有価証券報告書-第100期(2023/01/01-2023/12/31)
(業績等の概要)
(1)業績
当期における世界経済は、米国において、雇用者数の増加や個人消費の拡大を背景に景気は堅調に推移しましたが、欧州においては、インフレの進行により景気に弱さが見られました。日本経済は、原材料価格の上昇などの影響を受けたものの、経済活動の再開による内需の回復などにより、景気は緩やかに持ち直しの動きが見られました。
こうした状況のなかアサヒグループは、グループ理念“Asahi Group Philosophy”の実践に向けて、メガトレンドからバックキャストして更新した『中長期経営方針』に基づき、持続的な成長と企業価値向上を目指した取り組みを推進しました。「目指す事業ポートフォリオ」の構築では、グローバルブランドの拡大展開やプレミアム戦略の推進による既存事業の成長に加え、周辺・新規領域の拡大と探索にも経営資源を積極的に配分しました。また、サステナビリティと経営の統合をはじめとして、持続的な成長を支えるDX(デジタル・トランスフォーメーション)やR&D(研究開発)といったコア戦略を推進するとともに、長期戦略を支える経営基盤の強化として、人的資本の高度化やグループガバナンスの進化にも取り組みました。
その結果、アサヒグループの売上収益は、2兆7,690億9千1百万円(前期比10.3%増)となりました。また、利益については、事業利益※1は2,636億8千万円(前期比8.1%増)、営業利益は2,449億9千9百万円(前期比12.9%増)、親会社の所有者に帰属する当期利益は1,640億7千3百万円(前期比8.3%増)、調整後親会社の所有者に帰属する当期利益※2は1,656億3千2百万円(前期比0.1%増)となりました。
なお、為替変動による影響を除くと、売上収益は前期比6.8%の増収、事業利益は前期比3.9%の増益となりました。※3
※1 事業利益とは、売上収益から売上原価並びに販売費及び一般管理費を控除した、恒常的な事業の業績を測る当社独自の利益指標です。
※2 調整後親会社の所有者に帰属する当期利益とは、親会社の所有者に帰属する当期利益から事業ポートフォリオ再構築及び減損損失など一時的な特殊要因を控除したものです。
※3 2023年の外貨金額を、2022年の為替レートで円換算して比較しています。
当年度の財政状態の状況は、連結総資産は前年度末と比較して4,555億6千9百万円増加し、5兆2,859億1千3百万円、負債は前年度末と比較して527億3千2百万円増加し、2兆8,201億3千1百万円となりました。また、資本は前年度末に比べ4,028億3千6百万円増加し、2兆4,657億8千1百万円となりました。
セグメントの業績は次の通りです。各セグメントの売上収益はセグメント間の内部売上収益を含んでおります。
事業セグメント別の実績
※営業利益における無形資産償却費は各事業に配賦しています。
[日本]
日本においては、酒類、飲料、食品事業で主力ブランドの価値向上を軸に成長戦略を推進するとともに、環境変化を捉えた新たな価値提案の強化に取り組みました。また、各事業の収益基盤の強化に加え、事業の枠を超えた日本全体でのシナジーの創出やサステナビリティへの取り組み強化により、持続的な成長に向けた基盤構築を推進しました。
酒類事業では、ビール類において、主力の『アサヒスーパードライ』に加え、『アサヒスーパードライ 生ジョッキ缶』や『アサヒ生ビール』のラインアップを拡充するとともに、「ラグビーワールドカップ2023フランス大会」に関連した広告・販売促進活動を強化しました。また、アルコール分3.5%の『アサヒスーパードライ ドライクリスタル』を発売するなど、新たな価値提案を強化しました。さらに、『アサヒスタイルフリー<生>』や『クリアアサヒ』をリニューアルするなど、主力ブランドの価値向上を図りました。RTD※において、複数の新ブランドを各々エリア限定で発売し、新価値創造に向けた取り組みを強化しました。また、お酒を飲む人と飲まない人が共に楽しめる生活文化の創造を目指し、「スマートドリンキング」の推進に取り組みました。
飲料事業では、微発酵茶葉を一部使用し華やかな香りが特長の緑茶の新ブランド『アサヒ 颯(そう)』に加え、濃厚な味わいが特長の『三ツ矢』の「特濃」シリーズから新商品を発売するなど、市場の活性化を図りました。また、健康な人の免疫機能の維持に役立つ機能性表示食品『守る働く乳酸菌W』を発売し、健康志向を踏まえた価値提案の強化に取り組みました。
食品事業では、エチケットケアニーズの高まりに対応した『ミンティアブリーズ クリアプラスマイルド』のリニューアルに加え、人気アニメとコラボレーションした商品などを発売し、『ミンティア』のユーザー層の拡大を図りました。また、機能性表示食品『ディアナチュラゴールド L-92乳酸菌&食物繊維』を発売するなど、多様化するニーズへの対応に取り組みました。
