有価証券報告書-第27期(平成31年1月1日-令和1年12月31日)
「『税効果会計に係る会計基準』の一部改正」(企業会計基準第28号 2018年2月16日)等を当連結会計年度の期首から適用しており、財政状態については、当該会計基準等を遡って適用した後の数値で前連結会計年度との比較・分析を行っております。
(1)経営成績等の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用関連会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
①財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度におけるわが国経済は、輸出が引き続き弱含むなかで、製造業を中心に弱さが一段と増しているものの、個人消費の持ち直しの動きが継続していること、消費者物価が上昇テンポは鈍化しつつも緩やかに上昇していること、雇用情勢が改善していることに加えて、設備投資が緩やかな増加傾向にあること等、景気は緩やかな回復基調が続いております。景気の先行きに関しましては、当面、弱さが残るものの、引き続き雇用情勢及び所得環境の改善が続く中で、各種政策の効果もあり、緩やかな回復が続くことが期待されます。しかしながら、通商問題を巡る動向、中国経済の先行き、英国のEU離脱等の海外経済の動向や金融資本市場の変動の影響に加え、消費税率引上げ後の消費者マインドの動向等が引き続き景気を下押しするリスクになっていること等から、依然として先行きが不透明な状況が続いております。
人材サービス業界を取り巻く環境においては、有効求人倍率及び完全失業者数が横ばい圏内で推移していること、また、就業者数及び就業率が緩やかな改善傾向を辿っていること等から、先行きに関しましては、引き続き雇用情勢が着実に改善していくことが見込まれております。
このような環境のもと、当社グループでは、当連結会計年度において、「短期業務支援事業の拡充及び周辺領域への種まきと刈り取りを推進する」を目標としたグループ経営を行い、特に主力サービスである「紹介(注1)」、「BPO(注2)」を中心にフルキャストグループ全体の収益を伸長させることを主眼とした営業活動を行ってまいりました。加えて、継続してグループ全体の業務効率化を推し進め、生産性を高めることにより、増益を実現するための体制作りに取り組んでまいりました。
(注)1.主力サービスである「アルバイト紹介」サービスを「紹介」と呼称しております。
2.主力サービスである「アルバイト給与管理代行」サービスに加えて、「マイナンバー管理代行」サービス等その他の人事労務系BPOサービス及び株式会社BODのバックオフィス系BPOサービスを「BPO」と呼称しております。
a.経営成績
連結売上高は、主力業務である短期業務支援事業において、逼迫する短期人材需要の基調が継続し44,479百万円(前期比14.5%増)となりました。
利益面では、短期業務支援事業の増収を主因とし、連結営業利益は7,224百万円(前期比22.5%増)となりました。
連結経常利益は、当社の持分法適用関連会社であるAdvancer Global Limited株式について、株価の下落に伴う減損(持分法による投資損失)を計上したものの、営業利益が増益したことにより7,064百万円(前期比33.7%増)となりました。
親会社株主に帰属する当期純利益は、株式会社ディメンションポケッツ株式の譲渡に伴う子会社株式売却益を特別利益に計上したこと等もあり4,644百万円(前期比40.3%増)となりました。
当社グループは、「持続的な企業価値の向上」を重要な経営課題の1つとして位置付けております。「企業価値の向上」は、株主及び投資家の皆様による当社への期待収益を反映した資本コストを上回るROEを実現することであるという考えのもと、ROEを「企業価値向上」を示す目標指標とし、資本効率を重視した経営の実践に取り組んでおります。なお、当社グループは、ROE20%以上を目標指標としております。
当連結会計年度末時点におけるROEは33.3%となり、前連結会計年度末時点の28.4%に比べ4.9ポイント改善し、20%以上を維持しております。
なお、当社グループは、特定技能ビザを取得した外国人労働者を対象とした人材サービス(人材派遣・人材紹介)を提供する新会社「株式会社Fullcast International」を2019年8月30日に設立し、連結子会社としております。同社は、2019年12月1日より営業を開始いたしました。
また、当社グループは、当社グループと株式会社ディメンションポケッツ双方の持続的な企業価値の向上を再検証した結果、2019年12月11日付で、警備・その他事業セグメントに属する同社の全株式を譲渡し、連結の範囲から除外しております。
事業別の状況
セグメント別の業績は次のとおりです。
i)短期業務支援事業
