四半期報告書-第98期第2四半期(令和3年4月1日-令和3年6月30日)

【提出】
2021/08/13 11:14
【資料】
PDFをみる
【項目】
43項目
(1)業績
当第2四半期連結累計期間(2021年1月1日~6月30日)における世界経済は、新型コロナウイルスの感染拡大の影響により、欧州では景気は弱い動きとなりましたが、米国などの経済活動の回復により、全体では景気は持ち直しつつあります。日本経済においては、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う緊急事態宣言の影響により、外食などを中心に個人消費の回復が遅れ、景気は厳しい状況となりました。
こうした状況のなかアサヒグループは、本年更新した「中期経営方針」の重点課題に基づいて、引き続き“グローカルな価値創造経営”を推進するとともに、コロナ禍による環境変化を見据えた経営改革に取り組みました。
重点課題の『稼ぐ力の強化』においては、各事業の主力ブランドの価値向上や新たな価値提案の強化に加えて、更なるコスト効率化により業績回復を促進するとともに、『経営資源の高度化』や『ESGへの取組み深化』に再投資するための収益構造改革を推進しました。
その結果、アサヒグループの売上収益は、日本や欧州における外食産業の低迷によるマイナス影響があったものの、2020年6月に取得手続きが完了した豪州のビール・サイダー事業(以下「CUB事業」といいます。)の新規連結効果などにより、1兆335億9千5百万円(前年同期比18.2%増)となりました。また、利益につきましては、事業利益※1は893億4百万円(前年同期比76.6%増)、営業利益は1,094億1千3百万円(前年同期比152.8%増)、親会社の所有者に帰属する四半期利益は793億1千5百万円(前年同期比175.7%増)となりました。
なお、為替変動による影響を除くと、売上収益は前年同期比12.2%の増収、事業利益は前年同期比63.8%の増益となりました。※2
※1 事業利益とは、売上収益から売上原価並びに販売費及び一般管理費を控除した、恒常的な事業の業績を測る当社独自の利益指標です。
※2 2021年の外貨金額を、前年同期の為替レートで円換算して比較しています。
[酒類事業]
酒類事業につきましては、各カテゴリーにおいて主力ブランドへの投資を重点化するとともに、多様化する消費者ニーズに対応した商品や飲み方提案を強化することにより、新たな市場の創造に取り組みました。
ビール類では、「ビールがうまい。この瞬間がたまらない。」を『アサヒスーパードライ』のブランドメッセージとし、飲食店のジョッキで飲む樽生ビールのような味わいが楽しめる『アサヒスーパードライ 生ジョッキ缶』の発売や、家庭用生ビールサービス『THE DRAFTERS(ドラフターズ)』の展開を開始するなど、“最高品質の提供”と“飲用機会の拡大”によりビール市場の活性化を図りました。また、発泡酒や新ジャンルにおいては、『スタイルフリー』、『クリアアサヒ』、『アサヒ ザ・リッチ』を中心とした主力ブランドでの広告・販売促進活動を強化し、ブランド価値の向上に努めました。
ビール類以外では、RTD※において、主力ブランド『アサヒ贅沢搾り』をリニューアルし、果実の味わいを強化するとともに、期間限定商品を展開するなど、ブランドの強化に取り組みました。また、アルコールテイスト清涼飲料において、『アサヒドライゼロ』で新たなユーザー層の拡大を図るとともに、お酒の飲み方の多様性を提案する「スマートドリンキング」の考え方に基づき、100%ビール由来原料ならではの麦のうまみとコクを実現したアルコール度数0.5%の“微アルコール”ビールテイスト飲料『アサヒ ビアリー』シリーズの展開を強化するなど、新たな市場の創出に取り組みました。
以上の結果、酒類事業の売上収益は、健康志向の高まりなどの消費者ニーズの変化を捉えた発泡酒やアルコールテイスト清涼飲料の売上は前年実績を上回ったものの、新型コロナウイルスの感染拡大が続き、飲食店向けのビールの売上が大幅に減少したことなどにより、前年同期比7.1%減の3,165億4千6百万円となりました。
事業利益については、製造原価の低減や収益構造改革などに取り組みましたが、売上収益の減少により、前年同期比20.9%減の267億7千7百万円となりました(営業利益は前年同期比41.7%減の199億6千1百万円)。
※ RTD:Ready To Drinkの略。購入後、そのまま飲用可能な缶チューハイなどを指します。
[飲料事業]
飲料事業につきましては、主力ブランドを中心にこれまで培ってきたブランド価値をより一層磨くとともに、変化する生活に寄り添った商品や社会的課題の解決に向けた提案の強化などに取り組みました。
