有価証券報告書-第156期(平成31年4月1日-令和2年3月31日)

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2020/06/26 13:58
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(1) 経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以
下「経営成績等」という。)の状況の概要は以下のとおりであります。
①財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度におけるわが国経済は、企業収益や雇用・所得環境の着実な改善が続き、引き続き緩やかな回復基調で推移したものの、新型コロナウイルス感染症の世界的な流行に伴い世界経済の不確実性が高まっており、国内においても消費の落ち込みが強まり、今後の経済環境はより厳しい状況になると予想されます。
このような状況のなか、当社グループは、中長期経営ビジョン「GT-100」に基づき、将来にわたり持続的な成長を図るため、さらなる「安全・安心・快適」を追求するとともに、競争力の向上に取り組み、収益の確保や企業価値の向上に努めました。
この結果、当連結会計年度の財政状態及び経営成績は以下のとおりになりました。
a. 財政状態
(流動資産)
当連結会計年度末における流動資産の残高は67,038,529千円となり、前連結会計年度末に比べ3,003,468千円の
増加となりました。主な要因は割賦未収金の増加であります。
(固定資産)
当連結会計年度末における固定資産の残高は101,255,936千円となり、前連結会計年度末に比べ3,821,411千円の
増加となりました。主な要因はリース資産の増加であります。
(負債)
当連結会計年度末における負債の残高は134,422,683千円となり、前連結会計年度末に比べ、6,119,274千円の増
加となりました。流動負債は80,417,559千円(前連結会計年度末は75,373,307千円)、固定負債は54,005,123千円
(前連結会計年度末は52,930,100千円)となっております。主な要因は、短期借入金の増加であります。
(純資産)
当連結会計年度末における純資産の残高は33,871,782千円となり、前連結会計年度末に比べ、705,605千円の
増加となりました。これは親会社株主に帰属する当期純利益の計上によるものであります。
b. 経営成績
当連結会計年度の業績につきましては、自動車販売事業における新型車両の販売台数の増加や、ビジネスホテル事業において静鉄ホテルプレジオ京都烏丸御池、京都四条がオープンしたこと等による増収要素はあるものの、消費税増税などの影響により不動産事業において分譲マンションの引渡戸数が減少したことや、建設事業において完成工事が前期に比べて減少したことのほか、期の終盤に新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けたこともあり、売上高は169,111,543千円(前連結会計年度比4.1%減)、経常利益は1,430,320千円(前連結会計年度比59.2%減)、親会社株主に帰属する当期純利益は1,281,626千円(前連結会計年度比41.6%減)となりました。
なお、当社グループは、交通事業、流通事業、自動車販売事業、不動産事業、レジャー・サービス事業、建設事業の6つの事業セグメントで構成されています。事業セグメント別の概況は次のとおりであります。
(a)交通事業
鉄道事業では、新型車両A3000形の第7号、第8号車両の運行を2020年3月に開始いたしました。これにより、2016年春より順次導入をすすめてまいりました新型車両A3000形「静岡レインボートレインズ」が完成し、7色の車両が揃いました。
索道事業の日本平ロープウェイでは、静岡デスティネーションキャンペーンの企画として、2019年4月から6月に久能山東照宮と合同で夜間特別拝観「天下泰平の竹あかり」を開催し、さらなる観光誘客および日本平エリアの活性化に取り組みました。2019年12月には、安全性の維持向上を目的に29年ぶりとなるゴンドラの更新を行い、車内の音声案内における対応言語の拡充や足元まで広がる大きなガラス窓の採用などによる快適性の向上も図ることで、施設面でのさらなる魅力向上に努めました。
乗合バス事業のしずてつジャストラインでは、2019年9月より、全国初となる64人乗り車両を特急静岡相良線と富士山静岡空港静岡線で導入いたしました。業界全体の課題である運転士不足への対応として、一度により多くのお客様にご乗車いただける車両を、車両メーカーと共同開発することで、輸送力の向上に努めました。
