有価証券届出書(新規公開時)

【提出】
2019/11/21 15:00
【資料】
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【項目】
121項目
文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社が判断したものであります。
(1) 経営成績等の状況の概要
① 財政状態及び経営成績の状況
第4期事業年度(自 2018年4月1日 至 2019年3月31日)
近年我が国において、少子高齢化や人口減による労働人口の減少が問題となる中、当社は産業界に遍在する労働集約的作業に代わる手段として、AI化を推し進め、生産性向上のためのAIプラットフォームを提供してまいりました。
当社が展開する事業と関わりの深い「非IT系の外部委託市場」を例にとると、2016年度は1.66兆円の実績、2017年度は1.7兆円の実績とされており、市場は成長していくと予想されます(市場規模は全て「BPO(ビジネスプロセスアウトソーシング)市場の実態と展望 2018-2019(株式会社矢野経済研究所)」より)。
また、BPO市場に限らず、「国内売上高上位企業のCIO(最高情報責任者)を対象とした郵送によるアンケート調査」(出典:野村総合研究所「ユーザー企業のIT 活用実態調査」2018年5月発表)では、AI技術の導入、または検討をしたい企業は全体の66.9%に上るなど、さらに市場は成長していくと予想されます。
このような状況において、当社のサービスをより多くの顧客に導入頂き収入は増加した一方で、販売力強化、読み取りエンジンの開発や読取り精度の向上のための人員の増加、サーバー費、業務委託費等の増加により支出も増加しました。サービス別にみると、「DX Suite」においては、販売パートナーを通じたプロモーションや短期テスト利用プランを通じてユーザが大幅に増加し、期末には継続利用ユーザ(有償トライアルユーザ以外の、本契約ユーザ)が150社超となりました。6月には、読み取りエンジン自体はクラウド上にあるものの、読み取り等は顧客環境に設置した装置にて行うことにより、よりセキュアにユーザデータを処理する「DX Suite」ハイブリッド版の販売を開始し、大口の新規受注等により「DX Suite」の売上高の増加に寄与いたしました。また、「DX Suite」のオプション機能として9月に提供を開始した帳票仕分けシステム「Elastic Sorter」のユーザ数も堅調に増加しており、「DX Suite」の導入にかかるカスタマイズ作業や機能拡張に伴う検証作業等による収益が生じました。またその他に、読み取りを行う当社のAIエンジンである「Neural X」を応用した個人情報データを機密分散管理する「Fractal Data Base」の提供開始や、リサイクル施設における画像認識モデルの構築案件などによる収益も発生しました。
この結果、当事業年度の経営成績は、売上高445,264千円(前年同期比59.3%増)、営業損失181,488千円(前年同期営業損失311,407千円)、経常損失182,914千円(前年同期経常損失311,479千円)、当期純損失183,865千円(前年同期当期純損失340,533千円)となりました。
また、当事業年度末の財政状態は、資産合計966,649千円(前年同期比146.3%増)、負債合計361,439千円(前年同期比359.9%増)、純資産合計605,210千円(前年同期比92.8%増)となりました。負債残高の主な増加要因は、短期借入金100,000千円が増加したこと、また「DX Suite」の契約社数が増加したことに加え、大口顧客向けの「DX Suite」ハイブリッド版の販売を開始し、受注を獲得できたことにより前受収益が167,803千円増加したことによるものであります。
なお、当社は人工知能事業の単一セグメントであるため、セグメント別の記載は省略しております。
第5期第2四半期累計期間(自 2019年4月1日 至 2019年9月30日)
当第2四半期累計期間における我が国の経済は、企業業績や雇用環境の改善が続いており、引き続き緩やかな回復基調が続いているものの、米中の貿易摩擦による景気減速懸念等、依然として景気の先行きは不透明な状況が続いております。また、少子高齢化や人口減による労働人口の減少を背景に、企業は労働者の働き方の改善を意識した事業運営が求められる基調となっています。
このような市場環境において、当社は産業界に遍在する労働集約的作業に代わる手段として、AI化を推し進め、生産性向上のためのAIプラットフォーム「DX Suite」を提供してまいりました。前事業年度にユーザ数を拡大した「DX Suite」のクラウド版は、引き続き、堅調に新規ユーザの獲得が進みました。また、新規に提供を開始しました「DX Suite」のオンプレミス版についても、複数の顧客からテスト導入の引き合いをいただいており、本番導入も始まりました。
以上の結果、当第2四半期累計期間における当社の業績は、売上高613,894千円となりました。利益につきましては、営業利益179,006千円、経常利益176,739千円、四半期純利益175,594千円となりました。
また、当第2四半期会計期間末の財政状態は、資産合計1,297,988千円(前年事業年度末比34.3%増)、負債合計517,183千円(前年事業年度末比43.1%増)、純資産合計780,804千円(前年事業年度末比29.0%増)となりました。
なお、当社は人工知能事業の単一セグメントであるため、セグメント別の記載は省略しております。
② キャッシュ・フローの状況
第4期事業年度(自 2018年4月1日 至 2019年3月31日)
当事業年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、799,069千円(前期末比597,070千円増、295.6%増)となりました。また当事業年度における各キャッシュ・フローの状況は以下のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当事業年度において営業活動により得られた資金は、34,172千円(前年同期は321,554千円の支出)となりました。
主な増加要因として、未収入金の減少による収入70,203千円、契約数が増加したことによる前受収益の増加167,803千円があったことに対して、主な減少要因として売上高の増加に伴う売上債権の増加60,635千円、人員の増加や研究開発を積極的に実施したことによる税引前当期純損失182,914千円の計上があったためであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当事業年度において投資活動により支出した資金は、12,256千円(前年同期は54,699千円の支出)となりました。
これは、有形固定資産の取得による支出によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当事業年度において財務活動により得られた資金は、575,200千円(前年同期は480,000千円の収入)となりました。
主な要因は、株式発行による収入530,400千円、短期借入による収入100,000千円、自己株式の取得による支出70,200千円であります。
第5期第2四半期累計期間(自 2019年4月1日 至 2019年9月30日)
当第2四半期会計期間末における資金は、前事業年度末より264,682千円増加し、1,063,752千円となりました。また、当第2四半期累計期間におけるキャッシュ・フローの状況は以下のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当第2四半期累計期間において営業活動により資金の増加は335,142千円となりました。
主な収入要因は税引前四半期純利益176,739千円、前受収益の増加120,625千円であります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当第2四半期累計期間において投資活動により支出した資金は70,801千円となりました。
主な支出要因は、敷金及び保証金の差入による支出21,035千円、有形固定資産の取得による支出49,838千円であります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当第2四半期累計期間において財務活動は、短期借入金の返済による支出100,000千円及び新規の短期借入れによる収入100,000千円がございましたが、資金の増減はございません。
③ 生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当社で行う事業は、提供するサービスの性格上、生産に該当する事項がないため、生産実績に関する記載を省略しております。
b.受注実績
当社で行う事業は、受注から役務提供の開始までの期間が短く、受注状況には重要性がないため記載を省略しております。
c.販売実績
第4期事業年度及び第5期第2四半期累計期間における販売実績は次のとおりであります。なお、当社は人工知能事業の単一セグメントであるため、収益計上のモデル別に記載しております。
収益モデル第4期事業年度
(自 2018年4月1日
至 2019年3月31日)
第5期第2四半期累計期間
(自 2019年4月1日
至 2019年9月30日)
売上高(千円)前年同期比(%)売上高(千円)
リカーリング型モデル97,423288.5225,210
セリング型モデル347,840141.6388,684
合計445,264159.3613,894

