
当連結会計年度末における資産合計は、9,622億29百万円となり、前連結会計年度末に比べ371億71百万円増加いたしました。これは主に、新型コロナウイルス感染拡大を受け、手元資金を借入金等で確保したことにより、現金及び預金が239億81百万円増加したことに加え、時価上昇等により投資有価証券が75億17百万円増加したことによるものであります。
(負債)
当連結会計年度末における負債合計は、7,036億60百万円となり、前連結会計年度末に比べ346億6百万円増加いたしました。これは主に、未払金の減少等により流動負債その他が87億84百万円減少した一方で、有利子負債残高が385億22百万円増加したことによるものであります。
(純資産)
当連結会計年度末における純資産合計は、2,585億69百万円となり、前連結会計年度末に比べ25億65百万円増加いたしました。これは主に、剰余金の配当19億83百万円、親会社株主に帰属する当期純損失18億61百万円等により利益剰余金が減少した一方で、投資有価証券の時価上昇等によりその他有価証券評価差額金が42億93百万円増加したことによるものであります。
この結果、自己資本比率は25.6%(前連結会計年度末は26.4%)となりました。
② 経営成績
当連結会計年度におきましては、運輸業を中心に、新型コロナウイルス感染拡大の影響を大きく受けた結果、営業収益は1,908億13百万円(前期比16.3%減)となり、費用の削減に努めたものの、営業利益は55億52百万円(前期比84.2%減)、経常利益は18億54百万円(前期比94.1%減)にとどまりました。また、親会社株主に帰属する当期純損失は18億61百万円(前期は親会社株主に帰属する当期純利益208億11百万円)となりました。
セグメントごとの経営成績は次のとおりであります。
<運輸業>鉄道事業におきましては、営業面では、新型コロナウイルス感染拡大による外出自粛の拡がりやインバウンド需要の消失を受け、昨年4月から特急ラピートの一部列車及び観光列車「天空」を運休いたしました。一方、感染拡大の収束後を見据えた需要喚起施策及び沿線活性化施策といたしまして、大手旅行会社とのタイアップにより、運休中の特急ラピートを有効活用した貸切ツアーの実施や、高野山と高野山麓エリアへの来訪者層の拡大と回遊性向上を目的に、高野線極楽橋駅のリニューアルを実施したほか、高野町と共同で1万人を高野山へ無料でご招待する「高野山1万人ご招待キャンペーン」を実施いたしました。また、橋本市等と協働で紀伊清水駅の駅舎をリノベーションし、伝統工芸品の製作体験工房をオープンいたしました。施設・車両面では、駅トイレのリニューアルを計画的に推進する一方、南海線新今宮駅のリニューアル工事に着手いたしました。また、難波駅・新今宮駅・天下茶屋駅の座席指定券自動販売機を更新し、操作画面の多言語表示に対応するとともに、交通系ICカードでの購入を可能とするなど、旅客サービスの改善と利便性向上をはかりました。このほか、高野線に8300系新造車両12両を投入したほか、保有する全車両の座席、吊り手、手すり及び窓等への抗ウイルス・抗菌材の噴霧加工や自動券売機及び自動精算機のタッチパネルに抗ウイルス・抗菌シートの貼付を実施するなど、お客さまに安全に安心してご利用いただけるよう努めました。
バス事業におきましては、新型コロナウイルス感染拡大の影響により、空港リムジンバスをはじめ、高速バスや貸切バス等で、運休・減便等を余儀なくされました。一方、お客さまに安全に安心してご利用いただくために、人と人との接触機会を最小限にとどめつつ、お客さまの利便性向上をはかるため、和歌山バス株式会社において、昨年4月、PiTaPaをはじめとする交通系ICカードによる乗車サービスを開始したほか、熊野御坊南海バス株式会社において、同月、バス車内及び切符売り場窓口に電子決済サービス「PayPay」を導入するとともに、7月には、定期観光バス及び白浜空港リムジンバスの乗車券のインターネット販売を開始いたしました。
海運業におきましては、和歌山県と徳島県の観光振興及び交流促進のため、和歌山県又は徳島県内の宿泊施設に宿泊した場合、乗用車・二輪車の運賃を半額とするキャンペーンを実施し、航路の利用促進をはかりました。
以上のような諸施策を進めましたが、運輸業の営業収益は665億66百万円(前期比34.1%減)となり、遺憾ながら135億99百万円の営業損失(前期は営業利益129億53百万円)となりました。
提出会社の運輸成績
(注) 乗車効率の算出は 延人キロ/(客車走行キロ×平均定員)によります。
営業成績
<不動産業>不動産賃貸業におきましては、昨年4月、大阪府茨木市において、関西圏における一大物流拠点として、北大阪トラックターミナル1号棟を竣工させたほか、隣接地との一体的な開発を進めるため、「大阪府食品流通センター」の再開発を推進いたしました。また、昨年6月、和歌山市駅活性化計画において建設を進めてまいりました「キーノ和歌山」を開業し、地元の食材が並ぶスーパーマーケットや県内の人気飲食店を誘致するとともに、7月には、「カンデオホテルズ南海和歌山」がオープンいたしました。