貸切バス事業の静鉄ジョイステップバスでは、バスガイドやお客様が車内の非常ブレーキスイッチを押すことで車両を停止させることが可能となるドライバー異常時対応システムを搭載した車両を新たに4両導入し、より安全な交通サービスの提供に取り組みました。
タクシー事業の静鉄タクシーでは、決済手段の多様化への対応として、PayPayによるQRコード決済を導入し、お客様のお支払いにかかる時間短縮と運転士の負担軽減を図りました。
以上の結果、交通事業の売上高は15,285,688千円(前連結会計年度比1.7%減)、セグメント損失は514,769千円(前連結会計年度はセグメント損失234,083千円)となりました。
(b)流通事業
スーパーマーケット事業の静鉄ストアでは、2019年10月より、多様化するニーズにお応えするため、安全かつ高品質な商品をお求めやすい価格で提供するオリジナルブランド「S-ブランド」を立ち上げ、商品力の強化による競争力の向上に努めました。また、2020年1月にJR 藤枝駅前へ藤枝駅南店を新規オープンいたしました。地元の高品質な商品の展開に引き続き注力したほか、管理栄養士の監修した惣菜などを通じた健康的な食生活のサポート、調理の手間を省いた商品の充実などにより働く女性や子育て世代への訴求力を高め、駅前の立地特性を生かした集客力の向上に取り組みました。
食堂売店事業の静鉄リテイリングでは、東急ハンズ静岡店において、年に一度の感謝バーゲン「ハンズメッセ」の開催をはじめとする各種営業施策を積極的に展開したほか、商品や売り場構成の見直しを実施し、店舗のさらなる魅力向上に努めました。
以上の結果、流通事業の売上高は50,916,413千円(前連結会計年度比2.3%減)、セグメント利益は715,141千円(前連結会計年度比3.5%減)となりました。
(c)自動車販売事業
自動車販売事業では、新型車種「RAV4」や「ライズ」などを中心に積極的な販売活動を展開いたしました。また、静岡トヨペット、トヨタカローラ東海、ネッツトヨタスルガの管理部門を同一社屋に集約し、共通業務の標準化に取り組んだほか、商品配送の統合による輸送コストの効率化に向け、2020年3月に牧之原市に牧之原総合・物流センターを竣工するなど、事業環境の急激な変化に対応するべく、協業の推進による経営基盤の強化に取り組みました。静岡トヨペットでは、長沼店を2019年5月に改装オープンいたしました。子供たちが楽しめる遊具などを店舗内外に設置し、緑溢れる憩いの場として魅力ある店舗とするなど、引き続きファミリー層の集客力向上に取り組みました。トヨタカローラ東海では、2019年9月に発売した「カローラ」および「カローラツーリング」の販売が堅調に推移したほか、2020年1月にカーランド和田を改装オープンし、木製玩具を備えたキッズコーナーや自動車の安全装置が体感できるVRシミュレーターを設置するなど、集客力のさらなる向上に努めました。ネッツトヨタスルガでは、2020年2月から新型車種「ヤリス」の販売を開始したほか、2020年1月に御殿場店をリニューアルオープンし、ゆとりある空間で落ち着いて商談ができるよう、商談フロアを2階へ配置し、接客品質の向上に取り組みました。
自動車リース事業のトヨタレンタリース静岡では、掛川新幹線口店をリニューアルオープンし、受付カウンターの増設により、来店されたお客様への迅速な対応が可能になったほか、トヨタ自動車より、営業成績や顧客満足度など総合的な観点での評価を受け、全国のトヨタレンタリース63社の中から6社のみに贈られる、「準優秀店賞」を受賞いたしました。優秀店賞を含め、6 年連続の受賞となりました。
以上の結果、自動車販売事業の売上高は78,310,674千円(前連結会計年度比0.3%増)、セグメント利益は1,111,680千円(前連結会計年度比35.0%減)となりました。
(d)不動産事業
不動産賃貸事業では、空室へのテナント誘致を積極的に行い、賃貸物件の稼働率の維持向上に努めたほか、静岡市葵区において賃貸ビルを新たに取得するなど、収益力のさらなる向上に努めました。
不動産販売事業では、分譲マンションにおいて、2019年7月より沼津市で「グランアネシス沼津大岡」(地上7 階建・67 戸)の販売を開始いたしました。戸建住宅では、2019年4月より静岡市葵区において販売を開始した「エバースクエア上足洗二丁目」(8棟)のほか、2物件が好評のうちに完売となり、引渡しがそれぞれ完了したほか、2019年6月より静岡市駿河区において「エバースクエア長田」(6棟)、2019年11月より静岡市葵区において「エバースクエア瀬名川一丁目」(5棟)の販売を開始いたしました。また、注文住宅の静鉄ホームズでは、2020年1月に富士市へ住宅ブランド「コアハウス」のモデルハウスをオープンいたしました。
