有価証券報告書-第97期(令和2年1月1日-令和2年12月31日)
(業績等の概要)
(1)業績
当期における世界経済は、年初は緩やかな回復傾向にありましたが、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う経済活動の抑制などにより、景気は急速に悪化し、極めて厳しい状況が続きました。日本経済においても、国内における新型コロナウイルスの感染拡大や世界経済悪化の影響により、個人消費や輸出が減少し、景気は厳しい状況となりました。
こうした状況のなかアサヒグループは、「中期経営方針」に基づく“グローカルな価値創造経営”を推進し、各事業の主力ブランドの価値向上や新たな価値提案などを強化するとともに、新型コロナウイルスへの対策に取り組みました。
新型コロナウイルスへの対策においては、従業員とその家族の安全確保を最優先としたうえで、市場環境や消費者ニーズの変化に対応したマーケティング戦略を実行するとともに、設備投資や固定費の抑制、運転資本の効率化などによる財務健全性の確保に努めました。また、取引先や地域社会への支援に取り組むなど、ステークホルダーに対する責任を果たしてまいりました。
しかしながら、世界各国における外食産業の低迷や外出制限による経済停滞のマイナス影響などにより、アサヒグループの当期の売上収益は2兆277億6千2百万円(前期比2.9%減)となりました。また、利益につきましては、事業利益※1は1,678億2千3百万円(前期比21.2%減)、営業利益は1,351億6千7百万円(前期比32.9%減)、親会社の所有者に帰属する当期利益は928億2千6百万円(前期比34.7%減)となりました。
なお、為替変動による影響を除くと、売上収益は前期比2.6%の減収、事業利益は前期比21.1%の減益となりました。※2
※1 事業利益とは、売上収益から売上原価並びに販売費及び一般管理費を控除した、恒常的な事業の業績を測る当社独自の利益指標です。
※2 2020年の外貨金額を、2019年の為替レートで円換算して比較しています。
当年度の財政状態の状況は、連結総資産は前年度末と比較して1兆2,985億9千万円増加し、4兆4,393億7千8百万円、負債は前年度末と比較して1兆290億5千3百万円増加し、2兆9,215億6千2百万円となりました。また、資本は前年度末に比べ2,695億3千6百万円増加し、1兆5,178億1千6百万円となりました。
セグメントの業績は次の通りです。各セグメントの売上収益はセグメント間の内部売上収益を含んでおります。
なお、当年度より国際セグメントに含まれていた一部の会社について、報告セグメントの区分を飲料セグメントに変更しております。また、当年度よりその他セグメントに含まれていた一部の事業を食品セグメントへ変更しております。
以下の前期比較は前期の数値を変更後のセグメント区分に組み替えた数値で比較しております。
※営業利益における無形資産償却費は各事業に配賦しています。
[酒類事業]
酒類事業につきましては、新たに策定した長期経営方針「“Value経営”への変革、お客様にとっての価値や新市場の創造を目指す」に基づき、ビール類を中心に、お客様にとって特別な価値や体験の創造などに取り組みました。
ビール類では、「ビールがうまい。この瞬間がたまらない。」を『アサヒスーパードライ』のブランドメッセージとし、“氷点下のスーパードライ”をご家庭でも実感できる消費者キャンペーンを実施したほか、ビールを通じた新しいコミュニケーションの提案としてオンラインイベント「ASAHI SUPER DRY VIRTUAL BAR」を展開するなど、新しい生活様式に対応した施策を推進しました。また、家飲み需要の高まりを受け、主力ブランド『クリアアサヒ』での食事と連動したプロモーション活動を強化するとともに、“プレミアムビールのような上質さ、贅沢感”を味わえる『アサヒ ザ・リッチ』を発売し、広告・販売促進活動を強化するなど、新ジャンル市場における存在感の向上に努めました。
ビール類以外では、RTD※において、主力ブランド『アサヒ贅沢搾り』の商品ラインアップを拡充するとともに、レモン本来の風味と香りを追求した『アサヒ ザ・レモンクラフト』を発売し、独自性の高いブランドの育成に注力しました。洋酒においては、スコットランドと日本のモルト原酒をブレンドした『ニッカ セッション』を発売するなど、新たな価値提案の強化に取り組みました。また、アルコールテイスト清涼飲料において、『アサヒドライゼロ』をさらにビールに近い味にリニューアルするとともに、様々な飲用シーンを提案することで新たなユーザー層の拡大を図りました。
以上の結果、酒類事業の売上収益は、家飲み需要を取り込んだ新ジャンル・RTDの売上は前年実績を上回ったものの、新型コロナウイルスの感染拡大により、飲食店向けのビールの売上が大幅に減少したことなどにより、前期比14.5%減の7,582億7千万円となりました。
事業利益については、製造原価の低減や収益構造改革などに取り組みましたが、売上収益の減少により、前期比23.8%減の804億4千8百万円となりました(営業利益は前期比36.0%減の659億3千3百万円)。
※ RTD:Ready To Drinkの略。購入後、そのまま飲用可能な缶チューハイなどを指します。
[飲料事業]
飲料事業につきましては、炭酸カテゴリーの強化と新価値創造商品の投入による市場の活性化に加え、社会的価値向上の取組み強化などにより、更なる成長に向けた強固な事業基盤の構築を目指しました。
主力ブランドにおいては、『三ツ矢』ブランドでは、限定復刻シリーズなどの商品を発売するとともに、新たな広告の展開やSNSと連動した販売促進活動を推進しました。また、『ウィルキンソン』ブランドでは、炭酸水市場売上No.1※を訴求するマーケティング活動を強化するなど、家庭内需要が増加し好調な炭酸カテゴリーにおけるブランド価値の更なる向上を図りました。『カルピス』ブランドでは、巣ごもり需要を受け希釈タイプの商品を積極的に展開するとともに、『十六茶』ブランドでは、「ストレスを和らげる」「睡眠の質を高める」効果を持つL-テアニンを配合した機能性表示食品『「アサヒ 十六茶プラス」やすらぎブレンド』を発売するなど、ブランド力の強化に取り組みました。
新価値創造商品においては、『カルピス』ブランドから豆乳を発酵した植物生まれの『GREEN CALPIS』を発売したほか、eコマース市場において『おいしい水』ブランドを中心に、ラベルレスボトルシリーズを積極的に展開するなど、消費者ニーズの変化に対応したマーケティング戦略を強化し、市場の活性化を図りました。