駅を拠点としたまちづくりにおきましては、なんばエリアにおいて、大阪市との官民協働事業である「なんば駅周辺における空間再編推進事業」に取り組むとともに、当該事業やなにわ筋線事業とのシナジー効果が期待できる開発とポートフォリオの充実を目的として、エリア内の既存物件の取得を進めました。また、なんばエリア全体の魅力向上とにぎわいの創出に貢献していくため、難波中二丁目開発計画に参画いたしました。泉北エリアでは、「いずみがおか広場」において、キッチンカーやフードトラック等の地元事業者の出店を誘致するなど、駅前としてのにぎわいづくりに努めるとともに、ニュータウン再生の先駆けとして、駅前活性化に向けた環境整備を進めました。
不動産販売業におきましては、南海くまとり・つばさが丘において、新街区「ソラテラス」の分譲を開始したほか、各エリアの特性に合わせた戸建住宅ブランド「ヴェリテコート」シリーズの販売に努めました。また、当社沿線にあっては三国ヶ丘、沿線外では大阪府守口市において、当社グループの分譲マンションブランド「ヴェリテ」シリーズの販売を展開いたしました。
以上のような諸施策を進めましたが、不動産販売業においてマンション販売が減少したことに加え、不動産賃貸業において新型コロナウイルス感染症の影響を受けたこと等により、不動産業の営業収益は417億77百万円(前期比3.9%減)となり、営業利益は128億78百万円(前期比6.9%減)となりました。
営業成績
<流通業>ショッピングセンターの経営におきましては、昨年4月に発出された緊急事態宣言に伴い、4月上旬から5月中旬まで、各施設を休業いたしました。このほか、政府や自治体からの要請により、飲食店等の一部で営業時間を短縮した期間がありましたが、各施設において、新型コロナウイルス感染拡大防止のため、換気の強化やソーシャル・ディスタンスの確保等に十分配慮し、お客さまに安心してご来店いただけるよう努めました。また、昨年10月、なんばパークスにおいて、株式会社おやつタウンが運営する都市型テーマパーク「リトルおやつタウンNamba」を誘致し、幅広い年齢層の集客に注力いたしました。
駅ビジネス事業におきましては、駅構内やekimo等の施設において、コロナ禍により需要が高まったテイクアウトにも対応可能な店舗の誘致に努めました。
以上のような諸施策を進めましたが、流通業の営業収益は253億12百万円(前期比21.7%減)となり、営業利益は18億83百万円(前期比50.9%減)となりました。
営業成績
<レジャー・サービス業>ボートレース施設賃貸業におきましては、コロナ禍による無観客でのレース期間中においても、インターネットによる投票が好調に推移したことが寄与し、増収となりました。
ビル管理メンテナンス業におきましては、既存管理物件において提供するサービスの品質向上に努めるとともに、商業施設、医療機関、ホテル及び公共施設等の新規管理物件の受託と設備工事の受注に努めました。
葬祭事業におきましては、小規模な葬儀スタイルのニーズの高まりに応えるため、昨年5月、ティアとして関西初となる家族葬専用ホール「ティア堺伏尾」を開業いたしました。
その他といたしましては、シニアビジネス事業の業容拡大をはかるため、昨年6月、当社グループの2号店となるサービス付き高齢者向け住宅「南海ライフリレーション岸和田吉井」の入居を開始いたしました。
しかしながら、ビル管理メンテナンス業において設備工事収入が減少したこと等により、レジャー・サービス業の営業収益は347億56百万円(前期比19.1%減)となり、営業利益は22億85百万円(前期比17.3%減)となりました。
営業成績
<建設業>建設業におきましては、民間住宅工事のほか、ホテル、学校施設等の民間非住宅工事や公共工事の受注活動に注力いたしました。
この結果、完成工事高の増加等により、建設業の営業収益は454億90百万円(前期比10.7%増)となったものの、利益率の低下等により営業利益は16億99百万円(前期比26.2%減)となりました。
営業成績
<その他の事業>その他の事業におきましては、営業収益は30億27百万円(前期比13.6%減)となり、営業利益は2億48百万円(前期比17.3%増)となりました。
営業成績
なお、新型コロナウイルス感染症による影響は以下のとおりです。
③ キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ238億87百万円増加し、409億17百万円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果得られた資金は213億38百万円(前期は589億35百万円の獲得)となりました。これは主に、税金等調整前当期純損失11億97百万円のほか、減価償却費294億10百万円等によるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果使用した資金は332億73百万円(前期は489億15百万円の使用)となりました。これは主に、固定資産の取得による支出367億56百万円のほか、工事負担金等受入による収入60億42百万円等によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果得られた資金は358億21百万円(前期は148億53百万円の使用)となりました。これは主に、社債の発行による収入397億37百万円のほか、社債の償還による支出100億円等によるものであります。
④ 生産、受注及び販売の実績
当社グループ(当社及び連結子会社)の受注及び販売品目につきましては多種多様であり、セグメントごとに金額及び数量で示すことはしておりません。
