有価証券報告書-第11期(2022/07/01-2023/06/30)

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2023/09/28 15:06
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143項目

(1) 経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
① 財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度における世界経済及び日本経済は、新型コロナウイルス感染症対策をはじめとする各種政策の効果により経済活動の正常化が進展するなど、持ち直しの動きが見られました。一方で、混迷が長期化するウクライナ情勢のほか、世界的な金融引き締め等に起因する金融市場混乱や海外景気下振れ、物価上昇やサプライチェーン制約等の懸念が、多様な業種に広がる当社顧客企業の収益環境に影を落とすなど、依然として先行き不透明な状況が継続しました。
当社グループの事業領域であるデジタルマーケティング市場及びマーケティングリサーチ市場は、顧客企業によるDX(デジタルトランスフォーメーション)への旺盛な投資を背景に堅調となっており、今後も中期的な成長が予想されます。一方で、消費者の購買行動は多様化が加速しており、これに対応した消費者ニーズ調査手法の革新やプロモーション手段の進化が求められるなど、競争環境の激化が想定されます。
こうした経営環境の下、当社グループは持続的な成長を実現するため、中期経営計画「DX Action 2024」の指針である「マーケティングDXパートナー」の実践へ向けた様々な取り組みを通じて、ビジネスモデルの進化とサービス対応領域の拡大を推進しました。
この結果、当連結会計年度における売上高は25,094百万円(前年同期比0.8%増)、営業利益は1,951百万円(同22.6%減)、経常利益は1,880百万円(同24.8%減)、親会社株主に帰属する当期純利益は1,007百万円(同35.4%減)となりました。
セグメントごとの経営成績は、次のとおりであります。
(デジタルマーケティング事業)
デジタルマーケティング事業では、国内のグループ各社がデジタル領域に軸足を置き、販促支援メディアの運営、プロモーション・マーケティング支援、システムの受託開発及び保守・運用、人材供給等、DX(デジタルトランスフォーメーション)に関わる総合的なマーケティングソリューションを提供しております。
同事業の外部顧客に対する売上高は9,037百万円(前年同期比10.4%減)となりました。メディア・プロモーション分野において、原材料・資源高の影響を受けた日用雑貨・飲料メーカー等のマーケティング費用削減により、受注単価が低下したことが減収の主要因となりました。
同事業のセグメント利益(営業利益)は472百万円(同27.9%減)となりました。これは主に、減収に伴う売上総利益の減少に加え、新規連結子会社の販売費及び一般管理費の増加などによるものです。
(データマーケティング事業)
データマーケティング事業では、国内外のグループ各社において、マーケティングリサーチにおけるオンライン・オフラインでのデータ収集を中心にサービスを提供しております。
同事業の外部顧客に対する売上高は9,754百万円(前年同期比16.6%増)となりました。増収の主因として、1)Kadenceグループの海外拠点では、経済活動の回復に合わせた北米及びインドにおける収益が拡大、2)株式会社クロス・マーケティングを中心とする国内事業会社では、不透明な経済情勢の中でもお客様企業のリサーチ需要は底堅く、主力のオンライン実査件数が前年同期比で増加するなど堅調、等が挙げられます。
同事業のセグメント利益(営業利益)は2,545百万円(同2.9%増)となりました。増収効果に加え売上総利益率の改善により売上総利益が増加した一方、国内外の事業会社において、販売費及び一般管理費が増加したため、増益率は小幅にとどまりました。
(インサイト事業)
インサイト事業では、国内外のグループ各社において、各種マーケティングデータの複合的な分析、消費者インサイトの発掘、レポート作成などを通じ、お客様企業のマーケティング戦略における意思決定への支援を行っております。
同事業の外部顧客に対する売上高は6,303百万円(前年同期比2.3%減)となりました。これは、1)株式会社クロス・マーケティングを中心とする国内事業会社では、コロナ禍で影響を受けていたオフライン調査が増収に転換したものの、医療・ヘルスケア領域が減収となったこと、2)Kadenceグループの海外拠点では、インドネシアにおける収益拡大は継続したものの、英国の経済活動停滞による減収が足かせとなった、等によるものです。
同事業のセグメント利益(営業利益)は910百万円(同28.2%減)となりました。減収の影響により売上総利益が減少したほか、Kadenceグループの海外拠点において販売費及び一般管理費が増加したことが、減益の主因となりました。
当連結会計年度末の財政状態は、資産については、流動資産が11,292百万円(前連結会計年度末比577百万円増)となりました。主な項目としては、現金及び預金6,478百万円、売掛金3,004百万円となっております。固定資産は3,016百万円(同598百万円増)となりました。主な項目としては、ソフトウェア632百万円、のれん623百万円、投資有価証券323百万円となっております。その結果、総資産は14,308百万円(同1,175百万円増)となりました。
負債については、流動負債が5,147百万円(前連結会計年度末比111百万円増)となりました。主な項目としては、買掛金983百万円、1年内返済予定の長期借入金946百万円、短期借入金393百万円となっております。固定負債は3,072百万円(同1,111百万円増)となりました。主な項目としては、長期借入金2,759百万円となっております。その結果、負債は8,220百万円(同1,222百万円増)となりました。
純資産は6,089百万円(前連結会計年度末比47百万円減)となりました。主な項目としては利益剰余金が5,321百万円となっております。
② キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は6,478百万円(前連結会計年度末比974百万円増)となりました。当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における営業活動の結果増加した資金は、1,796百万円となりました。主な要因は、法人税等の支払額648百万円、仕入債務の減少額473百万円などの減少要因があった一方で、税金等調整前当期純利益1,847百万円の計上、売上債権の減少額559百万円の計上、棚卸資産の減少額307百万円の計上などによる増加要因があったことによります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における投資活動の結果減少した資金は、902百万円となりました。主な要因は、有形・無形固定資産の取得による支出550百万円、連結の範囲の変更を伴う子会社株式の取得による支出304百万円などの減少要因があったことによります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における財務活動の結果増加した資金は、27百万円となりました。主な要因は、長期借入金の返済による支出839百万円、連結の範囲の変更を伴わない子会社株式の取得による支出501百万円、自己株式の取得による支出447百万円、配当金の支払額223百万円などの減少要因があった一方で、長期借入れによる収入2,100百万円の増加要因があったことによります。
③ 生産、受注及び販売の状況
a. 生産実績
当社グループでは、販売実績のほとんどが生産実績であることから、記載を省略しております。
b. 受注実績
当社グループでは、概ね受注から納品までの期間が短く、受注管理を行う必要性が乏しいため記載を省略しております。
c. 販売実績
当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称当連結会計年度
(自 2022年7月1日
至 2023年6月30日)
金額(千円)前年同期比(%)
デジタルマーケティング事業9,037,202△10.4
データマーケティング事業9,754,27416.6
インサイト事業6,302,846△2.3
合計25,094,3220.8

(注) 1.セグメント間取引については、相殺消去しております。
2.主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合については、連結損益計算書の売上高の10%以上を占める相手先がないため、記載を省略しております。
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は、以下のとおりであります。なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
当社は前々連結会計年度において決算期変更を実施しており、前々連結会計年度は6ヶ月決算となっております。このため、前連結会計年度業績の伸び率等で使用する前々期業績については、便宜上、比較可能な同期間(2020年7月~2021年6月)の累計損益及び2021年6月末残高を使用しております。
① 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
当社グループでは、経営に委託された資本を最も効率よく活用すべく、適正資本構成を維持したうえでの収益力を図ることができるROEを、最も重要な経営指標として位置付けております。同時に、当社グループが成長段階であるとの認識に立ち、株主の収益成長期待に応えるため、売上高成長率、営業利益率を重視した事業経営に取り組んでおります。
[売上高成長率について]
当連結会計年度の売上高成長率は、0.8%(前連結会計年度は30.8%)となりました。売上高成長率が前期比で低下した主因は、デジタルマーケティング事業、とりわけメディア・プロモーション分野において、原材料・資源高の影響を受けた日用雑貨・飲料メーカー等のマーケティング費用削減により、受注単価が低下し、同事業の売上高が前期比10.4%減少したこと、等によるものです。
デジタルマーケティング事業における受注単価低下の影響は、当連結会計年度の第3四半期をボトムに緩和しつつあります。こうした中、同事業の中核子会社である株式会社ドゥ・ハウスのサービスとグループ各子会社の事業とのシナジー効果発現に取り組み、高い成長が期待できる事業領域においてM&Aを含む成長投資を適切に継続し、連結売上高全体として10%以上の売上高成長率を中期的に確保するための取り組みを実行してまいります。
[営業利益率について]
当連結会計年度の売上高営業利益率は7.8%(前連結会計年度は10.1%)となりました。営業利益率が前年同期比で低下した主な要因は、中期的な事業成長に向けた人材基盤への投資や積極的なM&Aによる新規連結子会社の増加により販管費が増加し、売上高販管費比比率が33.6%(前連結会計年度は31.4%)に上昇したことによるものです。
今後は、売上高販管費比率を適切に保ちながら、営業利益率改善に取り組んでまいります。
[ROEについて]
当連結会計年度のROEは、17.1%(前連結会計年度は31.9%)となりました。ROEが前期比で低下した要因は、1)売上高当期純利益率、2)総資産回転率がそれぞれ低下し、3)財務レバレッジの上昇でカバーできなかったためです。以下、要素項目ごとに説明いたします。
1)売上高当期純利益率(親会社株主に帰属する当期純利益÷売上高)は4.0%となり、前期の6.3%から2.3%ポイント低下しました。これは主に、上述の理由により売上高営業利益率が前期比で2.4ポイント低下したことによるものです。
2)総資産回転率(売上高÷期首期末単純平均総資産)は1.8回となり、前年同期の2.0回から低下しました。要因として、上述のとおり主にデジタルマーケティング事業の売上高減少により総売上高が伸び悩んだことによるものであります。
3)財務レバレッジ(期末総資産÷期末自己資本)は2.4倍となり前連結会計年度末の2.3倍から小幅に上昇しました。これは、自己株式取得により自己資本の積み上がりが抑制された中、借入により適切な事業運営資金調達を実施した結果であります。