以上の結果、飲料事業の売上収益は、炭酸飲料の販売数量が前年実績を上回りましたが、新型コロナウイルスの感染拡大に伴い自動販売機での売上が減少したことなどにより、前期比6.2%減の3,533億8千1百万円となりました。
事業利益については、ブランドの選択と集中による広告・販売促進費の効率化や、委託製造品の自社製造への切替えなどによる製造原価の低減を図りましたが、減収影響や自動販売機の売上低下に伴う品種・容器構成比の悪化などにより、前期比16.9%減の278億円となりました(営業利益は前期比6.1%減の289億1百万円)。
※ インテージSRI調べ 炭酸水市場(フレーバー含む)2019年1月~2019年12月 累計販売金額全国/全業態計(SM/CVS/DRUG)
[食品事業]
食品事業につきましては、多様化するライフスタイルを見据えた主要ブランドの新価値提案などにより、持続的な成長基盤の構築に取り組みました。
タブレット菓子『ミンティア』については、マスク着用時やテレワーク中のリフレッシュニーズに対応し、濃厚な味わいの大粒タブレット『ミンティアテイスティ』などの新商品を発売したほか、多様化する働き方に合わせた喫食シーンの提案により需要喚起を図りました。健康・美容食品については、からだづくりへの関心の高まりを背景に『1本満足バー』プロテインシリーズの商品ラインアップを拡充するなど、ブランド力の強化・育成に取り組みました。フリーズドライみそ汁については、『いつものおみそ汁』シリーズのパッケージ刷新やテレビCMを含めた広告・販売促進の強化により、手軽で本格的な味わいを楽しめるフリーズドライの価値を訴求しました。
ベビーフードについては、『赤ちゃんのやさしいおやきミックス』シリーズを新発売するなど、おやつの手作りニーズに合わせた商品を提案しました。サプリメントについては、『ディアナチュラ』において健康意識の高まりを受けた商品訴求を強化することにより、新規ユーザーの獲得とブランド力の強化に取り組みました。
以上の結果、食品事業の売上収益は、健康・美容食品やフリーズドライみそ汁などの売上が前年実績を上回ったものの、オフィス勤務の減少に伴い『ミンティア』の売上が大幅に減少したことなどにより、前期比4.2%減の1,234億8千6百万円となりました。
事業利益については、固定費全般の効率化に取り組みましたが、売上収益が減少したことなどにより、前期比19.9%減の109億9千7百万円となりました(営業利益は、前期比16.2%減の111億7千8百万円)。
[国際事業]
国際事業につきましては、グローバル市場におけるプレミアムビールブランドの拡大展開と各ローカル市場におけるブランドポートフォリオのプレミアム化などにより、更なる成長への取組みを加速させました。
グローバル市場全体に向けたプレミアムブランドの拡大展開においては、『Peroni Nastro Azzurro』と『アサヒスーパードライ』について、ブランド広告の積極的な展開やSNSを通じたイベント配信のキャンペーンに取り組むなど、グローバルプレミアムビールブランドとしての認知度の向上を図りました。
欧州事業については、チェコの『Pilsner Urquell』の積極的なマーケティング活動やルーマニアの『Ursus』における派生商品の発売などによりプレミアムブランドを強化したほか、イタリアの『Peroni』やオランダの『Grolsch』では、オンラインを活用したイベントを開催するなど、各国における主力ブランドの価値向上を図りました。また、市場が拡大するアルコールテイスト清涼飲料において、チェコの『Birell』やポーランドの『Lech Free』などの新たなフレーバーの展開を強化することにより、多様化が進む消費者ニーズの変化に合わせてブランド力を強化しました。
オセアニア事業については、酒類において、6月に取得手続きが完了した豪州のビール・サイダー事業(以下「CUB事業」といいます。)と既存事業を統合し、シナジー創出に向けて強固な販売体制を構築するとともに、主力ブランド『Victoria Bitter』、『Great Northern』のほか、『アサヒスーパードライ』、『Peroni Nastro Azzurro』などのグローバルプレミアムビールブランドなどの価値向上に取り組みました。飲料においては、炭酸カテゴリーを中心にノンシュガー商品を積極的に展開し、市場における存在感の向上を図りました。
東南アジア事業については、マレーシアにおいて、健康志向の高まりを受け、砂糖不使用の『WONDA Zero Max』などの高付加価値商品の展開を強化しました。
以上の結果、国際事業の売上収益は、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う各国の規制などによる市場縮小の影響などがあったものの、CUB事業の新規連結効果などにより、前期比13.5%増の7,929億5千6百万円となりました。
事業利益については、固定費全般の効率化などを図りましたが、業態別の売上構成比の変化による収益性の悪化やCUB事業取得に伴う一時費用の発生などにより、前期比8.0%減の941億2千2百万円となりました(営業利益は、前期比31.4%減の520億8千9百万円)。
なお、為替変動による影響を除くと、売上収益は前期比14.5%の増収、事業利益は前期比7.6%の減益となりました。※
※ 2020年の外貨金額を、2019年の為替レートで円換算して比較しています。
[その他の事業]
その他の事業につきましては、売上収益は、前期比4.7%減の931億5千5百万円となりました。
事業利益については、前期比13.2%減の13億4千万円となりました(営業利益は前期比8.0%減の10億9千3百万円)。
[「中期経営方針」のガイドラインの進捗]
「中期経営方針」のガイドラインについては、新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、当期の業績が大幅に悪化したことにより、「主要指標のガイドライン」の各指標と「財務、キャッシュ・フローのガイドライン」のキャッシュ・フローは計画を下回る進捗となり、成長投資・債務削減は、主にCUB事業の取得による債務の増加に伴い、Net Debt/EBITDAはガイドラインから悪化しました。
一方、株主還元については、EPSは減少したものの、当期(2020年度)は1株当たりの配当額を106円とすることにより、ガイドラインを大きく上回る予定です。
主要指標のガイドライン
※ 調整後とは、事業ポートフォリオの再構築や為替変動など一時的な特殊要因を除いたものです。
