有価証券報告書-第84期(2022/04/01-2023/03/31)

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2023/06/29 11:56
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(1) 経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりです。
1.財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による影響の緩和と経済活動の正常化が進む一方で、ウクライナ情勢等を受けた原材料・エネルギー価格の高騰やサプライチェーンに与える影響、金融資本市場の変動等の影響により不透明な状況が継続いたしました。企業収益の改善や設備投資、雇用も持ち直しの動きが見られ、個人消費も緩やかに回復したものの、物価上昇による消費者マインドの悪化が、経済の持ち直しの速度を弱める可能性もあり、注視が必要な状況が続いております。
国内の住宅市場における新設住宅着工戸数は、分譲住宅及び貸家が前年比プラスとなったものの、持家が減少したことにより全体では前年比がわずかにマイナスとなりました。一般建設市場でも、建築着工床面積において、事務所の使途が減少し、全体では前年比がわずかにマイナスとなりました。
このような事業環境の中で当社グループは、2022年度を初年度とする5ヵ年計画「第7次中期経営計画」のもと、「収益モデルの進化」・「経営効率の向上」・「経営基盤の強化」の3つの経営方針を掲げ、持続的な成長モデルの実現に向け、海外事業のさらなる進展や、地域を活性化させる複合再開発の推進、カーボンニュートラルの実現に向けた取組み等、各施策を実施してまいりました。
以上の結果、当連結会計年度における売上高は4,908,199百万円(前連結会計年度比10.6%増)、営業利益は465,370百万円(前連結会計年度比21.4%増)、経常利益は456,012百万円(前連結会計年度比21.2%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は308,399百万円(前連結会計年度比36.9%増)となりました。
なお、上記の営業利益には退職給付数理差異等償却益96,656百万円を含んでおり、数理差異等を除いた営業利益は368,714百万円(前連結会計年度比11.0%増)となりました。
セグメント別の概況は次のとおりです。
なお、当連結会計年度より、報告セグメントの区分を変更しております。詳細は、「第5 経理の状況 1 (1)連結財務諸表 注記事項(セグメント情報等) セグメント情報」をご参照ください。下記の連結会計年度との比較については、前連結会計年度の数値を変更後のセグメント区分に組み替えた数値で比較しております。

戸建住宅事業では、事業ミッション「『続く幸せ』を、住まいから」及び、事業ビジョン「LiveStyle Design(リブスタイルデザイン)~家を、帰る場所から『生きる』場所へ~」のもとで、お客様の人生に寄り添い、地域に密着した事業展開を推進してまいりました。
国内の住宅事業では、主力鉄骨造商品「xevoΣ(ジーヴォシグマ)」、木造住宅商品「xevo Granwood(ジーヴォグランウッド)」、3・4・5階建「skye(スカイエ)」を中心に、オンラインで家づくりができる「Lifegenic(ライフジェニック)」や富裕層をターゲットとした当社最高級戸建住宅商品「Wood Residence MARE-希-(マレ)」等の多彩な商品ラインアップに加えて、当社オリジナルのソフト提案として「テレワークスタイル」や家族で家事をシェアする「家事シェアハウス」等、注文住宅・分譲住宅において、お客様の課題解決と社会の変化をとらえた新たな価値の提案に注力してまいりました。
また、2023年1月からはデジタル技術を使った提案力を強化し、初回提案時におけるプランの3D化やWEBコミュニケーションツール「LiveStyle診断」等をスタートしております。加えて、業界初となる24時間防犯カメラ機能付きインターホンを搭載した戸建住宅向け宅配ボックスを開発し、防犯や社会課題の改善に取組む商品を提案しております。
海外では、米国において、雇用拡大による住宅需要が見込める米国東部・南部・西部を結ぶスマイルゾーンでの戸建住宅事業を展開しております。2022年度後半は、度重なる政策金利の引き上げによる影響により受注が鈍化したものの、 需要は堅調であることから、価格調整に頼らない販売活動を継続いたしました。住宅ローン金利の上昇に一服感がみられ、足元の受注は回復傾向となっております。
以上の結果、当事業の売上高は910,076百万円(前連結会計年度比15.9%増)、営業利益は46,666百万円(前連結会計年度比21.6%増)となりました。

賃貸住宅事業では、ご入居者様に喜ばれ、長く住み続けたいと思っていただける住まいを提供し、オーナー様の資産価値の最大化に繋がる賃貸住宅経営のご提案とサポートを行ってまいりました。環境負荷を低減し、省エネ・創エネ対応の賃貸建物を推進する中、2022年10月に断熱性能を高めた「TORISIA(トリシア)」を販売開始し、ZEH-M物件のさらなる普及・拡販に努めてまいりました。
大和リビング株式会社では、ライフスタイルの変化に伴い、管理物件にインターネットや宅配ボックスを標準導入するなど、ご入居者様のニーズにあわせた仕様を備えたことにより、高い入居率を維持するとともに、当社建築物件の管理戸数も増加いたしました。
大和ハウス賃貸リフォーム株式会社では、当社施工の賃貸住宅を所有するオーナー様に対し、定期点検・診断を通じたリレーションの強化を図り、保証延長工事やリノベーション提案を継続して推進してまいりました。
また、当社及び、大和リビング株式会社、大和ハウス賃貸リフォーム株式会社の3社は、近年の貧困や少子高齢化等、多様化・複雑化する社会課題の解決に向けて、賃貸住宅「D-room」を中心とする新たな「循環型事業モデル」を確立させるために「大和ハウスグループ『D-room地域共生基金』」を設立いたしました。地域の安全・防犯、地域イベントや文化の伝承、ひとり親世帯をはじめとする子育て等に支援・貢献している10団体を選定し、2023年3月に第1回目の寄付を実施いたしました。
海外では、賃貸住宅開発事業を展開している米国において、メリーランド州で開発した賃貸住宅「ロックビルタウンセンター」の収益性が評価され、早期の売却が実現いたしました。断続的な金利上昇が機関投資家をはじめとする購買層の資金調達に影響し、収益物件のマーケットの動きに注視が必要な状況が継続しておりますが、開発した物件を高収益で売却できるタイミングを計りつつ、稼働率や賃貸による収益率の向上に注力しております。
以上の結果、当事業の売上高は1,149,424百万円(前連結会計年度比9.2%増)、営業利益は109,710百万円(前連結会計年度比13.5%増)となりました。