以上の結果、売上収益は、ビール類の売上が増加した酒類事業を中心に各事業が増収となり、1兆3,628億5千万円(前期比4.7%増)となりました。
事業利益は、原材料関連費用の増加などの影響はあったものの、増収効果や各種コストの効率化などにより、1,195億3千5百万円(前期比9.8%増)となりました。
※ RTD:Ready To Drinkの略。購入後、そのまま飲用可能な缶チューハイなどを指します。
[欧州]
欧州においては、欧州地域におけるブランドポートフォリオの競争優位を強化するとともに、『Asahi Super Dry』や『Peroni Nastro Azzurro』などのグローバルブランドの拡大展開を加速させることにより、プレミアム戦略を推進しました。また、サステナビリティの重点テーマである「環境」や「コミュニティ」などの取り組みを深化させることにより、持続的な成長基盤を強化しました。
欧州の主要地域では、チェコにおいて、『Pilsner Urquell』を中心にチェコのビール文化を体験できる施設のオープンに加えて、ポーランドの『Lech』での責任ある飲酒の促進や、ルーマニアの『Ursus』での生物多様性を支援するプロモーションの展開など、ブランド価値の向上に取り組みました。また、ポーランドやイタリア、ルーマニアにおける『Kozel』のほか、英国やルーマニア、フランスでの『Peroni Nastro Azzurro』などの拡大展開により、プレミアム化を推進しました。さらに、ノンアルコールビールにおいて、チェコの『Birell』やポーランドの『Lech Free』、ルーマニアの『Ursus Cooler』など、主力ブランドを中心に新たな飲用機会の創出に向けた取り組みを強化しました。
グローバルブランドの拡大展開では、「ラグビーワールドカップ2023フランス大会」の大会公式ビールである『Asahi Super Dry』をノンアルコールビール『Asahi Super Dry 0.0%』とともにスタジアムやファンゾーンで提供したほか、「City Football Group」とのパートナーシップを活かしたマーケティング活動により、Asahi Super Dryにおけるブランド認知度の向上を図りました。『Peroni Nastro Azzurro』において、欧米のゴルフ大会「2023 Ryder Cup」の公式ビールとして積極的なプロモーションを展開したほか、低アルコール度数の『Peroni Nastro Azzurro Stile Capri』を発売しました。また、ノンアルコールビール『Peroni Nastro Azzurro 0.0%』において、モータースポーツチーム「Aston Martin Cognizant FORMULA ONETM TEAM」とのパートナーシップによる広告を積極展開するなど、ブランド力の強化を推進しました。
以上の結果、売上収益は、インフレ影響などにより販売数量は減少したものの、各国の主力ブランドやグローバルブランドの販売強化に加えて、価格改定の効果などにより、6,887億2千5百万円(前期比20.0%増)となりました。
事業利益は、原材料や人件費などの費用増加はあったものの、増収効果や各種コストの効率化、為替変動の影響などにより、850億7千8百万円(前期比11.9%増)となりました。
なお、為替変動による影響を除くと、売上収益は前期比8.3%の増収、事業利益は前期比1.0%の減益となりました。
[オセアニア]
オセアニアにおいては、酒類、飲料事業におけるプレミアム戦略の強化に加え、各事業の強みを融合したマルチビバレッジ戦略の推進や統合シナジーの創出などにより、収益基盤の更なる強化を図りました。また、健康やウェルネスを意識した新たな商品やサービスの提案など、サステナビリティを重視した取り組みを推進しました。
酒類事業では、主力ブランドの『Great Northern』において、積極的なマーケティング活動の推進やエクステンション商品として『GINGER BEER』を発売したほか、クラフトビールの商品ポートフォリオを拡充することなどにより、ブランド価値の向上に取り組みました。また、ノンアルコールビール『Asahi Super Dry 0.0%』を展開するとともに、RTDブランド『Vodka Cruiser』から主に若年層をターゲットにした缶商品を発売するなど、ニーズの多様化を踏まえたラインアップの拡充を図りました。
飲料事業では、『Solo』ブランドにおいて発売50周年記念のキャンペーンを展開するなど、主力ブランドの販売促進活動を強化したほか、健康志向の高まりに対応した新しい炭酸飲料『Bubly』を発売するなど、新たな価値提案を推進しました。
さらに、エネルギー小売企業であるFlow Power社と再生可能エネルギー由来の電力(年間40,000メガワット時)を購入する契約を新たに締結するなど、サステナビリティの取り組みを推進しました。
以上の結果、売上収益は、物流の混乱による影響はあったものの、行動制限の解除に伴う需要回復などにより、6,521億5千4百万円(前期比11.8%増)となりました。