(注)2017年実績及び2020年進捗の金額は、表示単位未満を四捨五入して表示しております。
財務、キャッシュ・フローのガイドライン
※1 Net Debt/EBITDA(EBITDA純有利子負債倍率)=(金融債務-現預金)/EBITDA
※2 配当性向は、親会社の所有者に帰属する当期利益から事業ポートフォリオ再構築などに係る一時的な損益(税金費用控除後)を控除して算出しております。
(2)キャッシュ・フローの状況
当年度の営業活動によるキャッシュ・フローは、税引前利益が1,253億9千9百万円となりましたが、減価償却費等の非キャッシュ項目による増加や運転資本の効率化により、2,758億5千9百万円(前期比:223億8千9百万円の収入増)の収入となりました。
投資活動によるキャッシュ・フローは、CUB事業の取得などにより、1兆2,433億7千2百万円(前期比:1兆1,397億6百万円の支出増)の支出となりました。
財務活動によるキャッシュ・フローは、新株の発行や、短期借入金の実行による金融債務の増加により、9,567億5千9百万円(前期比:1兆1,156億円の収入増)の収入となりました。
以上の結果、当年度末では、前年度末と比較して現金及び現金同等物の残高は2千9百万円減少し、484億6千万円となりました。
(生産、受注及び販売の状況)
(1)生産実績
当年度におけるセグメントごとの生産実績は以下の通りであります。
(注)1 金額は、販売価額によっております。
2 IFRSに基づく金額を記載しております。
3 酒類事業の生産数量、飲料事業及び食品事業の生産高には、外部への製造委託を含めております。
4 上記金額には消費税等は含まれておりません。
(2)受注実績
当社グループでは受注生産はほとんど行っておりません。
(3)販売実績
当年度におけるセグメントごとの販売実績は以下の通りであります。
(注)1 調整額はセグメント間取引であります。
2 上記金額には消費税等は含まれておりません。
3 主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合
(経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容)
当年度の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析は以下の通りであります。
(1)重要な会計方針及び見積り
当社の連結財務諸表は、IFRSに準拠して作成されております。この連結財務諸表の作成にあたり、見積りが必要となる事項につきましては、合理的な基準に基づき、会計上の見積りを行っております。
詳細につきましては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記事項(連結財務諸表注記 6 重要な会計上の見積り及び判断)」に記載しております。
(2)当年度の経営成績の分析
① 売上収益
アサヒグループの当年度の売上収益は、前期比2.9%減、612億8千5百万円減収の2兆277億6千2百万円となりました。酒類事業においては、家飲み需要を取り込んだ新ジャンル・RTDの売上は前年実績を上回ったものの、新型コロナウイルスの感染拡大により、飲食店向けのビールの売上が大幅に減少したことなどにより、前期比14.5%減の7,582億7千万円となりました。飲料事業においては、炭酸飲料の販売数量が前年実績を上回りましたが、新型コロナウイルスの感染拡大に伴い自動販売機での売上が減少したことなどにより、前期比6.2%減の3,533億8千1百万円となりました。食品事業においては、健康・美容食品やフリーズドライみそ汁などの売上が前年実績を上回ったものの、オフィス勤務の減少に伴い『ミンティア』の売上が大幅に減少したことなどにより、前期比4.2%減の1,234億8千6百万円となりました。国際事業においては、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う各国の規制などによる市場縮小の影響などがあったものの、CUB事業の新規連結効果などにより、前期比13.5%増の7,929億5千6百万円となりました。その他の事業においては、前期比4.7%減の931億5千5百万円となりました。
② 事業利益
当年度の事業利益は、前期比21.2%減、451億4千8百万円減益の1,678億2千3百万円となりました。酒類事業においては、製造原価の低減や収益構造改革などに取り組みましたが、売上収益の減少により、前期比23.8%減の804億4千8百万円となりました。飲料事業においては、ブランドの選択と集中による広告・販売促進費の効率化や、委託製造品の自社製造への切替えなどによる製造原価の低減を図りましたが、減収影響や自動販売機の売上低下に伴う品種・容器構成比の悪化などにより、前期比16.9%減の278億円となりました。食品事業においては、固定費全般の効率化に取り組みましたが、売上収益が減少したことなどにより、前期比19.9%減の109億9千7百万円となりました。国際事業においては、固定費全般の効率化などを図りましたが、業態別の売上構成比の変化による収益性の悪化やCUB事業取得に伴う一時費用の発生などにより、前期比8.0%減の941億2千2百万円となりました。その他の事業においては、前期比13.2%減の13億4千万円となりました。
③ 営業利益
営業利益は、事業利益の減益に加え、その他の営業費用の増加などにより、前期比32.9%減、662億6千8百万円減益の1,351億6千7百万円となりました。
④ 税引前利益
当年度の税引前利益は、営業利益の減益に加え、金融収益が前期比10.7%減、8億6千4百万円減少の72億3千万円となったことや、金融費用が前期比15.1%増、19億7千万円増加の149億8千2百万円となったことなどにより、前期比36.5%減、719億9千1百万円減益の1,253億9千9百万円となりました。
⑤ 親会社の所有者に帰属する当期利益
親会社の所有者に帰属する当期利益は、税引前利益の減益などにより前期比34.7%減、493億8千万円減益の928億2千6百万円となりました。
また、基本的1株当たり利益は196.52円(前期310.44円)となり、親会社所有者帰属持分比率は34.2%(前期39.7%)となりました。
また、事業ポートフォリオ再構築など一時的な特殊要因を除いた親会社の所有者に帰属する当期利益を算出に用いた調整後基本的1株当たり利益は196.52円(前期310.44円)となりました。
(3)財政状態の分析
① 総資産