マンション事業では、お住まいになる方々の多彩なライフスタイルに応えるため、ハウスメーカーとして培ってきたノウハウを駆使しながら、長寿命の住まいに欠かせない基本性能や快適性、安全性、管理体制の提供を追求してまいりました。そして、お客様にとっての資産価値に加えて、環境や社会への配慮、地域社会への貢献を目指した付加価値の高いマンションづくりに努めております。
2023年3月に販売開始した「プレミスト本鵠沼」(神奈川県)は、閑静な立地と徒歩10分圏内に生活利便施設や教育施設が整う成熟した住環境に加えて、各主要都市への交通利便性の良さが評価され、販売が順調に進捗しております。
また、当社が開発する分譲マンション「プレミスト」シリーズでは、2024年度以降に着工する全棟にZEH-M仕様を採用いたします。2018年度からZEH-M仕様のマンション開発を開始し全国での開発・販売体制が整ったため、当初目標から2年前倒しで取組むこととなりました。
株式会社コスモスイニシアでは、「イニシア町田」(東京都)が、JR横浜線町田駅から徒歩4分の交通利便性と商業施設や商店街が揃う生活利便性に加え、三方が道路に面した立地の解放感や日当たりの良さなどが評価され、販売が順調に進捗し全戸完売いたしました。
大和ライフネクスト株式会社では、充実した福利厚生により企業の採用競争力を高めるため、寮・社宅ニーズ、在宅勤務等の普及によるコミュニケーション不足や体調不良時の孤立化リスクに応えるべく、法人向けクォリティレジデンス「エルプレイスシリーズ」(社員寮)を全国61ヶ所に展開しております。2023年3月には、新規物件「エルプレイス清澄白河」(東京都)を開業いたしました。
以上の結果、当事業の売上高は484,382百万円(前連結会計年度比27.5%増)、営業利益は40,879百万円(前連結会計年度比319.2%増)となりました。

商業施設事業では、テナント企業様の事業戦略やエリアの特性を活かし、ニーズに応じたバリエーション豊富な企画提案を行ってまいりました。特に、大型物件への取組みの強化や、当社で土地取得・開発企画・設計施工・テナントリーシングまで行った物件を投資家に販売する分譲事業等に注力してまいりました。
都市型ホテル事業では、大和ハウスリアルティマネジメント株式会社において、ペントアップ需要や外国人の旅行先として訪日のニーズが根強い中、2022年10月に実施された外国人観光客入国制限解除や歴史的な円安が追い風になり、コロナ前以上のインバウンド需要の回復に伴う収益増が期待されております。ダイワロイネットホテルの2023年1月から3月の平均稼働率は85.1%と改善し、順調に推移いたしました。
フィットネスクラブ事業では、スポーツクラブNAS株式会社において、スクール会員数はコロナ前の水準まで回復してまいりましたが、昨今の水光熱費高騰の影響で厳しい経営環境が続いているため、運営オペレーションの見直しによる効率化を継続し、コスト削減を徹底してまいりました。
以上の結果、当事業の売上高は1,092,167百万円(前連結会計年度比5.2%増)、営業利益は132,984百万円(前連結会計年度比7.1%増)となりました。

事業施設事業では、法人のお客様の様々なニーズに応じた施設建設のプロデュースや不動産の有効活用をトータルサポートすることで業容の拡大を図ってまいりました。
物流施設関連では、「DPL浦安Ⅳ」(千葉県)が竣工と同時に満床稼働となるなど、順調に開発を進めてまいりました。また、新潟県初となるマルチテナント型物流センター「DPL新潟巻潟東」を着工するなど、当社の強みである地方での拠点展開を活かし、製造業の国内回帰をターゲットとした地方における物流倉庫の開発を加速いたしました。なお、2022年度では全国41ヶ所の新規物流施設を着工しており、豊富な経験とノウハウでお客様の物流戦略をバックアップしております。
主に当社が開発した物流施設を管理・運営する大和ハウスプロパティマネジメント株式会社では、2023年1月完成の「DPL坂戸Ⅱ」(埼玉県)をはじめとする物流施設等30棟について新規プロパティマネジメント(PM)契約を締結し、累計管理棟数は238棟、管理面積は約938万㎡となりました。
大和物流株式会社では、物流基盤構築として2023年1月に「広島観音物流センター」、2023年3月に「丸亀物流センター」(香川県)を竣工し、物流センターを軸とした3PL(サード・パーティー・ロジスティクス)を積極的に展開してまいりました。
株式会社フジタでは、大型建築工事として清掃工場建替・物流倉庫・大学施設・市街地再開発事業での複合施設・生産施設等、土木事業としてエネルギー事業関連の受注により、建設受注高は堅調に推移いたしました。また、期首繰越工事の順調な進捗と開発案件の売却増加により、売上高は前年から大幅に増加いたしました。
海外では、主な展開エリアとなるASEANにおいて、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対策の規制緩和が進んだものの、インドネシア・ベトナム・マレーシア・タイで推進中の物流倉庫事業については、円安による日系企業の設備投資意欲の減退の影響が継続しております。今後の日系企業のASEAN進出や事業拡大の再開に注視しつつ、外資系企業への営業活動を実施してまいります。
以上の結果、当事業の売上高は1,130,230百万円(前連結会計年度比4.7%増)、営業利益は99,630百万円(前連結会計年度比20.6%減)となりました。

