四半期報告書-第99期第1四半期(令和4年1月1日-令和4年3月31日)

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2022/05/16 15:14
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(1)業績
当第1四半期連結累計期間(2022年1月1日~3月31日)における世界経済は、米国や欧州などの経済活動の回復により、全体では景気は持ち直しの傾向が見られましたが、新型コロナウイルスの感染拡大やウクライナ情勢の悪化に伴うエネルギー価格や原材料価格の高騰などの影響を受け、先行きが不透明な状況となりました。日本経済においても、各種政策や世界経済の改善などにより、景気は徐々に持ち直しの動きが見られましたが、個人消費の回復などには弱さが見られました。
こうした状況のなかアサヒグループは、グループ理念“Asahi Group Philosophy”の実践に向けて、メガトレンドからのバックキャストにより、これまでの中期経営方針を、長期戦略を含む『中長期経営方針』として更新しました。この『中長期経営方針』では、長期戦略のコンセプトとして「おいしさと楽しさで“変化するWell-being”に応え、持続可能な社会の実現に貢献する」ことを掲げ、事業ポートフォリオでは、ビールを中心とした既存事業の持続的な成長に加えて、その事業基盤を活かした周辺領域や新規事業・サービスの拡大に取り組みました。また、サステナビリティと経営の統合、DX(デジタル・トランスフォーメーション)やR&D(研究開発)といったコア戦略の一層の強化により、持続的な成長とすべてのステークホルダーとの共創による企業価値向上を目指した取組みを推進しました。
その結果、アサヒグループの売上収益は、新型コロナウイルスの感染拡大の影響は残ったものの、日本や欧州におけるビール需要の回復などにより、4,968億6千3百万円(前年同期比8.8%増)となりました。また、利益につきましては、各事業の原材料関連の費用が増加した影響などを受け、事業利益※1は246億8千7百万円(前年同期比12.8%減)、営業利益は90億4千4百万円(前年同期比82.7%減)、親会社の所有者に帰属する四半期利益は43億4千6百万円(前年同期比86.9%減)、調整後親会社の所有者に帰属する四半期利益※2は133億8百万円(前年同期比59.9%減)となりました。
なお、為替変動による影響を除くと、売上収益は前年同期比7.1%の増収、事業利益は前年同期比14.7%の減益となりました。※3
※1 事業利益とは、売上収益から売上原価並びに販売費及び一般管理費を控除した、恒常的な事業の業績を測る当社独自の利益指標です。
※2 調整後親会社の所有者に帰属する四半期利益は、親会社の所有者に帰属する四半期利益から事業ポートフォリオ再構築及び減損損失など一時的な特殊要因を控除したものであります。
※3 2022年の外貨金額を、前年同期の為替レートで円換算して比較しています。
[日本]
日本においては、酒類、飲料、食品事業の「強み」のあるブランドに経営資源を投下するとともに、新たな価値提案などを通じて各事業のブランド価値向上を図りました。また、日本全体での事業の枠を超えたシナジーの創出のためのSCMの最適化やサステナビリティへの取組みの推進などにより、持続的な成長基盤を強化しました。
酒類事業では、主力ブランド『アサヒスーパードライ』を1987年の発売以降初めてフルリニューアルし、ブランド価値の向上を図るとともに、ユーザー層の更なる拡大を図りました。また、“ぬくもりのある世界観”が特徴の『アサヒ生ビール』の商品ラインアップを拡充するなど、ビール市場の活性化を図りました。RTD※1においては、本格的なカクテルの香りと味わいが楽しめる『アサヒ ザ・カクテルクラフト』を発売したほか、『アサヒ ザ・レモンクラフト』をリニューアルするなど、新たな価値提案を強化しました。さらに、アルコールテイスト清涼飲料『アサヒドライゼロ』のリニューアルや“微アルコール”カテゴリーの情報発信を強化するなど、お酒の飲み方の多様性を提案する「スマートドリンキング」の活性化に取り組みました。