当年度の連結総資産は、CUB事業(注)を新たに連結範囲に含めたことによるのれんや商標権等の増加により、総資産は前年度末と比較して1兆2,985億9千万円増加し、4兆4,393億7千8百万円となりました。
② 負債
負債は、CUB事業買収に伴って短期借入金を中心に金融債務が増加したこと等により、前年度末と比較して1兆290億5千3百万円増加し、2兆9,215億6千2百万円となりました。
③ 資本
資本は、前年度末に比べ2,695億3千6百万円増加し、1兆5,178億1千6百万円となりました。これは、公募による新株式の発行により、資本金及び資本剰余金が増加したことや公募による自己株式の処分を実施したこと、親会社の所有者に帰属する当期利益の計上により利益剰余金が増加したこと等によるものです。
この結果、親会社所有者帰属持分比率は34.2%となりました。
また、事業ポートフォリオ再構築や為替変動など一時的な特殊要因を除いた「親会社の所有者に帰属する当期利益」及び「親会社の所有者に帰属する持分合計」を算出に用いた調整後親会社所有者帰属持分当期利益率は7.5%(前期13.0%)となりました。
(注)CUB事業買収に伴って、発生したのれんの金額、企業結合日に受け入れた資産及び引き受けた負債の額等については、企業結合日における識別可能資産及び負債の特定を精査中であり、取得価額の配分が完了していないため、暫定的な会計処理を行っております。
(4)資本の財源及び資金の流動性についての分析
① キャッシュ・フロー分析
キャッシュ・フローの状況につきましては、「(業績等の概要) (2)キャッシュ・フローの状況」に記載の通りであります。
また、キャッシュ・フロー指標のトレンドは、以下の通りであります。
(注)親会社所有者帰属持分比率:親会社の所有者に帰属する持分/総資産
時価ベースの親会社所有者帰属持分比率:株式時価総額/総資産
キャッシュ・フロー対有利子負債比率:有利子負債/キャッシュ・フロー
インタレスト・カバレッジ・レシオ:キャッシュ・フロー/利払い
※ 各指標はいずれも連結ベースの財務数値により算出しております。
※ 株式時価総額は自己株式を除く発行済株式数をベースに計算しております。
※ キャッシュ・フローは営業キャッシュ・フローを使用しております。
② 資金の調達
アサヒグループの資金の源泉は、主として営業活動からのキャッシュ・フローと金融機関からの借入、社債の発行からなりますが、当社は経営方針として、有利子負債残高の圧縮を基本として掲げております。しかしながら、「事業基盤強化・効率化を目指した設備投資」及び「M&Aを含む戦略的事業投資」については資金需要に応じて金融債務を柔軟に活用することとしております。なお2020年6月に買収取引を完了したCUB事業に関連して行っている資金調達においては、金利コストの最小化を目指した負債性資金と、早期の財務健全性回復、及び格付の現状維持、リファイナンス・リスクの最小化を目指した資本性資金を組み合わせ、資本コスト、金利コスト全体の低減に努めております。一方、運転資金需要については、短期借入金及びコマーシャル・ペーパーでまかなうことを基本としております。
③ 資金の流動性
当社及び主要な連結子会社はCMS(キャッシュマネジメントシステム)を導入しており、各社における余剰資金を当社へ集中し、一元管理を行うことにより、資金効率の向上と金融費用の極小化を図っております。
(5)戦略的現状と見通し
2021年は、新たに更新した「中期経営方針」に基づいて、全事業での高付加価値ブランドの育成や環境変化を見据えた収益構造改革の加速などにより『稼ぐ力の強化』に努めます。また、イノベーションや新価値創造に向けた無形資産(研究開発、人材力等)への投資強化に加え、DX(デジタル・トランスフォーメーション)の加速による新たなオペレーティングモデルの構築などにより『経営資源の高度化』に取り組みます。さらに、サステナビリティの経営戦略への統合など『ESGへの取組み深化』を図り、「Asahi Group Philosophy」に基づく“グローカルな価値創造経営”を推進します。
(6)経営者の問題認識と今後の方針について
経営者の問題認識と今後の方針につきましては、この文中に記載したほか、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載の通りであります。
(7)経営成績に重要な影響を与える要因について
経営成績に重要な影響を与える要因につきましては、「2 事業等のリスク」に記載の通りであります。
(1)業績
当期における世界経済は、年初は緩やかな回復傾向にありましたが、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う経済活動の抑制などにより、景気は急速に悪化し、極めて厳しい状況が続きました。日本経済においても、国内における新型コロナウイルスの感染拡大や世界経済悪化の影響により、個人消費や輸出が減少し、景気は厳しい状況となりました。
こうした状況のなかアサヒグループは、「中期経営方針」に基づく“グローカルな価値創造経営”を推進し、各事業の主力ブランドの価値向上や新たな価値提案などを強化するとともに、新型コロナウイルスへの対策に取り組みました。
新型コロナウイルスへの対策においては、従業員とその家族の安全確保を最優先としたうえで、市場環境や消費者ニーズの変化に対応したマーケティング戦略を実行するとともに、設備投資や固定費の抑制、運転資本の効率化などによる財務健全性の確保に努めました。また、取引先や地域社会への支援に取り組むなど、ステークホルダーに対する責任を果たしてまいりました。
しかしながら、世界各国における外食産業の低迷や外出制限による経済停滞のマイナス影響などにより、アサヒグループの当期の売上収益は2兆277億6千2百万円(前期比2.9%減)となりました。また、利益につきましては、事業利益※1は1,678億2千3百万円(前期比21.2%減)、営業利益は1,351億6千7百万円(前期比32.9%減)、親会社の所有者に帰属する当期利益は928億2千6百万円(前期比34.7%減)となりました。
なお、為替変動による影響を除くと、売上収益は前期比2.6%の減収、事業利益は前期比21.1%の減益となりました。※2
※1 事業利益とは、売上収益から売上原価並びに販売費及び一般管理費を控除した、恒常的な事業の業績を測る当社独自の利益指標です。
※2 2020年の外貨金額を、2019年の為替レートで円換算して比較しています。
アサヒグループの実績 (単位:百万円) |
実績 | 前期比 | |
売上収益 | 2,027,762 | △2.9% |
事業利益 | 167,823 | △21.2% |
営業利益 | 135,167 | △32.9% |
親会社の所有者に 帰属する当期利益 | 92,826 | △34.7% |
当年度の財政状態の状況は、連結総資産は前年度末と比較して1兆2,985億9千万円増加し、4兆4,393億7千8百万円、負債は前年度末と比較して1兆290億5千3百万円増加し、2兆9,215億6千2百万円となりました。また、資本は前年度末に比べ2,695億3千6百万円増加し、1兆5,178億1千6百万円となりました。
セグメントの業績は次の通りです。各セグメントの売上収益はセグメント間の内部売上収益を含んでおります。
なお、当年度より国際セグメントに含まれていた一部の会社について、報告セグメントの区分を飲料セグメントに変更しております。また、当年度よりその他セグメントに含まれていた一部の事業を食品セグメントへ変更しております。
以下の前期比較は前期の数値を変更後のセグメント区分に組み替えた数値で比較しております。
事業セグメント別の実績 (単位:百万円) |
売上収益 | 前期比 | 事業利益 | 前期比 | 売上収益 事業利益率 | 営業利益 | 前期比 | |
酒類 | 758,270 | △14.5% | 80,448 | △23.8% | 10.6% | 65,933 | △36.0% |
飲料 | 353,381 | △6.2% | 27,800 | △16.9% | 7.9% | 28,901 | △6.1% |
食品 | 123,486 | △4.2% | 10,997 | △19.9% | 8.9% | 11,178 | △16.2% |
国際 | 792,956 | 13.5% | 94,122 | △8.0% | 11.9% | 52,089 | △31.4% |
その他 | 93,155 | △4.7% | 1,340 | △13.2% | 1.4% | 1,093 | △8.0% |
調整額計 | △93,488 | - | △21,386 | - | - | △24,028 | - |
無形資産償却費 | - | - | △25,499 | - | - | - | - |
合計 | 2,027,762 | △2.9% | 167,823 | △21.2% | 8.3% | 135,167 | △32.9% |
※営業利益における無形資産償却費は各事業に配賦しています。
[酒類事業]
酒類事業につきましては、新たに策定した長期経営方針「“Value経営”への変革、お客様にとっての価値や新市場の創造を目指す」に基づき、ビール類を中心に、お客様にとって特別な価値や体験の創造などに取り組みました。
ビール類では、「ビールがうまい。この瞬間がたまらない。」を『アサヒスーパードライ』のブランドメッセージとし、“氷点下のスーパードライ”をご家庭でも実感できる消費者キャンペーンを実施したほか、ビールを通じた新しいコミュニケーションの提案としてオンラインイベント「ASAHI SUPER DRY VIRTUAL BAR」を展開するなど、新しい生活様式に対応した施策を推進しました。また、家飲み需要の高まりを受け、主力ブランド『クリアアサヒ』での食事と連動したプロモーション活動を強化するとともに、“プレミアムビールのような上質さ、贅沢感”を味わえる『アサヒ ザ・リッチ』を発売し、広告・販売促進活動を強化するなど、新ジャンル市場における存在感の向上に努めました。
ビール類以外では、RTD※において、主力ブランド『アサヒ贅沢搾り』の商品ラインアップを拡充するとともに、レモン本来の風味と香りを追求した『アサヒ ザ・レモンクラフト』を発売し、独自性の高いブランドの育成に注力しました。洋酒においては、スコットランドと日本のモルト原酒をブレンドした『ニッカ セッション』を発売するなど、新たな価値提案の強化に取り組みました。また、アルコールテイスト清涼飲料において、『アサヒドライゼロ』をさらにビールに近い味にリニューアルするとともに、様々な飲用シーンを提案することで新たなユーザー層の拡大を図りました。
以上の結果、酒類事業の売上収益は、家飲み需要を取り込んだ新ジャンル・RTDの売上は前年実績を上回ったものの、新型コロナウイルスの感染拡大により、飲食店向けのビールの売上が大幅に減少したことなどにより、前期比14.5%減の7,582億7千万円となりました。
事業利益については、製造原価の低減や収益構造改革などに取り組みましたが、売上収益の減少により、前期比23.8%減の804億4千8百万円となりました(営業利益は前期比36.0%減の659億3千3百万円)。
※ RTD:Ready To Drinkの略。購入後、そのまま飲用可能な缶チューハイなどを指します。
[飲料事業]
飲料事業につきましては、炭酸カテゴリーの強化と新価値創造商品の投入による市場の活性化に加え、社会的価値向上の取組み強化などにより、更なる成長に向けた強固な事業基盤の構築を目指しました。
主力ブランドにおいては、『三ツ矢』ブランドでは、限定復刻シリーズなどの商品を発売するとともに、新たな広告の展開やSNSと連動した販売促進活動を推進しました。また、『ウィルキンソン』ブランドでは、炭酸水市場売上No.1※を訴求するマーケティング活動を強化するなど、家庭内需要が増加し好調な炭酸カテゴリーにおけるブランド価値の更なる向上を図りました。『カルピス』ブランドでは、巣ごもり需要を受け希釈タイプの商品を積極的に展開するとともに、『十六茶』ブランドでは、「ストレスを和らげる」「睡眠の質を高める」効果を持つL-テアニンを配合した機能性表示食品『「アサヒ 十六茶プラス」やすらぎブレンド』を発売するなど、ブランド力の強化に取り組みました。
新価値創造商品においては、『カルピス』ブランドから豆乳を発酵した植物生まれの『GREEN CALPIS』を発売したほか、eコマース市場において『おいしい水』ブランドを中心に、ラベルレスボトルシリーズを積極的に展開するなど、消費者ニーズの変化に対応したマーケティング戦略を強化し、市場の活性化を図りました。
以上の結果、飲料事業の売上収益は、炭酸飲料の販売数量が前年実績を上回りましたが、新型コロナウイルスの感染拡大に伴い自動販売機での売上が減少したことなどにより、前期比6.2%減の3,533億8千1百万円となりました。
事業利益については、ブランドの選択と集中による広告・販売促進費の効率化や、委託製造品の自社製造への切替えなどによる製造原価の低減を図りましたが、減収影響や自動販売機の売上低下に伴う品種・容器構成比の悪化などにより、前期比16.9%減の278億円となりました(営業利益は前期比6.1%減の289億1百万円)。
※ インテージSRI調べ 炭酸水市場(フレーバー含む)2019年1月~2019年12月 累計販売金額全国/全業態計(SM/CVS/DRUG)
[食品事業]
食品事業につきましては、多様化するライフスタイルを見据えた主要ブランドの新価値提案などにより、持続的な成長基盤の構築に取り組みました。
タブレット菓子『ミンティア』については、マスク着用時やテレワーク中のリフレッシュニーズに対応し、濃厚な味わいの大粒タブレット『ミンティアテイスティ』などの新商品を発売したほか、多様化する働き方に合わせた喫食シーンの提案により需要喚起を図りました。健康・美容食品については、からだづくりへの関心の高まりを背景に『1本満足バー』プロテインシリーズの商品ラインアップを拡充するなど、ブランド力の強化・育成に取り組みました。フリーズドライみそ汁については、『いつものおみそ汁』シリーズのパッケージ刷新やテレビCMを含めた広告・販売促進の強化により、手軽で本格的な味わいを楽しめるフリーズドライの価値を訴求しました。
ベビーフードについては、『赤ちゃんのやさしいおやきミックス』シリーズを新発売するなど、おやつの手作りニーズに合わせた商品を提案しました。サプリメントについては、『ディアナチュラ』において健康意識の高まりを受けた商品訴求を強化することにより、新規ユーザーの獲得とブランド力の強化に取り組みました。
以上の結果、食品事業の売上収益は、健康・美容食品やフリーズドライみそ汁などの売上が前年実績を上回ったものの、オフィス勤務の減少に伴い『ミンティア』の売上が大幅に減少したことなどにより、前期比4.2%減の1,234億8千6百万円となりました。
事業利益については、固定費全般の効率化に取り組みましたが、売上収益が減少したことなどにより、前期比19.9%減の109億9千7百万円となりました(営業利益は、前期比16.2%減の111億7千8百万円)。
[国際事業]
国際事業につきましては、グローバル市場におけるプレミアムビールブランドの拡大展開と各ローカル市場におけるブランドポートフォリオのプレミアム化などにより、更なる成長への取組みを加速させました。
グローバル市場全体に向けたプレミアムブランドの拡大展開においては、『Peroni Nastro Azzurro』と『アサヒスーパードライ』について、ブランド広告の積極的な展開やSNSを通じたイベント配信のキャンペーンに取り組むなど、グローバルプレミアムビールブランドとしての認知度の向上を図りました。
欧州事業については、チェコの『Pilsner Urquell』の積極的なマーケティング活動やルーマニアの『Ursus』における派生商品の発売などによりプレミアムブランドを強化したほか、イタリアの『Peroni』やオランダの『Grolsch』では、オンラインを活用したイベントを開催するなど、各国における主力ブランドの価値向上を図りました。また、市場が拡大するアルコールテイスト清涼飲料において、チェコの『Birell』やポーランドの『Lech Free』などの新たなフレーバーの展開を強化することにより、多様化が進む消費者ニーズの変化に合わせてブランド力を強化しました。
オセアニア事業については、酒類において、6月に取得手続きが完了した豪州のビール・サイダー事業(以下「CUB事業」といいます。)と既存事業を統合し、シナジー創出に向けて強固な販売体制を構築するとともに、主力ブランド『Victoria Bitter』、『Great Northern』のほか、『アサヒスーパードライ』、『Peroni Nastro Azzurro』などのグローバルプレミアムビールブランドなどの価値向上に取り組みました。飲料においては、炭酸カテゴリーを中心にノンシュガー商品を積極的に展開し、市場における存在感の向上を図りました。
東南アジア事業については、マレーシアにおいて、健康志向の高まりを受け、砂糖不使用の『WONDA Zero Max』などの高付加価値商品の展開を強化しました。
以上の結果、国際事業の売上収益は、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う各国の規制などによる市場縮小の影響などがあったものの、CUB事業の新規連結効果などにより、前期比13.5%増の7,929億5千6百万円となりました。
事業利益については、固定費全般の効率化などを図りましたが、業態別の売上構成比の変化による収益性の悪化やCUB事業取得に伴う一時費用の発生などにより、前期比8.0%減の941億2千2百万円となりました(営業利益は、前期比31.4%減の520億8千9百万円)。
なお、為替変動による影響を除くと、売上収益は前期比14.5%の増収、事業利益は前期比7.6%の減益となりました。※
※ 2020年の外貨金額を、2019年の為替レートで円換算して比較しています。
[その他の事業]
その他の事業につきましては、売上収益は、前期比4.7%減の931億5千5百万円となりました。
事業利益については、前期比13.2%減の13億4千万円となりました(営業利益は前期比8.0%減の10億9千3百万円)。
[「中期経営方針」のガイドラインの進捗]
「中期経営方針」のガイドラインについては、新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、当期の業績が大幅に悪化したことにより、「主要指標のガイドライン」の各指標と「財務、キャッシュ・フローのガイドライン」のキャッシュ・フローは計画を下回る進捗となり、成長投資・債務削減は、主にCUB事業の取得による債務の増加に伴い、Net Debt/EBITDAはガイドラインから悪化しました。
一方、株主還元については、EPSは減少したものの、当期(2020年度)は1株当たりの配当額を106円とすることにより、ガイドラインを大きく上回る予定です。
主要指標のガイドライン
2017年実績 | 2018年以降のガイドライン(3年程度を想定) | 2020年進捗 | |
売上収益 | 20,849億円 | ・主力事業の安定成長-事業再構築+新規M&A | - |
事業利益 | 1,964億円 | ・CAGR(年平均成長率):一桁台半ば~後半 | △5.1% |
EPS(調整後※) | 262.2円 | ・CAGR(年平均成長率):一桁台半ば~後半 | △9.2% |
ROE(調整後※) | 13.7% | ・13%以上の水準の維持 | 7.5% |
※ 調整後とは、事業ポートフォリオの再構築や為替変動など一時的な特殊要因を除いたものです。
(注)2017年実績及び2020年進捗の金額は、表示単位未満を四捨五入して表示しております。
財務、キャッシュ・フローのガイドライン
2019年以降のガイドライン | 2020年進捗 | |
キャッシュ・フロー | ・フリー・キャッシュ・フロー:年平均1,700億円以上 | 1,849億円 |
成長投資・債務削減 | ・M&Aなどの成長投資を優先しつつ、投資余力を高める債務削減を推進 (Net Debt/EBITDA※1:2021年末には2倍以下) | 6.03倍 |
株主還元 | ・配当性向※235%(~2021年)を目指した安定的な増配 (将来的な配当性向は40%を目指す) | 53.9% |
※1 Net Debt/EBITDA(EBITDA純有利子負債倍率)=(金融債務-現預金)/EBITDA
※2 配当性向は、親会社の所有者に帰属する当期利益から事業ポートフォリオ再構築などに係る一時的な損益(税金費用控除後)を控除して算出しております。
(2)キャッシュ・フローの状況
当年度の営業活動によるキャッシュ・フローは、税引前利益が1,253億9千9百万円となりましたが、減価償却費等の非キャッシュ項目による増加や運転資本の効率化により、2,758億5千9百万円(前期比:223億8千9百万円の収入増)の収入となりました。
投資活動によるキャッシュ・フローは、CUB事業の取得などにより、1兆2,433億7千2百万円(前期比:1兆1,397億6百万円の支出増)の支出となりました。
財務活動によるキャッシュ・フローは、新株の発行や、短期借入金の実行による金融債務の増加により、9,567億5千9百万円(前期比:1兆1,156億円の収入増)の収入となりました。
以上の結果、当年度末では、前年度末と比較して現金及び現金同等物の残高は2千9百万円減少し、484億6千万円となりました。
(生産、受注及び販売の状況)
(1)生産実績
当年度におけるセグメントごとの生産実績は以下の通りであります。
セグメントの名称 | 数量又は金額 | 単位 | 前期比 |
酒類 | 1,890,939 | KL | △13.8% |
飲料 | 339,919 | 百万円 | △6.3% |
食品 | 119,216 | 百万円 | △2.7% |
国際 | 608,588 | 百万円 | 17.9% |
(注)1 金額は、販売価額によっております。
2 IFRSに基づく金額を記載しております。
3 酒類事業の生産数量、飲料事業及び食品事業の生産高には、外部への製造委託を含めております。
4 上記金額には消費税等は含まれておりません。
(2)受注実績
当社グループでは受注生産はほとんど行っておりません。
(3)販売実績
当年度におけるセグメントごとの販売実績は以下の通りであります。
セグメントの名称 | 金額 | 前期比 | |
酒類 | 758,270 | 百万円 | △14.5% |
飲料 | 353,381 | 百万円 | △6.2% |
食品 | 123,486 | 百万円 | △4.2% |
国際 | 792,956 | 百万円 | 13.5% |
その他 | 93,155 | 百万円 | △4.7% |
調整額 | △93,488 | 百万円 | - |
合計 | 2,027,762 | 百万円 | △2.9% |
(注)1 調整額はセグメント間取引であります。
2 上記金額には消費税等は含まれておりません。
3 主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合
前年度 | 当年度 | |||
相手先 | 販売高 (百万円) | 割合 (%) | 販売高 (百万円) | 割合 (%) |
伊藤忠食品㈱ | 208,144 | 10.0 | 202,893 | 10.0 |
(経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容)
当年度の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析は以下の通りであります。
(1)重要な会計方針及び見積り
当社の連結財務諸表は、IFRSに準拠して作成されております。この連結財務諸表の作成にあたり、見積りが必要となる事項につきましては、合理的な基準に基づき、会計上の見積りを行っております。
詳細につきましては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記事項(連結財務諸表注記 6 重要な会計上の見積り及び判断)」に記載しております。
(2)当年度の経営成績の分析
① 売上収益
アサヒグループの当年度の売上収益は、前期比2.9%減、612億8千5百万円減収の2兆277億6千2百万円となりました。酒類事業においては、家飲み需要を取り込んだ新ジャンル・RTDの売上は前年実績を上回ったものの、新型コロナウイルスの感染拡大により、飲食店向けのビールの売上が大幅に減少したことなどにより、前期比14.5%減の7,582億7千万円となりました。飲料事業においては、炭酸飲料の販売数量が前年実績を上回りましたが、新型コロナウイルスの感染拡大に伴い自動販売機での売上が減少したことなどにより、前期比6.2%減の3,533億8千1百万円となりました。食品事業においては、健康・美容食品やフリーズドライみそ汁などの売上が前年実績を上回ったものの、オフィス勤務の減少に伴い『ミンティア』の売上が大幅に減少したことなどにより、前期比4.2%減の1,234億8千6百万円となりました。国際事業においては、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う各国の規制などによる市場縮小の影響などがあったものの、CUB事業の新規連結効果などにより、前期比13.5%増の7,929億5千6百万円となりました。その他の事業においては、前期比4.7%減の931億5千5百万円となりました。
② 事業利益
当年度の事業利益は、前期比21.2%減、451億4千8百万円減益の1,678億2千3百万円となりました。酒類事業においては、製造原価の低減や収益構造改革などに取り組みましたが、売上収益の減少により、前期比23.8%減の804億4千8百万円となりました。飲料事業においては、ブランドの選択と集中による広告・販売促進費の効率化や、委託製造品の自社製造への切替えなどによる製造原価の低減を図りましたが、減収影響や自動販売機の売上低下に伴う品種・容器構成比の悪化などにより、前期比16.9%減の278億円となりました。食品事業においては、固定費全般の効率化に取り組みましたが、売上収益が減少したことなどにより、前期比19.9%減の109億9千7百万円となりました。国際事業においては、固定費全般の効率化などを図りましたが、業態別の売上構成比の変化による収益性の悪化やCUB事業取得に伴う一時費用の発生などにより、前期比8.0%減の941億2千2百万円となりました。その他の事業においては、前期比13.2%減の13億4千万円となりました。