環境エネルギー事業では、脱炭素への流れが加速し、再生可能エネルギーへのニーズが高まるなか、EPC事業(再生可能エネルギー発電所の設計・施工)、PPS事業(電気小売事業)、IPP事業(発電事業)の3つの事業を推進してまいりました。
EPC事業では、脱FIT(再生可能エネルギーの固定買取制度)の取組みとして、屋根上や隣接地に設置した太陽光発電所から直接電力を供給する「オンサイトPPA(※)」、太陽光発電所から離れた需要家に供給する「オフサイトPPA」の2つのPPA事業の拡大に注力しており、案件が増加しております。
PPS事業では、長期化するウクライナ情勢や円安の影響による資源価格の上昇により電力仕入価格が高騰し、厳しい事業環境が続いております。当社グループでは、低圧の燃料調整費の上限撤廃、高圧における市場連動型プランの開始、電源調達量に応じた電力供給、電力卸売市場からの調達比率の低減等の施策により収益性の改善に取組んでまいりました。直近では電力卸売市場のスポット価格も落着きはじめ、収益の改善が見込まれます。
IPP事業では、太陽光発電を中心に、風力発電、水力発電を全国480ヶ所で運営しております。今後も第7次中期経営計画の3つの経営方針の一環として「原則すべての新築建築物の屋根に太陽光発電の設置」の取組みを当社グループ全体で推進し、更なる再生可能エネルギー発電事業の拡大を目指してまいります。
以上の結果、当事業の売上高は188,611百万円(前連結会計年度比17.1%増)、営業利益は6,285百万円(前連結会計年度比19.3%増)となりました。
※ Power Purchase Agreement(パワー・パーチェース・アグリーメント)の略。電力購入契約。

アコモデーション事業では、大和リゾート株式会社において、国内宿泊需要は全国旅行支援、県民割の実施により前年に比べ増加し、稼働率は前年を上回る結果となりました。
また、当社は「株式会社響灘火力発電所」の経営権を取得し、2023年1月26日付で当社グループ会社といたしました。2022年度を初年度とする5ヵ年計画「第7次中期経営計画」において、“カーボンニュートラルの実現”をテーマとし、その一つとして再生可能エネルギーの供給量拡大を掲げております。2026年度には累計1,550MW以上、2030年度には累計2,500MW以上の再エネ供給施設を自社運営し、広く社会にクリーンなエネルギーを供給することを目指しております。そのような中、より積極的に自社運営施設を拡大すべく、定格出力112MWの発電能力を有する響灘火力発電所を取得いたしました。同社が運営する「響灘火力発電所」では、現在石炭とバイオマス燃料(木質ペレット)の混焼による発電をおこなっておりますが、バイオマス燃料を100%利用したバイオマス専焼発電所へ転換し、2026年4月の運転開始を目指してまいります。
以上の結果、当事業の売上高は81,849百万円(前連結会計年度比29.8%増)、営業利益は5,497百万円(前連結会計年度は5,922百万円の営業損失)となりました。
(注) 各セグメント別の売上高は、外部顧客への売上高にセグメント間の内部売上高又は振替高を加算したものです。(「第5 経理の状況 1 (1) 連結財務諸表 注記事項 (セグメント情報等)」を参照。)
2.キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、営業活動による資金の増加230,298百万円、投資活動による資金の減少505,181百万円、財務活動による資金の増加287,452百万円等により、あわせて19,903百万円増加いたしました。この結果、当連結会計年度末には346,154百万円となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度において営業活動による資金の増加は230,298百万円(前連結会計年度比31.5%減)となりました。これは、主に販売用不動産の取得や法人税等の支払いを行ったものの、税金等調整前当期純利益を440,496百万円計上したことによるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度において投資活動による資金の減少は505,181百万円(前連結会計年度は467,423百万円の減少)となりました。これは、主に大規模物流施設や商業施設等の有形固定資産の取得を行ったことによるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度において財務活動による資金の増加は287,452百万円(前連結会計年度は24,427百万円の増加)となりました。これは、主に株主配当金の支払いを行ったものの、棚卸資産や投資用不動産の取得等のために、借入金や社債の発行による資金調達を行ったことによるものです。
3.生産、受注及び販売の実績
① 生産実績
当社グループの生産・販売品目は、広範囲かつ多種多様であり、生産実績を定義することが困難であるため「生産の実績」は記載しておりません。
② 受注実績
当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
セグメントの名称受注高
(百万円)
前期増減率 (%)受注残高
(百万円)
前期増減率 (%)
戸建住宅873,4118.3260,700△10.2
賃貸住宅1,086,61510.5119,943△32.3
マンション482,2032.0154,2454.5
商業施設1,106,4077.1230,34211.2
事業施設1,204,0910.3965,10011.8
環境エネルギー125,85412.014,594△54.6
その他57,10042.9--
合計4,935,6846.21,744,9261.6

(注) 各セグメントの金額は外部顧客への受注高・受注残高を表示しております。
③ 販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
セグメントの名称金額 (百万円)前期増減率 (%)
戸建住宅903,10116.1
賃貸住宅1,143,8638.9
マンション475,63127.5
商業施設1,083,1515.8
事業施設1,101,9645.1
環境エネルギー143,38613.3
その他57,10042.8
合計4,908,19910.6