飲料事業では、『ウィルキンソン』から、需要が高まるソバーキュリアス※2スタイルに向けて、「#sober」シリーズを提案するなど、健康志向を踏まえた新たな価値創造を図りました。また、『アサヒ 十六茶』では、素材の配合を見直すなど、大幅なリニューアルを通じてブレンド茶の魅力を訴求するとともに、環境に配慮したラベルを使用することにより、ブランド力の更なる強化に取り組みました。
食品事業では、タブレット菓子『ミンティア』において、主力のミント系商品の製法や原材料配合の改良により、瞬間的なミントの味わいを更に強化するなど、ブランド価値の向上に取り組みました。また、サプリメント『ディアナチュラ』やフリーズドライ食品『アマノフーズ』においても、新たなニーズを捉えた商品ラインアップを拡充することで、市場の活性化を図りました。
以上の結果、売上収益は、主にコーヒー飲料の売上減少などにより飲料事業は減収となったものの、家庭用でのビールの売上増加により酒類事業が増収となり、トータルでは、前年同期比5.8%増の2,583億6千8百万円となりました。
事業利益は、増収効果に加えて、各種コストの効率化などに取り組みましたが、原材料関連の費用増加やブランド投資の強化などにより、前年同期比11.8%減の119億3千7百万円となりました(営業損失は前年同期比412億8千6百万円悪化の26億8千5百万円)。
※1 RTD:Ready To Drinkの略。購入後、そのまま飲用可能な缶チューハイなどを指します。
※2 ソバーキュリアス(Sober Curious)とは、“あえてお酒を飲まない”という新しいライフスタイルを指します。
[欧州]
欧州においては、主力のローカルブランドの強化、ノンアルコールビールの拡大などにより、各国のブランドポートフォリオのプレミアム化を推進するとともに、グローバルブランドの拡大展開を図りました。また、環境問題への対応やありたい企業風土の醸成に向けた取組みを強化することで、持続的な成長基盤の更なる拡大を図りました。
欧州地域では、各国における飲食店向けの需要回復に向けて積極的な営業活動に取り組みました。チェコの『Pilsner Urquell』は、北京2022オリンピック冬季競技大会のチェコチームのパートナーとして限定缶を発売したほか、缶容器のリサイクル比率を従来よりも高めるなど、環境負荷低減の取組みを推進しました。また、ポーランドやイタリアにおける『Kozel』やルーマニアでの『Peroni Nastro Azzurro』など、各国でもグローバルブランドを積極的に拡大することにより、更なるプレミアム化を図りました。さらに、ノンアルコールビールにおいて、チェコの『Birell』において、より豊かな味わいを実現するリニューアルを実施したほか、ポーランドの『Lech Free』では、新たにレモン&マンゴーのフレーバー商品を発売するなど、新たな飲用機会の獲得に向けた取組みを強化しました。
グローバルブランドの展開では、『アサヒスーパードライ』において、中国をはじめアジアの中華圏各国で春節を祝う限定パッケージ缶を発売するなど、ブランド価値の訴求に取り組みました。また、『Peroni Nastro Azzurro』においては、世界20カ国以上でノンアルコールビール『Peroni Nastro Azzurro 0.0%』を発売し、モータースポーツチームAston Martin Cognizant FORMULA ONETM TEAMとのパートナーシップを活用した世界的な情報発信を積極的に展開するなど、ブランドの認知度の向上に向けた取組みを推進しました。
以上の結果、売上収益は、引き続き新型コロナウイルスの感染拡大に伴う影響などはあったものの、各国における飲食店向けの需要が回復したことなどにより、前年同期比30.7%増の989億6千7百万円となりました。
事業利益は、原材料関連の費用増加の影響はあったものの、飲食店向けの需要回復やプレミアム化に伴う増収効果などにより、前年同期比412.2%増の19億2千8百万円となりました(営業損失は前年同期比18億1千9百万円改善の28億6千2百万円)。