③ 営業利益
営業利益は、事業利益の減益に加え、その他の営業費用の増加などにより、前期比32.9%減、662億6千8百万円減益の1,351億6千7百万円となりました。
④ 税引前利益
当年度の税引前利益は、営業利益の減益に加え、金融収益が前期比10.7%減、8億6千4百万円減少の72億3千万円となったことや、金融費用が前期比15.1%増、19億7千万円増加の149億8千2百万円となったことなどにより、前期比36.5%減、719億9千1百万円減益の1,253億9千9百万円となりました。
⑤ 親会社の所有者に帰属する当期利益
親会社の所有者に帰属する当期利益は、税引前利益の減益などにより前期比34.7%減、493億8千万円減益の928億2千6百万円となりました。
また、基本的1株当たり利益は196.52円(前期310.44円)となり、親会社所有者帰属持分比率は34.2%(前期39.7%)となりました。
また、事業ポートフォリオ再構築など一時的な特殊要因を除いた親会社の所有者に帰属する当期利益を算出に用いた調整後基本的1株当たり利益は196.52円(前期310.44円)となりました。
(3)財政状態の分析
① 総資産
当年度の連結総資産は、CUB事業(注)を新たに連結範囲に含めたことによるのれんや商標権等の増加により、総資産は前年度末と比較して1兆2,985億9千万円増加し、4兆4,393億7千8百万円となりました。
② 負債
負債は、CUB事業買収に伴って短期借入金を中心に金融債務が増加したこと等により、前年度末と比較して1兆290億5千3百万円増加し、2兆9,215億6千2百万円となりました。
③ 資本
資本は、前年度末に比べ2,695億3千6百万円増加し、1兆5,178億1千6百万円となりました。これは、公募による新株式の発行により、資本金及び資本剰余金が増加したことや公募による自己株式の処分を実施したこと、親会社の所有者に帰属する当期利益の計上により利益剰余金が増加したこと等によるものです。
この結果、親会社所有者帰属持分比率は34.2%となりました。
また、事業ポートフォリオ再構築や為替変動など一時的な特殊要因を除いた「親会社の所有者に帰属する当期利益」及び「親会社の所有者に帰属する持分合計」を算出に用いた調整後親会社所有者帰属持分当期利益率は7.5%(前期13.0%)となりました。
(注)CUB事業買収に伴って、発生したのれんの金額、企業結合日に受け入れた資産及び引き受けた負債の額等については、企業結合日における識別可能資産及び負債の特定を精査中であり、取得価額の配分が完了していないため、暫定的な会計処理を行っております。
(4)資本の財源及び資金の流動性についての分析
① キャッシュ・フロー分析
キャッシュ・フローの状況につきましては、「(業績等の概要) (2)キャッシュ・フローの状況」に記載の通りであります。
また、キャッシュ・フロー指標のトレンドは、以下の通りであります。
前年度 | 当年度 | |
親会社所有者帰属持分比率(%) | 39.7 | 34.2 |
時価ベースの親会社所有者帰属 持分比率(%) | 72.7 | 48.4 |
キャッシュ・フロー対有利子 負債比率(年) | 4.1 | 7.1 |
インタレスト・カバレッジ・ レシオ(倍) | 36.9 | 27.5 |
(注)親会社所有者帰属持分比率:親会社の所有者に帰属する持分/総資産
時価ベースの親会社所有者帰属持分比率:株式時価総額/総資産
キャッシュ・フロー対有利子負債比率:有利子負債/キャッシュ・フロー
インタレスト・カバレッジ・レシオ:キャッシュ・フロー/利払い
※ 各指標はいずれも連結ベースの財務数値により算出しております。
※ 株式時価総額は自己株式を除く発行済株式数をベースに計算しております。
※ キャッシュ・フローは営業キャッシュ・フローを使用しております。
② 資金の調達
アサヒグループの資金の源泉は、主として営業活動からのキャッシュ・フローと金融機関からの借入、社債の発行からなりますが、当社は経営方針として、有利子負債残高の圧縮を基本として掲げております。しかしながら、「事業基盤強化・効率化を目指した設備投資」及び「M&Aを含む戦略的事業投資」については資金需要に応じて金融債務を柔軟に活用することとしております。なお2020年6月に買収取引を完了したCUB事業に関連して行っている資金調達においては、金利コストの最小化を目指した負債性資金と、早期の財務健全性回復、及び格付の現状維持、リファイナンス・リスクの最小化を目指した資本性資金を組み合わせ、資本コスト、金利コスト全体の低減に努めております。一方、運転資金需要については、短期借入金及びコマーシャル・ペーパーでまかなうことを基本としております。
③ 資金の流動性
当社及び主要な連結子会社はCMS(キャッシュマネジメントシステム)を導入しており、各社における余剰資金を当社へ集中し、一元管理を行うことにより、資金効率の向上と金融費用の極小化を図っております。
(5)戦略的現状と見通し
2021年は、新たに更新した「中期経営方針」に基づいて、全事業での高付加価値ブランドの育成や環境変化を見据えた収益構造改革の加速などにより『稼ぐ力の強化』に努めます。また、イノベーションや新価値創造に向けた無形資産(研究開発、人材力等)への投資強化に加え、DX(デジタル・トランスフォーメーション)の加速による新たなオペレーティングモデルの構築などにより『経営資源の高度化』に取り組みます。さらに、サステナビリティの経営戦略への統合など『ESGへの取組み深化』を図り、「Asahi Group Philosophy」に基づく“グローカルな価値創造経営”を推進します。
(6)経営者の問題認識と今後の方針について
経営者の問題認識と今後の方針につきましては、この文中に記載したほか、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載の通りであります。
(7)経営成績に重要な影響を与える要因について
経営成績に重要な影響を与える要因につきましては、「2 事業等のリスク」に記載の通りであります。