有価証券報告書-第48期(2022/04/01-2023/03/31)
(業績等の概要)
(1) 業績
当連結会計年度における我が国経済は、新型コロナウイルス感染症の影響が徐々に緩和され経済活動の正常化が進む中で、持ち直しの動きがみられました。一方で、世界的な資源・エネルギー価格の高騰、円安進行による物価の高騰などにより、先行きは依然として不透明な状況が続いております。
学習塾業界におきましては、少子化による市場の縮小や家庭内における教育費の抑制が続く中で、大学入学共通テストや小学校での英語教科化等への対応に加え、コロナ禍で継続的な学習環境を提供するために、映像授業やオンライン授業などデジタルを活用した教育の充実が求められております。また、コロナ禍による事業環境の変化により、新規参入や業界の再編成が顕著化し、業界としての注目度も高まっております。
このような状況の中、当社グループでは、コロナ禍において導入した、全ての授業に対して単方向の映像授業も視聴可能とした「ダブル学習システム」やオンライン学習「自宅ena」など、映像やオンラインを活用した学力向上体制の強化に努めております。また、2023年2月より中学生を対象とした無料動画配信サービス「合格城」をスタートさせました。
当連結会計年度での合格実績につきましては、全都立中高一貫校11校(千代田区立九段中等を含む)の入試におい て過去最高を更新し、1,044名(前期は963名)となりました。また、全都立中高一貫校の定員合計に対する合格占有率は58%(前期は55%)と過半数を維持し、都立中高一貫校の受検対策塾としての「ena」ブランドを確立しております。また、高校受験においても、都立進学指導重点校7校の合格実績が448名(前期は376名)となり、前期に引き続き全塾中№1を獲得することができました。
収益面におきましては、主に小中学生部門において生徒数が堅調に推移したこと、前年コロナ禍で中止したGW合宿や週末合宿を例年通り実施することができたことなどにより、売上高は前年同期と比較して増加いたしました。しかしながら、教育事業のその他の部門において生徒数が伸び悩んだことなどにより、計画を下回る結果となりました。
費用面におきましては、人件費や家賃、水道光熱費等の校舎運営費用の増加があり、営業費用全体としては前年同期と比較して増加いたしましたが、コスト管理の徹底による利益率の向上に努めた結果、営業利益及び営業利益率は計画を上回る水準となりました。
また、2022年9月には静岡県に新たな合宿施設を取得し、既存施設である清里合宿場、富士山合宿場1号館と2号館に次ぐ、富士山合宿場3号館として12月から稼働を開始しました。自社所有施設のさらなる有効活用により、今後の収益性の向上に寄与するものと考えております。
なお、当社では、昨今の生活関連費の物価高騰を受けた一時金「インフレ特別手当」の支給及び政府による賃上げ要請を受けた給与水準の引き上げ(ベースアップ)を2023年4月に実施いたしました。これらの施策を通じて、社員がより安心して働くことができる環境をつくるとともに優秀な人材の確保に努めてまいります。
以上の結果、当連結会計年度の売上高は12,986百万円(前年同期比4.9%増)、営業利益は2,761百万円(前年同期比18.7%増)、経常利益は2,789百万円(前年同期比15.9%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は1,881百万円(前年同期比24.6%増)となりました。売上高、営業利益、経常利益、親会社株主に帰属する当期純利益の全ての項目において、前連結会計年度に引き続き過去最高益を更新いたしました。
セグメントの業績を示すと、次のとおりであります。なお、セグメント別の売上高はセグメント間の内部取引消去前の金額によっております。
① 教育事業
小中学生部門(ena小中学部)につきましては、受験学年を中心に生徒数が堅調に推移したこと及び合宿を含む季節講習の売上が伸長したことにより、売上高は前年同期と比較して増加いたしました。
個別指導部門(ena個別)につきましては、校舎数の減少に伴い生徒数(家庭教師Camp及び個別教師Campを除く)が前年を下回ったことにより、売上高は前年同期と比較して減少いたしました。
大学受験部門(ena看護、ena美術、ena高校部)につきましては、ena美術、ena高校部において受講者数が堅調に推移した一方で、ena看護において新規受講者数が前年を下回ったことにより、売上高は前年同期と比較して減少いたしました。(2023年4月よりena新セミは「ena看護」に、ena新美は「ena美術」にそれぞれ名称変更しております。)
海外校舎を主に展開するGAKKYUSHA USA グループ(GAKKYUSHA U.S.A.CO.,LTD.、GAKKYUSHA CANADA CO.,LTD.、GAKKYUSHA SINGAPORE PTE.LTD.、ENA EUROPE GmbH及び株式会社学究社帰国教育)につきましては、新型コロナウイルス感染拡大の長期化を受けた駐在員の減少に伴い、特に海外校舎において生徒数が前年を下回ったことにより、米ドルベースの売上高は前年同期と比較して減少いたしましたが、円安の影響により円換算後の売上高は前年同期と比較して増加いたしました。
これらの結果、売上高は12,299百万円(前年同期比4.3%増)となりました。
② 不動産事業