(注) 1.各セグメントの金額は外部顧客への売上高を表示しております。(「第5 経理の状況 1 (1)連結財務諸表 注記事項 (セグメント情報等)」を参照。)
2.総販売実績に対する割合が10%以上の相手先はありません。
(参考)提出会社個別の事業の状況は次のとおりです。
受注高、売上高及び繰越高
期別部門別前期
繰越高
(百万円)
当期
受注高
(百万円)

(百万円)
当期
売上高
(百万円)
次期
繰越高
(百万円)
第83期
自 2021年
4月1日
至 2022年
3月31日
建築請負部門651,5751,134,7621,786,3371,230,254556,083
不動産事業部門99,387680,653780,041692,27887,762
その他事業部門-53,63353,63353,633-
750,9621,869,0492,620,0121,976,165643,846
第84期
自 2022年
4月1日
至 2023年
3月31日
建築請負部門556,0831,071,8751,627,9581,145,560482,397
不動産事業部門87,762856,874944,637772,203172,434
その他事業部門-88,30288,30288,302-
643,8462,017,0522,660,8982,006,066654,831

(注) 1.損益計算書においては、建築請負部門は「完成工事高」、不動産事業部門は「不動産事業売上高」、その他事業部門は「その他の売上高」として表示しております。
2.前期以前に受注したもので契約の更改により金額に変更あるものについては、当期受注高及び当期売上高にその増減を含めております。
3.次期繰越高は(前期繰越高+当期受注高-当期売上高)です。
4.「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日)等を第83期の期首から適用しており、第83期以降の前期繰越高については、当該会計基準等を適用して表示しております。
4.重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表作成にあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。
連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しております。
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりです。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであり、その達成を保証
するものではありません。