このため生産、受注及び販売の実績につきましては、「② 経営成績」におけるセグメントごとの経営成績に関連付けて示しております。
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
① 経営成績等に重要な影響を与える要因
経営成績等に重要な影響を与える要因につきましては、「2 事業等のリスク」に記載のとおりであります。
② 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等の進捗状況
「南海グループ経営ビジョン2027」の第一段階として、2018年度からの3年間を「将来の成長のための布石を打つ」ための「基盤整備期」と位置づけ、さまざまなステークホルダーと連携し新たな価値を「共に創っていく」ことをめざした中期経営計画「共創136計画」を推進してまいりました。
本計画においては、「営業利益」、「有利子負債残高/EBITDA倍率」を重要な経営指標として位置づけ、各種施策に取り組み、当連結会計年度において、「(1)財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況 ② 経営成績」に記載の各種施策に取り組んだ結果、当連結会計年度末における各指標の結果は以下のとおりとなりました。
(※1)営業利益+受取配当金
(※2)営業利益+受取配当金+減価償却費
中期経営計画「共創136計画」では、最終年度である2020年度の営業利益(※1)として370億円、有利子負債残高/EBITDA(※2)倍率として7.5倍以下の数値目標をそれぞれ掲げていましたが、運輸業を中心に新型コロナウイルス感染拡大による影響が大きく、営業利益は大幅な減益となりました。また、新型コロナウイルス感染拡大を受け手元資金を確保したこともあり、有利子負債残高/EBITDA倍率は大幅に悪化いたしました。
③ 資本の財源及び資金の流動性に係る情報
a.資金調達の方法及び状況
資金調達につきましては、鉄道事業等における設備投資に対する㈱日本政策投資銀行からの借入金のほか、社債及び金融機関からの借入金など、市場の環境や金利の動向等を総合的に勘案したうえで決定しております。
また、資金調達手法の一つとして複数の金融機関との間でコミットメントライン契約を締結しております。
さらに、当社グループの資金効率向上のため、キャッシュマネジメントシステム(CMS)を導入し、極力グループ内資金を有効活用する仕組みを構築しております。
このほか、大規模自然災害等が発生した場合の対処として、震災対応型コミットメントライン契約を締結しております。
足元は新型コロナウイルス感染拡大による鉄道事業等の現金収入の急減を受け、2020年3月以降は、手元資金確保を最優先とした資金調達を実施しております。この事業環境が長期化した場合の収支悪化や不透明な資金調達環境を鑑み、さらなる資金調達手段の多様化と流動性資金の確保に向けて取り組んでおります。
b.資金需要の動向
「南海グループ経営ビジョン2027」達成に向けた10年間(2018年度~2027年度)は、基本的には営業キャッシュ・フローを成長投資に優先配分し、収益力向上を通じた財務体質の強化をめざすこととしておりますが、足元は新型コロナウイルス感染拡大を受け、コスト削減を徹底するとともに、事態収束に目途がつくまでの間、安全性・緊急性を判断した上で設備投資の抑制に努めております。
なお、当連結会計年度における各セグメントの設備投資等の概要については、「第3 設備の状況」に記載のとおりであります。
配当の基本方針は、長期にわたる安定的な経営基盤の確保と財務体質の強化に努めつつ、収益のさらなる向上をはかることにより安定的な配当を実施することとしております(配当政策については、「第4 提出会社の状況 3 配当政策」をご覧下さい。)。なお、内部留保資金は、鉄道事業の安全対策を中心とする設備投資のほか、当社グループの持続的な成長のための投資、財務体質の強化等に充当する考えであります。
④ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。連結財務諸表の作成にあたり、経営者は、決算日における資産・負債及び報告期間における収入・費用の金額並びに開示に影響を与える見積り及び予測を行わなければなりません。これらの見積りについては、過去の実績や状況等に応じ合理的だと考えられる様々な要因に基づき見積り及び判断を行っておりますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。
なお、当社グループの連結財務諸表で採用されている重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載のとおりであります。
当連結会計年度における、会計上の見積りを行う上での新型コロナウイルス感染症の影響に関する仮定については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。
当社グループで重要であると考える会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定には、以下のようなものがあります。
a.固定資産の減損損失
