四半期報告書-第13期第3四半期(平成28年10月1日-平成28年12月31日)

【提出】
2017/02/14 15:33
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24項目

財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析

文中の将来に関する事項は、当第3四半期連結会計期間の末日現在において当社グループが判断したものであります。
(1)業績の状況
2016年5月15日から17日に茨城県つくば市において、「G7 茨城・つくば科学技術大臣会合」が開催されました。最終日に採択された共同声明「つくばコミュニケ」には、G7各国及び多くの新興国が急速な高齢化社会に直面するなかで、高齢者が健康的に年を重ね、良質なケアを受けられる社会システムの構築を含む、科学に基づいたイノベーションの重要性が強調されており、ロボティクスの活用による、高齢者の福祉や生活の質の向上及び介護者の負担軽減への可能性と、社会科学研究と医療・ICT・ロボット支援を統合して、家族や社会の負担を軽減することの決意が表明されています。
日本では、第5期科学技術基本計画(2016年1月22日閣議決定)において、新しい概念である「Society 5.0」(サイバー空間とフィジカル空間の融合により経済・社会的課題を解決し、人々が質の高い生活を送ることのできる人間中心の社会)の強力な推進が掲げられました。これを受け、「科学技術イノベーション総合戦略2016」(2016年5月24日閣議決定)では、Society 5.0の深化と推進に向けて、重きをおくべき取組として、高齢者・障害者の安全・安心な生活に向けた支援ロボット等の研究開発、支援を必要とする方の自立促進及び看護・介護等サービスの効果的提供の支援技術の研究開発等が挙げられています。
このようにSociety 5.0に代表される国内外の動向は、当社グループが目指す『重介護ゼロ®社会』と軌を一にしています。当社グループは、革新的サイバニクス技術を駆使することにより、社会が直面する課題解決と経済サイクル確立の両立を図り、医療・介護福祉・生活分野における社会変革や産業変革を目指し、研究開発及び事業展開をさらに加速して進めてまいります。
当第3四半期連結累計期間において、医療分野では、医療用HAL®(両脚モデル)について、2016年4月25日に厚生労働省が神経筋難病疾患に対する医療用HAL®を用いた治療に係る技術料等の保険点数解釈を公表し、ロボット治療として世界で初めて公的医療保険の償還価格が決定するとともに、2016年9月2日から世界で初めて公的な医療保険診療が開始しました。当社では、今後の脳卒中や脊髄損傷など他の疾患への適用拡大に向けて、国内外の医療機関と連携して臨床試験や治験を加速してまいります。すでに脳卒中については、医療用HAL®(単脚モデル)での機能改善・機能再生治療を目的として、医療機器承認のための医師主導治験が2016年9月30日より開始されております。さらに、少しでも多くの麻痺患者への適用に向けて、有力医療研究機関とも連携して、医療用HAL®と再生医療を組み合わせた革新的機能再生治療の研究も進めております。また、革新的医療技術の普及に向けて、公的保険に加え民間保険と協働する取り組みとして、生命保険分野では2016年9月2日に大同生命保険株式会社と、損害保険分野では2016年11月21日にAIGジャパン・ホールディング株式会社とそれぞれ業務提携契約を締結しております。欧州においては、既に医療機器認証を取得し、ドイツで治療サービス事業を展開しています。ドイツでは医療用HAL®を利用した治療に公的労災保険が適用されていますが、公的医療保険への適用拡大を目指し、各種手続きを進めております。米国においては、FDA(米国食品医薬品局)との協議の結果を踏まえ、医療用HAL®によるサイバニクス技術を利用した脳・神経系の機能改善・機能再生治療の革新性に関して、FDA側の理解が深化したと判断し、他に類のない革新的なロボット治療機器であることが識別可能な形式での承認に向けて、2016年11月4日に、FDAにPre-submissionを提出し、再申請に向けた手続きを開始しています。なお、米国では、FDAからの医療機器承認を見越して、CYBERDYNE USA Inc.を設立し、2016年9月から事業活動を開始しております。
また、超軽量・コンパクトで肘・膝関節に対応したHAL®単関節タイプについても医療機器化に向けた臨床研究を推進しております。手のひらサイズの動脈硬化度・心電計であるバイタルセンサーについては、PMDA(独立行政法人医薬品医療機器総合機構)と医療機器申請に向けた事前相談を開始しております。
