半期報告書-第101期(2024/01/01-2024/12/31)

【提出】
2024/08/07 15:00
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【項目】
37項目
(1)業績
当中間連結会計期間(2024年1月1日~6月30日)における世界経済は、米国においては、雇用者数の増加や個人消費の拡大を背景に景気は堅調に推移し、欧州においては、インフレ圧力の緩和とともに、景気の持ち直しが見られました。日本においても、物価高騰の影響を受けつつも、雇用・所得環境の改善に伴う個人消費の増加により、景気は緩やかな回復の兆しが見られました。
こうした状況のなかアサヒグループは、『中長期経営方針』に基づき、各地域におけるプレミアム戦略の推進などによる事業ポートフォリオの強靭化に取り組みました。また、サステナビリティと経営の統合をはじめとしたコア戦略の一層の推進に加えて、真のグローバル化に向けた人的資本の高度化やグループガバナンスの強化により、長期戦略を支える経営基盤を強化しました。
その結果、アサヒグループの売上収益は1兆3,789億6千6百万円(前年同期比10.1%増)となりました。また、利益については、事業利益※1は1,158億7千5百万円(前年同期比12.6%増)、営業利益は1,041億円(前年同期比8.4%増)、親会社の所有者に帰属する中間利益は763億6千6百万円(前年同期比16.1%増)、調整後親会社の所有者に帰属する中間利益※2は764億2千4百万円(前年同期比15.2%増)となりました。
なお、為替変動による影響を除くと、売上収益は前年同期比3.8%の増収、事業利益は前年同期比6.2%の増益となりました。※3
※1 事業利益とは、売上収益から売上原価並びに販売費及び一般管理費を控除した、恒常的な事業の業績を測る当社独自の利益指標です。
※2 調整後親会社の所有者に帰属する中間利益とは、親会社の所有者に帰属する中間利益から事業ポートフォリオ再構築及び減損損失など一時的な特殊要因を控除したものです。
※3 当中間連結会計期間の外貨金額を、前年同期の為替レートで円換算して比較しています。
[日本]
日本においては、酒類、飲料、食品事業の主力ブランドに経営資源を投下するとともに、新たな価値提案の強化などにより、成長基盤の拡大に取り組みました。また、各事業の枠を超えたシナジー創出に加えて、人的資本や組織機能の高度化、サステナビリティへの取り組み推進などにより、日本全体の経営基盤を強化しました。
酒類事業では、ビール類において、「スーパードライ」の世界観に没入できるコンセプトショップ「SUPER DRY Immersive experience」を期間限定でオープンするなど広告・販売促進活動を強化し、ブランド価値向上に取り組みました。また、『アサヒ生ビール』の世界観を体験できる「出張マルエフ横丁」の展開や、『アサヒ食彩』を全業態で全国発売するなど、ビールカテゴリーの更なる強化を図りました。RTD※1においては、『アサヒGINON(ジノン)』の全国発売に加え、本物のレモンスライスが浮き上がる『未来のレモンサワー』をエリア・数量限定で発売するなど、新価値創造に向けた取り組みを強化しました。アルコールテイスト飲料においては、アルコール分0.00%の『アサヒゼロ』を全国発売するなど、お酒を飲む人と飲まない人が共に楽しめる生活文化の創造を目指し、「スマートドリンキング」の推進に取り組みました。
飲料事業では、生誕120周年を迎えた「ウィルキンソン」ブランドから甘さを抑えた有糖炭酸飲料「WILKINSON GO」シリーズの発売に加え、緑茶ブランド『アサヒ 颯(そう)』のパッケージをリニューアルし香り高い味わいを訴求するなど、市場の活性化を図りました。また、「カルピス由来の乳酸菌科学シリーズ」を「カルピス」ブランドのヘルスケア新シリーズ「PLUSカルピス」としてリニューアルし、“機能”と“おいしさ”の訴求を強化するなど、健康志向を踏まえた価値提案に取り組みました。
食品事業では、エチケットケアニーズの高まりに対応した『ミンティア レモンライムドレス』などの発売に加え、人気アニメとコラボレーションしたパッケージ商品を発売するなど、ユーザー層の拡大を図りました。また、月経に関する機能性を訴求したフェムケア※2商品『わたしプロローグ』を発売するなど、女性の健康課題解決への貢献にも取り組みました。
以上の結果、売上収益は、ビールの売上が増加した酒類事業を中心に各事業が増収となり、6,300億9千7百万円(前年同期比1.3%増)となりました。
事業利益は、原材料関連費用の増加などの影響はあったものの、増収効果や各種コストの効率化などにより、562億5千1百万円(前年同期比6.3%増)となりました。
※1 RTD:Ready To Drinkの略。購入後、そのまま飲用可能な缶チューハイなどを指します。
※2 フェムケアとは、女性の体や健康をケアすることです。
[欧州]
欧州においては、各国のプレミアム戦略に基づく競争優位性の向上に加えて、『Asahi Super Dry』や『Peroni Nastro Azzurro』を軸とした世界的なパートナーシップの活用などにより、グローバルブランドの認知度向上を図りました。また、「環境」や「コミュニティ」を中心としたサステナビリティへの取り組みを強化することなどにより、成長基盤を更に拡大しました。
欧州の主要地域では、チェコにおいて、IIHF※アイスホッケー世界選手権のオフィシャルパートナーとなった『Pilsner Urquell』のプロモーションを強化したことに加えて、新たな消費者の開拓に向けて、苦みとアルコール度数を抑えたラガービール『Proud』を発売しました。また、イタリアでの『Peroni』におけるサッカーイタリア代表チームとのオフィシャルパートナーシップの活動やプレミアムラガービール『Raffo Lavorazione Grezza』の発売に加えて、ルーマニアでの『Ursus』や『Peroni Nastro Azzurro』の積極的な拡販など、ブランド価値の向上に取り組みました。さらに、ノンアルコールビールにおいて、チェコの『Birell』からカフェインなどを加えた新たなシリーズの発売や、ポーランドの『Lech Free』や『Tyskie 0.0%』、ルーマニアの『Ursus Cooler』などを積極的に展開し、新たな飲用機会の創出に向けた取り組みを強化しました。
グローバルブランドの拡大展開では、『Asahi Super Dry』において、「City Football Group」とのパートナーシップを活かしたマーケティング活動に取り組みました。『Peroni Nastro Azzurro』においては、プレミアムな世界観を演出するためのプロモーション展開をしたほか、ノンアルコールビール『Peroni Nastro Azzurro 0.0%』において、F1チーム「Scuderia Ferrari」との新たなパートナーシップを開始するなど、グローバルでのブランド認知度の向上に努めました。
以上の結果、売上収益は、好天効果などもあり各国のプレミアムビールやグローバルブランドなどが好調に推移したことで、3,794億5千9百万円(前年同期比20.3%増)となりました。
事業利益は、人件費などは増加しましたが、増収効果や各種コストの効率化を推進したことにより、427億4千9百万円(前年同期比23.9%増)となりました。
なお、為替変動による影響を除くと、売上収益は前年同期比6.0%の増収、事業利益は前年同期比11.1%の増益となりました。
※ IIHF:International Ice Hockey Federationの略。国際アイスホッケー連盟を指します。
[オセアニア]
オセアニアにおいては、『Great Northern』など主力ブランドを中心とした持続的な成長に加え、酒類と飲料事業の強みを活かしたマルチビバレッジ戦略により、商品ポートフォリオの強化を図りました。また、各種オペレーションの最適化などによる収益構造改革やサステナビリティを重視した新価値提案などにより、事業基盤を一層強化しました。
酒類事業では、主力ブランドの『Victoria Bitter』において、高まる健康需要に応えるべく低糖質のビールを新たに発売しました。また、『Peroni Nastro Azzurro』や『Somersby』ブランドにおいて全豪オープンテニストーナメントとのスポンサーシップを継続したほか、RTDブランド『Hard Rated』の発売や『Vodka Cruiser』から新たなフレーバーの商品を展開しました。さらに、プレミアムスピリッツ製造販売企業であるNever Never社を買収するなど、ブランド力の強化と様々なニーズに対応した酒類事業全体のポートフォリオ拡充を図りました。
飲料事業では、『Pepsi』ブランドにおいて大規模なリニューアルを行い伝統的な価値観と最新のトレンドを融合させることで、主力ブランドの価値向上に取り組みました。
さらに、豪州では、先住民社会との協調活動の一環としてワークショップを開催し従業員の地域社会・文化への理解を促進することで、コミュニティのウエルビーイングを尊重するなど、展開地域との「つながり」を強化しました。
以上の結果、売上収益は、RTDや飲料の主力ブランドの好調な販売などにより、3,297億2千9百万円(前年同期比15.1%増)となりました。
事業利益は、増収効果や為替変動の影響はあったものの、販売構成の変化や原材料関連の費用増加などの影響により、410億6百万円(前年同期比2.9%減)となりました。
なお、為替変動による影響を除くと、売上収益は前年同期比4.6%の増収、事業利益は前年同期比11.7%の減益となりました。
[東南アジア]
東南アジアにおいては、自社ブランドを中心とした主力ブランドへの投資強化や販売チャネルの最適化を推進し、マレーシアなど展開国における収益性向上の取り組みを推進しました。また、健康需要の取り込みやDX投資、人材育成などの強化を通じて、成長基盤の拡大を図りました。
マレーシアでは、『CALPIS』において、春節やハリラヤなど季節のイベントに合わせたキャンペーンの実施などにより、ブランド力を強化しました。また、『Goodday』では、eスポーツ向けのマーケティングを積極的に展開することで、変化する需要に対応した新たな価値提案を図りました。
以上の結果、売上収益は、主力ブランドの販売が好調に推移したことに加え、価格改定の効果や為替変動の影響などにより、317億1千3百万円(前年同期比13.6%増)となりました。
事業利益は、固定費全般の効率化などを推進したことにより、6億8千7百万円(前年同期比41.6%増)となりました。
なお、為替変動による影響を除くと、売上収益は前年同期比6.4%の増収、事業利益は前年同期比34.3%の増益となりました。
[その他]
その他については、売上収益は132億7千1百万円(前年同期比109.3%増)、事業利益は29億3千2百万円(前年同期比264.1%増)となりました。
セグメントの業績は次の通りです。各セグメントの売上収益はセグメント間の内部売上収益を含んでおります。
事業セグメント別の実績
(単位:百万円)

売上収益前年同期比事業利益前年同期比売上収益
事業利益率
営業利益前年同期比
為替一定為替一定
日本630,0971.3%1.3%56,2516.3%6.3%8.9%51,2602.0%
欧州379,45920.3%6.0%42,74923.9%11.1%11.3%26,86114.9%
オセアニア329,72915.1%4.6%41,006△2.9%△11.7%12.4%30,896△3.5%
東南アジア31,71313.6%6.4%68741.6%34.3%2.2%657-
その他13,271109.3%94.8%2,932264.1%243.1%22.1%2,847285.1%
調整額計△5,305--△8,100---△8,423-
無形資産
償却費
---△19,651-----
合計1,378,96610.1%3.8%115,87512.6%6.2%8.4%104,1008.4%

※営業利益における無形資産償却費は各事業に配賦しています。
(2)財政状態の分析
当中間連結会計期間の連結総資産は、季節要因等により営業債権が減少したものの、為替相場の変動によるのれん及び無形資産の増加等により、総資産は前年度末と比較して4,171億6千9百万円増加し、5兆7,030億8千2百万円となりました。
負債は、季節要因等による営業債務の減少はあったものの社債及び借入金の増加等により、前年度末と比較して475億7千4百万円増加し、2兆8,677億6百万円となりました。
資本は、前年度末に比べ3,695億9千4百万円増加し、2兆8,353億7千6百万円となりました。これは、配当金支出により利益剰余金が減少したものの、当中間連結会計期間の親会社の所有者に帰属する中間利益の計上による利益剰余金の増加及び為替相場の変動により在外営業活動体の換算差額が増加したこと等によるものです。
この結果、親会社所有者帰属持分比率は49.6%となりました。
(3)キャッシュ・フローの状況
当中間連結会計期間の営業活動によるキャッシュ・フローは、税引前中間利益が1,029億4千8百万円となりましたが、法人所得税等の支払による減少があった一方で、減価償却費等の非キャッシュ項目による増加があり、994億4千9百万円(前年同期比:45億4百万円の収入増)の収入となりました。
投資活動によるキャッシュ・フローは、有形固定資産の取得による支出や連結の範囲の変更を伴う子会社株式等の取得による支出などにより、857億6千5百万円(前年同期比:243億9千3百万円の支出増)の支出となりました。
財務活動によるキャッシュ・フローは、短期借入金の増加や社債の発行による収入があった一方で、社債の償還による支出などがあり、417億7千5百万円(前年同期比:153億9千万円の支出増)の支出となりました。
以上の結果、当中間連結会計期間では、前中間連結会計期間と比較して現金及び現金同等物の残高は2億1千万円減少し、585億4千4百万円となりました。
(4)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
当中間連結会計期間において、アサヒグループが優先的に対処すべき課題について重要な変更はありません。
(5)研究開発活動
当中間連結会計期間におけるグループ全体の研究開発費の金額は、75億5千5百万円であります。なお、当中間連結会計期間において、アサヒグループの研究開発活動の状況に重要な変更はありません。