企業価値の最大化に向けて
積極的な成長投資を継続し、利益成長と資本効率向上の両立を目指します
代表取締役副社長/CFO 香曽我部 武

着実な事業成長に向けて優良な資産を積み上げる
第7次中期経営計画(以下、7次中計)の経営方針である「経営効率の向上」及び「収益モデルの進化」に向けて取り組みを進めております。規模拡大や安定的な利益成長が期待できる分野に積極的に投資し、優良な資産を積み上げることで着実な成長を目指します。その結果として、得られるリターンを株主に還元すると共に、次の更なる成長に向けて再投資をしていきます。成長に向けた投資先としては、物流施設や商業施設を中心に新規領域への投資先としてデータセンター、公設卸売市場などを含めた不動産開発投資です。2022年度においては、不動産開発投資4,080億円の結果、投資不動産残高は1兆6,108億円となり、将来のキャピタルゲインにつながる優良な資産は順調に積み上がっています。それに加え、海外成長に向けた住宅分野への投資や、カーボンニュートラル実現に向けた投資も戦略投資として積極的に推進していきます。
そのほかDXのためのIT基盤投資、デジタルコンストラクション投資などの設備投資についても進めており、ロボット技術やドローンを活用した作業の省人化・自動化などにも取り組んでいます。将来の事業を支える人的資本・知的資本への投資も進めています。
D/Eレシオは0.6倍を上回るも投資ハードルレートを引き上げ、金利上昇に備える
経営効率の向上に向けては、財務健全性の維持も重要視しています。当社は、D/Eレシオ0.6倍程度という財務規律を設けておりますが、2023年3月末においては、有利子負債は1兆8,494億円となり、D/Eレシオは0.72倍(ハイブリッドファイナンスの資本性考慮後)となりました。
その背景として、海外成長に向けた投資が先行している事があります。米国戸建住宅事業は順調に推移していたため、少しアクセルを踏み込みましたが、急激な金利上昇を受け、受注環境が一時的に減退し、期末での在庫が増えたことに加え、円安の影響もありバランスシートが膨らみました。また国内の賃貸住宅事業や商業施設事業においては、請負だけではなく、地域に密着した土地情報を活かす分譲事業を積極的に展開しており在庫が積み上がりました。それが、有利子負債の増加の一因にもなっています。しかし分譲事業については、順調に売却ができており、高い資産回転率を維持しています。
中計策定時から、中計前半は最終年度に向けて投資が先行することは想定しており、D/Eレシオも0.6倍を上回るとみていました。しかし、昨今の金利動向や、今後を見据えて、先手先手で備えていく必要はあると考えています。それに向けた対応策の1つとして、まずは2023年2月より不動産開発投資の判断基準として設けているIRRのハードルレートを10%に引き上げました。
2008年に不動産投資委員会(現・事業投資委員会)を設置した当時は、まだまだ請負工事による利益獲得が事業の中心であったこともあり、社内に「資本コスト」を意識させる目的もあって投資判断基準にIRRを採用しました。今回の引き上げは、先の先を見据えたリスク管理の重要性への認識と、「ROE13%以上の達成」への強い意識付けにつながるものと考えています。なお、過去のプロジェクトを検証した結果、多くの案件はIRR10%以上を達成していた事から、今回の基準変更が大幅な投資縮小につながる事はないと考えています。加えて、海外での投資案件については各国に応じたリスクプレミアム等を上乗せし、リスク管理をしています。また環境貢献に資する投資を優先するという目的で、インターナルカーボンプライシング(ICP)を導入し、投資の評価基準に加えました。これにより、環境への投資促進も図っていきます。
一方、資金調達については、2022年度は2回の社債発行により2,000億円の資金調達を実施しました。金利の先高観もあり、低金利での長期の資金調達は徐々に難しくなってきています。そのため、外部からの調達だけではなく、投資用不動産、販売用不動産の売却による資金回収のスピードを更に上げていきます。金利上昇環境による不動産売買マーケットの変化を懸念する声を投資家の方からいただくこともありますが、現状は、国内の不動産売買マーケットに大きな変化はありません。当社はこれまでも、様々な場所でバラエティーに富んだアセットを開発し、これまで積み上げてきたテナントとのリレーションを活かしながら、適地を踏まえたテナント企業を誘致し、そして多様な出口によって不動産を売却することで、大きな利益を安定的に創出してきました。これらの強みを活かしながら、引き続き、不動産開発事業による大きな利益、キャッシュ・フローの創出を実現していきます。
ROE13%以上を達成し市場における企業価値を高める
2023年3月に東京証券取引所からPBR1倍割れの企業に対しての改善要請が出されました。残念ながら当社のPBRは23年3月末時点で0.9倍台となっており、まだまだ経営改善の余地があるものと考えております。2022年度のROEは14.3%となりましたが、退職給付数理差異の影響によりROEを3ポイント程度押し上げた結果です。過去実績を分析したところ、PBRが1.85倍と最も高かった2017年度は、当社の株主資本コストの2倍以上となるROE17%が実現できていました。成長ドライバーであった3事業(賃貸住宅事業、商業施設事業、事業施設事業)で高い利益率を実現しながら、利益成長率が高かったことが要因でありますが、やはり市場評価を得るにはROE13%以上の達成は欠かせないと考えています。
それに向けて、当社グループでは7次中計で掲げる通り、事業ポートフォリオの最適化を進めています。成長を牽引する事業については重点的に投資することで規模を拡大する。一方で、今後の成長性、資本効率性の面で課題のある事業については、成長シナリオを再考し、再建・再編を進めており、2022年12月にはリゾートホテル事業の譲渡を決断しました。今後の事業ポートフォリオの最適化に向けた検討にあたっては、当社グループ内でシナジーが期待できるか、当社がベストオーナーか、という点を重視し、大和ハウスだからこそ価値を最大化できる事業、将来の利益成長をけん引する事業へ経営資源を集中していく考えです。これらの取組みを並行して進めることで、最終年度にROE13%以上を到達できるものと考えています。23年3月末時点でPERは6倍であり、業界特性はあるものの、市場全体から見れば低いと考えていますので、今後も事業プロセスの見直しやIT化などによる業務の効率化を進め、グループ集中購買の取組みによるコスト競争力の強化にも引き続き取り組んでいきます。
ROICへの社内意識の向上により資本効率の高い経営を実現する
2021年4月の事業本部制の導入以降、社内においてはROICを重要な経営指標の一つとして採用してきました。各事業本部が自律的に経営を行い、ROICへの意識は高まってきているように感じています。それぞれの事業特性に応じて、事業本部長が傘下のグループ会社を含めたバランスシートに責任をもち、事業本部単位でストックとフローのバランスを取りながら利益を上げていくわけですが、利益一辺倒ではなく、投資効率を重視する意識が浸透することで適切な判断がなされることを期待しています。加えて、各事業本部の相互連携が事業全体の収益性向上につながることも期待しています。
資本効率の高い経営を実現するためには、さらなる利益率の向上と資産回転率の改善が必要です。土地を絡めた分譲事業も積極的に進めていますが、資産回転率と投資の「質」の管理は、相当に意識しています。しかし直近の回転率は0.8回転程度となっています。2012年度から2019年度にかけては概ね1倍程度で推移しておりましたので、回転率改善のために棚卸資産の販売促進や、投資不動産の売却等に引き続き取り組んでいきます。事業所評価においては、業績評価に加えてキャッシュ・フローの観点から長期滞留の土地保有の有無、売掛金の早期回収や前受金比率の増加などを評価項目とし、事業所の凡事徹底の積み重ねが資本効率の向上に寄与するようにしています。
非効率資産の圧縮に向けては、政策保有株式の縮減を継続して進めています。毎年取締役会に上程して保有理由などの精査を行い、中長期的な経済合理性を検証しています。2022年度は一部売却も含め、11銘柄の株式売却を実施しました。見直しを始めた2014年度末の98銘柄から2022年度末では56銘柄へと着実に減少しています。
海外における事業投資の状況と管理監督機能強化
CFOとして、海外事業に対しては、引き続き金利動向や世界情勢などを注視しながら監督しています。冒頭でも触れたように、土地が起点となる米国住宅事業においては、販売用不動産は22年3月末と比べて1,086億円(為替影響含む)、増加しています。住宅ローン金利の上昇や住宅価格の高騰によって需要が減少傾向になるなど事業は2022年後半から減速局面に入りました。しかし含み損が出るような状況ではありません。長期的には米国の人口増加や住宅需要の持続的な拡大が予想されることから、むしろ良い土地を取得するチャンスと捉え、潜在的な住宅需要への備えとして優良な土地の取得をきちんと精査しながら進めていきます。
中国マンション事業については2025年度、2026年度引渡し予定の2つのプロジェクトが進行中で、販売用不動産は建設が進むに従って、今後積み上がる予定です。足下の売れ行きは、まだ完成までに時間がある中、市場の不動産価格が下落局面であることから低調ではありますが、現状は値引きなどせず、状況を注視しながら現地に密着した販売を進めています。
海外におけるリスクマネジメントの強化は2019年の不祥事以来、継続的に取り組む重要課題として認識しており、RC機能の整備・強化を進めてきました。一方で、国内についても、さらなる管理監督機能の強化に向けて、2023年2月に組織改編を発表しました。本店・支社がリーダーシップを発揮し、支店との連携を通じて、管轄するエリアにおける法令遵守・ガバナンスに関する責任を全うできる体制を整えました。健全な事業所経営に向けた組織改革を押し進め、業務効率性と法令遵守の徹底を図っていきます。
安定的な株主還元を実現する
当社の株主還元に関する基本方針は、事業活動を通じて創出した利益を株主の皆さまへ還元することと併せて、中長期的な企業価値最大化のために不動産開発投資、海外事業展開、M&A、研究開発および生産設備などの成長投資に資金を投下し、1株当たり当期純利益を増大させ、株主価値向上を図ることとしています。2022年度の年間配当金額は130円、13期連続の増配を実現することができました。
一方、退職給付会計における数理計算上の差異(数理差異)の影響により、配当性向は27.7%と、公表している配当性向35%を下回りました。当社では数理差異は発生年度において一括処理する方法を採用していますが、2022年度は、金融政策の変更等の影響を受けた期末日における市場金利を踏まえ、企業年金制度および退職一時金制度の退職給付債務の算定に用いる割引率を、主として0.8%から1.5%へ変更しました。これに伴う退職給付債務の減少額として営業利益(営業費用の減額)が812億円発生し、加えて、年金資産の運用から生じる運用益159億円等を含めた数理計算上の差異も併せて966億円の影響額となりました。本件は、キャッシュ・フローを伴わない事象となることから、今回はその影響額を除いて配当金額を決定させていただき、退職数理差異の影響を除いた配当性向は35.6%となっています。また経営環境の変化に対応した機動的な資本政策を遂行する株主還元の一環として、23年5月に700万株の自己株式の消却の実施と、1,000万株(取得金額350億円)を上限とする自己株式の取得を発表しました。
今後も中計で掲げた株主還元方針に変わりはありません。コロナ禍による一時的な事業環境の変化の状況において当社グループの多様なポートフォリオの強みを再認識したことなどから、7次中計では下限配当金額130円を設定しています。着実な利益成長を実現しながら、配当性向35%以上の維持や機動的な自己株式の取得など引き続き安定的な株主還元を実現していきます。
“将来の夢”の実現に向けた
企業価値の向上を引き続き目指します
2055年に向けて策定した“将来の夢”(パーパス)の実現に向けて、2022年度は、当社の全国の事業所ごとにワークショップ等で議論を深め、それぞれの地域でどのような“未来の景色”を目指すのかを「ミライマチ宣言」としてまとめました。2023年度は組織と個人への浸透策を進め、一人ひとりが世の中の変化やお客さまをはじめとしたステークホルダーに目を向け、行動を起こしていけるようなフェーズに入っていく計画です。これらの活動を通じて培われていく思想や考え方が、当社グループの新たな企業文化の醸成につながることを期待しています。
私たち大和ハウスグループの企業価値向上は、利益を創出する事業価値と、“世の中の役に立つ”という考え方のもと事業を通じて生み出される社会価値を伴わなければ実現できないと思います。そしてそれを実行する人的資本の価値向上にも取り組まなければなりません。今後も皆様に期待していただける大和ハウスグループであり続けられるよう、“将来の夢”の実現に向けた持続的な企業価値の向上を目指していきます。