医療用HAL®は、今後の適用拡大を目指して国内外での臨床試験を推進するとともに、世界初の公的な医療保険診療によって国内医療機関への導入が開始し、2016年12月末時点で臨床試験用も含め国内外あわせて185台(内、国内レンタル33台)が稼働中です。今後は、各地域に中核病院の拠点化を進めながら、順次、拡充していく予定です。またHAL®自立支援用(単関節タイプ)も臨床研究を目的として日本国内での病院を中心に導入が進み、2016年12月末時点で202台が稼働中です。
介護福祉の分野においては、HAL®福祉用等の下肢タイプは、自立動作支援を目的として日本国内の福祉施設や病院等で運用され、2016年12月末時点で462台が稼働中です。また、介護離職に悩む介護施設での介助者の腰部負荷低減による労働環境改善を目的としたHAL®介護支援用(腰タイプ)は、2016年11月から入浴介助にも利用できる防水機能等を付加した高機能モデルの市場投入や厚生労働省の介護ロボット導入支援事業向けの出荷開始により2016年9月末時点から170台増加し、2016年12月末時点で473台が稼働中で、第4四半期も引き続き増加が見込まれております。
作業支援の分野においては、少子高齢化による労働人口の減少を背景に深刻な人手不足が発生している物流倉庫業や建設業や各種工場での、作業者の腰部負荷低減による労務環境改善を目的としたHAL®作業支援用(腰タイプ)は、羽田空港リムジンバスや大手ゼネコンの本格導入による増加もあり、2016年12月末時点において272台が稼働中です。今後は防水等の機能付加により利用範囲の大幅な拡大が見込まれます。また、クリーニングロボット及び搬送ロボットは、羽田空港国際ターミナルや大手製薬工場への導入が進み、2016年12月末時点において19台が稼働中です。
以上の結果、当第3四半期連結累計期間の売上高は主に医療用HAL®やHAL®介護支援用(腰タイプ)の導入台数の増加により1,055,339千円(前年同期比18.6%増加)を計上した結果、売上総利益は688,528千円(同14.0%増加)と増加しました。なお、第3四半期連結会計期間の売上高は、前年同期間比で35.8%の大幅増加となりました。
研究開発費はJST(国立研究開発法人科学技術振興機構)の革新的研究開発推進プログラム(ImPACT)における「重介護ゼロ社会を実現する革新的サイバニックシステム」の受託研究事業の加速などにより654,655千円(同11.6%増加)と増加、その他の販売費及び一般管理費は主に転換社債の権利行使による株式転換に伴う事業税(資本割)等の租税公課の増加などにより995,726千円(同13.2%増加)を計上した結果、営業損失は961,852千円を計上しました。
営業外収益につきましては、上記の研究開発加速に伴う受託研究収入の増加及び福島県の次世代型多目的ロボット化生産拠点新設等に伴う助成金収入の増加により1,150,949千円(同196.0%増加)と大幅に増加する一方で、営業外費用につきましては、転換社債の権利行使による株式転換に伴う一時費用である株式交付費96,231千円の発生及び福島県の次世代型多目的ロボット化生産拠点新設等に伴う固定資産圧縮損の増加により846,605千円(同676.1%増加)を計上することにより、経常損失は657,509千円を計上しました。
また、法人税等4,813千円を計上した結果、親会社株主に帰属する四半期純損失は662,583千円を計上しています。
(2)財政状態の分析
① 資産
当第3四半期連結会計期間末における資産合計は、前連結会計年度末に比べて569,998千円減少し46,964,471千円となりました。これは、主として現金及び預金が3,754,948千円、有価証券が2,500,386千円減少し、建設仮勘定が4,969,341千円増加したことによるものです。
② 負債
当第3四半期連結会計期間末における負債合計は、前連結会計年度末に比べて19,847,402千円減少し623,133千円となりました。これは、主として転換社債型新株予約権付社債の権利行使による株式転換によるものです。
③ 純資産
当第3四半期連結会計期間末における純資産合計は、前連結会計年度末に比べて19,277,404千円増加し46,341,338千円となりました。これは、主として転換社債型新株予約権付社債の権利行使による株式転換によるものです。
(3)研究開発活動
当第3四半期連結累計期間の研究開発費の総額は654,655千円であります。
なお、当第3四半期連結累計期間において当社の研究開発活動の状況に重要な変更はありません。