有価証券報告書-第11期(平成31年1月1日-令和1年12月31日)

【提出】
2020/03/30 11:12
【資料】
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【項目】
85項目
(1)経営成績等の状況の概要
①財政状態及び経営成績等の状況の概要
(ⅰ)経営成績
当連結会計年度の業績は、売上収益は1兆2,994億円(前年同期比0.4%増)、連結営業利益は1,139億円(前年同期比0.3%増)となりました。
販売費及び一般管理費は、4,148億円計上しましたが、この主な内容は、広告宣伝及び販売促進費が1,507億円、従業員給付費用が1,372億円等であり、その結果、営業利益は1,139億円(前年同期比0.3%増)となりました。
金融収益は14億円となりました。また、金融費用は32億円となりました。この主な要因は、支払利息を28億円、為替差損を3億円計上したこと等によるものです。
これらの結果、税引前利益は1,122億円(前年同期比0.3%増)、親会社の所有者に帰属する当期利益は689億円(前年同期比13.9%減)となりました。また、1株当たり当期利益は222円94銭となりました。
また、報告セグメント別の業績につきましては、以下のとおりです。
[日本事業]
売上収益は7,043億円(前年同期比0.6%減)、セグメント利益は535億円(前年同期比1.5%増)となりました。
[欧州事業]
売上収益は2,225億円(前年同期比6.9%減)、セグメント利益は330億円(前年同期比13.4%増)となりました。
[アジア事業]
売上収益は2,317億円(前年同期比11.7%増)、セグメント利益は252億円(前年同期比13.7%減)となりました。
[オセアニア事業]
売上収益は532億円(前年同期比1.8%減)、セグメント利益は61億円(前年同期比3.7%減)となりました。
[米州事業]
売上収益は878億円(前年同期比3.2%増)、セグメント利益は82億円(前年同期比2.9%減)となりました。
(ⅱ)財政状態
当連結会計年度末の資産合計は、当連結会計年度においてIFRS第16号「リース」適用による使用権資産の増加等により、前連結会計年度末に比べ279億円増加して1兆5,673億円となりました。
負債は、IFRS第16号「リース」適用によるその他の金融負債(非流動)の増加等があったものの、長期借入金が減少したこと等により、前連結会計年度末に比べ108億円減少して7,297億円となりました。
資本合計は、利益剰余金の増加等により、前連結会計年度末に比べ387億円増加して8,376億円となりました。
以上の結果、親会社所有者帰属持分比率は48.3%となり、1株当たり親会社所有者帰属持分は2,448円44銭となりました。
②キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度におけるキャッシュ・フローの状況は次のとおりです。
当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は、前連結会計年度末に比べ30億円減少し、1,436億円となりました。
営業活動によるキャッシュ・フローは、税引前利益1,122億円、仕入債務及びその他の債務の増加89億円、減価償却費及び償却費710億円等により、資金の収入は前連結会計年度に比べ242億円増加し、1,706億円の収入となりました。
投資活動によるキャッシュ・フローは、有形固定資産及び無形資産の取得による支出588億円等により、資金の支出は前連結会計年度と比べ8億円増加し、594億円の支出となりました。
財務活動によるキャッシュ・フローは、長期借入金の返済による支出280億円、社債の償還による支出250億円等により、資金の支出は前連結会計年度に比べ583億増加し、1,152億円の支出となりました。
③生産、受注及び販売の実績
(ⅰ)生産実績
当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
セグメントの名称金額(百万円)前年同期比(%)
日本608,37199.3
欧州179,16694.3
アジア223,87098.8
オセアニア44,187116.8
米州76,89397.1
合計1,132,49098.7

(注)1.金額は、最終販売価格によっています。
2.上記の金額には、消費税等は含まれていません。
3.生産実績には外注分を含んでいます。
(ⅱ)受注実績
当社グループは、原則として見込み生産を主体としているため、記載を省略しています。
(ⅲ)販売実績
当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
セグメントの名称金額(百万円)前年同期比(%)