主力ブランドにおいては、『三ツ矢』ブランドにおいて、有糖炭酸の“おいしさ”と無糖炭酸の“さっぱり”を兼ね備えた“甘すぎない”ハイブリッドな炭酸飲料として『「三ツ矢サイダー」レモラ』を発売し、新たな価値提案を強化しました。また、『ウィルキンソン』ブランドでは、eコマースにおいて1ケースあたりの入数を増やした商品を発売し、まとめ買い需要に対応するなど、健康需要や家庭内需要により好調な炭酸カテゴリーにおいてブランド価値の更なる向上を図りました。『カルピス』ブランドでは、生活様式の変化に合せ、砂糖を使わず果実由来の風味を活かした『「CALPIS」Light Blue』を発売し、ブランド力の強化に取り組みました。
社会的課題の解決に向けた提案においては、『十六茶』ブランドで、新たな素材や製法、環境配慮素材(PET再生樹脂、バイオ素材樹脂)を使用した新容器を採用するなど、ブランド価値の向上と環境負荷低減に取り組みました。
以上の結果、飲料事業の売上収益は、競争環境の変化に伴いスーパーマーケットでの売上が減少しましたが、コーヒー飲料および炭酸飲料の販売数量が前年実績を上回ったことなどにより、前年同期比4.3%増収の1,737億6千2百万円となりました。
事業利益については、自動販売機での増収に伴う品種・容器構成比の改善や、ブランドの選択と集中による広告・販売促進費の効率化、委託製造品の自社製造への切替えなどによる製造原価の低減などにより、前年同期比65.3%増の163億7千2百万円となりました(営業利益は前年同期比508.7%増の482億6百万円)。
[食品事業]
食品事業につきましては、新しい生活様式に合わせた価値創造と、市場構造の変化に適応した各カテゴリーの強化により、持続的な成長基盤の構築に取り組みました。
タブレット菓子『ミンティア』については、マスク着用時専用商品『ミンティア +MASK』シリーズ、テレワーク時のリフレッシュニーズに対応した大容量ボトルタイプ商品、健康志向の高まりに対応した栄養機能食品の商品を発売するなど、新たな喫食シーンの提案によるブランド価値の向上に取り組みました。栄養サポート食品『1本満足バー』については、健康志向やからだづくりへの関心が高まる中、プロテインシリーズを中心に販売促進活動を強化しました。フリーズドライみそ汁については、『いつものおみそ汁』シリーズの高価格帯商品のラインアップの拡充に加え、Web動画の配信などによる広告展開の強化により、手軽で本格的な味わいを楽しめるフリーズドライの価値を訴求しました。
ベビーフードについては、『1歳からのMYジュレドリンク』シリーズにおいて新フレーバーを発売し、ユーザー層の拡大を図りました。サプリメントについては、『ディアナチュラ』において、セルフケアニーズの高まりに対応したラインアップを拡充したほか、テレビCMを含めた広告・販売促進活動の展開によりブランド力の向上に取り組みました。
以上の結果、食品事業の売上収益は、オフィス勤務での需要減少に伴い『ミンティア』の売上が減少したものの、巣ごもり需要を捉えたフリーズドライみそ汁や健康ニーズの高まりに対応した『ディアナチュラ』などの売上が前年実績を上回ったことなどにより、前年同期比1.6%増の608億4千9百万円となりました。
事業利益については、増収効果に加えて、固定費全般の効率化などにより、前年同期比6.6%増の57億8千4百万円となりました(営業利益は、前年同期比2.8%減の52億3千6百万円)。
[国際事業]
国際事業につきましては、ローカル市場における主力ブランドやアルコールテイスト清涼飲料を軸としたプレミアム化戦略の推進に加えて、『アサヒスーパードライ』、『Peroni Nastro Azzurro』などのグローバルブランドの販路拡大を強化しました。
欧州事業については、『Pilsner Urquell』における100%リサイクル可能な素材の採用や、『Peroni』をラベルコードから生産履歴の追跡を可能としたパッケージにリニューアルするなど、環境負荷低減を通じたブランドの価値向上を図りました。また、アルコールテイスト清涼飲料では、各国における主力ブランドのフレーバー商品の強化や、『Peroni Libera 0.0%』とモータースポーツチームAston Martin Cognizant FORMULA ONE™️ TEAMとのグローバルパートナーシップの締結など、新たな飲用機会の獲得に向けた取組みを強化しました。グローバルブランドについては、『アサヒスーパードライ』において、「ラグビーワールドカップ2023フランス大会」とのワールドワイド・パートナーの契約を締結するなど、ブランドの認知度の向上に向けた取組みを推進しました。
オセアニア事業については、酒類において、主力ブランド『Great Northern』を中心に積極的なマーケティング活動を展開したほか、『アサヒスーパードライ』、『Peroni Nastro Azzurro』の飲食店向けの販売強化など、CUB事業取得により確立した強固な販売体制を活かしたシナジーの創出に取り組みました。アルコールテイスト清涼飲料では、『Great Northern Zero』の販売地域を豪州全域に拡大するなど、多様化する飲用ニーズに向けた取組みを強化しました。飲料においては、炭酸カテゴリーを中心にノンシュガー商品を積極的に展開したほか、外出などの規制緩和に合わせてスポーツ飲料などの販売促進活動を強化し、市場における存在感の向上を図りました。