事業利益は、原材料関連の費用増加などの影響はあったものの、ミックスの改善による増収効果や各種コストの効率化、為替変動の影響などにより、1,106億3千2百万円(前期比3.3%増)となりました。
なお、為替変動による影響を除くと、売上収益は前期比9.1%の増収、事業利益は前期比0.8%の増益となりました。
[東南アジア]
東南アジアにおいては、主力ブランドへの選択と集中の加速や各販売チャネルとの関係強化などにより、マレーシアを中心に各展開国における事業ポートフォリオの再構築を図りました。また、環境や貧困などの社会課題に対する取り組みや人材育成などの強化を通じて、持続的な成長基盤の確立を推進しました。
マレーシアでは、主力ブランド『WONDA』における大規模なリニューアルに加え、eスポーツ関連のキャンペーンを展開したほか、『CALPIS』のエクステンション商品の発売や積極的なキャンペーンの展開など、ブランド認知度の向上を推進しました。また、再生可能エネルギー事業者との連携により、マレーシアとインドネシアにおいて太陽光発電の利用を推進したことに加え、フィリピンでは全国の教育機関に『Goodday』を寄贈するなど、気候変動への対応やコミュニティ活動への積極参加により、サステナビリティの取り組みを推進しました。
以上の結果、売上収益は、マレーシアにおける主力ブランドの販売が好調に推移したことに加え、価格改定の効果や為替変動の影響などにより、578億6百万円(前期比11.9%増)となりました。
事業利益は、原材料関連の費用や輸送費の増加などの影響はあったものの、固定費全般の効率化などを推進したことにより、13億9千8百万円(前期比144.2%増)となりました。
なお、為替変動による影響を除くと、売上収益は前期比7.8%の増収、事業利益は前期比134.1%の増益となりました。
[その他]
その他については、売上収益は、215億4千2百万円(前期比145.8%増)、事業利益は、53億2千1百万円(前期比278.1%増)となりました。
[『中長期経営方針』の中期的なガイドラインの進捗]
「主要指標のガイドライン」については、各地域における原材料価格の上昇による影響に加えて、将来を見据えたブランド投資の拡大などにより、事業利益(為替一定ベース)及びEPS(調整後)がガイドラインを下回る進捗となりました。また、フリー・キャッシュ・フロー(FCF)については、有形固定資産の売却や運転資本の圧縮などのキャッシュ創出により、ガイドラインを上回る進捗となりました。
「財務方針のガイドライン」については、FCFを金融債務の削減に充当したことなどにより、Net Debt/EBITDAもガイドラインどおりの進捗となりました。また、株主還元については、EPSの増加に伴い、当期は1株当たりの配当額を8円増配の121円とすることにより、ガイドライン並みの水準となりました。
主要指標のガイドライン
※1 為替一定ベース
※2 調整後とは、事業ポートフォリオの再構築や減損損失など一時的な特殊要因を除いたものです。
※3 FCF=営業CF-投資CF (M&A等の事業再構築を除く)
(注)「主要指標のガイドライン」におけるFCFの金額は、表示単位未満を四捨五入して表示しております。
財務方針のガイドライン
※1 Net Debt/EBITDA(EBITDA純有利子負債倍率)=(金融債務-現預金)/EBITDA
※2 配当性向は、親会社の所有者に帰属する当期利益から事業ポートフォリオ再構築及び減損損失などに係る一時的な損益(税金費用控除後)を控除して算出しております。
(2)キャッシュ・フローの状況
当年度の営業活動によるキャッシュ・フローは、税引前利益が2,418億7千1百万円となりましたが、法人所得税等の支払による減少があった一方で、減価償却費等の非キャッシュ項目による増加や運転資本の効率化により、3,475億4千7百万円(前期比:815億5千6百万円の収入増)の収入となりました。
投資活動によるキャッシュ・フローは、有形固定資産や無形資産の取得に加え条件付対価の決済による支出などにより、1,177億1千3百万円(前期比:485億2千6百万円の支出増)の支出となりました。
財務活動によるキャッシュ・フローは、主に社債発行による収入があった一方で、社債の償還や借入金の返済による支出などがあり、2,267億4千6百万円(前期比:71億8千9百万円の支出増)の支出となりました。
以上の結果、当年度末では、前年度末と比較して現金及び現金同等物の残高は225億7百万円増加し、599億4千5百万円となりました。
(生産、受注及び販売の状況)
(1)生産実績
当年度におけるセグメントごとの生産実績は以下の通りであります。
(注)1 金額は、販売価額によっております。
2 IFRSに基づく金額を記載しております。
3 日本の生産高には、外部への製造委託を含めております。
(2)受注実績