当連結会計年度末の財政状態は、資産については、流動資産が11,292百万円(前連結会計年度末比577百万円増)となりました。主な項目としては、現金及び預金6,478百万円、売掛金3,004百万円となっております。固定資産は3,016百万円(同598百万円増)となりました。主な項目としては、ソフトウェア632百万円、のれん623百万円、投資有価証券323百万円となっております。増加の主な要因は、新たに株式を取得した連結子会社ののれんの発生によるものであります。その結果、総資産は14,308百万円(同1,175百万円増)となりました。
負債については、流動負債が5,147百万円(前連結会計年度末比111百万円増)となりました。主な項目としては、買掛金983百万円、1年内返済予定の長期借入金946百万円、短期借入金393百万円となっております。固定負債は3,072百万円(同1,111百万円増)となりました。主な項目としては、長期借入金2,759百万円となっております。増加の主な要因は、新規借り入れによる長期借入金の増加によるものであります。その結果、負債は8,220百万円(同1,222百万円増)となりました。
純資産は6,089百万円(前連結会計年度末比47百万円減)となりました。主な項目としては利益剰余金が5,321百万円となっております。
② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
(キャッシュフローの状況)
当連結会計年度においては、持続的な成長の実現のため、中期経営計画「DX Action 2024」の指針である「マーケティングDXパートナー」の実現へ向けた様々な取り組みを通じて、グループのビジネスモデルの進化と各事業における対応領域の拡大を推進しており、税金等調整前当期純利益を1,847百万円計上いたしましたことから、営業活動によるキャッシュ・フローは1,796百万円の資金の増加となりました。
また、下記「(資本の財源)」に記載のとおり、長期借入金について2,100百万円の借入をした一方で、838百万円の資金を返済しており、財務活動によるキャッシュ・フローは27百万円の資金の増加となりました。
その結果、現金及び現金同等物の期末残高が974百万円増加しております。
2023年度については、現段階の計画において大規模な資本的支出の予定は無く、今後の資金需要については、手元資金で賄うことを基本とし、必要に応じて金融機関からの借入等による資金調達を実施いたします。
その他については、「4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ② キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
(資本の財源)
当連結会計年度においては、デジタルマーケティング事業の拡大を目的として、また、経営環境の変化に対応した機動的な資本政策を実施し、株主還元を図るための資金として、長期借入金2,100百万円を調達いたしました。金融機関からの調達環境は安定しており、好条件での調達が実施できております。なお、当連結会計年度においては、長期借入金を839百万円返済しております。
(資金の流動性)
当連結会計年度末における現金及び現金同等物は6,478百万円(前年同期比974百万円増)であり、有利子負債は主に金融機関からの借入金であります。なお、流動比率は219.4%であります。グループ全体として、一定の流動性は確保しており、現時点において懸念される点は無いと認識しております。
③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたっては、連結会計年度末における資産及び負債、連結会計年度における収益及び費用に影響を及ぼすような仮定や見積りを必要とします。これらの見積りについて過去の実績等を勘案し合理的に判断しておりますが、仮定あるいは条件の変化により、実際の結果と異なる可能性があります。
連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは以下のとおりであります。
a. 繰延税金資産
当社グループは、繰延税金資産について回収可能性を検討し、当該資産の回収が不確実と考えられる部分に対して評価性引当額を計上しております。回収可能性の判断においては、将来の課税所得見込額と実行可能なタックス・プランニングを考慮して、将来の税金負担額を軽減する効果を有すると考えられる範囲で繰延税金資産を計上しております。
将来の課税所得見込額はその時の業績等により変動するため、課税所得の見積に影響を与える要因が発生した場合は、回収懸念額の見直しを行い繰延税金資産の修正を行うため、当期純損益額が変動する可能性があります。
b. 固定資産の減損
当社グループは、固定資産の減損の検討にあたり、管理会計上の区分を基礎として資産のグルーピングを行い、収益性が著しく低下した資産グループについて、固定資産の帳簿価額を回収可能価額まで減額し、当該減少額を減損損失として計上しております。
固定資産の回収可能価額は、将来キャッシュ・フロー、割引率、正味売却価額等の前提条件に基づき算出しており、将来キャッシュ・フロー等の前提条件に変更があった場合、固定資産の減損を実施し、当社グループの業績を悪化させる可能性があります。
④ 経営成績に重要な影響を与える要因について
「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載のとおりでありますが、今後当社の連結業績に影響を与えるリスクとして特に注視すべき不透明な要因として、新型コロナウイルス感染症の再拡大のほか、緊迫状態が続くロシア・ウクライナの情勢、原材料価格の高騰や急激な為替レートの変動などが挙げられます。これらの要因が当社の顧客の企業活動に影響をもたらし、顧客企業の新商品・サービス開発投資、マーケティングDX投資、販売促進活動等が想定以上に急激に変更(加速または縮減)された場合、当社の経営成績に重要な影響を与える可能性があるものと認識しております。
⑤ 経営者の問題認識と今後の方針について
「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおりであります。