有価証券報告書-第95期(平成30年1月1日-平成30年12月31日)
(業績等の概要)
(1) 業績
当期における世界経済は、通商問題などに起因する先行きの不透明感が高まりましたが、米国の景気が雇用者数の増加や個人消費の拡大などを背景に堅調に推移したほか、欧州やアジア諸国における景気も回復基調で推移したことなどにより、全体としては緩やかな回復が続きました。日本経済におきましては、企業収益の改善に加えて、雇用・所得環境の改善を背景にした個人消費の持ち直しなどにより、景気は緩やかに回復しました。
こうした状況のなかアサヒグループは、2016年に策定した「中期経営方針」のもとで、「『稼ぐ力』の強化」、
「資産・資本効率の向上」、「ESGへの取組み強化」の3つを重点課題として、これまで推進してきた「企業価値
向上経営」の更なる深化に取り組みました。
特に「『稼ぐ力』の強化」においては、国内では、高付加価値化を軸としたブランド価値の向上を図るとともに、海外では、欧州を中心として、プレミアム化の推進による成長基盤の構築やシナジーの創出などに取り組みまし
た。
その結果、アサヒグループの当期の売上収益は2兆1,202億9千1百万円(前期比1.7%増)となりました。また、利益につきましては、事業利益は※2,213億8千3百万円(前期比12.7%増)、営業利益は2,117億7千2百万円(前期比15.6%増)、親会社の所有者に帰属する当期利益は1,510億7千7百万円(前期比7.1%増)となりました。
アサヒグループの実績 (単位:百万円)
当年度の財政状態の状況は、連結総資産は前年度末と比較して2,675億7百万円減少し3兆793億1千5百万円、負債は前年度末と比較して2,644億6百万円減少し、1兆9,296億6千8百万円となりました。また、資本は前年度
末に比べ31億1百万円減少し、1兆1,496億4千7百万円となりました。
セグメントの業績は次の通りです。各セグメントの売上収益はセグメント間の内部売上収益を含んでおります。
なお、酒類事業に含まれていた一部の会社について、当年度に報告セグメントの区分を国際事業に変更しておりま
すので、以下の前期比較は前期の数値を変更後のセグメント区分に組み替えた数値で比較しております。
事業セグメント別の実績 (単位:百万円)
※営業利益における無形資産償却費は各事業に配賦しています。
[酒類事業]
酒類事業につきましては、「イノベーションの推進による新たな価値創出でNo.1戦略の深化を目指す!」をス
ローガンに、ビール市場を中心として、新たな需要創出とコスト競争力の向上に取り組みました。
ビール類については、ビールにおいて、後味の良さと冷涼感が特長の『アサヒスーパードライ 瞬冷辛口』の発売
や欧州事業ブランド商品の展開開始など、新たな価値の提案強化を図りました。また、東京2020オリンピック競技
大会のエンブレムを記載した「アサヒビールオリジナル東京2020オリンピック555mlジョッキ」※1を展開するな
ど、料飲店における飲用機会の拡大に向けた取組みを強化しました。新ジャンルにおいては、『クリアアサヒプラ
イムリッチ』で、芳醇でコクのある味わいと豊かな香りを高めるリニューアルを実施するなど、ブランド力の更な
る強化に取り組みました。
ビール類以外の酒類については、RTD※2において、果実1/2個分以上※3の果汁を使用した『アサヒ贅沢搾
り』の発売や『ウィルキンソン・ハード』シリーズの商品ラインアップの拡充など、市場における存在感の向上に
努めました。洋酒においては、『ブラックニッカクリア 樽詰めハイボール』を積極的に展開するなど、主力ブラン
ドの強化に努めました。
アルコールテイスト清涼飲料については、ビールテイスト清涼飲料『アサヒドライゼロ』において、「よりスッキ
リした後味」へのリニューアルを実施したほか、ペットボトル商品の『アサヒドライゼロスパーク』を期間限定で
発売し、新たな商品価値を提案しました。
以上の結果、酒類事業の売上収益は、ビール類以外の酒類やアルコールテイスト清涼飲料の売上がそれぞれ前年実績を上回ったものの、ビール類の市場全体の縮小による販売数量の減少などにより、前期比4.1%減の9,194億1千万円となりました。
事業利益については、固定費全般の効率化に取り組みましたが、売上収益の減少により、前期比2.8%減の1,170億7千万円となりました(営業利益は前期比4.9%減の1,073億5千9百万円)。
※1 アサヒビール株式会社は、東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会ゴールドパートナー(ビール
&ワイン)です。
※2 RTD:Ready To Drinkの略。購入後、そのまま飲用可能な缶チューハイなどを指します。
※3「日本食品標準成分表2015年版(七訂)」より算出した、果物1個当たりの重量に占める果皮などを除いた
果汁量の1/2相当量以上を使用しています。
[飲料事業]
飲料事業につきましては、重点ブランドへの経営資源の集中や健康機能領域での高付加価値商品の展開など、商品
力強化による成長と更なる収益構造の改革に取り組みました。
主力ブランドにおいては、『ウィルキンソン』ブランドで、商品ラインアップの拡充を図るなどにより、炭酸水市
場における地位の盤石化に取り組み、『カルピス』ブランドでは、『カルピス』などの主力商品の販売強化に加
え、ブランド資産を活用した商品を積極的に展開するなど、ブランド力の強化を図りました。また、『三ツ矢』ブ
ランドでは、産地・品種指定の国産果汁を使用し産地自治体との連携を活かした『特産三ツ矢』シリーズの商品展
開を推進し、『ワンダ』ブランドで、『ワンダ極』シリーズのリニューアルや新商品の発売により、ブランド価値
の向上に取り組みました。
健康機能領域においては、機能性表示食品『ウィルキンソン タンサン エクストラ』や『アサヒ からだ十六茶』