不動産事業につきましては、前第3四半期連結会計期間において、国立1号館の建替えによる賃貸用マンションの稼働を開始したことにより、賃貸収入は前年同期と比較して増加いたしました。
これらの結果、売上高は168百万円(前年同期比38.8%増)となりました。
③ その他
インターネットによる受験、教育情報の配信サービス事業等につきましては、広告関連売上については、学校法人関連及び一般企業等法人ともに前年同期と比較して増加いたしました。ネットワーク広告売上については、媒体のPV/ユーザー数減少の影響を受けて前年同期と比較して減少いたしました。
これらの結果、売上高は800百万円(前年同期比37.3%増)となりました。
(2) 財政状態
(資産)
流動資産は、前連結会計年度末に比べて、32百万円減少し、2,310百万円となりました。これは、主として現金及び預金の減少等によるものであります。
固定資産は、前連結会計年度末に比べて、819百万円増加し、8,368百万円となりました。これは、主として建物及び構築物、土地並びに使用権資産の増加等によるものであります。
この結果、総資産は前連結会計年度末に比べて、787百万円増加し、10,678百万円となりました。
(負債)
流動負債は、前連結会計年度末に比べて、104百万円減少し、3,044百万円となりました。これは、主としてリース債務及び未払法人税等の増加、短期借入金の減少等によるものであります。
固定負債は、前連結会計年度末に比べて、32百万円増加し、1,838百万円となりました。これは、主としてリース債務の増加、長期借入金の減少等によるものであります。
この結果、負債は前連結会計年度末に比べて、72百万円減少し、4,882百万円となりました。
(純資産)
純資産は、前連結会計年度末に比べて、860百万円増加し、5,795百万円となりました。これは、主として配当金の支払い、親会社株主に帰属する当期純利益の計上等によるものであります。
この結果、自己資本比率は、54.2%(前連結会計年度末は49.9%)となりました。
(3) キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物は、前連結会計年度末に比べて59百万円減少し、1,929百万円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(単位:千円)
前連結会計年度 | 当連結会計年度 | 増減 | |
営業活動によるキャッシュ・フロー | 1,928,822 | 2,605,533 | 676,711 |
投資活動によるキャッシュ・フロー | △628,246 | △888,839 | △260,593 |
財務活動によるキャッシュ・フロー | △1,310,198 | △1,802,897 | △492,699 |
現金及び現金同等物に係る換算差額 | 15,993 | 19,734 | 3,741 |
現金及び現金同等物の増減額 | 6,371 | △66,468 | △72,840 |
現金及び現金同等物の期首残高 | 1,982,034 | 1,988,405 | 6,371 |
新規連結に伴う現金及び現金同等物の増加額 | ― | 7,283 | 7,283 |
現金及び現金同等物の期末残高 | 1,988,405 | 1,929,220 | △59,185 |
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動によるキャッシュ・フローは、2,605百万円の収入(前年同期は1,928百万円の収入)となりました。
主な内訳は、税金等調整前当期純利益、減価償却費、未払消費税等の増減額及び法人税等の支払額等であります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動によるキャッシュ・フローは、888百万円の支出(前年同期は628百万円の支出)となりました。
これは、主に有形固定資産の取得による支出等によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動によるキャッシュ・フローは、1,802百万円の支出(前年同期は1,310百万円の支出)となりました。
これは、短期借入金の純増減額、長期借入金の返済による支出、リース債務の返済による支出及び配当金の支払額によるものであります。
(キャッシュ・フロー関連指標の推移)
当社グループのキャッシュ・フロー指標のトレンドは下記のとおりであります。
2019年3月期 | 2020年3月期 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | |
自己資本比率(%) | 50.8 | 46.0 | 42.8 | 49.9 | 54.2 |
時価ベースの自己資本比率(%) | 186.9 | 148.5 | 150.6 | 171.9 | 203.5 |
キャッシュ・フロー対有利子 負債比率(年) | 1.2 | 1.8 | 1.5 | 1.3 | 0.8 |
インタレスト・カバレッジ・ レシオ(倍) | 637.7 | 362.4 | 336.9 | 333.7 | 191.5 |
(注)1 自己資本比率:自己資本/総資産
2 時価ベースの自己資本比率:株式時価総額/総資産
3 キャッシュ・フロー対有利子負債比率:有利子負債/キャッシュ・フロー