当社グループは、管理会計上の区分を基礎に、事業毎又は物件毎に資産のグルーピングを行い、収益性が著しく低下した資産グループについて、固定資産の帳簿価額を回収可能価額まで減損し、当該減少額を減損損失として計上することとしております。回収可能価額は、資産グループの事業計画に基づく将来キャッシュ・フロー、割引率、正味売却価額など多くの前提条件に基づいて算出しております(当該見積りに用いた仮定については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(連結損益計算書関係)」に記載しております。)。これらの前提条件は長期的な見積りに基づくため、将来の当該資産グループを取り巻く経営環境の変化による収益性の変動や市況の変動により、回収可能価額を著しく低下させる変化が見込まれた場合、減損損失の計上が必要となる可能性があります。
b.退職給付に係る資産・負債
当社グループは、退職給付債務および費用について、年金資産の長期期待運用収益率や割引率等数理計算上で設定される仮定に基づいて算出しております(当該見積りに用いた仮定については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(退職給付関係)」に記載しております。)。これらの仮定と実際の結果との差額は累計され、将来の会計期間にわたって費用化されます。使用した仮定は妥当なものと考えておりますが、実際の結果との差異又は仮定自体の変更が生じた場合には、損益及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
c.繰延税金資産
当社グループは、繰延税金資産について、将来の利益計画に基づいた課税所得が十分に確保でき、回収可能性があると判断した将来減算一時差異等について算出しております。繰延税金資産の回収可能性は将来の課税所得の見積りに依存するため、その見積額の前提条件や仮定に変更が生じた場合には、繰延税金資産が増額又は減額され、損益及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
d.完成工事高及び完成工事原価
完成工事高及び完成工事原価について、当連結会計年度末までの進捗部分について成果の確実性が認められる工事については工事進行基準(工事の進捗率の見積りは原価比例法)を、その他の工事については工事完成基準を適用しております。工事進行基準対象工事につきましては将来の発生原価を合理的に見積っておりますが、この見積りの基礎となる実施予算金額が、建設資材及び労務外注の調達遅れや価格高騰、市況の変動等も含め、工事着工後の状況の変化により大きく変動した場合は、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
当連結会計年度のわが国経済は、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、2度にわたり緊急事態宣言が発出され、経済活動が抑制されるなど、極めて厳しい状況のうちに推移いたしました。
この結果、当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況は次のとおりであります。
① 財政状態
(資産)
当連結会計年度末における資産合計は、9,622億29百万円となり、前連結会計年度末に比べ371億71百万円増加いたしました。これは主に、新型コロナウイルス感染拡大を受け、手元資金を借入金等で確保したことにより、現金及び預金が239億81百万円増加したことに加え、時価上昇等により投資有価証券が75億17百万円増加したことによるものであります。
(負債)
当連結会計年度末における負債合計は、7,036億60百万円となり、前連結会計年度末に比べ346億6百万円増加いたしました。これは主に、未払金の減少等により流動負債その他が87億84百万円減少した一方で、有利子負債残高が385億22百万円増加したことによるものであります。
(純資産)
当連結会計年度末における純資産合計は、2,585億69百万円となり、前連結会計年度末に比べ25億65百万円増加いたしました。これは主に、剰余金の配当19億83百万円、親会社株主に帰属する当期純損失18億61百万円等により利益剰余金が減少した一方で、投資有価証券の時価上昇等によりその他有価証券評価差額金が42億93百万円増加したことによるものであります。
この結果、自己資本比率は25.6%(前連結会計年度末は26.4%)となりました。
② 経営成績
当連結会計年度におきましては、運輸業を中心に、新型コロナウイルス感染拡大の影響を大きく受けた結果、営業収益は1,908億13百万円(前期比16.3%減)となり、費用の削減に努めたものの、営業利益は55億52百万円(前期比84.2%減)、経常利益は18億54百万円(前期比94.1%減)にとどまりました。また、親会社株主に帰属する当期純損失は18億61百万円(前期は親会社株主に帰属する当期純利益208億11百万円)となりました。
セグメントごとの経営成績は次のとおりであります。
<運輸業>鉄道事業におきましては、営業面では、新型コロナウイルス感染拡大による外出自粛の拡がりやインバウンド需要の消失を受け、昨年4月から特急ラピートの一部列車及び観光列車「天空」を運休いたしました。一方、感染拡大の収束後を見据えた需要喚起施策及び沿線活性化施策といたしまして、大手旅行会社とのタイアップにより、運休中の特急ラピートを有効活用した貸切ツアーの実施や、高野山と高野山麓エリアへの来訪者層の拡大と回遊性向上を目的に、高野線極楽橋駅のリニューアルを実施したほか、高野町と共同で1万人を高野山へ無料でご招待する「高野山1万人ご招待キャンペーン」を実施いたしました。また、橋本市等と協働で紀伊清水駅の駅舎をリノベーションし、伝統工芸品の製作体験工房をオープンいたしました。施設・車両面では、駅トイレのリニューアルを計画的に推進する一方、南海線新今宮駅のリニューアル工事に着手いたしました。また、難波駅・新今宮駅・天下茶屋駅の座席指定券自動販売機を更新し、操作画面の多言語表示に対応するとともに、交通系ICカードでの購入を可能とするなど、旅客サービスの改善と利便性向上をはかりました。このほか、高野線に8300系新造車両12両を投入したほか、保有する全車両の座席、吊り手、手すり及び窓等への抗ウイルス・抗菌材の噴霧加工や自動券売機及び自動精算機のタッチパネルに抗ウイルス・抗菌シートの貼付を実施するなど、お客さまに安全に安心してご利用いただけるよう努めました。
バス事業におきましては、新型コロナウイルス感染拡大の影響により、空港リムジンバスをはじめ、高速バスや貸切バス等で、運休・減便等を余儀なくされました。一方、お客さまに安全に安心してご利用いただくために、人と人との接触機会を最小限にとどめつつ、お客さまの利便性向上をはかるため、和歌山バス株式会社において、昨年4月、PiTaPaをはじめとする交通系ICカードによる乗車サービスを開始したほか、熊野御坊南海バス株式会社において、同月、バス車内及び切符売り場窓口に電子決済サービス「PayPay」を導入するとともに、7月には、定期観光バス及び白浜空港リムジンバスの乗車券のインターネット販売を開始いたしました。
海運業におきましては、和歌山県と徳島県の観光振興及び交流促進のため、和歌山県又は徳島県内の宿泊施設に宿泊した場合、乗用車・二輪車の運賃を半額とするキャンペーンを実施し、航路の利用促進をはかりました。
以上のような諸施策を進めましたが、運輸業の営業収益は665億66百万円(前期比34.1%減)となり、遺憾ながら135億99百万円の営業損失(前期は営業利益129億53百万円)となりました。
提出会社の運輸成績
区分 | 単位 | 当連結会計年度 | |||
(2020.4~2021.3) | 対前連結会計年度増減率 | ||||
営業日数 | 日 | 365 | % △0.3 | ||
営業キロ | キロ | 154.8 | 0.0 | ||
客車走行キロ | 千キロ | 96,245 | △4.0 | ||
旅客人員 | 定期外 | 千人 | 60,670 | △37.9 | |
定期 | 千人 | 117,494 | △17.1 | ||
計 | 千人 | 178,164 | △25.6 | ||
運輸収入 | 旅客収入 | 定期外 | 百万円 | 18,544 | △47.1 |
定期 | 百万円 | 18,548 | △17.8 | ||
計 | 百万円 | 37,092 | △35.6 | ||
運輸雑収 | 百万円 | 2,422 | △18.8 | ||
収入合計 | 百万円 | 39,514 | △34.8 | ||
乗車効率 | % | 22.5 | △28.2 |
(注) 乗車効率の算出は 延人キロ/(客車走行キロ×平均定員)によります。
営業成績
業種 | 当連結会計年度(2020.4~2021.3) | |
営業収益 | 対前連結会計年度増減率 | |
百万円 | % | |
鉄道事業 | 45,665 | △33.3 |
軌道事業 | 1,211 | △21.8 |
バス事業 | 16,189 | △40.0 |
海運業 | 1,250 | △39.2 |
貨物運送業 | 3,744 | △11.8 |
車両整備業 | 3,842 | △23.5 |
調整額 | △5,336 | ― |
営業収益計 | 66,566 | △34.1 |
<不動産業>不動産賃貸業におきましては、昨年4月、大阪府茨木市において、関西圏における一大物流拠点として、北大阪トラックターミナル1号棟を竣工させたほか、隣接地との一体的な開発を進めるため、「大阪府食品流通センター」の再開発を推進いたしました。また、昨年6月、和歌山市駅活性化計画において建設を進めてまいりました「キーノ和歌山」を開業し、地元の食材が並ぶスーパーマーケットや県内の人気飲食店を誘致するとともに、7月には、「カンデオホテルズ南海和歌山」がオープンいたしました。
駅を拠点としたまちづくりにおきましては、なんばエリアにおいて、大阪市との官民協働事業である「なんば駅周辺における空間再編推進事業」に取り組むとともに、当該事業やなにわ筋線事業とのシナジー効果が期待できる開発とポートフォリオの充実を目的として、エリア内の既存物件の取得を進めました。また、なんばエリア全体の魅力向上とにぎわいの創出に貢献していくため、難波中二丁目開発計画に参画いたしました。泉北エリアでは、「いずみがおか広場」において、キッチンカーやフードトラック等の地元事業者の出店を誘致するなど、駅前としてのにぎわいづくりに努めるとともに、ニュータウン再生の先駆けとして、駅前活性化に向けた環境整備を進めました。