当社グループでは受注生産はほとんど行っておりません。
(3)販売実績
当年度におけるセグメントごとの販売実績は以下の通りであります。
(注)1 調整額はセグメント間取引であります。
2 主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合については、外部顧客への売上収益のうち、総販売高の10%以上を占める相手先がないため、記載を省略しております。
(経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容)
当年度の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析は以下の通りであります。
(1)重要性がある会計方針及び見積り
当社の連結財務諸表は、IFRSに準拠して作成されております。この連結財務諸表の作成にあたり、見積りが必要となる事項につきましては、合理的な基準に基づき、会計上の見積りを行っております。
詳細につきましては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 連結財務諸表注記 6 重要な会計上の見積り及び判断」に記載しております。
(2)当年度の経営成績の分析
① 売上収益
アサヒグループの当年度の売上収益は、前期比10.3%増、2,579億8千2百万円増収の2兆7,690億9千1百万円となりました。日本においては、ビール類の売上が増加した酒類事業を中心に各事業が増収となり、前期比4.7%増の1兆3,628億5千万円となりました。欧州においては、インフレ影響などにより販売数量は減少したものの、各国の主力ブランドやグローバルブランドの販売強化に加えて、価格改定の効果などにより、前期比20.0%増の6,887億2千5百万円となりました。オセアニアにおいては、物流の混乱による影響はあったものの、行動制限の解除に伴う需要回復などにより、前期比11.8%増の6,521億5千4百万円となりました。東南アジアにおいては、マレーシアにおける主力ブランドの販売が好調に推移したことに加え、価格改定の効果や為替変動の影響などにより、前期比11.9%増の578億6百万円となりました。その他においては、前期比145.8%増の215億4千2百万円となりました。
② 事業利益
当年度の事業利益は、前期比8.1%増、198億6千3百万円増益の2,636億8千万円となりました。日本においては、原材料関連費用の増加などの影響はあったものの、増収効果や各種コストの効率化などにより、前期比9.8%増の1,195億3千5百万円となりました。欧州においては、原材料や人件費などの費用増加はあったものの、増収効果や各種コストの効率化、為替変動の影響などにより、前期比11.9%増の850億7千8百万円となりました。オセアニアにおいては、原材料関連の費用増加などの影響はあったものの、ミックスの改善による増収効果や各種コストの効率化、為替変動の影響などにより、前期比3.3%増の1,106億3千2百万円となりました。東南アジアにおいては、原材料関連の費用や輸送費の増加などの影響はあったものの、固定費全般の効率化などを推進したことにより、前期比144.2%増の13億9千8百万円となりました。その他においては、前期比278.1%増の53億2千1百万円となりました。
③ 営業利益
営業利益は、事業利益の増益などにより、前期比12.9%増、279億5千万円増益の2,449億9千9百万円となりました。
④ 税引前利益
当年度の税引前利益は、営業利益の増益に加え、金融収益が前期比156.8%増、86億1千9百万円増加の141億1千8百万円となったことや、金融費用が前期比5.2%増、8億9千9百万円増加の181億2千1百万円となったことなどにより、前期比17.4%増、358億7千8百万円増益の2,418億7千1百万円となりました。
⑤ 親会社の所有者に帰属する当期利益
親会社の所有者に帰属する当期利益は、税引前利益の増益などにより、前期比8.3%増、125億1千8百万円増益の1,640億7千3百万円となりました。
また、基本的1株当たり利益は323.82円(前期299.10円)となり、親会社所有者帰属持分比率は46.5%(前期42.7%)となりました。
また、事業ポートフォリオ再構築など一時的な特殊要因を除いた親会社の所有者に帰属する当期利益を算出に用いた調整後基本的1株当たり利益は326.90円(前期326.48円)となりました。
(3)財政状態の分析
① 総資産
当年度の連結総資産は、為替相場の変動によるのれん及び無形資産を含む外貨建資産の増加等により、総資産は前年度末と比較して4,555億6千9百万円増加し、5兆2,859億1千3百万円となりました。
② 負債
負債は、原材料関連の価格上昇等に伴う営業債務及びその他の債務の増加や、為替相場の変動による外貨建負債の増加、社債及び借入金の減少等により、前年度末と比較して527億3千2百万円増加し、2兆8,201億3千1百万円となりました。