なお、為替変動による影響を除くと、売上収益は前年同期比26.2%の増収、事業利益は前年同期比349.9%の増益となりました。
[オセアニア]
オセアニアにおいては、酒類、飲料事業の強みを活かしたマルチビバレッジ戦略を推進するとともに、プレミアム化の強化や統合シナジーの創出により、収益基盤の盤石化に取り組みました。また、BAC※などの新たな成長カテゴリーへの投資強化に加えて、サステナビリティを重視した新価値提案やSCM改革などを推進しました。
酒類事業では、主力ブランドの『Great Northern』や『Victoria Bitter』を中心に積極的なマーケティング活動を展開したほか、飲食店における『アサヒスーパードライ』や『Peroni Nastro Azzurro』の取扱店舗の新規獲得など、プレミアムビールの販売を強化しました。BACにおいては、『Great Northern Zero』を中心にノンアルコールビールの販売促進活動を強化したほか、ハード・セルツァー『Good Tides』の新キャンペーンを展開するなど、多様化する飲用ニーズに向けた取組みを強化しました。
飲料事業では、健康志向の高まりを受け、炭酸飲料やスポーツ飲料のノンシュガー商品を中心に販売促進活動を強化し、市場における存在感の向上を図りました。さらに、CUB事業の取得により確立した強固な販売体制を活かし、清涼飲料の飲食店向けの販売を強化し、マルチビバレッジ戦略による統合シナジーの創出に取り組みました。
また、競合他社を含む3社との合弁会社において建設した豪州最大のPETリサイクル工場を本格稼働させるなど、持続可能なサプライチェーンの構築を推進しました。
以上の結果、売上収益は、新型コロナウイルスの感染拡大や需要が高まるイースターの開催時期が前年と異なることによる影響などはあったものの、『Great Northern』など主力ブランドの販売が堅調だったことや為替変動の効果により、前年同期比2.3%増の1,282億2千6百万円となりました。
事業利益は、統合シナジーの創出を中心としたコスト効率化を推進したものの、原材料関連の費用増加の影響などにより、前年同期比9.0%減の214億6千5百万円となりました(営業利益は前年同期比17.4%減の167億3千2百万円)。
なお、為替変動による影響を除くと、売上収益は前年同期比0.4%の減収、事業利益は前年同期比11.5%の減益となりました。
※ BAC:Beer Adjacent Categoriesの略。低アルコール飲料、ノンアルコールビールテイスト飲料、成人向け清涼飲料など、ビール隣接カテゴリーを指します。
[東南アジア]
東南アジアにおいては、自社ブランドを中心としたブランド投資の拡大などにより、マレーシア、フィリピン、インドネシアを中心とした展開国におけるプレゼンスの更なる拡大を図りました。また、CO2排出量の削減や地域社会への貢献など、サステナビリティの取組みも継続しました。
マレーシアでは、『CALPIS』から、ナタデココ配合により食物繊維も摂取でき満足感のある味わいの『Calpis Chewy』を発売するなど、健康需要を捉えた商品ラインアップを拡充し、ブランド力の強化を図りました。また、『WONDA』では、各種SNSを活用した販売促進活動の展開など、ブランド認知度向上に向けた情報発信力の強化に取り組みました。
以上の結果、売上収益は、新型コロナウイルスの感染拡大に伴いマレーシア以外の地域において売上が減少したものの、マレーシアにおいて主力ブランドの販売が好調に推移したことや為替変動の効果などにより、前年同期比1.7%増の115億3千8百万円となりました。
事業利益は、固定費全般の効率化などを推進したものの、原材料関連の費用増加の影響などにより、前年同期比94.6%減の2千万円となりました(営業利益は前年同期比92.8%減の1千9百万円)。
なお、為替変動による影響を除くと、売上収益は前年同期比4.8%の減収、事業利益は前年同期比95.1%の減益となりました。
[その他]