不動産販売業におきましては、南海くまとり・つばさが丘において、新街区「ソラテラス」の分譲を開始したほか、各エリアの特性に合わせた戸建住宅ブランド「ヴェリテコート」シリーズの販売に努めました。また、当社沿線にあっては三国ヶ丘、沿線外では大阪府守口市において、当社グループの分譲マンションブランド「ヴェリテ」シリーズの販売を展開いたしました。
以上のような諸施策を進めましたが、不動産販売業においてマンション販売が減少したことに加え、不動産賃貸業において新型コロナウイルス感染症の影響を受けたこと等により、不動産業の営業収益は417億77百万円(前期比3.9%減)となり、営業利益は128億78百万円(前期比6.9%減)となりました。
営業成績
業種 | 当連結会計年度(2020.4~2021.3) | |
営業収益 | 対前連結会計年度増減率 | |
百万円 | % | |
不動産賃貸業 | 30,737 | △1.0 |
不動産販売業 | 11,571 | △10.0 |
調整額 | △531 | ― |
営業収益計 | 41,777 | △3.9 |
<流通業>ショッピングセンターの経営におきましては、昨年4月に発出された緊急事態宣言に伴い、4月上旬から5月中旬まで、各施設を休業いたしました。このほか、政府や自治体からの要請により、飲食店等の一部で営業時間を短縮した期間がありましたが、各施設において、新型コロナウイルス感染拡大防止のため、換気の強化やソーシャル・ディスタンスの確保等に十分配慮し、お客さまに安心してご来店いただけるよう努めました。また、昨年10月、なんばパークスにおいて、株式会社おやつタウンが運営する都市型テーマパーク「リトルおやつタウンNamba」を誘致し、幅広い年齢層の集客に注力いたしました。
駅ビジネス事業におきましては、駅構内やekimo等の施設において、コロナ禍により需要が高まったテイクアウトにも対応可能な店舗の誘致に努めました。
以上のような諸施策を進めましたが、流通業の営業収益は253億12百万円(前期比21.7%減)となり、営業利益は18億83百万円(前期比50.9%減)となりました。
営業成績
業種 | 当連結会計年度(2020.4~2021.3) | |
営業収益 | 対前連結会計年度増減率 | |
百万円 | % | |
ショッピングセンターの経営 | 12,368 | △17.2 |
駅ビジネス事業 | 13,648 | △28.8 |
その他 | 744 | △15.4 |
調整額 | △1,448 | ― |
営業収益計 | 25,312 | △21.7 |
<レジャー・サービス業>ボートレース施設賃貸業におきましては、コロナ禍による無観客でのレース期間中においても、インターネットによる投票が好調に推移したことが寄与し、増収となりました。
ビル管理メンテナンス業におきましては、既存管理物件において提供するサービスの品質向上に努めるとともに、商業施設、医療機関、ホテル及び公共施設等の新規管理物件の受託と設備工事の受注に努めました。
葬祭事業におきましては、小規模な葬儀スタイルのニーズの高まりに応えるため、昨年5月、ティアとして関西初となる家族葬専用ホール「ティア堺伏尾」を開業いたしました。
その他といたしましては、シニアビジネス事業の業容拡大をはかるため、昨年6月、当社グループの2号店となるサービス付き高齢者向け住宅「南海ライフリレーション岸和田吉井」の入居を開始いたしました。
しかしながら、ビル管理メンテナンス業において設備工事収入が減少したこと等により、レジャー・サービス業の営業収益は347億56百万円(前期比19.1%減)となり、営業利益は22億85百万円(前期比17.3%減)となりました。
営業成績
業種 | 当連結会計年度(2020.4~2021.3) | |
営業収益 | 対前連結会計年度増減率 | |
百万円 | % | |
遊園事業 | ― | △100.0 |
旅行業 | 952 | △53.9 |
ホテル・旅館業 | 434 | △10.5 |
ボートレース施設賃貸業 | 5,635 | 4.7 |
ビル管理メンテナンス業 | 22,346 | △19.0 |
葬祭事業 | 2,652 | △13.6 |
その他 | 4,690 | △15.6 |
調整額 | △1,955 | ― |
営業収益計 | 34,756 | △19.1 |
<建設業>建設業におきましては、民間住宅工事のほか、ホテル、学校施設等の民間非住宅工事や公共工事の受注活動に注力いたしました。
この結果、完成工事高の増加等により、建設業の営業収益は454億90百万円(前期比10.7%増)となったものの、利益率の低下等により営業利益は16億99百万円(前期比26.2%減)となりました。
営業成績
業種 | 当連結会計年度(2020.4~2021.3) | |
営業収益 | 対前連結会計年度増減率 | |
百万円 | % | |
建設業 | 45,510 | 10.6 |
調整額 | △19 | ― |
営業収益計 | 45,490 | 10.7 |
<その他の事業>その他の事業におきましては、営業収益は30億27百万円(前期比13.6%減)となり、営業利益は2億48百万円(前期比17.3%増)となりました。
営業成績
業種 | 当連結会計年度(2020.4~2021.3) | |
営業収益 | 対前連結会計年度増減率 | |
百万円 | % | |
その他 | 3,041 | △13.3 |