逼迫する短期人材需要の基調が継続し、主力サービスである「紹介」+「BPO」がけん引したことに加えて、顧客企業の長期人材ニーズにも応えた結果、「派遣」が伸張したことにより、短期業務支援事業の売上高は38,662百万円(前期比15.7%増)となりました。
利益面では、主力サービス及び「派遣」サービスの増収を主因とし、セグメント利益(営業利益)は7,738百万円(前期比17.3%増)となりました。
ⅱ)営業支援事業
前期に不採算拠点の整理を行ったこと等の影響はあるものの、営業支援事業の売上高は3,473百万円(前期比4.8%増)となりました。
利益面では、増収したことを主因とし、上期は減収減益であったものの、セグメント利益(営業利益)は168百万円(前期比22.8%増)となりました。
ⅲ)警備・その他事業
警備事業において、常駐警備案件の獲得数が増加したことで、警備・その他事業の売上高は2,344百万円(前期比10.5%増)となりました。
利益面では、増収したことを主因とし、販管費率を抑制できたことで、セグメント利益(営業利益)は252百万円(前年同期比39.1%増)となりました。
b.財政状態
i)流動性
資産の部では、流動資産が前連結会計年度末に比べて3,941百万円増加し17,969百万円となりました。これは主に、現金及び預金が3,344百万円増加し11,811百万円となったこと及び受取手形及び売掛金が581百万円増加し5,777百万円となったこと等によるものです。
負債の部では、流動負債が前連結会計年度末に比べて608百万円増加し6,427百万円となりました。これは主に、未払金が144百万円減少し1,267百万円となったことに対し、未払消費税等が317百万円増加し1,206百万円となったこと及び未払法人税等が244百万円増加し1,229百万円となったこと並びに未払費用が189百万円増加し1,221百万円となったこと等によるものです。
以上の結果、当連結会計年度末の運転資本(流動資産-流動負債)は前連結会計年度末に比べ3,333百万円増加し11,542百万円、流動比率(流動資産÷流動負債×100)は前連結会計年度末の241.0%から279.6%となりました。
ⅱ)資本的支出
当連結会計年度において実施した設備投資額は、前期比136百万円増加し434百万円となりました。その主な内訳は、営業拠点の新規出店・移転に伴う有形固定資産の取得で138百万円、社内利用目的の各種ソフトウエア等購入に伴う無形固定資産の取得で208百万円であります。
2020年12月期の重要な設備投資につきましては、特に予定はございません。
ⅲ)有利子負債
当連結会計年度末の有利子負債の総額は前期比253百万円減少し1,000百万円となりました。これは主に株式会社ディメンションポケッツを連結の範囲から除外したことによるものです。
ⅳ)純資産
当連結会計年度末の純資産は前連結会計年度末に比べて3,163百万円増加し16,213百万円となりました。これは主に、2018年12月期決算に係る自己株式取得に伴い自己株式が827百万円増加したことに対し、当連結会計年度において剰余金の配当を1,383百万円実施した一方で、4,644百万円の親会社株主に帰属する当期純利益を計上したことにより、利益剰余金が3,261百万円増加したことによるものです。
以上の結果、デット・エクイティ・レシオ(有利子負債÷自己資本(注)×100)は前期末の10.0%から6.5%、自己資本比率(自己資本÷総資産×100)は前期末の63.0%から65.8%となりました。
(注) 自己資本=純資産の部の合計-新株予約権-非支配株主持分
v)利益配分に関する基本方針
当社は、総還元性向50%を目標とし、株主への利益還元の充実化を図る方針であります。
今後も、収益力を強化し、経営効率の一層の向上を図ると共に、配当と自己株式取得を合わせた総還元性向50%を目標とした株主還元を実施することにより、ROE20%以上を「企業価値の向上」を示す目標指標とし、その実現を目指してまいります。
当社の剰余金の配当は、中間配当及び期末配当の年2回を基本的な方針としております。配当の決定機関は、中間配当、期末配当共に取締役会であります。
当期の配当につきましては、当社の持分法適用関連会社であるAdvancer Global Limited株式に係る株価の下落に伴う減損(持分法による投資損失)の計上の影響を除いた親会社株主に帰属する当期純利益に対する総還元性向50%の考えに基づき、前期比8円増配、配当予想比2円増配となる1株あたり40円の配当を通期で実施し、期末では1株につき21円の配当(配当予想比2円増配)及び株式の取得価額の総額991,817,600円を上限に自己株式の取得を実施し、その具体的な取得方法として公開買付による自己株取得を行います。その結果、2019年12月期の上記の考えに基づく総還元性向は50.0%となりますが、親会社株主に帰属する当期純利益に対する総還元性向は53.4%となる予定であります。
なお、当社は会社法第454条第5項に規定する中間配当を行うことができる旨を定款に定めております。
②キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下、「資金」と言います。)は、前連結会計年度に比べて3,344百万円増加し(前期は904百万円の減少)、当連結会計年度末現在の残高は11,811百万円となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
法人税等の支払額が2,208百万円、売上債権の増加額が579百万円であったことに対し、税金等調整前当期利益が7,134百万円、未払消費税等の増加額が331百万円、減価償却費が258百万円、のれん償却額が215百万円、持分法による投資損失が200百万円であったこと等により、営業活動により得られた資金は5,408百万円(前期は得られた資金が4,474百万円)となりました。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
有形固定資産の取得による支出が226百万円、無形固定資産の取得による支出が208百万円、投資有価証券の取得による支出が43百万円であったことに対し、有形固定資産の売却による収入が241百万円、連結範囲の変更を伴う子会社株式の売却による収入が132百万円、保険積立金の解約による収入が107百万円であったこと等により、投資活動により得られた資金は8百万円(前期は使用した資金が2,870百万円)となりました。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
配当金の支払額が1,381百万円、自己株式の取得による支出が847百万円であったこと等により、財務活動により使用した資金は2,073百万円(前期は使用した資金が2,508百万円)となりました。
③生産、受注及び販売の状況
a. 生産及び受注実績
当社グループは主として生産活動を行っておらず、また短期業務支援事業は、受注から売上計上までの期間が極めて短いため、受注規模を金額で示すことはしておりません。
b. 販売実績
(注) 1.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
2.セグメント間取引については、相殺消去しております。
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
①重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成には、経営者による会計方針の採用や、資産・負債及び収益・費用の計上及び開示に影響を与える見積りを必要とします。経営者はこれらの見積りについて、過去の実績等を勘案し、合理的に判断しておりますが、実際の結果は見積り項目特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。
当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載しております。
②当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
a.経営成績等
i)売上高
連結売上高は、主力業務である短期業務支援事業において、逼迫する短期人材需要の基調が継続し44,479百万円(前期比14.5%増)となりました。これをセグメント別に見ますと次のとおりです。
・短期業務支援事業
逼迫する短期人材需要の基調が継続し、主力サービスである「紹介」+「BPO」がけん引したことに加えて、顧客企業の長期人材ニーズにも応えた結果、「派遣」が伸張したことにより、短期業務支援事業の売上高は38,662百万円(前期比15.7%増)となりました。
・営業支援事業
前期に不採算拠点の整理を行ったこと等の影響はあるものの、営業支援事業の売上高は3,473百万円(前期比4.8%増)となりました。
・警備・その他事業
警備事業において、常駐警備案件の獲得数が増加したことで、警備・その他事業の売上高は2,344百万円(前期比10.5%増)となりました。
ⅱ)営業費用及び営業利益
売上原価は前連結会計年度に比べ3,469百万円増加し25,665百万円(前期比15.6%増)となった一方で、売上原価率については57.1%から57.7%と、0.6ポイント増加しました。販売費及び一般管理費は前連結会計年度に比べて830百万円増加し11,590百万円(前期比7.7%増)となり、その売上高に対する比率は前連結会計年度の27.7%から1.6ポイント減少し26.1%となりました。その結果、営業利益は前連結会計年度に比べ1,328百万円増加し7,224百万円(前期比22.5%増)となりました。これをセグメント別に見ますと次のとおりです。
・短期業務支援事業
利益面では、主力サービス及び「派遣」サービスの増収を主因とし、セグメント利益(営業利益)は7,738百万円(前期比17.3%増)となりました。
・営業支援事業
利益面では、増収したことを主因とし、上期は減収減益であったものの、セグメント利益(営業利益)は168百万円(前期比22.8%増)となりました。
・警備事業・その他事業
利益面では、増収したことを主因とし、販管費率を抑制できたことで、セグメント利益(営業利益)は252百万円(前年同期比39.1%増)となりました。
ⅲ)営業外損益及び経常利益
営業外損益は、当社の持分法適用関連会社であるAdvancer Global Limited株式について、株価の下落に伴う減損(持分法による投資損失)を前連結会計年度に続いて計上したことで、前連結会計年度の610百万円の損失(純額)から160百万円の損失(純額)となりました。経常利益は、当社の持分法適用関連会社であるAdvancer Global Limited株式について、株価の下落に伴う減損(持分法による投資損失)を計上したものの、営業利益が増益したことにより、前連結会計年度に比べて1,779百万円増加し、7,064百万円(前期比33.7%増)となりました。
ⅳ)特別利益及び特別損失並びに税金等調整前当期純利益
株式会社ディメンションポケッツ株式の譲渡に伴う子会社株式売却益を特別利益に計上したこと等もあり、特別利益から特別損失を控除した純額は、69百万円の収益となりました。結果、税金等調整前当期純利益は7,134万円(前期比34.6%増)となりました。
v)法人税等及び当期純利益
税効果会計適用後の法人税等は前連結会計年度に比べ421百万円増加し2,361百万円となり、当期純利益は4,773百万円(前期比42.0%増)となりました。
ⅵ)親会社株主に帰属する当期純利益
株式会社BОDに係る非支配株主に帰属する当期純利益が増加したことに伴い、非支配株主に帰属する当期純利益は129百万円となりました。
以上の結果、親会社株主に帰属する当期純利益は前連結会計年度に比べ1,334百万円増加し4,644百万円(前期比40.3%増)となりました。1株当たり当期純利益は、124円59銭(前連結会計年度は87円90銭)となりました。
b.経営成績に影響を与える大きな要因
当社グループの経営成績に影響を与える大きな要因は「第2 事業の状況 2 事業等のリスク」に記載のとおりであります。
c.資本の財源及び資金の流動性
i)資金需要
当社グループの事業活動における資金需要の主なものは、事業活動の維持・拡大を図っていくために必要となる運転資金、営業拠点の新規出店・移転に伴う費用及びシステム投資費用等の設備投資資金があるほか、M&A等の一時的な資金需要があります。
ⅱ)資本の財源及び資金の流動性
当社グループでは、事業活動を維持するための適切な資金の確保と、適正水準の流動性の維持及び健全な財政状態の維持を財務の基本方針としつつ、多様な資金調達手段の確保に努めております。
当社グループが事業活動の維持・拡大を図っていくために必要となる運転資金や設備投資資金の調達は、営業活動から得られるキャッシュ・フローと金融機関からの借り入れにより十分可能であると考えております。
なお、当社グループは運転資金の効率的な調達を行うため、取引先銀行4行と総額5,600百万円を限度とした当座貸越契約を締結しております。
有利子負債の状況については、「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の概要 ①財政状態及び経営成績の状況 b.財政状態 ⅲ)有利子負債」に記載のとおりであります。
当社グループの資金調達、資金運用等に関する取り組み方針につきましては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注意事項(金融商品関係)」に記載のとおりであります。
d.経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループは、「持続的な企業価値の向上」を重要な経営課題の1つとして位置付けております。
当社グループは、「企業価値の向上」を示す目標指標をROE20%以上にすると共に、財務の健全性を確保しつつ必要な成長投資を行うための適切な負債水準を維持するためデットエクイティレシオ0.5倍を上限とする方針とし、資本効率を重視した経営を実践すると共に、財務の健全性を確保しながら収益性、成長性のバランスを重視し、企業価値の最大化を図ってまいります。加えて、当社は、総還元性向50%を目標とし、株主への利益還元の充実化を図る方針であります。
「持続的な企業価値の向上」を実現するための指標 : ROE20%以上維持
「株主還元」に係る指標 : 総還元性向50%
「資本政策の基本方針」を支える指標 : デッドエクイティレシオ0.5倍以下
以上の指標を達成することにより、「持続的な企業価値向上」を実現する。
当社グループは、2018年12月期において、2016年2月12日に公表した中期経営計画について見直しを行っており、その最終年度である2020年12月期において以下の経営指標を達成することを目標としております。
(営業利益) 79億円
(経常利益) 80億円
(稼働者数) 320,000人
(人件費1円あたり売上総利益) 2.6円
(1)経営成績等の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用関連会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
①財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度におけるわが国経済は、輸出が引き続き弱含むなかで、製造業を中心に弱さが一段と増しているものの、個人消費の持ち直しの動きが継続していること、消費者物価が上昇テンポは鈍化しつつも緩やかに上昇していること、雇用情勢が改善していることに加えて、設備投資が緩やかな増加傾向にあること等、景気は緩やかな回復基調が続いております。景気の先行きに関しましては、当面、弱さが残るものの、引き続き雇用情勢及び所得環境の改善が続く中で、各種政策の効果もあり、緩やかな回復が続くことが期待されます。しかしながら、通商問題を巡る動向、中国経済の先行き、英国のEU離脱等の海外経済の動向や金融資本市場の変動の影響に加え、消費税率引上げ後の消費者マインドの動向等が引き続き景気を下押しするリスクになっていること等から、依然として先行きが不透明な状況が続いております。
人材サービス業界を取り巻く環境においては、有効求人倍率及び完全失業者数が横ばい圏内で推移していること、また、就業者数及び就業率が緩やかな改善傾向を辿っていること等から、先行きに関しましては、引き続き雇用情勢が着実に改善していくことが見込まれております。
このような環境のもと、当社グループでは、当連結会計年度において、「短期業務支援事業の拡充及び周辺領域への種まきと刈り取りを推進する」を目標としたグループ経営を行い、特に主力サービスである「紹介(注1)」、「BPO(注2)」を中心にフルキャストグループ全体の収益を伸長させることを主眼とした営業活動を行ってまいりました。加えて、継続してグループ全体の業務効率化を推し進め、生産性を高めることにより、増益を実現するための体制作りに取り組んでまいりました。
(注)1.主力サービスである「アルバイト紹介」サービスを「紹介」と呼称しております。
2.主力サービスである「アルバイト給与管理代行」サービスに加えて、「マイナンバー管理代行」サービス等その他の人事労務系BPOサービス及び株式会社BODのバックオフィス系BPOサービスを「BPO」と呼称しております。
a.経営成績
連結売上高は、主力業務である短期業務支援事業において、逼迫する短期人材需要の基調が継続し44,479百万円(前期比14.5%増)となりました。
利益面では、短期業務支援事業の増収を主因とし、連結営業利益は7,224百万円(前期比22.5%増)となりました。
連結経常利益は、当社の持分法適用関連会社であるAdvancer Global Limited株式について、株価の下落に伴う減損(持分法による投資損失)を計上したものの、営業利益が増益したことにより7,064百万円(前期比33.7%増)となりました。
親会社株主に帰属する当期純利益は、株式会社ディメンションポケッツ株式の譲渡に伴う子会社株式売却益を特別利益に計上したこと等もあり4,644百万円(前期比40.3%増)となりました。
当社グループは、「持続的な企業価値の向上」を重要な経営課題の1つとして位置付けております。「企業価値の向上」は、株主及び投資家の皆様による当社への期待収益を反映した資本コストを上回るROEを実現することであるという考えのもと、ROEを「企業価値向上」を示す目標指標とし、資本効率を重視した経営の実践に取り組んでおります。なお、当社グループは、ROE20%以上を目標指標としております。
当連結会計年度末時点におけるROEは33.3%となり、前連結会計年度末時点の28.4%に比べ4.9ポイント改善し、20%以上を維持しております。
なお、当社グループは、特定技能ビザを取得した外国人労働者を対象とした人材サービス(人材派遣・人材紹介)を提供する新会社「株式会社Fullcast International」を2019年8月30日に設立し、連結子会社としております。同社は、2019年12月1日より営業を開始いたしました。
また、当社グループは、当社グループと株式会社ディメンションポケッツ双方の持続的な企業価値の向上を再検証した結果、2019年12月11日付で、警備・その他事業セグメントに属する同社の全株式を譲渡し、連結の範囲から除外しております。
事業別の状況
セグメント別の業績は次のとおりです。
i)短期業務支援事業
逼迫する短期人材需要の基調が継続し、主力サービスである「紹介」+「BPO」がけん引したことに加えて、顧客企業の長期人材ニーズにも応えた結果、「派遣」が伸張したことにより、短期業務支援事業の売上高は38,662百万円(前期比15.7%増)となりました。
利益面では、主力サービス及び「派遣」サービスの増収を主因とし、セグメント利益(営業利益)は7,738百万円(前期比17.3%増)となりました。
ⅱ)営業支援事業