など、ブランド力を活用した高付加価値商品を発売し、市場における存在感の向上に努めました。
以上の結果、飲料事業の売上収益は、炭酸飲料や乳性飲料などの販売数量が前年実績を上回りましたが、前期に実施したチルド飲料事業売却の影響により、前期比1.5%減の3,687億5千4百万円となりました。
事業利益についても、生産体制の最適化による製造原価の低減などに取り組んだものの、売上収益と同様の要因などにより、前期比0.6%減の380億9千9百万円となりました(営業利益は前期比22.3%減の345億2千万円)。
[食品事業]
食品事業につきましては、主力ブランドへの経営資源の集中や保有する素材・技術を活用した高付加価値商品の展
開に加え、事業統合による最適生産・物流体制の構築により、持続的な成長基盤の育成に取り組みました。
タブレット菓子『ミンティア』においては、新フレーバーや期間限定の商品の発売のほか、広告・販促施策と連動
した営業活動の積極的な展開などにより、ブランド力の強化を図りました。
サプリメントについては、『ディアナチュラ』において、プロテインパウダー『ディアナチュラアクティブ』を発
売し新たな市場に参入するなど、展開領域の拡大に取り組みました。
ベビーフードについては、『グーグーキッチン』において、商品ラインアップの拡充などにより、ブランド力の強
化を図りました。また、シニア向け商品については、『バランス献立』へのブランドの統一や新商品の発売などに
より、市場における存在感の向上に取り組みました。
フリーズドライ食品については、『いつものおみそ汁』や『Theうまみ』において、新たな具材を使用した商品
を発売するなど、主力ブランドの価値向上を図りました。
以上の結果、食品事業の売上収益は、主力ブランドを中心に好調に推移し、前期比1.9%増の1,159億7千3百万円となりました。
事業利益については、増収効果に加えて、製造減価の低減などにより、前期比4.9%増の122億円となりました(営業利益は前期比8.0%増の117億6千2百万円)。
[国際事業]
国際事業につきましては、各事業のポートフォリオの強化やプレミアム化の推進に加え、主力ブランドの地域横断
的な展開によるシナジー創出などにより、「強い競争力を持つグローバルプレイヤー」を目指した成長基盤の拡大
に取り組みました。
欧州事業については、西欧において、イタリアの『Peroni』やオランダの『Grolsch』などを中心に母国市場での
高付加価値商品の展開を強化したほか、その他の国にもこれらの商品を拡大展開するなど、プレミアム化を推進し
ました。中東欧においては、チェコの『Pilsner Urquell』やポーランドの『Tyskie』など各国の主力ブランドを中
心としたプレミアム化の推進や、販売促進活動の強化、固定費の効率化などにより、更なるブランド力の強化と収
益性の向上を図りました。また、1月から欧州におけるアサヒグループ内での製造を開始した『アサヒスーパード
ライ』は、スーパープレミアムビールとしてブランド価値を再定義し、西欧と中東欧の各国に拡大展開するなど、シナジーの創出に取り組みました。
オセアニア事業については、飲料において、主力の炭酸カテゴリーを中心に販売促進活動を積極的に展開すること
により、市場における存在感の向上に努めました。酒類においては、『アサヒスーパードライ』や『Peroni Nastro
Azzurro』などのプレミアムビールブランドの営業活動を積極的に展開するとともに、『Peroni Nastro Azzurro』
の樽詰め商品の現地製造を開始するなど、シナジー創出に向けて製造・販売体制を強化しました。
東南アジア事業については、マレーシアにおける『ワンダ』、『カルピス』、『Goodday』や、ミャンマーの
『Blue Mountain』など、アサヒグループ保有ブランドを中心にラインアップの拡充や販売促進活動を強化すること
により、各市場におけるブランド価値の向上に努めました。
中国事業については、主力の『アサヒスーパードライ』に加えて、『Peroni Nastro Azzurro』や『Pilsner
Urquell』などの展開を開始することにより、プレミアムビール市場における存在感の向上に取り組みました。
以上の結果、国際事業の売上収益は、中東欧のビール事業の新規連結効果※に加え、欧州事業全体が好調に推移
したことなどにより、前期比12.0%増の7,132億6千1百万円となりました。
事業利益については、主に欧州事業の売上収益が増加したことにより、前期比48.5%増の995億8千8百万円とな
りました(営業利益は、前期比114.8%増の763億4千7百万円)。
※ 中東欧のビール事業の業績は2017年4月から取り込まれております。
[その他の事業]
その他の事業につきましては、売上収益は、貨物運送業務の受託の拡大や健康食品の売上の増加などにより、前期比3.1%増の1,094億6千7百万円となりました。
事業利益については、健康食品の売上収益が増加したことなどにより、前期比19.7%増の23億8千4百万円となりました(営業利益は前期比17.0%増の23億1千5百万円)。
(2) キャッシュ・フローの状況
当年度の営業活動によるキャッシュ・フローは、税引前利益が2,073億8百万円となりましたが、法人所得税等の支払による減少があった一方で、減価償却費等の非キャッシュ項目による増加があり、2,524億4千1百万円(前期比:207億2千9百万円の収入増)の収入となりました。
投資活動によるキャッシュ・フローは、持分法で会計処理されている投資の売却収入などにより、225億5百万円(前期比:9,083億2千9百万円の収入増)の収入となりました。
財務活動によるキャッシュ・フローは、主に借入金の返済による金融債務の減少があり、2,705億6千4百万円(前期比:9,324億4千7百万円の支出増)の支出となりました。