日本704,25499.4
欧州222,45793.1
アジア231,694111.7
オセアニア53,22898.2
米州87,750103.2
合計1,299,385100.4

(注)1.セグメント間の取引については相殺消去しています。
2.上記の金額には、消費税等は含まれていません。
3.主な相手先別の記載については、相手先別の販売実績の総販売実績に対する割合が100分の10未満のため記載を省略しています。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
文中における将来に関する事項は、本書提出日現在において判断したものです。
①重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、IFRSに準拠して作成されています。
連結財務諸表を作成するに当たり、重要となる会計方針については「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 3.重要な会計方針」に記載しています。重要な見積り及び判断については「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 4.重要な会計上の見積り及び判断」に記載しています。また、過去の実績や取引状況を勘案し、合理的と判断される前提に基づき見積りを行っている部分があり、これらの見積りについては不確実性が存在するため、実際の結果と異なる場合があります。
②当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
(ⅰ)経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
当社グループは、中期経営戦略を「第2 事業の状況 1.経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (2)中期経営戦略」に記載のとおり策定しています。その実現に向けて、当社グループが実施した活動は以下のとおりです。
当社グループは、お客様の嗜好・ニーズを捉えた上質でユニークな商品を提案し、お客様の生活に豊かさをお届けするという考えのもと、ブランド強化や新規需要の創造に注力したほか、品質の向上に取り組みました。また、将来の持続的な成長に向け、各エリアにおける事業基盤の強化にも注力しました。
こうした取組みによって、日本で「BOSS」「GREEN DA・KA・RA やさしい麦茶」が伸長し、また英国でも主力ブランド「Lucozade」が販売数量を伸ばしました。更に、アジアの清涼飲料事業も好調に推移し、連結売上収益は1兆2,994億円(前年同期比0.4%増)、グループ全体で51億円の増収となりました。
連結営業利益は1,139億円(前年同期比0.3%増)となり、前年同期に計上した事業売却120億円の影響があるものの、グループ全体で対前年同期4億円の増益となりました。
税引前利益は、連結営業利益の増加により、前年同期から4億円増加して1,122億円(前年同期比0.3%増)となりました。
法人所得税費用は、前年同期においてオランダで2021年以降の法人税率を25%から20.5%に引き下げる法案が上院で可決されたことにより、オランジーナ・シュウェップス・グループで計上する商標権に係る繰延税金負債の取り崩しが52億円発生しています。また、アジア事業において加工食品事業を売却した際の売却益120億円が、シンガポールの税制ではキャピタルゲインとして非課税となっています。これらが前年同期における実際負担税率を低下させており、当連結会計年度においては前年同期に比べ91億円増加して321億円となりました。この結果、当期利益は801億円(前年同期比9.9%減)となりました。
非支配持分に帰属する当期利益は、Suntory PepsiCo Beverage (Thailand) Co., Ltd.やSuntory PepsiCo Vietnam Beverage Co., Ltd.において業績が伸長した影響により24億円増加し、親会社の所有者に帰属する当期利益は、689億円(前年同期比13.9%減)となりました。
セグメント別の業績は次のとおりです。
[日本事業]
当連結会計年度も水・コーヒー・無糖茶カテゴリーを中心に重点ブランドの強化に取り組みましたが、梅雨明けが遅れた影響等で清涼飲料市場が前年同期を下回ったと推定される中、当社の販売数量も、市場は上回ったものの前年同期を下回りました。「サントリー天然水」は、7月の悪天候の影響もあり前年同期を下回りました。「BOSS」は、缶コーヒーのマーケティング活動を積極的に展開したことに加え、「クラフトボス」シリーズが伸長し、ブランド全体の販売数量は前年同期を上回りました。無糖茶カテゴリーでは、「伊右衛門」の販売数量は前年同期を下回ったものの、「GREEN DA・KA・RA やさしい麦茶」の販売数量が大きく伸長しました。また、特定保健用食品「特茶」や、機能性表示食品「伊右衛門プラス コレステロール対策」等で積極的なマーケティング活動を展開したほか、5月から一部商品の価格改定を行う等、売上収益の拡大に向けた取組みを進めました。