前期に不採算拠点の整理を行ったこと等の影響はあるものの、営業支援事業の売上高は3,473百万円(前期比4.8%増)となりました。
利益面では、増収したことを主因とし、上期は減収減益であったものの、セグメント利益(営業利益)は168百万円(前期比22.8%増)となりました。
ⅲ)警備・その他事業
警備事業において、常駐警備案件の獲得数が増加したことで、警備・その他事業の売上高は2,344百万円(前期比10.5%増)となりました。
利益面では、増収したことを主因とし、販管費率を抑制できたことで、セグメント利益(営業利益)は252百万円(前年同期比39.1%増)となりました。
b.財政状態
i)流動性
資産の部では、流動資産が前連結会計年度末に比べて3,941百万円増加し17,969百万円となりました。これは主に、現金及び預金が3,344百万円増加し11,811百万円となったこと及び受取手形及び売掛金が581百万円増加し5,777百万円となったこと等によるものです。
負債の部では、流動負債が前連結会計年度末に比べて608百万円増加し6,427百万円となりました。これは主に、未払金が144百万円減少し1,267百万円となったことに対し、未払消費税等が317百万円増加し1,206百万円となったこと及び未払法人税等が244百万円増加し1,229百万円となったこと並びに未払費用が189百万円増加し1,221百万円となったこと等によるものです。
以上の結果、当連結会計年度末の運転資本(流動資産-流動負債)は前連結会計年度末に比べ3,333百万円増加し11,542百万円、流動比率(流動資産÷流動負債×100)は前連結会計年度末の241.0%から279.6%となりました。
ⅱ)資本的支出
当連結会計年度において実施した設備投資額は、前期比136百万円増加し434百万円となりました。その主な内訳は、営業拠点の新規出店・移転に伴う有形固定資産の取得で138百万円、社内利用目的の各種ソフトウエア等購入に伴う無形固定資産の取得で208百万円であります。
2020年12月期の重要な設備投資につきましては、特に予定はございません。
ⅲ)有利子負債
当連結会計年度末の有利子負債の総額は前期比253百万円減少し1,000百万円となりました。これは主に株式会社ディメンションポケッツを連結の範囲から除外したことによるものです。
ⅳ)純資産
当連結会計年度末の純資産は前連結会計年度末に比べて3,163百万円増加し16,213百万円となりました。これは主に、2018年12月期決算に係る自己株式取得に伴い自己株式が827百万円増加したことに対し、当連結会計年度において剰余金の配当を1,383百万円実施した一方で、4,644百万円の親会社株主に帰属する当期純利益を計上したことにより、利益剰余金が3,261百万円増加したことによるものです。
以上の結果、デット・エクイティ・レシオ(有利子負債÷自己資本(注)×100)は前期末の10.0%から6.5%、自己資本比率(自己資本÷総資産×100)は前期末の63.0%から65.8%となりました。
(注) 自己資本=純資産の部の合計-新株予約権-非支配株主持分
v)利益配分に関する基本方針
当社は、総還元性向50%を目標とし、株主への利益還元の充実化を図る方針であります。
今後も、収益力を強化し、経営効率の一層の向上を図ると共に、配当と自己株式取得を合わせた総還元性向50%を目標とした株主還元を実施することにより、ROE20%以上を「企業価値の向上」を示す目標指標とし、その実現を目指してまいります。
当社の剰余金の配当は、中間配当及び期末配当の年2回を基本的な方針としております。配当の決定機関は、中間配当、期末配当共に取締役会であります。
当期の配当につきましては、当社の持分法適用関連会社であるAdvancer Global Limited株式に係る株価の下落に伴う減損(持分法による投資損失)の計上の影響を除いた親会社株主に帰属する当期純利益に対する総還元性向50%の考えに基づき、前期比8円増配、配当予想比2円増配となる1株あたり40円の配当を通期で実施し、期末では1株につき21円の配当(配当予想比2円増配)及び株式の取得価額の総額991,817,600円を上限に自己株式の取得を実施し、その具体的な取得方法として公開買付による自己株取得を行います。その結果、2019年12月期の上記の考えに基づく総還元性向は50.0%となりますが、親会社株主に帰属する当期純利益に対する総還元性向は53.4%となる予定であります。
なお、当社は会社法第454条第5項に規定する中間配当を行うことができる旨を定款に定めております。
②キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下、「資金」と言います。)は、前連結会計年度に比べて3,344百万円増加し(前期は904百万円の減少)、当連結会計年度末現在の残高は11,811百万円となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