調整額 | △13 | ― |
営業収益計 | 3,027 | △13.6 |
なお、新型コロナウイルス感染症による影響は以下のとおりです。
セグメント | 当連結会計年度(2020.4~2021.3) | ||
営業収益 (億円) | 営業利益 (億円) | 主な内訳(億円) | |
運輸業 | △374 | △308 | (営業収益)鉄道事業△237 バス事業△118 (営業利益)鉄道事業△230 バス事業△ 68 |
不動産業 | △14 | △13 | |
流通業 | △74 | △30 | (営業収益)駅ビジネス事業△47 ショッピングセンターの経営△25 (営業利益)駅ビジネス事業△10 ショッピングセンターの経営△19 |
レジャー・ サービス業 | △55 | △16 | (営業収益)ビル管理メンテナンス業△17 旅行業△12 (営業利益)ビル管理メンテナンス業△ 0 旅行業△ 5 |
合計 | △519 | △368 |
③ キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ238億87百万円増加し、409億17百万円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果得られた資金は213億38百万円(前期は589億35百万円の獲得)となりました。これは主に、税金等調整前当期純損失11億97百万円のほか、減価償却費294億10百万円等によるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果使用した資金は332億73百万円(前期は489億15百万円の使用)となりました。これは主に、固定資産の取得による支出367億56百万円のほか、工事負担金等受入による収入60億42百万円等によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果得られた資金は358億21百万円(前期は148億53百万円の使用)となりました。これは主に、社債の発行による収入397億37百万円のほか、社債の償還による支出100億円等によるものであります。
④ 生産、受注及び販売の実績
当社グループ(当社及び連結子会社)の受注及び販売品目につきましては多種多様であり、セグメントごとに金額及び数量で示すことはしておりません。
このため生産、受注及び販売の実績につきましては、「② 経営成績」におけるセグメントごとの経営成績に関連付けて示しております。
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
① 経営成績等に重要な影響を与える要因
経営成績等に重要な影響を与える要因につきましては、「2 事業等のリスク」に記載のとおりであります。
② 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等の進捗状況
「南海グループ経営ビジョン2027」の第一段階として、2018年度からの3年間を「将来の成長のための布石を打つ」ための「基盤整備期」と位置づけ、さまざまなステークホルダーと連携し新たな価値を「共に創っていく」ことをめざした中期経営計画「共創136計画」を推進してまいりました。
本計画においては、「営業利益」、「有利子負債残高/EBITDA倍率」を重要な経営指標として位置づけ、各種施策に取り組み、当連結会計年度において、「(1)財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況 ② 経営成績」に記載の各種施策に取り組んだ結果、当連結会計年度末における各指標の結果は以下のとおりとなりました。
経営指標 | 前連結会計年度 (2019年度) | 当連結会計年度 (2020年度) |
営業利益(※1) | 361億円 | 62億円 |
有利子負債残高/EBITDA(※2)倍率 | 7.2倍 | 14.2倍 |
(※1)営業利益+受取配当金
(※2)営業利益+受取配当金+減価償却費
中期経営計画「共創136計画」では、最終年度である2020年度の営業利益(※1)として370億円、有利子負債残高/EBITDA(※2)倍率として7.5倍以下の数値目標をそれぞれ掲げていましたが、運輸業を中心に新型コロナウイルス感染拡大による影響が大きく、営業利益は大幅な減益となりました。また、新型コロナウイルス感染拡大を受け手元資金を確保したこともあり、有利子負債残高/EBITDA倍率は大幅に悪化いたしました。
③ 資本の財源及び資金の流動性に係る情報
a.資金調達の方法及び状況
資金調達につきましては、鉄道事業等における設備投資に対する㈱日本政策投資銀行からの借入金のほか、社債及び金融機関からの借入金など、市場の環境や金利の動向等を総合的に勘案したうえで決定しております。
また、資金調達手法の一つとして複数の金融機関との間でコミットメントライン契約を締結しております。
さらに、当社グループの資金効率向上のため、キャッシュマネジメントシステム(CMS)を導入し、極力グループ内資金を有効活用する仕組みを構築しております。
このほか、大規模自然災害等が発生した場合の対処として、震災対応型コミットメントライン契約を締結しております。