以上の結果、当年度末では、前年度末と比較して現金及び現金同等物の残高は7億3千6百万円減少し、573億1千7百万円となりました。
(生産、受注及び販売の状況)
(1) 生産実績
当年度におけるセグメントごとの生産実績は以下の通りであります。
(注) 1 金額は、販売価額によっております。
2 IFRSに基づく金額を記載しております。
3 酒類事業の生産数量、飲料事業及び食品事業の生産高には、外部への製造委託を含めております。
4 上記金額には消費税等は含まれておりません。
(2) 受注実績
当社では受注生産はほとんど行っておりません。
(3) 販売実績
当年度におけるセグメントごとの販売実績は以下の通りであります。
(注) 1 調整額はセグメント間取引であります。
2 上記金額には消費税等は含まれておりません。
3 主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合
(経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容)
当年度の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析は以下のとおりであります。
(1) 重要な会計方針及び見積り
当社の連結財務諸表は、IFRSに準拠して作成されております。この連結財務諸表の作成にあたり、見積りが必要となる事項につきましては、合理的な基準に基づき、会計上の見積りを行っております。
詳細につきましては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記事項(連結財務諸表注記 6 重要な会計上の見積り及び判断)」に記載しております。
(2) 当年度の経営成績の分析
①売上収益
アサヒグループの当年度の売上収益は、前期比1.7%増、354億1千4百万円増収の2兆1,202億9千1百万円となりました。酒類事業においては、ビール類以外の酒類やアルコールテイスト清涼飲料の売上がそれぞれ前年実績を上回ったものの、ビール類の市場全体の縮小による販売数量の減少などにより、前期比4.1%減、389億6千9百万円減収の9,194億1千万円となりました。飲料事業においては、炭酸飲料や乳性飲料などの販売数量が前年実績を上回りましたが、前期に実施したチルド飲料事業売却の影響により、前期比1.5%減、57億6千3百万円減収の3,687億5千4百万円となりました。食品事業においては、主力ブランドを中心に好調に推移し、前期比1.9%増の1,159億7千3百万円となりました。国際事業においては、中東欧のビール事業の新規連結効果に加え、欧州事業全体が好調に推移したことなどにより、前期比12.0%増の7,132億6千1百万円となりました。その他の事業においては、貨物運送業務の受託の拡大や健康食品の売上の増加などにより、前期比3.1%増、33億2千6百万円増収の1,094億6千7百万円となりました。
②事業利益
当年度の事業利益は、前期比12.7%増、250億1千4百万円増益の2,213億8千3百万円となりました。酒類事業においては、固定費全般の効率化に取り組みましたが、売上収益の減少により前期比2.8%減、33億8千7百万円減益の1,170億7千万円となりました。飲料事業においては、生産体制の最適化による製造原価の低減などに取り組んだものの、売上収益と同様の要因などにより、前期比0.6%減、2億2千2百万円減益の380億9千9百万円となりました。食品事業においては、増収効果に加えて、製造原価の低減などにより、前期比4.9%増、5億7千4百万円増益の122億円となりました。国際事業においては、主に欧州事業の売上収益が増加したことより、前期比48.5%増、325億4千万円増益の995億8千8百万円となりました。その他の事業においては、健康食品の売上収益が増加したことなどにより、前期比19.7%増、3億9千2百万円増益の23億8千4百万円となりました。
③営業利益
営業利益は、事業利益の増益に加え、その他費用の減少などにより、前期比15.6%増、285億7千9百万円増益の2,117億7千2百万円となりました。
④税引前利益
当年度の税引前利益は、営業利益の増益に加え、金融収益が前期比59.1%増、30億7千5百万円増加の82億8千2百万円となった一方で、金融費用が前期比22.8%増、23億6千3百万円増加の127億3千1百万円となったことに加え、持分法で会計処理されている投資の売却損益が前期比187億9千9百万円減益の9億1百万円の損失となったことにより前期比5.2%増、103億2千4百万円増益の2,073億8百万円となりました。
⑤親会社の所有者に帰属する当期利益
親会社の所有者に帰属する当期利益は、税引前利益の増益に加え、法人所得税費用の減少などにより前期比7.1%増、100億7千4百万円増益の1,510億7千7百万円となりました。
また、基本的1株当たり利益は329.80円(前期307.78円)となり、親会社所有者帰属持分比率は37.2%(前期34.2%)となりました。
また、事業ポートフォリオ再構築など一時的な特殊要因を除いた親会社に帰属する当期利益を算出に用いた調整後基本的1株当たり利益は328.95円(前期262.23円)となりました。
(3) 財政状態の分析
①総資産
当年度の連結総資産は、事業売却に伴い売却目的で保有する資産が減少したことや、円高及び償却に伴う有形固定資産・無形資産の減少等により、前年度末と比較して2,675億7百万円減少の、3兆793億1千5百万円となりました。
②負債
負債は、主に金融債務が減少したことにより、前年度末と比較して2,644億6百万円減少し、1兆9,296億6千8百万円となりました。
③資本