法人税等の支払額が2,208百万円、売上債権の増加額が579百万円であったことに対し、税金等調整前当期利益が7,134百万円、未払消費税等の増加額が331百万円、減価償却費が258百万円、のれん償却額が215百万円、持分法による投資損失が200百万円であったこと等により、営業活動により得られた資金は5,408百万円(前期は得られた資金が4,474百万円)となりました。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
有形固定資産の取得による支出が226百万円、無形固定資産の取得による支出が208百万円、投資有価証券の取得による支出が43百万円であったことに対し、有形固定資産の売却による収入が241百万円、連結範囲の変更を伴う子会社株式の売却による収入が132百万円、保険積立金の解約による収入が107百万円であったこと等により、投資活動により得られた資金は8百万円(前期は使用した資金が2,870百万円)となりました。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
配当金の支払額が1,381百万円、自己株式の取得による支出が847百万円であったこと等により、財務活動により使用した資金は2,073百万円(前期は使用した資金が2,508百万円)となりました。
③生産、受注及び販売の状況
a. 生産及び受注実績
当社グループは主として生産活動を行っておらず、また短期業務支援事業は、受注から売上計上までの期間が極めて短いため、受注規模を金額で示すことはしておりません。
b. 販売実績
セグメントの名称 | 当連結会計年度 (自2019年1月1日 至2019年12月31日) (百万円) | 前年同期比(%) |
短期業務支援事業 | 38,662 | 15.70% |
営業支援事業 | 3,473 | 4.80% |
警備・その他事業 | 2,344 | 10.47% |
合計 | 44,479 | 14.48% |
(注) 1.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
2.セグメント間取引については、相殺消去しております。
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
①重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成には、経営者による会計方針の採用や、資産・負債及び収益・費用の計上及び開示に影響を与える見積りを必要とします。経営者はこれらの見積りについて、過去の実績等を勘案し、合理的に判断しておりますが、実際の結果は見積り項目特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。
当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載しております。
②当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
a.経営成績等
i)売上高
連結売上高は、主力業務である短期業務支援事業において、逼迫する短期人材需要の基調が継続し44,479百万円(前期比14.5%増)となりました。これをセグメント別に見ますと次のとおりです。
・短期業務支援事業
逼迫する短期人材需要の基調が継続し、主力サービスである「紹介」+「BPO」がけん引したことに加えて、顧客企業の長期人材ニーズにも応えた結果、「派遣」が伸張したことにより、短期業務支援事業の売上高は38,662百万円(前期比15.7%増)となりました。
・営業支援事業
前期に不採算拠点の整理を行ったこと等の影響はあるものの、営業支援事業の売上高は3,473百万円(前期比4.8%増)となりました。
・警備・その他事業
警備事業において、常駐警備案件の獲得数が増加したことで、警備・その他事業の売上高は2,344百万円(前期比10.5%増)となりました。
ⅱ)営業費用及び営業利益
売上原価は前連結会計年度に比べ3,469百万円増加し25,665百万円(前期比15.6%増)となった一方で、売上原価率については57.1%から57.7%と、0.6ポイント増加しました。販売費及び一般管理費は前連結会計年度に比べて830百万円増加し11,590百万円(前期比7.7%増)となり、その売上高に対する比率は前連結会計年度の27.7%から1.6ポイント減少し26.1%となりました。その結果、営業利益は前連結会計年度に比べ1,328百万円増加し7,224百万円(前期比22.5%増)となりました。これをセグメント別に見ますと次のとおりです。
・短期業務支援事業
利益面では、主力サービス及び「派遣」サービスの増収を主因とし、セグメント利益(営業利益)は7,738百万円(前期比17.3%増)となりました。
・営業支援事業
利益面では、増収したことを主因とし、上期は減収減益であったものの、セグメント利益(営業利益)は168百万円(前期比22.8%増)となりました。