足元は新型コロナウイルス感染拡大による鉄道事業等の現金収入の急減を受け、2020年3月以降は、手元資金確保を最優先とした資金調達を実施しております。この事業環境が長期化した場合の収支悪化や不透明な資金調達環境を鑑み、さらなる資金調達手段の多様化と流動性資金の確保に向けて取り組んでおります。
b.資金需要の動向
「南海グループ経営ビジョン2027」達成に向けた10年間(2018年度~2027年度)は、基本的には営業キャッシュ・フローを成長投資に優先配分し、収益力向上を通じた財務体質の強化をめざすこととしておりますが、足元は新型コロナウイルス感染拡大を受け、コスト削減を徹底するとともに、事態収束に目途がつくまでの間、安全性・緊急性を判断した上で設備投資の抑制に努めております。
なお、当連結会計年度における各セグメントの設備投資等の概要については、「第3 設備の状況」に記載のとおりであります。
配当の基本方針は、長期にわたる安定的な経営基盤の確保と財務体質の強化に努めつつ、収益のさらなる向上をはかることにより安定的な配当を実施することとしております(配当政策については、「第4 提出会社の状況 3 配当政策」をご覧下さい。)。なお、内部留保資金は、鉄道事業の安全対策を中心とする設備投資のほか、当社グループの持続的な成長のための投資、財務体質の強化等に充当する考えであります。
④ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。連結財務諸表の作成にあたり、経営者は、決算日における資産・負債及び報告期間における収入・費用の金額並びに開示に影響を与える見積り及び予測を行わなければなりません。これらの見積りについては、過去の実績や状況等に応じ合理的だと考えられる様々な要因に基づき見積り及び判断を行っておりますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。
なお、当社グループの連結財務諸表で採用されている重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載のとおりであります。
当連結会計年度における、会計上の見積りを行う上での新型コロナウイルス感染症の影響に関する仮定については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。
当社グループで重要であると考える会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定には、以下のようなものがあります。
a.固定資産の減損損失
当社グループは、管理会計上の区分を基礎に、事業毎又は物件毎に資産のグルーピングを行い、収益性が著しく低下した資産グループについて、固定資産の帳簿価額を回収可能価額まで減損し、当該減少額を減損損失として計上することとしております。回収可能価額は、資産グループの事業計画に基づく将来キャッシュ・フロー、割引率、正味売却価額など多くの前提条件に基づいて算出しております(当該見積りに用いた仮定については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(連結損益計算書関係)」に記載しております。)。これらの前提条件は長期的な見積りに基づくため、将来の当該資産グループを取り巻く経営環境の変化による収益性の変動や市況の変動により、回収可能価額を著しく低下させる変化が見込まれた場合、減損損失の計上が必要となる可能性があります。
b.退職給付に係る資産・負債
当社グループは、退職給付債務および費用について、年金資産の長期期待運用収益率や割引率等数理計算上で設定される仮定に基づいて算出しております(当該見積りに用いた仮定については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(退職給付関係)」に記載しております。)。これらの仮定と実際の結果との差額は累計され、将来の会計期間にわたって費用化されます。使用した仮定は妥当なものと考えておりますが、実際の結果との差異又は仮定自体の変更が生じた場合には、損益及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
c.繰延税金資産
当社グループは、繰延税金資産について、将来の利益計画に基づいた課税所得が十分に確保でき、回収可能性があると判断した将来減算一時差異等について算出しております。繰延税金資産の回収可能性は将来の課税所得の見積りに依存するため、その見積額の前提条件や仮定に変更が生じた場合には、繰延税金資産が増額又は減額され、損益及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
d.完成工事高及び完成工事原価
完成工事高及び完成工事原価について、当連結会計年度末までの進捗部分について成果の確実性が認められる工事については工事進行基準(工事の進捗率の見積りは原価比例法)を、その他の工事については工事完成基準を適用しております。工事進行基準対象工事につきましては将来の発生原価を合理的に見積っておりますが、この見積りの基礎となる実施予算金額が、建設資材及び労務外注の調達遅れや価格高騰、市況の変動等も含め、工事着工後の状況の変化により大きく変動した場合は、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。