③ 資本
資本は、前年度末に比べ4,028億3千6百万円増加し、2兆4,657億8千1百万円となりました。これは、配当金支出により利益剰余金が減少したものの、親会社の所有者に帰属する当期利益の計上により利益剰余金が増加したこと及び為替相場の変動により在外営業活動体の換算差額が増加したこと等によるものです。
この結果、親会社所有者帰属持分比率は46.5%となりました。
また、事業ポートフォリオ再構築や為替変動など一時的な特殊要因を除いた「親会社の所有者に帰属する当期利益」及び「親会社の所有者に帰属する持分合計」を算出に用いた調整後親会社所有者帰属持分当期利益率は10.3%(前期11.1%)となりました。
(4)資本の財源及び資金の流動性についての分析
① キャッシュ・フロー分析
キャッシュ・フローの状況につきましては、「(業績等の概要) (2)キャッシュ・フローの状況」に記載の通りであります。
また、キャッシュ・フロー指標のトレンドは、以下の通りであります。
(注)親会社所有者帰属持分比率:親会社の所有者に帰属する持分/総資産
時価ベースの親会社所有者帰属持分比率:株式時価総額/総資産
キャッシュ・フロー対有利子負債比率:有利子負債/キャッシュ・フロー
インタレスト・カバレッジ・レシオ:キャッシュ・フロー/利払い
※ 各指標はいずれも連結ベースの財務数値により算出しております。
※ 株式時価総額は自己株式を除く発行済株式数をベースに計算しております。
※ キャッシュ・フローは営業キャッシュ・フローを使用しております。
② 資金の調達
アサヒグループの資金の源泉は、主として営業活動からのキャッシュ・フローと金融機関からの借入、社債の発行からなります。当社は経営方針として、有利子負債残高の圧縮を基本として掲げておりますが、「事業基盤強化・効率化を目指した設備投資」及び「M&Aを含む戦略的事業投資」については資金需要に応じて金融債務を柔軟に活用することとしております。一方、運転資金需要については、短期借入金及びコマーシャル・ペーパーでまかなうことを基本としております。
③ 資金の流動性
当社及び主要な連結子会社はCMS(キャッシュマネジメントシステム)を導入しており、各社における余剰資金を当社へ集中し、一元管理を行うことにより、資金効率の向上と金融費用の極小化を図っております。
(5)戦略的現状と見通し
2024年度は、コスト全般の高止まりやインフレなどによる経済減速リスクが懸念されますが、引き続き『中長期経営方針』に基づいて、各地域におけるプレミアム戦略の推進などによる事業ポートフォリオの強靭化に取り組みます。更に、サステナビリティと経営の統合をはじめとしたコア戦略の一層の推進に加えて、真のグローバル化に向けた人的資本の高度化やグループガバナンスの強化により、長期戦略を支える経営基盤を強化していきます。
日本においては、酒類、飲料、食品事業の主力ブランドに経営資源を投下するとともに、新たな価値提案の強化などにより、成長基盤の拡大に取り組みます。また、各事業の枠を超えたシナジー創出に加えて、人的資本や組織機能の高度化、サステナビリティへの取り組み推進などにより、日本全体の経営基盤を強化します。
欧州においては、各国のプレミアム戦略に基づく競争優位性の向上に加えて、『Asahi Super Dry』や『Peroni Nastro Azzurro』を軸とした世界的なパートナーシップの活用などにより、グローバルブランドの認知度向上を図ります。また、「環境」や「コミュニティ」を中心としたサステナビリティへの取り組みを強化することなどにより、成長基盤を更に拡大します。
オセアニアにおいては、『Great Northern』など主力ブランドを中心とした持続的な成長に加え、酒類と飲料事業の強みを活かしたマルチビバレッジ戦略により、商品ポートフォリオの強化を図ります。また、各種オペレーションの最適化などによる収益構造改革やサステナビリティを重視した新価値提案などにより、事業基盤を一層強化します。
東南アジアにおいては、自社ブランドを中心とした主力ブランドへの投資強化や販売チャネルの最適化を推進し、マレーシアなど展開国における収益性向上を図ります。また、健康需要の取り込みやDX投資、人材育成などの強化を通じて、成長基盤の拡大を図ります。
(6)経営者の問題認識と今後の方針について
経営者の問題認識と今後の方針につきましては、この文中に記載したほか、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載の通りであります。
(7)経営成績に重要な影響を与える要因について
経営成績に重要な影響を与える要因につきましては、「3 事業等のリスク」に記載の通りであります。
(1)業績
当期における世界経済は、米国において、雇用者数の増加や個人消費の拡大を背景に景気は堅調に推移しましたが、欧州においては、インフレの進行により景気に弱さが見られました。日本経済は、原材料価格の上昇などの影響を受けたものの、経済活動の再開による内需の回復などにより、景気は緩やかに持ち直しの動きが見られました。