・警備事業・その他事業
利益面では、増収したことを主因とし、販管費率を抑制できたことで、セグメント利益(営業利益)は252百万円(前年同期比39.1%増)となりました。
ⅲ)営業外損益及び経常利益
営業外損益は、当社の持分法適用関連会社であるAdvancer Global Limited株式について、株価の下落に伴う減損(持分法による投資損失)を前連結会計年度に続いて計上したことで、前連結会計年度の610百万円の損失(純額)から160百万円の損失(純額)となりました。経常利益は、当社の持分法適用関連会社であるAdvancer Global Limited株式について、株価の下落に伴う減損(持分法による投資損失)を計上したものの、営業利益が増益したことにより、前連結会計年度に比べて1,779百万円増加し、7,064百万円(前期比33.7%増)となりました。
ⅳ)特別利益及び特別損失並びに税金等調整前当期純利益
株式会社ディメンションポケッツ株式の譲渡に伴う子会社株式売却益を特別利益に計上したこと等もあり、特別利益から特別損失を控除した純額は、69百万円の収益となりました。結果、税金等調整前当期純利益は7,134万円(前期比34.6%増)となりました。
v)法人税等及び当期純利益
税効果会計適用後の法人税等は前連結会計年度に比べ421百万円増加し2,361百万円となり、当期純利益は4,773百万円(前期比42.0%増)となりました。
ⅵ)親会社株主に帰属する当期純利益
株式会社BОDに係る非支配株主に帰属する当期純利益が増加したことに伴い、非支配株主に帰属する当期純利益は129百万円となりました。
以上の結果、親会社株主に帰属する当期純利益は前連結会計年度に比べ1,334百万円増加し4,644百万円(前期比40.3%増)となりました。1株当たり当期純利益は、124円59銭(前連結会計年度は87円90銭)となりました。
b.経営成績に影響を与える大きな要因
当社グループの経営成績に影響を与える大きな要因は「第2 事業の状況 2 事業等のリスク」に記載のとおりであります。
c.資本の財源及び資金の流動性
i)資金需要
当社グループの事業活動における資金需要の主なものは、事業活動の維持・拡大を図っていくために必要となる運転資金、営業拠点の新規出店・移転に伴う費用及びシステム投資費用等の設備投資資金があるほか、M&A等の一時的な資金需要があります。
ⅱ)資本の財源及び資金の流動性
当社グループでは、事業活動を維持するための適切な資金の確保と、適正水準の流動性の維持及び健全な財政状態の維持を財務の基本方針としつつ、多様な資金調達手段の確保に努めております。
当社グループが事業活動の維持・拡大を図っていくために必要となる運転資金や設備投資資金の調達は、営業活動から得られるキャッシュ・フローと金融機関からの借り入れにより十分可能であると考えております。
なお、当社グループは運転資金の効率的な調達を行うため、取引先銀行4行と総額5,600百万円を限度とした当座貸越契約を締結しております。
有利子負債の状況については、「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の概要 ①財政状態及び経営成績の状況 b.財政状態 ⅲ)有利子負債」に記載のとおりであります。
当社グループの資金調達、資金運用等に関する取り組み方針につきましては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注意事項(金融商品関係)」に記載のとおりであります。
d.経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループは、「持続的な企業価値の向上」を重要な経営課題の1つとして位置付けております。
当社グループは、「企業価値の向上」を示す目標指標をROE20%以上にすると共に、財務の健全性を確保しつつ必要な成長投資を行うための適切な負債水準を維持するためデットエクイティレシオ0.5倍を上限とする方針とし、資本効率を重視した経営を実践すると共に、財務の健全性を確保しながら収益性、成長性のバランスを重視し、企業価値の最大化を図ってまいります。加えて、当社は、総還元性向50%を目標とし、株主への利益還元の充実化を図る方針であります。
「持続的な企業価値の向上」を実現するための指標 : ROE20%以上維持
「株主還元」に係る指標 : 総還元性向50%
「資本政策の基本方針」を支える指標 : デッドエクイティレシオ0.5倍以下
以上の指標を達成することにより、「持続的な企業価値向上」を実現する。
当社グループは、2018年12月期において、2016年2月12日に公表した中期経営計画について見直しを行っており、その最終年度である2020年12月期において以下の経営指標を達成することを目標としております。
(営業利益) 79億円
(経常利益) 80億円
(稼働者数) 320,000人
(人件費1円あたり売上総利益) 2.6円