資本は、前年度末に比べ31億1百万円減少し、1兆1,496億4千7百万円となりました。これは、当年度の親会社の所有者に帰属する当期利益の計上により利益剰余金が増加したものの配当金支出による利益剰余金の減少や為替相場の変動により在外営業活動体の換算差額が減少したこと等によるものです。
この結果、親会社所有者帰属持分比率は37.2%となりました。
また、事業ポートフォリオ再構築や為替変動など一時的な特殊要因を除いた「親会社の所有者に帰属する当期利益」及び「親会社の所有者に帰属する持分合計」を算出に用いた調整後親会社所有者帰属持分当期利益率は15.2%(前年同期13.7%)となりました。
(4) 資本の財源及び資金の流動性についての分析
①キャッシュ・フロー分析
キャッシュ・フローの状況につきましては、「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (2)キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
また、キャッシュ・フロー指標のトレンドは、以下のとおりであります。
(注) 親会社所有者帰属持分比率:親会社の所有者に帰属する持分/総資産
時価ベースの親会社所有者帰属持分比率:株式時価総額/総資産
キャッシュ・フロー対有利子負債比率:有利子負債/キャッシュ・フロー
インタレスト・カバレッジ・レシオ:キャッシュ・フロー/利払い
※ 各指標はいずれも連結ベースの財務数値により算出しております。
※ 株式時価総額は自己株式を除く発行済株式数をベースに計算しております。
※ キャッシュ・フローは営業キャッシュ・フローを使用しております。
②資金の調達
アサヒグループの資金の源泉は、主として営業活動からのキャッシュ・フローと金融機関からの借入、社債の発行からなりますが、当社は経営方針として、有利子負債残高の圧縮を基本として掲げております。しかしながら、「事業基盤強化・効率化を目指した設備投資」及び「M&Aを含む戦略的事業投資」については資金需要に応じて金融債務を柔軟に活用することとしております。資金需要の発生した時点で、金利コストの最小化を図れるような調達方法を熟慮し、資金需要に対応しております。一方、運転資金需要については、短期借入金及びコマーシャル・ペーパーでまかなうことを基本としております。
③資金の流動性
当社及び主要な連結子会社はCMS(キャッシュマネジメントシステム)を導入しており、各社における余剰資金を当社へ集中し、一元管理を行うことにより、資金効率の向上と金融費用の極小化を図っております。
(5) 戦略的現状と見通し
2019年は、「中期経営方針」に基づいて、国内外での高付加価値ブランドの育成やZBB(ゼロベース予算)の導入などにより『稼ぐ力の強化』に努めます。さらに、イノベーションの実現に向けた無形資産(研究開発、人材力等)への投資などにより『経営資源の高度化』を図るとともに、アサヒ独自の強みを活かす『ESGへの取組み深化』により、Asahi Group Philosophyの具現化に向けた“グローカルな価値創造経営”を推進します。
(6) 経営者の問題認識と今後の方針について
経営者の問題認識と今後の方針につきましては、この文中に記載したほか、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおりであります。
(7) 経営成績に重要な影響を与える要因について
経営成績に重要な影響を与える要因につきましては、「第2 事業の状況 2 事業等のリスク」に記載のとおりであります。
経営成績等の状況の概要に係る主要な項目における差異に関する情報
IFRSにより作成した連結財務諸表における主要な項目と、日本基準により作成した場合の連結財務諸表におけるこれらに相当する項目との差異に関する事項は以下の通りであります。
(のれん償却)
日本基準では、のれんは、その効果が発現すると見積もられる期間で償却することとしておりましたが、IFRSでは、IFRS移行日以降の償却を停止しております。
この影響によりIFRSでは日本基準に比べて、販売費及び一般管理費が当年度において39,089百万円(前年度16,736百万円)減少しております。
(1) 業績
当期における世界経済は、通商問題などに起因する先行きの不透明感が高まりましたが、米国の景気が雇用者数の増加や個人消費の拡大などを背景に堅調に推移したほか、欧州やアジア諸国における景気も回復基調で推移したことなどにより、全体としては緩やかな回復が続きました。日本経済におきましては、企業収益の改善に加えて、雇用・所得環境の改善を背景にした個人消費の持ち直しなどにより、景気は緩やかに回復しました。
こうした状況のなかアサヒグループは、2016年に策定した「中期経営方針」のもとで、「『稼ぐ力』の強化」、
「資産・資本効率の向上」、「ESGへの取組み強化」の3つを重点課題として、これまで推進してきた「企業価値
向上経営」の更なる深化に取り組みました。
特に「『稼ぐ力』の強化」においては、国内では、高付加価値化を軸としたブランド価値の向上を図るとともに、海外では、欧州を中心として、プレミアム化の推進による成長基盤の構築やシナジーの創出などに取り組みまし
た。
その結果、アサヒグループの当期の売上収益は2兆1,202億9千1百万円(前期比1.7%増)となりました。また、利益につきましては、事業利益は※2,213億8千3百万円(前期比12.7%増)、営業利益は2,117億7千2百万円(前期比15.6%増)、親会社の所有者に帰属する当期利益は1,510億7千7百万円(前期比7.1%増)となりました。
アサヒグループの実績 (単位:百万円)
実績 | 前期比 | |
売 上 収 益 | 2,120,291 | 1.7% |
事 業 利 益 | 221,383 | 12.7% |
営 業 利 益 | 211,772 | 15.6% |
親会社の所有者に 帰属する当期利益 | 151,077 | 7.1% |
当年度の財政状態の状況は、連結総資産は前年度末と比較して2,675億7百万円減少し3兆793億1千5百万円、負債は前年度末と比較して2,644億6百万円減少し、1兆9,296億6千8百万円となりました。また、資本は前年度
末に比べ31億1百万円減少し、1兆1,496億4千7百万円となりました。
セグメントの業績は次の通りです。各セグメントの売上収益はセグメント間の内部売上収益を含んでおります。
なお、酒類事業に含まれていた一部の会社について、当年度に報告セグメントの区分を国際事業に変更しておりま
すので、以下の前期比較は前期の数値を変更後のセグメント区分に組み替えた数値で比較しております。
事業セグメント別の実績 (単位:百万円)
売上収益 | 前期比 | 事業利益 | 前期比 | 売上収益事業利益率 | 営業利益 | 前期比 | |
酒類 | 919,410 | △4.1% | 117,070 | △2.8% | 12.7% | 107,359 | △4.9% |
飲料 | 368,754 | △1.5% | 38,099 | △0.6% | 10.3% | 34,520 | △22.3% |
食品 | 115,973 | 1.9% | 12,200 | 4.9% | 10.5% | 11,762 | 8.0% |
国際 | 713,261 | 12.0% | 99,588 | 48.5% | 14.0% | 76,347 | 114.8% |
その他 | 109,467 | 3.1% | 2,384 | 19.7% | 2.2% | 2,315 | 17.0% |
調整額計 | △106,575 | - | △25,942 | - | - | △20,533 | - |
無形資産償却費 | - | - | △22,018 | - | - | - | - |
合計 | 2,120,291 | 1.7% | 221,383 | 12.7% | 10.4% | 211,772 | 15.6% |
※営業利益における無形資産償却費は各事業に配賦しています。
[酒類事業]
酒類事業につきましては、「イノベーションの推進による新たな価値創出でNo.1戦略の深化を目指す!」をス
ローガンに、ビール市場を中心として、新たな需要創出とコスト競争力の向上に取り組みました。
ビール類については、ビールにおいて、後味の良さと冷涼感が特長の『アサヒスーパードライ 瞬冷辛口』の発売
や欧州事業ブランド商品の展開開始など、新たな価値の提案強化を図りました。また、東京2020オリンピック競技
大会のエンブレムを記載した「アサヒビールオリジナル東京2020オリンピック555mlジョッキ」※1を展開するな
ど、料飲店における飲用機会の拡大に向けた取組みを強化しました。新ジャンルにおいては、『クリアアサヒプラ
イムリッチ』で、芳醇でコクのある味わいと豊かな香りを高めるリニューアルを実施するなど、ブランド力の更な
る強化に取り組みました。
ビール類以外の酒類については、RTD※2において、果実1/2個分以上※3の果汁を使用した『アサヒ贅沢搾
り』の発売や『ウィルキンソン・ハード』シリーズの商品ラインアップの拡充など、市場における存在感の向上に
努めました。洋酒においては、『ブラックニッカクリア 樽詰めハイボール』を積極的に展開するなど、主力ブラン
ドの強化に努めました。
アルコールテイスト清涼飲料については、ビールテイスト清涼飲料『アサヒドライゼロ』において、「よりスッキ
リした後味」へのリニューアルを実施したほか、ペットボトル商品の『アサヒドライゼロスパーク』を期間限定で
発売し、新たな商品価値を提案しました。
以上の結果、酒類事業の売上収益は、ビール類以外の酒類やアルコールテイスト清涼飲料の売上がそれぞれ前年実績を上回ったものの、ビール類の市場全体の縮小による販売数量の減少などにより、前期比4.1%減の9,194億1千万円となりました。
事業利益については、固定費全般の効率化に取り組みましたが、売上収益の減少により、前期比2.8%減の1,170億7千万円となりました(営業利益は前期比4.9%減の1,073億5千9百万円)。
※1 アサヒビール株式会社は、東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会ゴールドパートナー(ビール
&ワイン)です。
※2 RTD:Ready To Drinkの略。購入後、そのまま飲用可能な缶チューハイなどを指します。
※3「日本食品標準成分表2015年版(七訂)」より算出した、果物1個当たりの重量に占める果皮などを除いた
果汁量の1/2相当量以上を使用しています。
[飲料事業]
飲料事業につきましては、重点ブランドへの経営資源の集中や健康機能領域での高付加価値商品の展開など、商品
力強化による成長と更なる収益構造の改革に取り組みました。
主力ブランドにおいては、『ウィルキンソン』ブランドで、商品ラインアップの拡充を図るなどにより、炭酸水市
場における地位の盤石化に取り組み、『カルピス』ブランドでは、『カルピス』などの主力商品の販売強化に加
え、ブランド資産を活用した商品を積極的に展開するなど、ブランド力の強化を図りました。また、『三ツ矢』ブ
ランドでは、産地・品種指定の国産果汁を使用し産地自治体との連携を活かした『特産三ツ矢』シリーズの商品展
開を推進し、『ワンダ』ブランドで、『ワンダ極』シリーズのリニューアルや新商品の発売により、ブランド価値
の向上に取り組みました。
健康機能領域においては、機能性表示食品『ウィルキンソン タンサン エクストラ』や『アサヒ からだ十六茶』
など、ブランド力を活用した高付加価値商品を発売し、市場における存在感の向上に努めました。
以上の結果、飲料事業の売上収益は、炭酸飲料や乳性飲料などの販売数量が前年実績を上回りましたが、前期に実施したチルド飲料事業売却の影響により、前期比1.5%減の3,687億5千4百万円となりました。
事業利益についても、生産体制の最適化による製造原価の低減などに取り組んだものの、売上収益と同様の要因などにより、前期比0.6%減の380億9千9百万円となりました(営業利益は前期比22.3%減の345億2千万円)。
[食品事業]
食品事業につきましては、主力ブランドへの経営資源の集中や保有する素材・技術を活用した高付加価値商品の展
開に加え、事業統合による最適生産・物流体制の構築により、持続的な成長基盤の育成に取り組みました。
タブレット菓子『ミンティア』においては、新フレーバーや期間限定の商品の発売のほか、広告・販促施策と連動
した営業活動の積極的な展開などにより、ブランド力の強化を図りました。
サプリメントについては、『ディアナチュラ』において、プロテインパウダー『ディアナチュラアクティブ』を発
売し新たな市場に参入するなど、展開領域の拡大に取り組みました。
ベビーフードについては、『グーグーキッチン』において、商品ラインアップの拡充などにより、ブランド力の強
化を図りました。また、シニア向け商品については、『バランス献立』へのブランドの統一や新商品の発売などに
より、市場における存在感の向上に取り組みました。
フリーズドライ食品については、『いつものおみそ汁』や『Theうまみ』において、新たな具材を使用した商品
を発売するなど、主力ブランドの価値向上を図りました。
以上の結果、食品事業の売上収益は、主力ブランドを中心に好調に推移し、前期比1.9%増の1,159億7千3百万円となりました。
事業利益については、増収効果に加えて、製造減価の低減などにより、前期比4.9%増の122億円となりました(営業利益は前期比8.0%増の117億6千2百万円)。
[国際事業]
国際事業につきましては、各事業のポートフォリオの強化やプレミアム化の推進に加え、主力ブランドの地域横断
的な展開によるシナジー創出などにより、「強い競争力を持つグローバルプレイヤー」を目指した成長基盤の拡大
に取り組みました。
欧州事業については、西欧において、イタリアの『Peroni』やオランダの『Grolsch』などを中心に母国市場での
高付加価値商品の展開を強化したほか、その他の国にもこれらの商品を拡大展開するなど、プレミアム化を推進し
ました。中東欧においては、チェコの『Pilsner Urquell』やポーランドの『Tyskie』など各国の主力ブランドを中
心としたプレミアム化の推進や、販売促進活動の強化、固定費の効率化などにより、更なるブランド力の強化と収
益性の向上を図りました。また、1月から欧州におけるアサヒグループ内での製造を開始した『アサヒスーパード
ライ』は、スーパープレミアムビールとしてブランド価値を再定義し、西欧と中東欧の各国に拡大展開するなど、シナジーの創出に取り組みました。
オセアニア事業については、飲料において、主力の炭酸カテゴリーを中心に販売促進活動を積極的に展開すること
により、市場における存在感の向上に努めました。酒類においては、『アサヒスーパードライ』や『Peroni Nastro
Azzurro』などのプレミアムビールブランドの営業活動を積極的に展開するとともに、『Peroni Nastro Azzurro』
の樽詰め商品の現地製造を開始するなど、シナジー創出に向けて製造・販売体制を強化しました。
東南アジア事業については、マレーシアにおける『ワンダ』、『カルピス』、『Goodday』や、ミャンマーの
『Blue Mountain』など、アサヒグループ保有ブランドを中心にラインアップの拡充や販売促進活動を強化すること
により、各市場におけるブランド価値の向上に努めました。
中国事業については、主力の『アサヒスーパードライ』に加えて、『Peroni Nastro Azzurro』や『Pilsner
Urquell』などの展開を開始することにより、プレミアムビール市場における存在感の向上に取り組みました。
以上の結果、国際事業の売上収益は、中東欧のビール事業の新規連結効果※に加え、欧州事業全体が好調に推移
したことなどにより、前期比12.0%増の7,132億6千1百万円となりました。
事業利益については、主に欧州事業の売上収益が増加したことにより、前期比48.5%増の995億8千8百万円とな
りました(営業利益は、前期比114.8%増の763億4千7百万円)。
※ 中東欧のビール事業の業績は2017年4月から取り込まれております。
[その他の事業]
その他の事業につきましては、売上収益は、貨物運送業務の受託の拡大や健康食品の売上の増加などにより、前期比3.1%増の1,094億6千7百万円となりました。
事業利益については、健康食品の売上収益が増加したことなどにより、前期比19.7%増の23億8千4百万円となりました(営業利益は前期比17.0%増の23億1千5百万円)。
(2) キャッシュ・フローの状況
当年度の営業活動によるキャッシュ・フローは、税引前利益が2,073億8百万円となりましたが、法人所得税等の支払による減少があった一方で、減価償却費等の非キャッシュ項目による増加があり、2,524億4千1百万円(前期比:207億2千9百万円の収入増)の収入となりました。
投資活動によるキャッシュ・フローは、持分法で会計処理されている投資の売却収入などにより、225億5百万円(前期比:9,083億2千9百万円の収入増)の収入となりました。
財務活動によるキャッシュ・フローは、主に借入金の返済による金融債務の減少があり、2,705億6千4百万円(前期比:9,324億4千7百万円の支出増)の支出となりました。
以上の結果、当年度末では、前年度末と比較して現金及び現金同等物の残高は7億3千6百万円減少し、573億1千7百万円となりました。
(生産、受注及び販売の状況)
(1) 生産実績
当年度におけるセグメントごとの生産実績は以下の通りであります。
セグメントの名称 | 数量又は金額 | 単位 | 前期比 | |
酒 類 | 2,273,647 | KL | △4.2 | % |
飲 料 | 355,782 | 百万円 | △6.4 | % |
食 品 | 119,139 | 百万円 | 0.5 | % |
国 際 | 506,937 | 百万円 | 4.2 | % |
(注) 1 金額は、販売価額によっております。
2 IFRSに基づく金額を記載しております。
3 酒類事業の生産数量、飲料事業及び食品事業の生産高には、外部への製造委託を含めております。
4 上記金額には消費税等は含まれておりません。
(2) 受注実績
当社では受注生産はほとんど行っておりません。
(3) 販売実績
当年度におけるセグメントごとの販売実績は以下の通りであります。
セグメントの名称 | 金額 | 前期比 | ||
酒 類 | 919,410 | 百万円 | △4.1 | % |
飲 料 | 368,754 | 百万円 | △1.5 | % |
食 品 | 115,973 | 百万円 | 1.9 | % |
国 際 | 713,261 | 百万円 | 12.0 | % |
そ の 他 | 109,467 | 百万円 | 3.1 | % |
調 整 額 | △106,575 | 百万円 | - | |
合 計 | 2,120,291 | 百万円 | 1.7 | % |
(注) 1 調整額はセグメント間取引であります。
2 上記金額には消費税等は含まれておりません。
3 主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合
前年度 | 当年度 | ||||
相手先 | 販売高 | 割合 | 販売高 | 割合 | |
(百万円) | (%) | (百万円) | (%) | ||
国分ホールディングス㈱ | 201,255 | 9.7 | 176,945 | 8.3 | |
伊藤忠食品㈱ | 218,766 | 10.5 | 213,425 | 10.1 |
(経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容)
当年度の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析は以下のとおりであります。
(1) 重要な会計方針及び見積り
当社の連結財務諸表は、IFRSに準拠して作成されております。この連結財務諸表の作成にあたり、見積りが必要となる事項につきましては、合理的な基準に基づき、会計上の見積りを行っております。
詳細につきましては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記事項(連結財務諸表注記 6 重要な会計上の見積り及び判断)」に記載しております。
(2) 当年度の経営成績の分析
①売上収益
アサヒグループの当年度の売上収益は、前期比1.7%増、354億1千4百万円増収の2兆1,202億9千1百万円となりました。酒類事業においては、ビール類以外の酒類やアルコールテイスト清涼飲料の売上がそれぞれ前年実績を上回ったものの、ビール類の市場全体の縮小による販売数量の減少などにより、前期比4.1%減、389億6千9百万円減収の9,194億1千万円となりました。飲料事業においては、炭酸飲料や乳性飲料などの販売数量が前年実績を上回りましたが、前期に実施したチルド飲料事業売却の影響により、前期比1.5%減、57億6千3百万円減収の3,687億5千4百万円となりました。食品事業においては、主力ブランドを中心に好調に推移し、前期比1.9%増の1,159億7千3百万円となりました。国際事業においては、中東欧のビール事業の新規連結効果に加え、欧州事業全体が好調に推移したことなどにより、前期比12.0%増の7,132億6千1百万円となりました。その他の事業においては、貨物運送業務の受託の拡大や健康食品の売上の増加などにより、前期比3.1%増、33億2千6百万円増収の1,094億6千7百万円となりました。
②事業利益
当年度の事業利益は、前期比12.7%増、250億1千4百万円増益の2,213億8千3百万円となりました。酒類事業においては、固定費全般の効率化に取り組みましたが、売上収益の減少により前期比2.8%減、33億8千7百万円減益の1,170億7千万円となりました。飲料事業においては、生産体制の最適化による製造原価の低減などに取り組んだものの、売上収益と同様の要因などにより、前期比0.6%減、2億2千2百万円減益の380億9千9百万円となりました。食品事業においては、増収効果に加えて、製造原価の低減などにより、前期比4.9%増、5億7千4百万円増益の122億円となりました。国際事業においては、主に欧州事業の売上収益が増加したことより、前期比48.5%増、325億4千万円増益の995億8千8百万円となりました。その他の事業においては、健康食品の売上収益が増加したことなどにより、前期比19.7%増、3億9千2百万円増益の23億8千4百万円となりました。
③営業利益
営業利益は、事業利益の増益に加え、その他費用の減少などにより、前期比15.6%増、285億7千9百万円増益の2,117億7千2百万円となりました。
④税引前利益
当年度の税引前利益は、営業利益の増益に加え、金融収益が前期比59.1%増、30億7千5百万円増加の82億8千2百万円となった一方で、金融費用が前期比22.8%増、23億6千3百万円増加の127億3千1百万円となったことに加え、持分法で会計処理されている投資の売却損益が前期比187億9千9百万円減益の9億1百万円の損失となったことにより前期比5.2%増、103億2千4百万円増益の2,073億8百万円となりました。
⑤親会社の所有者に帰属する当期利益
親会社の所有者に帰属する当期利益は、税引前利益の増益に加え、法人所得税費用の減少などにより前期比7.1%増、100億7千4百万円増益の1,510億7千7百万円となりました。
また、基本的1株当たり利益は329.80円(前期307.78円)となり、親会社所有者帰属持分比率は37.2%(前期34.2%)となりました。
また、事業ポートフォリオ再構築など一時的な特殊要因を除いた親会社に帰属する当期利益を算出に用いた調整後基本的1株当たり利益は328.95円(前期262.23円)となりました。
(3) 財政状態の分析
①総資産
当年度の連結総資産は、事業売却に伴い売却目的で保有する資産が減少したことや、円高及び償却に伴う有形固定資産・無形資産の減少等により、前年度末と比較して2,675億7百万円減少の、3兆793億1千5百万円となりました。
②負債
負債は、主に金融債務が減少したことにより、前年度末と比較して2,644億6百万円減少し、1兆9,296億6千8百万円となりました。
③資本
資本は、前年度末に比べ31億1百万円減少し、1兆1,496億4千7百万円となりました。これは、当年度の親会社の所有者に帰属する当期利益の計上により利益剰余金が増加したものの配当金支出による利益剰余金の減少や為替相場の変動により在外営業活動体の換算差額が減少したこと等によるものです。
この結果、親会社所有者帰属持分比率は37.2%となりました。
また、事業ポートフォリオ再構築や為替変動など一時的な特殊要因を除いた「親会社の所有者に帰属する当期利益」及び「親会社の所有者に帰属する持分合計」を算出に用いた調整後親会社所有者帰属持分当期利益率は15.2%(前年同期13.7%)となりました。
(4) 資本の財源及び資金の流動性についての分析
①キャッシュ・フロー分析
キャッシュ・フローの状況につきましては、「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (2)キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
また、キャッシュ・フロー指標のトレンドは、以下のとおりであります。
2017年12月期 | 2018年12月期 | |
親会社所有者帰属持分比率(%) | 34.2 | 37.2 |
時価ベースの親会社所有者帰属 持分比率(%) | 76.5 | 63.5 |
キャッシュ・フロー対有利子 負債比率(年) | 5.7 | 4.1 |
インタレスト・カバレッジ・ レシオ(倍) | 41.4 | 37.0 |
(注) 親会社所有者帰属持分比率:親会社の所有者に帰属する持分/総資産
時価ベースの親会社所有者帰属持分比率:株式時価総額/総資産
キャッシュ・フロー対有利子負債比率:有利子負債/キャッシュ・フロー
インタレスト・カバレッジ・レシオ:キャッシュ・フロー/利払い
※ 各指標はいずれも連結ベースの財務数値により算出しております。
※ 株式時価総額は自己株式を除く発行済株式数をベースに計算しております。
※ キャッシュ・フローは営業キャッシュ・フローを使用しております。
②資金の調達
アサヒグループの資金の源泉は、主として営業活動からのキャッシュ・フローと金融機関からの借入、社債の発行からなりますが、当社は経営方針として、有利子負債残高の圧縮を基本として掲げております。しかしながら、「事業基盤強化・効率化を目指した設備投資」及び「M&Aを含む戦略的事業投資」については資金需要に応じて金融債務を柔軟に活用することとしております。資金需要の発生した時点で、金利コストの最小化を図れるような調達方法を熟慮し、資金需要に対応しております。一方、運転資金需要については、短期借入金及びコマーシャル・ペーパーでまかなうことを基本としております。
③資金の流動性
当社及び主要な連結子会社はCMS(キャッシュマネジメントシステム)を導入しており、各社における余剰資金を当社へ集中し、一元管理を行うことにより、資金効率の向上と金融費用の極小化を図っております。
(5) 戦略的現状と見通し
2019年は、「中期経営方針」に基づいて、国内外での高付加価値ブランドの育成やZBB(ゼロベース予算)の導入などにより『稼ぐ力の強化』に努めます。さらに、イノベーションの実現に向けた無形資産(研究開発、人材力等)への投資などにより『経営資源の高度化』を図るとともに、アサヒ独自の強みを活かす『ESGへの取組み深化』により、Asahi Group Philosophyの具現化に向けた“グローカルな価値創造経営”を推進します。
(6) 経営者の問題認識と今後の方針について
経営者の問題認識と今後の方針につきましては、この文中に記載したほか、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおりであります。
(7) 経営成績に重要な影響を与える要因について
経営成績に重要な影響を与える要因につきましては、「第2 事業の状況 2 事業等のリスク」に記載のとおりであります。
経営成績等の状況の概要に係る主要な項目における差異に関する情報
IFRSにより作成した連結財務諸表における主要な項目と、日本基準により作成した場合の連結財務諸表におけるこれらに相当する項目との差異に関する事項は以下の通りであります。
(のれん償却)
日本基準では、のれんは、その効果が発現すると見積もられる期間で償却することとしておりましたが、IFRSでは、IFRS移行日以降の償却を停止しております。
この影響によりIFRSでは日本基準に比べて、販売費及び一般管理費が当年度において39,089百万円(前年度16,736百万円)減少しております。