こうした状況のなかアサヒグループは、グループ理念“Asahi Group Philosophy”の実践に向けて、メガトレンドからバックキャストして更新した『中長期経営方針』に基づき、持続的な成長と企業価値向上を目指した取り組みを推進しました。「目指す事業ポートフォリオ」の構築では、グローバルブランドの拡大展開やプレミアム戦略の推進による既存事業の成長に加え、周辺・新規領域の拡大と探索にも経営資源を積極的に配分しました。また、サステナビリティと経営の統合をはじめとして、持続的な成長を支えるDX(デジタル・トランスフォーメーション)やR&D(研究開発)といったコア戦略を推進するとともに、長期戦略を支える経営基盤の強化として、人的資本の高度化やグループガバナンスの進化にも取り組みました。
その結果、アサヒグループの売上収益は、2兆7,690億9千1百万円(前期比10.3%増)となりました。また、利益については、事業利益※1は2,636億8千万円(前期比8.1%増)、営業利益は2,449億9千9百万円(前期比12.9%増)、親会社の所有者に帰属する当期利益は1,640億7千3百万円(前期比8.3%増)、調整後親会社の所有者に帰属する当期利益※2は1,656億3千2百万円(前期比0.1%増)となりました。
なお、為替変動による影響を除くと、売上収益は前期比6.8%の増収、事業利益は前期比3.9%の増益となりました。※3
※1 事業利益とは、売上収益から売上原価並びに販売費及び一般管理費を控除した、恒常的な事業の業績を測る当社独自の利益指標です。
※2 調整後親会社の所有者に帰属する当期利益とは、親会社の所有者に帰属する当期利益から事業ポートフォリオ再構築及び減損損失など一時的な特殊要因を控除したものです。
※3 2023年の外貨金額を、2022年の為替レートで円換算して比較しています。
アサヒグループの実績 (単位:百万円) |
実績 | 前期比 | |
売上収益 | 2,769,091 | 10.3% |
事業利益 | 263,680 | 8.1% |
営業利益 | 244,999 | 12.9% |
親会社の所有者に 帰属する当期利益 | 164,073 | 8.3% |
調整後親会社の所有者 に帰属する当期利益 | 165,632 | 0.1% |
当年度の財政状態の状況は、連結総資産は前年度末と比較して4,555億6千9百万円増加し、5兆2,859億1千3百万円、負債は前年度末と比較して527億3千2百万円増加し、2兆8,201億3千1百万円となりました。また、資本は前年度末に比べ4,028億3千6百万円増加し、2兆4,657億8千1百万円となりました。
セグメントの業績は次の通りです。各セグメントの売上収益はセグメント間の内部売上収益を含んでおります。
事業セグメント別の実績
(単位:百万円) |
売上収益 | 前期比 | 事業利益 | 前期比 | 売上収益 事業利益率 | 営業利益 | 前期比 | |||
為替一定 | 為替一定 | ||||||||
日本 | 1,362,850 | 4.7% | 4.7% | 119,535 | 9.8% | 9.8% | 8.8% | 111,266 | 15.4% |
欧州 | 688,725 | 20.0% | 8.3% | 85,078 | 11.9% | △1.0% | 12.4% | 59,437 | 7.7% |
オセアニア | 652,154 | 11.8% | 9.1% | 110,632 | 3.3% | 0.8% | 17.0% | 89,673 | 11.8% |
東南アジア | 57,806 | 11.9% | 7.8% | 1,398 | 144.2% | 134.1% | 2.4% | 1,009 | 59.4% |
その他 | 21,542 | 145.8% | 137.0% | 5,321 | 278.1% | 260.2% | 24.7% | 5,174 | 311.5% |
調整額計 | △13,988 | - | - | △21,424 | - | - | - | △21,562 | - |
無形資産 償却費 | - | - | - | △36,862 | - | - | - | - | - |
合計 | 2,769,091 | 10.3% | 6.8% | 263,680 | 8.1% | 3.9% | 9.5% | 244,999 | 12.9% |
※営業利益における無形資産償却費は各事業に配賦しています。
[日本]
日本においては、酒類、飲料、食品事業で主力ブランドの価値向上を軸に成長戦略を推進するとともに、環境変化を捉えた新たな価値提案の強化に取り組みました。また、各事業の収益基盤の強化に加え、事業の枠を超えた日本全体でのシナジーの創出やサステナビリティへの取り組み強化により、持続的な成長に向けた基盤構築を推進しました。