4 インタレスト・カバレッジ・レシオ:キャッシュ・フロー/利払い
(1)いずれも連結ベースの財務数値により計算しております。
(2)株式時価総額は自己株式を除く発行済株式数をベースに計算しております。
(3)キャッシュ・フローは、営業キャッシュ・フローを利用しております。
(4)有利子負債は連結貸借対照表に計上されている負債のうち利子を支払っている全ての負債を対象としております。
(生産、受注及び販売の状況)
(1) 生産及び受注の状況
当社は、生徒に対して授業を行うことを主たる業務としておりますので、生産及び受注に該当する事項はございません。
(2) 販売の状況
(業績等の概要)におけるセグメントの業績をご参照ください。
(経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容)
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
(1) 重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成に当たって必要と思われる見積りは、その時点で最も合理的と考えられる基準に基づいて実施しておりますが、見積り等の不確実性があるため実際の結果は異なる場合があります。
当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載のとおりであります。
(2) 当連結会計年度の経営成績の分析
売上高は、12,986百万円(前年同期比4.9%増)となりました。これは主に、小中学生部門において生徒数が堅調に推移したこと、前年コロナ禍で中止したGW合宿や週末合宿を例年通り実施することができたことによるものであります。しかしながら、教育事業のその他の部門において生徒数が伸び悩んだことなどにより、計画を下回る結果となりました。
売上原価は、8,109百万円(前年同期比1.5%増)となりました。これは主に、校舎数の増加等による人件費や家賃等の校舎運営費用の増加、原油価格等の高騰による水道光熱費の増加によるものであります。一方で、新型コロナの影響が徐々に緩和される中で、自社所有合宿施設の稼働率が上昇したこと等により収益性が向上し、売上総利益は、4,877百万円(前年同期比11.2%増)となりました。
販売費及び一般管理費は、2,115百万円(前年同期比2.8%増)となりました。これは主に、校舎でのクレジットカード決済や本部でのオンライン化対応等による手数料負担が増加したこと、新たな合宿施設(富士山合宿場3号館)の取得関連経費が発生したことによるものであります。この結果、営業利益は、2,761百万円(前年同期比18.7%増)となりました。なお、売上高営業利益率は前連結会計年度の18.8%から2.5ポイント上昇し21.3%となり、中期経営計画で目標として掲げる20%を上回ることができました。
営業外収益は、71百万円(前年同期比18.7%減)となりました。これは主に、持分法適用関連会社である株式会社市進ホールディングスに係る持分法による投資利益が減少したことによるものであります。一方、営業外費用は、43百万円(前年同期は8百万円)となりました。これは主に、当連結会計年度において、不動産事業に係る訴訟関連費用が発生したことによるものであります。この結果、経常利益は、2,789百万円(前年同期比15.9%増)となりました。
特別利益は、11百万円(前年同期は計上なし)となりました。これは主に、海外子会社において、校舎物件の中途解約に伴うリース解約益が発生したことによるものであります。一方、特別損失は、29百万円(前年同期比73.4%減)となりました。これは主に、前連結会計年度において、国立1号館の建替えに伴い国立市で運営する各校舎の再編成を実施いたしましたが、その移転等に係る減損損失及び固定資産除却損が発生したことによるものであります。この結果、税金等調整前当期純利益は2,770百万円(前年同期比20.8%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は1,881百万円(前年同期比24.6%増)となりました。
(3) 経営成績に重要な影響を与える要因について
「3 事業等のリスク」に記載しております。
(4) 資本の財源及び資金の流動性についての分析
(キャッシュ・フロー)
「(業績等の概要) (3)キャッシュ・フローの状況」に記載しております。
(資金調達)
当社グループは、事業活動及び設備投資のための適切な資金確保を常に目指しており、その財源として安定的な営業キャッシュ・フローの創出を重視しております。
新規校舎の設備投資や短期運転資金については、自己資金及び金融機関からの短期借入を基本としており、不動産事業における賃貸等不動産の取得資金については、自己資金及び金融機関からの長期借入を基本としております。
当連結会計年度末の資金の流動性は十分に確保されていると認識しており、また、金融機関との間に当座借越契約の枠を設定することで、急な資金需要や不測の事態にも備えております。
なお、当連結会計年度末における当社の取引銀行との借入による資金調達余力は以下のようになっております。
当座借越契約 | |
株式会社三菱UFJ銀行 | 200百万円 |
株式会社みずほ銀行 | 100百万円 |
株式会社三井住友銀行 | 200百万円 |
合 計 | 500百万円 |