収益面では、収益力向上に向けた中期構造改革として「高付加価値・高収益モデルの確立」「SCMの構造革新」「自動販売機ビジネスの事業構造変革」に取り組みました。「自動販売機ビジネスの事業構造変革」は、当初想定のとおり成果が出るまで時間を要しますが、「高付加価値・高収益モデルの確立」「SCMの構造革新」は、着実に成果を出すことができました。また、継続的なコスト削減活動に取り組んだほか、前年同期に比べて販促広告費が減少しました。
これらの結果、日本事業の売上収益は7,043億円(前年同期比0.6%減)、セグメント利益は535億円(前年同期比1.5%増)となりました。
[欧州事業]
フランスでは、市況低迷の影響を受けて主力ブランド「Oasis」の販売数量が前年同期を下回りましたが「Orangina」の販売数量はほぼ前年同期並みになりました。英国では、「Lucozade」の販売トレンドの回復が継続しており、販売数量が前年同期を上回りました。スペインでは、主力ブランド「Schweppes」の販売数量は家庭用が牽引して前年同期を上回りましたが、販売単価の高い業務用での苦戦が響き、スペイン全体の売上は前年同期を下回りました。
収益面では、英国の販売数量増が利益にプラスに影響しました。フランスで前年同期に比べてサプライチェーンコスト等が減少したほか、マーケティング費用の効率化が利益に寄与しました。
これらの結果、欧州事業の売上収益は2,225億円(前年同期比6.9%減)、セグメント利益は330億円(前年同期比13.4%増)となりました。
[アジア事業]
清涼飲料事業では、ベトナムにおいてエナジードリンク「Sting」や茶飲料「TEA+」等が、タイにおいて主力の「PEPSI」が好調に推移し、いずれも売上が前年同期を大きく上回りました。また、インドネシアでご好評いただいているフレーバーウォーター「goodmood」をタイやベトナムでも発売しました。
健康食品事業では、主力市場のタイを中心に「BRAND'S Essence of Chicken」等のマーケティング強化に取り組んだほか、流通政策の見直しを進めました。
これらの結果、アジア事業の売上収益は2,317億円(前年同期比11.7%増)となりました。セグメント利益は252億円、前年同期に事業売却益120億円を計上した影響もあり前年同期比13.7%減となりました。
[オセアニア事業]
清涼飲料事業で「V」をはじめとするエナジードリンクのマーケティング強化に取り組んだほか、フレッシュコーヒー事業で「TOBY'S ESTATE」「L'AFFARE」「Mocopan」等主力ブランドの強化を図りました。
これらの結果、オセアニア事業の売上収益は532億円(前年同期比1.8%減)、セグメント利益は61億円(前年同期比3.7%減)となりました。
[米州事業]
主力炭酸ブランドの更なる販売強化に取り組むとともに、水やコーヒー飲料等、伸長している非炭酸カテゴリーにも注力しました。
これらの結果、米州事業の売上収益は878億円(前年同期比3.2%増)、セグメント利益は82億円(前年同期比2.9%減)となりました。
セグメント利益合計は1,139億円(前年同期比0.3%増)であり、連結損益計算書の営業利益と一致しています。
現在、飲料業界や当社グループを取り巻く事業環境は、非常に厳しいものであると考えています。世界各国で発生する異常気象や先進国における少子高齢化、原材料費や生産コスト・物流費の高騰等、従来の企業努力だけでは乗り切ることができないほど厳しい状況です。
このような状況を打破するため、当社グループは、売上収益の増加を着実に利益の増加につなげるための「構造改革」を強力に推し進めて、持続的成長の実現に取り組みます。
また、各セグメントにおいて以下の取組みに注力します。
日本では、「高付加価値・高収益モデルの確立」「SCMの構造革新」「自動販売機ビジネスの事業構造変革」に取り組みます。
欧州では、主要国において、主力ブランドの活性化を進めるとともに、営業やサプライチェーンマネジメントの強化等、構造改革に取り組みます。
アジアでは、清涼飲料事業で引き続き着実な成長を狙うとともに、健康食品事業ではトレンド回復の流れを確実なものにすべく取り組みます。
オセアニアでは、清涼飲料事業・フレッシュコーヒー事業ともに主力ブランドの強化を継続します。
米州では、主力ブランドの強化とともに、コスト削減の取組みも継続します。