Ⅰ.財政状態

財務の状況

2022年度末の総資産は、2021年度末比で6,204億円増加し、6兆1,420億円となりました。その主な要因は、戸建住宅事業における販売用不動産の仕入により棚卸資産が増加したことや、投資用不動産等の取得により有形固定資産が増加したことによるものです。
負債合計については、2021年度末比で3,428億円の増加となり、3兆7,531億円となりました。その主な要因は、販売用不動産や投資用不動産の取得等のために借入金や社債の発行による資金調達を行ったことによるものです。
純資産合計については、2021年度末比で2,775億円増加し、2兆3,889億円となりました。その主な要因は、株主配当金860億円の支払いを行ったものの、3,083億円の親会社株主に帰属する当期純利益を計上したことや、円安の影響等を受けたことにより為替換算調整勘定が増加したことによるものです。
リース債務等を除く有利子負債残高は、2021年度末比で4,240億円増加し、1兆8,494億円となりました。D/Eレシオについては、0.72倍(※1)となり、0.6倍程度としている財務規律を上回っておりますが、これは成長のための積極的な投資が先行していることによるものです。
資産内訳については、棚卸資産の残高が2兆916億円となり、大きな割合を占める状況となっております。今後も、棚卸資産や投資用不動産の取得等により、資産が膨らむことが予測されますが、最適資本構成の検証により財務の健全性維持に努めてまいります。
※1.ハイブリッドファイナンス(2019年9月に発行した公募ハイブリッド社債(劣後特約付社債)1,500億円、及び2020年10月に調達したハイブリッドローン(劣後特約付ローン)1,000億円)について、格付上の資本性50%を考慮して算出しております。
[ 図1 ]
第5次中期経営計画の最終年度(2018年度)との比較を行っております。
①流動比率は137%から213%へと上昇
②固定比率は151%から127%へと低下
③固定長期適合率は84%から64%へと低下
④自己資本は1兆5,959億円から2兆2,842億円へと成長

[ 図2 ]
①棚卸資産は9,556億円から2兆916億円へ増加(図3参照)
②賃貸等不動産は1兆560億円から1兆3,480億円へ増加(図4参照)
③リース債務等を除く有利子負債は7,785億円から1兆8,494億円へ増加、また自己資本に対する比率(D/Eレシオ)も0.49倍から0.72倍へ上昇(ハイブリッドファイナンスの資本性考慮後)