酒類事業では、ビール類において、主力の『アサヒスーパードライ』に加え、『アサヒスーパードライ 生ジョッキ缶』や『アサヒ生ビール』のラインアップを拡充するとともに、「ラグビーワールドカップ2023フランス大会」に関連した広告・販売促進活動を強化しました。また、アルコール分3.5%の『アサヒスーパードライ ドライクリスタル』を発売するなど、新たな価値提案を強化しました。さらに、『アサヒスタイルフリー<生>』や『クリアアサヒ』をリニューアルするなど、主力ブランドの価値向上を図りました。RTD※において、複数の新ブランドを各々エリア限定で発売し、新価値創造に向けた取り組みを強化しました。また、お酒を飲む人と飲まない人が共に楽しめる生活文化の創造を目指し、「スマートドリンキング」の推進に取り組みました。
飲料事業では、微発酵茶葉を一部使用し華やかな香りが特長の緑茶の新ブランド『アサヒ 颯(そう)』に加え、濃厚な味わいが特長の『三ツ矢』の「特濃」シリーズから新商品を発売するなど、市場の活性化を図りました。また、健康な人の免疫機能の維持に役立つ機能性表示食品『守る働く乳酸菌W』を発売し、健康志向を踏まえた価値提案の強化に取り組みました。
食品事業では、エチケットケアニーズの高まりに対応した『ミンティアブリーズ クリアプラスマイルド』のリニューアルに加え、人気アニメとコラボレーションした商品などを発売し、『ミンティア』のユーザー層の拡大を図りました。また、機能性表示食品『ディアナチュラゴールド L-92乳酸菌&食物繊維』を発売するなど、多様化するニーズへの対応に取り組みました。
以上の結果、売上収益は、ビール類の売上が増加した酒類事業を中心に各事業が増収となり、1兆3,628億5千万円(前期比4.7%増)となりました。
事業利益は、原材料関連費用の増加などの影響はあったものの、増収効果や各種コストの効率化などにより、1,195億3千5百万円(前期比9.8%増)となりました。
※ RTD:Ready To Drinkの略。購入後、そのまま飲用可能な缶チューハイなどを指します。
[欧州]
欧州においては、欧州地域におけるブランドポートフォリオの競争優位を強化するとともに、『Asahi Super Dry』や『Peroni Nastro Azzurro』などのグローバルブランドの拡大展開を加速させることにより、プレミアム戦略を推進しました。また、サステナビリティの重点テーマである「環境」や「コミュニティ」などの取り組みを深化させることにより、持続的な成長基盤を強化しました。
欧州の主要地域では、チェコにおいて、『Pilsner Urquell』を中心にチェコのビール文化を体験できる施設のオープンに加えて、ポーランドの『Lech』での責任ある飲酒の促進や、ルーマニアの『Ursus』での生物多様性を支援するプロモーションの展開など、ブランド価値の向上に取り組みました。また、ポーランドやイタリア、ルーマニアにおける『Kozel』のほか、英国やルーマニア、フランスでの『Peroni Nastro Azzurro』などの拡大展開により、プレミアム化を推進しました。さらに、ノンアルコールビールにおいて、チェコの『Birell』やポーランドの『Lech Free』、ルーマニアの『Ursus Cooler』など、主力ブランドを中心に新たな飲用機会の創出に向けた取り組みを強化しました。
グローバルブランドの拡大展開では、「ラグビーワールドカップ2023フランス大会」の大会公式ビールである『Asahi Super Dry』をノンアルコールビール『Asahi Super Dry 0.0%』とともにスタジアムやファンゾーンで提供したほか、「City Football Group」とのパートナーシップを活かしたマーケティング活動により、Asahi Super Dryにおけるブランド認知度の向上を図りました。『Peroni Nastro Azzurro』において、欧米のゴルフ大会「2023 Ryder Cup」の公式ビールとして積極的なプロモーションを展開したほか、低アルコール度数の『Peroni Nastro Azzurro Stile Capri』を発売しました。また、ノンアルコールビール『Peroni Nastro Azzurro 0.0%』において、モータースポーツチーム「Aston Martin Cognizant FORMULA ONETM TEAM」とのパートナーシップによる広告を積極展開するなど、ブランド力の強化を推進しました。
以上の結果、売上収益は、インフレ影響などにより販売数量は減少したものの、各国の主力ブランドやグローバルブランドの販売強化に加えて、価格改定の効果などにより、6,887億2千5百万円(前期比20.0%増)となりました。
事業利益は、原材料や人件費などの費用増加はあったものの、増収効果や各種コストの効率化、為替変動の影響などにより、850億7千8百万円(前期比11.9%増)となりました。