経営陣一体となって、以上の取組みを、強力に迅速に進めていきます。
(ⅱ)財政状態の分析
当社グループは日本のみならず欧州、アジア、オセアニア、米州の各地に活動拠点を有しています。各拠点の機能通貨で算定された資産・負債は連結財務諸表の表示通貨である日本円に換算するため、当社グループの資産・負債残高は各種通貨の日本円に対する為替変動に大きく影響されます。各通貨の期首及び期末の為替レートについては「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 3.重要な会計方針 (3)外貨換算」をご参照ください。当連結会計年度は米ドル、ユーロといった主要な通貨が期末にかけて円高に推移したことが要因となり、資産・負債はそれぞれ減少したものの、資産はIFRS第16号「リース」適用による使用権資産の増加等で、増加しています。
のれん及び無形資産は当社グループの資産総額の約42.1%を占める重要な構成要素であり、これまでに実施したM&Aの結果、取得したブランドや統合により得られるシナジーを評価して計上したものです。このうち、のれん及び耐用年数を確定できない無形資産については定期的な償却は行われず、主に年に一度実施する減損テストを通じて適切な回収可能額で評価されます。減損テストは直近のブランド損益を基礎とした将来見込みを用いて、客観的手法によって割引計算されます。その結果、当社グループは当連結会計年度において無形資産を合わせて約10億円の減損損失を計上しています。ブランドごとに販売する地域の景気や天候、ブランドコンディションには違いがあり、このように個別には減損損失が発生する場合がありますが、減損損失金額自体は当社グループが計上する無形資産残高に対して僅少であり、当社グループがこれまでに実施したM&Aとその後の統合プロセスはいずれも全体としては順調に推移していると評価しています。当社グループは、今後も無形資産の適正な評価に取り組む方針です。
また、負債は、IFRS第16号「リース」適用の影響によりその他の金融負債の増加があったものの、長期借入金の減少や社債の償還等により減少しています。借入金が毎期着実に減少していることで、ネットD/Eレシオは0.1となりました。
(ⅲ)キャッシュ・フローの状況の分析
当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は、前連結会計年度末に比べ30億円減少し、1,436億円となりました。
営業活動によるキャッシュ・フローは、主に前連結会計年度において子会社株式売却損益を計上していたことに加え、減価償却費及び償却費が増加したことにより、資金の収入が前連結会計年度に比べ242億円増加し、1,706億円の収入となりました。
投資活動によるキャッシュ・フローは、有形固定資産および無形資産の取得が増加したことにより、資金の支出は前連結会計年度と比べ8億円増加し、594億円の支出となりました。フリーキャッシュフローは1,112億円となり、前連結会計年度から234億円増加しました。
財務活動によるキャッシュ・フローは、長期借入金の返済による支出280億円、社債の償還による支出250億円等により、資金の支出は前連結会計年度と比べ583億円増加し、1,152億円の資金の支出となりました。
(資本の財源及び資金の流動性について)
当社グループにおける資金需要のうち、主なものは設備投資、事業投資、有利子負債の返済及び運転資金等です。当社グループは資金の流動性確保のため、市場環境や長短のバランスを勘案して、銀行借入やリース等による間接調達のほか、社債やコマーシャル・ペーパーの発行等の直接調達を行い、資金調達手段の多様化を図っています。
また、事業活動等により創出したキャッシュ・フローに加えて、金融機関より随時利用可能な信用枠を確保しており、資金需要に対応しています。
なお、今後予定されている設備投資に係る資金需要の主なものは、「第3 設備の状況 3設備の新設、除却等の計画」をご覧ください。
(3)経営成績等の状況の概要に係る主要な項目における日本基準との差異に関する情報
IFRSにより作成した連結財務諸表における主要な項目と日本基準により作成した場合の連結財務諸表におけるこれらに相当する項目との差異に関する事項は、以下のとおりです。
なお、当該差異の金額については、当社グループは日本基準に基づく連結財務諸表を作成していないため、一定の仮定を設定して算出した概算額で記載しています。
(のれんの償却)
日本基準ではのれんを一定期間にわたり償却していましたが、IFRSではのれんの償却は行われず、毎期減損テストを実施することが要求されます。この影響により、IFRSでは日本基準に比べて販売費及び一般管理費が当連結会計年度において26,170百万円減少しています(前連結会計年度26,975百万円減少)。