資産増加の分析

2022年度末の棚卸資産は2兆916億円となり、2018年度対比で119%の増加となっております。主な増加要因は、当社の強みの一つである「土地を起点とした複合的な事業提案力」の強化を図り、特に賃貸住宅や商業施設事業において分譲事業を推進し、投資不動産の購入を検討されているお客様に向けた販売用不動産の仕入を増加させたことによるものです。また米国住宅市場における事業拡大や中国における分譲マンションの開発等も棚卸資産の増加につながっております。セグメント別には、海外で分譲事業を展開している戸建住宅やマンション事業、国内で開発した物流施設等の売却を進めている事業施設事業の割合が高くなっております。
投資不動産は1兆6,108億円となり、2018年度対比で49%の増加となっております。内訳としては流動化不動産(※2)が1兆2,599億円で71%の増加、収益不動産(※3)が3,509億円で2.9%の増加となっており、流動化不動産の増加が投資不動産の増加につながっております。主な増加要因は収益ドライバーの一つである物流施設の開発投資を拡大したことによるものです。
資産の増加は棚卸資産や投資不動産の増加によるところが大きくなっていますが、これは成長のための投資を積極的に行っている事によるものです。投資に際しては、IRRを重要な指標として意思決定しており、売却時には資金回収及び収益獲得に寄与するものと考えております。今後も、市場の環境等を踏まえながら最適なタイミングで売却を実施し、資本効率の向上に努めてまいります。
※2.流動化不動産:値上がり益を得る目的で投資後、早期に売却可能な不動産。
※3.収益不動産:賃貸収益を得る目的で投資・開発した不動産。
[ 図3 ]
[ 図4 ]


Ⅱ.キャッシュ・フロー(CF)

基本的な考え方

キャッシュ・マネジメントについては、事業活動によるキャッシュ創出額を基準として投資を行うことを基本的な考え方としております。第7次中期経営計画において、財務規律としてD/Eレシオを0.6倍程度に設定しておりますが、優良な投資機会に対しては、積極的な投資を行う必要があり、成長のための投資が先行し一時的に規律を上回ることがあります。中長期的には、0.6倍程度に有利子負債の水準をコントロールするため、社内の投資判断基準であるIRRのハードルレートを8.5%から10%に引き上げ、成長投資と財務健全性の維持の均衡を図っております。
キャッシュ・フローの状況

2022年度における営業活動CFは、2,302億円となり、2021年度に比べ1,061億円減少し、自己資本を1とした場合の営業活動CF比率は、2021年度の0.17から0.07ポイント下降し0.10となりました。その主な要因は、4,404億円の税金等調整前当期純利益を計上したものの、販売用不動産の取得や法人税等の支払いがあったことによるものです。
投資活動CFについては、第7次中期経営計画における投資計画に基づき、賃貸等不動産等の取得や、不動産開発事業への投資を4,294億円実行したことなどにより、△5,051億円となりました。その結果、フリー・キャッシュ・フロー(営業活動CF+投資活動CF)は△2,748億円となり、また、棚卸資産や投資用不動産の取得等のために、借入金や社債の発行による資金調達を行ったことなどにより、財務活動CFは2,874億円となりました。
これらの結果、現金及び現金同等物の2022年度末残高は2021年度末から199億円増加し、3,461億円となりました。
[ 図5 ]
[ 図6 ]

Ⅲ.損益の状況

自己資本利益率(ROE)

自己資本利益率(ROE)は14.3%となりましたが、退職給付会計における数理計算上の差異等966億円(益)を営業利益として計上したことにより、ROEを3ポイント程度押し上げております。当社は、第7次中期経営計画においてはROE13%以上を経営目標に掲げておりますが、事業ポートフォリオの最適化や非効率資産の圧縮等、さまざまな観点から資本効率の改善に向けて取組んでまいります。[ 図7 ]


(ROE分解)売上高当期純利益率

親会社株主に帰属する当期純利益は3,083億円となり、2018年度からの5年間の年平均成長率は6.8%となりました。当期純利益率については6.3%となり、退職給付会計における数理計算上の差異の影響もありますが、それを除いても改善傾向にあります。資材価格や燃料費の高騰もありますが、コロナ影響からの回復が利益率改善につながっております。[ 図8 ]

(ROE分解)総資産回転率

売上高は4兆9,081億円となり、2018年度からの5年間の年平均成長率は4.3%となりました。総資産回転率(※4)については、前期と比べて横ばいの0.84倍となりました。当社グループの事業は、投資が不要な建設請負事業が中心だったところから、不動産開発事業のように先行投資が必要な事業の割合が増加してきており、売上高に占める開発物件売却の割合も増加してきております(図10参照)。ビジネスモデルの変革により低下することとなりますが、回転率の改善のため、ストックとフローのバランスを取りながら棚卸資産の販売促進や投資不動産の売却、政策保有株式の売却等、資産の効率的な活用の徹底に引き続き取組んでまいります。
※4.総資産は期中平均で算出。
[ 図9 ]
[ 図10 ]

(ROE分解)財務レバレッジ

自己資本は2兆2,842億円となり、2018年度からの5年間の年平均成長率は9.4%となりました。財務レバレッジ(※5)は、前期と比べて3.5ポイント低下し、271.0%となりました。D/Eレシオを財務規律として設定することで、財務レバレッジをコントロールしながら、成長投資への資金を確保し、財務基盤の強化に努めます。
※5.総資産及び自己資本は期中平均で算出。
[ 図11 ]

投下資本利益率(ROIC)

税引後営業利益(NOPAT)(※6)は、3,230億円となり、投下資本(自己資本+有利子負債)(※7)4兆1,336億円に対する利益率(ROIC)は8.5%となりました。株主資本コストを上回る資本効率でリターンに結び付けるために、現場においては図13に示すような通常業務の改善に「凡事徹底」で取組み、ROICの向上に努めてまいります。
※6.税引後営業利益(NOPAT):営業利益×(1-実効法人税率)
※7.期中平均
[ 図12 ]

[ 図13 ]


海外業績

海外事業における売上高は6,739億円、営業利益は529億円となり、2018年度からの5年間における年平均成長率は売上高24.7%、営業利益42.3%となりました。当社業績に占める海外事業の割合も上昇傾向にあります。当社は米国の住宅会社のM&Aや中国でのマンション開発等、海外事業に積極的に取組んでおります。第7次中期経営計画において、地域密着型の海外事業による成長の加速を重点テーマの一つとし、最終年度には、海外売上高1兆円・営業利益1,000億円を目指してまいります。
[ 図14 ]
[ 図15 ]


Ⅳ.事業別経営成績

収益性分析

営業利益においては、賃貸住宅、商業施設、事業施設事業の3つのセグメントで全体の70%以上を占めております。
また、環境エネルギー事業においては、売上高構成比としては2.9%にとどまるものの、脱炭素社会の実現に向けて再生可能エネルギーの普及の貢献に積極的に取組んでおります。
戸建住宅、マンション事業については、人口減少に伴い、新設住宅着工戸数の減少も見込まれる中、エリアの選択やターゲットの明確化により利益率の改善を図ってまいります。
[ 図16 ]

セグメント資産に対する営業利益率

セグメント資産に対する営業利益率については、分譲事業の推進により棚卸資産残高は増えているものの、請負事業や賃貸管理事業の利益貢献度の高い賃貸住宅事業が高い数値を示しております。
事業施設事業については、物流施設やデータセンター等の市場の成長に対応し、長期大型開発へ積極的な投資を行っております。現在は取得済みの土地に係る建設投資を進めていることから、現時点における資産利益率は低い水準となっておりますが、今後の投資回収期にはキャッシュ・フローに大きく寄与してくることを見込んでおります。
[ 図17 ]

事業投資の状況

事業投資の状況としては、持続的成長を見据え積極投資を維持し、収益ドライバーである物流施設を中心とした事業施設事業と地域ポテンシャルを引き出し雇用創出や賑わいに貢献する商業施設事業への開発投資を拡大しております。また、これらの事業によって創出された資金を活用し、新たな収益の柱として育成すべく新規事業や海外事業等への投資も併せて実施しております。[ 図18 ]


Ⅴ.株主還元及び株価の状況

株主還元

2022年度は、年間配当金額130円、配当性向27.7%とし、13期連続の増配を実現いたしました。配当性向は27.7%となりましたが、退職給付会計における数理計算上の差異の影響を除くと35.6%となります。第7次中期経営計画では配当性向を従来の30%以上から5ポイント引き上げ35%以上とし、業績に連動した利益還元を行い、かつ年間の配当金額の下限を130円とし、安定的な配当の維持に努めてまいります。
また、700万株の自己株式の消却を2023年5月に実施し、1,000万株(取得価額350億円)を上限とする自己株式の取得を2024年3月までに実施いたします。
[ 図19 ]

注 2015年度及び2022年度の配当性向の増減は、主に退職給付債務算定に用いる割引率を変更したことによるものです。

株価純資産倍率(PBR)

1株当たり純資産(BPS)は3,466.86円となり、2018年度からの5年間の年平均成長率は9.6%となりました。株価純資産倍率(PBR)については、0.90倍となり、1.00倍を下回る結果となりました。株式市場からの評価を得るためには、ROEの向上と事業ポートフォリオの最適化による資本効率の向上が必要であると考えます。これらの取組みを進め、加えて財務健全性やガバナンスの強化、IR活動を通じた投資家との対話により、今後も企業価値の最大化を図ってまいります。[ 図20 ]

[ 図21 ]

2013201420152016201720182019202020212022
時価総額(億円)11,56315,65821,09321,29227,31523,44417,83821,59221,32620,748
最高株価(円)2,330.02,467.53,6543,3674,5944,2933,8193,5523,9003,320
最低株価(円)1,592.01,673.02,326.02,500.53,0963,1192,230.52,332.03,0372,907.5

注 最高・最低株価は、2022年4月3日以前は東京証券取引所市場第一部におけるものであり、2022年4月4日以降は東京証券取引所プライム市場におけるものです。
Ⅵ.中期経営計画進捗

当社は、2022年度を初年度とする5ヵ年計画「第7次中期経営計画」をスタートいたしました。初年度は、退職給付会計における数理計算上の差異の影響もありますが、順調なスタートを切ることができました。D/Eレシオについては、投資が先行しており、財務規律を上回っておりますが、最終年度に向けてコントロールしてまいります。原材料・エネルギー価格の高騰や金融資本市場の変動等の影響により厳しい事業環境が続きますが、計画達成に向けて、「収益モデルの進化」「経営効率の向上」「経営基盤の強化」の3つの経営方針を掲げ、持続的な成長モデルの実現に向け、海外事業のさらなる進展や、地域を活性化させる複合再開発の推進、カーボンニュートラルの実現に向けた取組み等、各施策を実施してまいります。
財務目標

[ 図22 ]

注 営業利益・当期純利益・配当性向は退職給付数理差異等を除く。当期純利益は親会社株主に帰属する当期純利益。
D/Eレシオは、ハイブリットファイナンスの資本性考慮後。

事業別業績目標

[ 図23 ]

注 営業利益は退職給付数理差異等を除く。