東南アジア事業については、マレーシアで、『WONDA』ブランドから『Brown Sugar Latte』を発売するなど、アサヒグループ保有ブランドを中心にラインアップを拡充することにより、ブランド認知の向上を図りました。
以上の結果、国際事業の売上収益は、欧州事業を中心に新型コロナウイルスの感染拡大に伴う各国の規制などによる市場縮小の影響などがあったものの、CUB事業の新規連結効果などにより、前年同期比57.3%増の4,777億2千6百万円となりました。
事業利益については、業態別の売上構成比の変化によるマイナス影響はありましたが、CUB事業の新規連結効果や固定費全般の効率化などにより、前年同期比176.0%増の681億2千2百万円となりました(営業利益は、前年同期比395.9%増の494億1千8百万円)。
なお、為替変動による影響を除くと、売上収益は前年同期比40.0%の増収、事業利益は前年同期比143.9%の増益となりました。※
※ 2021年の外貨金額を、前年同期の為替レートで円換算して比較しています。
[その他の事業]
その他の事業につきましては、売上収益は、前年同期比0.1%増の493億6千2百万円となりました。
事業損失については、前年同期比7億6千2百万円改善の2億8千6百万円となりました(営業損失は前年同期比17億2千万円改善の10億8千4百万円)。
セグメントの業績は次の通りです。各セグメントの売上収益はセグメント間の内部売上収益を含んでおります。
なお、第1四半期連結累計期間より、酒類セグメントに含まれていた一部の会社について、報告セグメントの区分をその他セグメントに変更しております。
以下の前年同期比較は前年同期の数値を変更後のセグメント区分に組み替えた数値で比較しております。
事業セグメント別の実績
(単位:百万円)

売上収益前年同期比事業利益前年同期比売上収益
事業利益率
営業利益前年同期比
酒類316,546△7.1%26,777△20.9%8.5%19,961△41.7%
飲料173,7624.3%16,37265.3%9.4%48,206508.7%
食品60,8491.6%5,7846.6%9.5%5,236△2.8%
国際477,72657.3%68,122176.0%14.3%49,418395.9%
その他49,3620.1%△286--△1,084-
調整額計△44,653-△11,951--△12,324-
無形資産償却費--△15,514----
合計1,033,59518.2%89,30476.6%8.6%109,413152.8%

※営業利益における無形資産償却費は各事業に配賦しています。
(2)財政状態の分析
当第2四半期連結会計期間の連結総資産は、季節要因等により営業債権が減少したものの、為替相場の変動によるのれん及び無形資産の増加等により、総資産は前年度末と比較して1,267億9千5百万円増加し、4兆5,661億7千4百万円となりました。
負債は、社債及び借入金の減少等により、前年度末と比較して620億4千万円減少し、2兆8,595億2千2百万円となりました。
資本は、前年度末に比べ1,888億3千5百万円増加し、1兆7,066億5千1百万円となりました。これは、配当金支出により利益剰余金が減少したものの、当第2四半期連結累計期間の親会社の所有者に帰属する四半期利益の計上による利益剰余金の増加及び為替相場の変動により在外営業活動体の換算差額が増加したこと等によるものです。
この結果、親会社所有者帰属持分比率は37.3%となりました。
(3)キャッシュ・フローの状況
当第2四半期連結累計期間の営業活動によるキャッシュ・フローは、税引前四半期利益が1,039億5千8百万円となりましたが、法人所得税等の支払による減少があった一方で、減価償却費等の非キャッシュ項目による増加があり、1,573億5千5百万円(前年同期比:987億7千2百万円の収入増)の収入となりました。
投資活動によるキャッシュ・フローは、有形固定資産の売却による収入などにより、46億6千9百万円(前年同期比:1兆2,035億1千1百万円の収入増)の収入となりました。
財務活動によるキャッシュ・フローは、主に短期借入金の返済による金融債務の減少があり、1,572億7千6百万円(前年同期比:1兆3,494億1千8百万円の支出増)の支出となりました。
以上の結果、当第2四半期連結累計期間では、前第2四半期連結累計期間と比較して現金及び現金同等物の残高は451億5千4百万円減少し、559億5千3百万円となりました。
(4)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
当第2四半期連結累計期間において、アサヒグループが優先的に対処すべき課題について重要な変更はありません。
(5)研究開発活動
当第2四半期連結累計期間におけるグループ全体の研究開発費の金額は、60億1千8百万円であります。なお、当第2四半期連結累計期間において、アサヒグループの研究開発活動の状況に重要な変更はありません。