その他については、売上収益は前年同期比0.5%減の15億2千3百万円となりました。
事業利益については、前年同期比26.2%減の1億8千万円となりました(営業利益は前年同期比1億7千6百万円改善の1億3百万円)。
セグメントの業績は次の通りです。各セグメントの売上収益はセグメント間の内部売上収益を含んでおります。
当社グループの報告セグメントは、前年度まで「酒類事業」、「飲料事業」、「食品事業」、「国際事業」としておりましたが、当第1四半期連結会計期間より、「日本」、「欧州」、「オセアニア」、「東南アジア」に変更しております。
以下の前年同期比較は前年同期の数値を変更後のセグメント区分に組み替えた数値で比較しております。
事業セグメント別の実績
(単位:百万円)

売上収益前年同期比事業利益前年同期比売上収益
事業利益率
営業利益前年同期比
為替一定為替一定
日本258,3685.8%5.8%11,937△11.8%△11.8%4.6%△2,685-
欧州98,96730.7%26.2%1,928412.2%349.9%1.9%△2,862-
オセアニア128,2262.3%△0.4%21,465△9.0%△11.5%16.7%16,732△17.4%
東南アジア11,5381.7%△4.8%20△94.6%△95.1%0.2%19△92.8%
その他1,523△0.5%4.0%180△26.2%△25.8%11.8%103-
調整額計△1,761--△2,915---△2,262-
無形資産
償却費
---△7,929-----
合計496,8638.8%7.1%24,687△12.8%△14.7%5.0%9,044△82.7%

※営業利益における無形資産償却費は各事業に配賦しています。
(2)財政状態の分析
当第1四半期連結会計期間の連結総資産は、季節要因等により営業債権が減少したものの、為替相場の変動によるのれん及び無形資産の増加等により、総資産は前年度末と比較して2,360億9千3百万円増加し、4兆7,838億4千2百万円となりました。
負債は、季節要因等による営業債務の減少はあったものの社債及び借入金の増加等により、前年度末と比較して458億7千2百万円増加し、2兆8,344億7千2百万円となりました。
資本は、前年度末に比べ1,902億2千1百万円増加し、1兆9,493億7千万円となりました。これは、配当金支出により利益剰余金が減少したものの、当第1四半期連結累計期間の親会社の所有者に帰属する四半期利益の計上による利益剰余金の増加及び為替相場の変動により在外営業活動体の換算差額が増加したこと等によるものです。
この結果、親会社所有者帰属持分比率は40.7%となりました。
(3)キャッシュ・フローの状況
当第1四半期連結累計期間の営業活動によるキャッシュ・フローは、税引前四半期利益が75億3千万円となりましたが、減価償却費等の非キャッシュ項目による増加があった一方で、法人所得税等の支払による減少があり、233億7千7百万円(前年同期比:439億7千9百万円の支出増)の支出となりました。
投資活動によるキャッシュ・フローは、有形固定資産の取得による支出などにより、175億2百万円(前年同期比:568億9千8百万円の支出増)の支出となりました。
財務活動によるキャッシュ・フローは、主に短期借入金の増加などがあり、300億9千2百万円(前年同期比:923億8千5百万円の収入増)の収入となりました。
以上の結果、当第1四半期連結累計期間では、前第1四半期連結累計期間と比較して現金及び現金同等物の残高は67億4千1百万円減少し、454億9千7百万円となりました。
(4)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
当第1四半期連結累計期間において、アサヒグループが優先的に対処すべき課題について重要な変更はありません。
(5)研究開発活動
当第1四半期連結累計期間におけるグループ全体の研究開発費の金額は、30億5千5百万円であります。なお、当第1四半期連結累計期間において、アサヒグループの研究開発活動の状況に重要な変更はありません。