不動産流通事業では、2019年5月に静鉄不動産 住まいの情報ライブラリー静岡店を静岡市葵区に移転オープンいたしました。開放感のある接客スペースやお客様のプライバシーに配慮した個室の商談室を備え、安心してご来店いただける店舗づくりを目指したほか、セミナールームを設置し、不動産に係るセミナーを開催するなど、住まいの相談窓口としての機能や利便性の向上に努めました。住宅再生事業においては、より安全で質の高い中古住宅を供給するため、新たな商品ブランド「RENOVUS(リノウス)」を立ち上げ、新たな収益源の獲得に取り組みました。このほか、静岡市を中心とした当社グループ主要事業エリアにおける、次世代を見据えた沿線地域の形成や沿線価値のさらなる向上に取り組むプロジェクト「プロジェクト11」を立ち上げ、沿線の将来構想策定に向けた取り組み、静岡への移住の促進や関係人口の創出を目的とした「静岡移住計画」などの取り組みを開始いたしました。
ショッピングセンター事業の静鉄プロパティマネジメントでは、新静岡セノバにおいて異業種とのコラボレーション企画などの施策を実施したほか、2019年9月より新静岡セノバ公式アプリ「& cenova(アンドセノバ)」をリリースし、お客様との関係性の強化に努めました。また、セノバ保育園の開園や休館日の設定など、テナント従業員の就労環境の整備およびテナント運営の支援体制の強化に努めたことなどが評価され、日本ショッピングセンター協会主催「第8回日本SC 大賞」において「ES 賞」を受賞いたしました。
以上の結果、不動産事業の売上高は11,608,612千円(前連結会計年度比20.0%減)、セグメント利益は445,130千円(前連結会計年度比51.3%減)となりました。
(e)レジャー・サービス事業
ビジネスホテル事業では、さらなる事業エリアの拡大に向けた取り組みとして、京都府京都市において、2019年6月に「静鉄ホテルプレジオ京都烏丸御池」、2019年8月に「静鉄ホテルプレジオ京都四条」を開業いたしました。
広告代理事業の静鉄アド・パートナーズでは、2019年10月に国内最大級アワードである「ACCTOKYO CREATIVITY AWARDS」において、同社が制作に携わった広告がフィルム部門(テレビCM)のACCゴールド賞を受賞いたしました。
カード事業では、2019年10月よりしずてつストアにてルルカカードのポイント払いを開始し、お買い物の際の決済手段を多様化することで、お客様の利便性向上を図りました。
以上の結果、レジャー・サービス事業の売上高は7,963,554千円(前連結会計年度比9.0%増)、セグメント損失は554,925千円(前連結会計年度はセグメント損失267,705千円)となりました。
(f)建設事業
建設事業の静鉄建設では、静岡流通センター第2団地建設工事などを施工したほか、日本平公園展望回廊設置工事ほか3工事において、静岡市より「優良建設工事技術者及び施工業者表彰」を受賞いたしました。
以上の結果、建設事業の売上高は5,026,600千円(前連結会計年度比42.2%減)、セグメント利益は309,136千円(前連結会計年度比33.2%減)となりました。
②キャッシュ・フローの状況
結果、当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ508,279千円減少し、当連結会計年度末の残高は4,321,323千円となりました。当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果得られた資金は、3,628,631千円(前連結会計年度は14,023,419千円の収入)となりました。これは主に、税金等調整前当期純利益2,374,982千円や減価償却費8,479,378千円等により得られた資金が、売上債権の増加1,717,322千円及び法人税等の支払1,687,790千円等の資金の使用を上回ったことによるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果支出した資金は、10,935,982千円(前連結会計年度は11,130,093千円の支出)となりました。これは主に、自動車リース事業におけるリース車両及びレンタル車両の更新や自動車販売事業における事業用地の取得など、有形固定資産の取得に11,284,536千円支出したことによるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果得られた資金は、6,121,939千円(前連結会計年度は3,401,605千円の支出)となりました。これは主に、短期及び長期借入による収入が、長期借入金の返済を7,243,260千円上回ったことによるものであります。