(注) 1.最近2事業年度及び第5期第2四半期累計期間の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。
相手先第3期事業年度
(自 2017年4月1日
至 2018年3月31日)
第4期事業年度
(自 2018年4月1日
至 2019年3月31日)
第5期第2四半期累計期間
(自 2019年4月1日
至 2019年9月30日)
金額(千円)割合(%)金額(千円)割合(%)金額(千円)割合(%)
株式会社レオパレス21170,79361.1

2.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
3.第4期事業年度及び第5期第2四半期累計期間における株式会社レオパレス21に対する販売実績は、当該販売実績の総販売実績に対する割合が100分の10未満であるため記載を省略しております。同社に対する販売実績の減少理由は同社からの受託開発案件が縮小したことによるものであります。
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において判断したものであります。
① 重要な会計方針及び見積り
当社の財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。その作成には、経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額並びに開示に影響を与える見積りを必要としております。経営者は、これらの見積りを行うにあたり、過去の実績等を勘案し合理的に判断しておりますが、実際の結果は、見積りによる不確実性のため、これらの見積りと異なる結果をもたらす場合があります。なお、当社の財務諸表で採用する重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 財務諸表等 (1) 財務諸表 注記事項 重要な会計方針」に記載しております。
② 財政状態の分析
第4期事業年度(自 2018年4月1日 至 2019年3月31日)
(資産)
当事業年度末における資産合計は、前事業年度末に比べ574,184千円増加し、966,649千円となりました。
主な要因は、流動資産において現金及び預金の増加597,070千円、売掛金の増加60,635千円、未収入金の減少70,203千円があったこと等によります。
(負債)
当事業年度末における負債合計は、前事業年度末に比べ282,849千円増加し、361,439千円となりました。
主な要因は、流動負債において、短期借入金の増加100,000千円、前受収益の増加167,803千円があったこと等によります。前受収益の増加は、主に「DX Suite」の契約社数が増加したこと、また大口顧客向けの「DX Suite」ハイブリッド版の販売を開始し、受注を獲得できたことによるものであります。
(純資産)
当事業年度末における純資産合計は、前事業年度末に比べ291,334千円増加し、605,210千円となりました。
主な要因は、資本金及び資本剰余金の増加539,400千円、自己株式の増加64,200千円、当期純損失の計上に伴う利益剰余金の減少183,865千円があったこと等によります。なお、当事業年度末における自己資本比率は62.6%となりました。
第5期第2四半期累計期間(自 2019年4月1日 至 2019年9月30日)
(資産)
当第2四半期会計期間末における資産合計は、前事業年度末に比べて331,338千円増加し、1,297,988千円となりました。この主な要因は、現金及び預金が264,682千円増加したこと等によるものであります。
(負債)
当第2四半期会計期間末における負債合計は、前事業年度末に比べて155,744千円増加し、517,183千円となりました。この主な要因は、前受収益が120,625千円増加したこと等によるものであります。
(純資産)
当第2四半期会計期間末における純資産合計は、前事業年度末に比べて175,594千円増加して780,804千円となりました。これは、四半期純利益を175,594千円計上したことにより、利益剰余金が増加したためであります。なお、当第2四半期会計期間末における自己資本比率は60.2%となり、前事業年度末に比べ、2.4ポイント減少しております。

③ 経営成績の分析
第4期事業年度(自 2018年4月1日 至 2019年3月31日)
(売上高)
当事業年度の売上高は、445,264千円(前年同期比59.3%増)となりました。主な要因は、「DX Suite」において、「Intelligent OCR」契約数が10件から185件へ急増したことが挙げられます。また、新製品「Elastic Sorter」契約数についても102件と順調に契約を獲得できたこと、リクエスト数についても累計383万回から7,280万回へと急増したことによります。この間の平均解約率が0.73%と低い水準であったことも後押しし、リカーリング型売上は97,432千円となりました。
(売上原価、売上総利益)
当事業年度の売上原価は、84,145千円(前年同期比53.1%減)となりました。これは主に、「DX Suite」ユーザの大幅な増加に伴い売上高が増加したものの、受託開発案件が減少したことにより前事業年度と比較して外注費が減少したことによるものであります。この結果、売上総利益は、361,119千円(前年同期比261.5%増)となりました。
(販売費及び一般管理費、営業損失)
当事業年度の販売費及び一般管理費は、542,607千円(前年同期比31.9%増)となりました。主な要因は、販売力強化、読み取りエンジンの開発や読取り精度の向上のための人員の増加、サーバー費、業務委託費等の増加によります。この結果、営業損失は、181,488千円(前年同期営業損失311,407千円)となりました。
(営業外収益、営業外費用、経常損失)
当事業年度において、営業外収益は77千円、営業外費用は1,504千円発生しました。主な要因は、短期借入金における支払利息1,107千円が発生したことによるものです。この結果、経常損失は、182,914千円(前年同期経常損失311,479千円)となりました。
(特別損益、当期純損失)
当事業年度において特別損益は発生しておらず、法人税等を950千円計上した結果、当期純損失は183,865千円(前年同期当期純損失340,533千円)となりました。
第5期第2四半期累計期間(自 2019年4月1日 至 2019年9月30日)
(売上高)
当第2四半期累計期間の売上高は、613,894千円となりました。主な要因は、「DX Suite」において、「Intelligent OCR」契約数が185件から361件へ急増したことや、「Elastic Sorter」契約数が102件から206件へと順調に契約を獲得できたこと、リクエスト数についても累計7,280万回から2億1,249万回へと急増したことによります。また、新商品「Multi Form」契約数が238件獲得できたことと、新商品「AI inside Cube」の出荷台数が堅調に推移していることによります。この間の平均解約率が0.58%と低い水準であったことも後押しし、リカーリング型売上は225,210千円と伸長しました。
(売上原価、売上総利益)
当第2四半期累計期間の売上原価は、55,815千円となりました。主な要因は、サーバー費用が30,913千円発生したこと等によるものです。この結果、売上総利益は558,078千円となりました。
(販売費及び一般管理費、営業利益)
当第2四半期累計期間の販売費及び一般管理費は、379,071千円となりました。主な要因は、人件費、研究開発費等の増加によるものであります。この結果、営業利益は179,006千円となりました。
(営業外収益、営業外費用、経常利益)
当第2四半期累計期間において、営業外収益は480千円、営業外費用は2,747千円発生しました。主な要因は、上場関連費用2,000千円が発生したこと等によるものです。この結果、経常利益は176,739千円となりました。
(特別損益、四半期純利益)
当第2四半期累計期間において特別損益は発生しておらず、法人税等を1,145千円計上した結果、四半期純利益は175,594千円となりました。

④ キャッシュ・フローの状況の分析
キャッシュ・フローの状況の分析については、「(1) 経営成績等の状況の概要 ② キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりです。
⑤ 経営成績に重要な影響を与える要因について
経営成績に重要な影響を与える要因につきましては、「2 事業等のリスク」をご参照下さい。
⑥ 資本の財源及び資金の流動性について
当社の資本の財源及び資金の流動性につきましては、事業運営上必要な流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針としております。運転資金需要のうち主なものは、当社サービスを拡大していくための開発人員及び営業人員の人件費、また研究開発に係る費用であります。これらの資金については自己資金にて充当する方針です。
⑦ 経営者の問題意識と今後の方針について
経営者の問題意識と今後の方針については、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」をご参照下さい。