③生産、受注及び販売の状況
当社グループにおける生産及び受注実績は事業の性質上表示が困難なため記載を省略しております。
なお、セグメントごとの売上高は次のとおりであります。
セグメントの名称当連結会計年度
(自 2019年4月1日
至 2020年3月31日)
(千円)
前年同期比(%)
交通事業15,285,688△1.7
流通事業50,916,413△2.3
自動車販売事業78,310,6740.3
不動産事業11,608,612△20.0
レジャー・サービス事業7,963,5549.0
建設事業5,026,600△42.2
合計169,111,543△4.1

(注) 本表の金額には、消費税等は含まれておりません。
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は以下のとおりであります。
①重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般的に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成するにあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を 用いておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。
連結財務諸表を作成するにあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 5(会計上の見積りの不確実性に関する追加情報)に記載しております。」
②当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
(a)財政状態及び経営成績の分析
当社グループは、中長期経営ビジョン「GT-100」における目指すべき姿「信頼され、選ばれる静鉄グループ」の
実現に向けて、3年を期間とする中期経営計画を3期にわたり実施しております。第3期中期経営計画(2019年度
~2021年度)においては、「スピード経営体質の確立」および「競争優位性の確立」への取り組みを継続して推進
し、強化していくとともに、第3期の到達目標である「新たな収益源の確立」に向けて、各事業の「イノベーショ
ン」の推進に注力し、さらなる収益力の強化に取り組んでおります。
結果、当連結会計年度の財政状態及び業績につきましては、前述の「(1) 経営成績等の状況の概要 ①財政状態及び経営成績の状況」に記載のとおりであります。
翌連結会計年度以降、当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因として、新型コロナウイルスの感染拡大及びそれに伴う外出控えがあります。交通事業において旅客が急激に減少しているほか、その他の事業においても、営業の休止や縮小を行っております。また、消費の落ち込みが強まり、今後の経済環境はより厳しい状況になると見込んでおります。
(b)キャッシュ・フローの分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当連結会計年度中に必要な資金は自己資金及び借入金にて充当し、増資あるいは社債発行による資金調達はありません。
なお、当社グループの資金調達は、企業活動から得られる営業キャッシュフローの他、金融機関からの短期借入および長期借入を基本としております。また、当社グループ内でCMS(キャッシュマネジメントシステム)を採用し、各社における余剰資金を集中管理することで資金を有効に活用し、有利子負債の圧縮による支払利息の削減を図っております。
結果、当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況に前述つきましては、前述の「(1) 経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
翌連結会計年度以降、当社グループのキャッシュ・フローに重要な影響を与える要因として、新型コロナウイ
ルスの感染拡大及びそれに伴う外出控えがあります。交通事業における旅客の急激な減少等により、営業活動に
よるキャッシュ・フローの減少を見込んでおります。