なお、為替変動による影響を除くと、売上収益は前期比8.3%の増収、事業利益は前期比1.0%の減益となりました。
[オセアニア]
オセアニアにおいては、酒類、飲料事業におけるプレミアム戦略の強化に加え、各事業の強みを融合したマルチビバレッジ戦略の推進や統合シナジーの創出などにより、収益基盤の更なる強化を図りました。また、健康やウェルネスを意識した新たな商品やサービスの提案など、サステナビリティを重視した取り組みを推進しました。
酒類事業では、主力ブランドの『Great Northern』において、積極的なマーケティング活動の推進やエクステンション商品として『GINGER BEER』を発売したほか、クラフトビールの商品ポートフォリオを拡充することなどにより、ブランド価値の向上に取り組みました。また、ノンアルコールビール『Asahi Super Dry 0.0%』を展開するとともに、RTDブランド『Vodka Cruiser』から主に若年層をターゲットにした缶商品を発売するなど、ニーズの多様化を踏まえたラインアップの拡充を図りました。
飲料事業では、『Solo』ブランドにおいて発売50周年記念のキャンペーンを展開するなど、主力ブランドの販売促進活動を強化したほか、健康志向の高まりに対応した新しい炭酸飲料『Bubly』を発売するなど、新たな価値提案を推進しました。
さらに、エネルギー小売企業であるFlow Power社と再生可能エネルギー由来の電力(年間40,000メガワット時)を購入する契約を新たに締結するなど、サステナビリティの取り組みを推進しました。
以上の結果、売上収益は、物流の混乱による影響はあったものの、行動制限の解除に伴う需要回復などにより、6,521億5千4百万円(前期比11.8%増)となりました。
事業利益は、原材料関連の費用増加などの影響はあったものの、ミックスの改善による増収効果や各種コストの効率化、為替変動の影響などにより、1,106億3千2百万円(前期比3.3%増)となりました。
なお、為替変動による影響を除くと、売上収益は前期比9.1%の増収、事業利益は前期比0.8%の増益となりました。
[東南アジア]
東南アジアにおいては、主力ブランドへの選択と集中の加速や各販売チャネルとの関係強化などにより、マレーシアを中心に各展開国における事業ポートフォリオの再構築を図りました。また、環境や貧困などの社会課題に対する取り組みや人材育成などの強化を通じて、持続的な成長基盤の確立を推進しました。
マレーシアでは、主力ブランド『WONDA』における大規模なリニューアルに加え、eスポーツ関連のキャンペーンを展開したほか、『CALPIS』のエクステンション商品の発売や積極的なキャンペーンの展開など、ブランド認知度の向上を推進しました。また、再生可能エネルギー事業者との連携により、マレーシアとインドネシアにおいて太陽光発電の利用を推進したことに加え、フィリピンでは全国の教育機関に『Goodday』を寄贈するなど、気候変動への対応やコミュニティ活動への積極参加により、サステナビリティの取り組みを推進しました。
以上の結果、売上収益は、マレーシアにおける主力ブランドの販売が好調に推移したことに加え、価格改定の効果や為替変動の影響などにより、578億6百万円(前期比11.9%増)となりました。
事業利益は、原材料関連の費用や輸送費の増加などの影響はあったものの、固定費全般の効率化などを推進したことにより、13億9千8百万円(前期比144.2%増)となりました。
なお、為替変動による影響を除くと、売上収益は前期比7.8%の増収、事業利益は前期比134.1%の増益となりました。
[その他]
その他については、売上収益は、215億4千2百万円(前期比145.8%増)、事業利益は、53億2千1百万円(前期比278.1%増)となりました。
[『中長期経営方針』の中期的なガイドラインの進捗]
「主要指標のガイドライン」については、各地域における原材料価格の上昇による影響に加えて、将来を見据えたブランド投資の拡大などにより、事業利益(為替一定ベース)及びEPS(調整後)がガイドラインを下回る進捗となりました。また、フリー・キャッシュ・フロー(FCF)については、有形固定資産の売却や運転資本の圧縮などのキャッシュ創出により、ガイドラインを上回る進捗となりました。
「財務方針のガイドライン」については、FCFを金融債務の削減に充当したことなどにより、Net Debt/EBITDAもガイドラインどおりの進捗となりました。また、株主還元については、EPSの増加に伴い、当期は1株当たりの配当額を8円増配の121円とすることにより、ガイドライン並みの水準となりました。
主要指標のガイドライン
3年程度を想定したガイドライン | 2022-23年進捗 | |
事業利益 | CAGR(年平均成長率):一桁台後半※1 | CAGR:5.0% |
EPS(調整後※2) | CAGR(年平均成長率):一桁台後半 | CAGR:3.5% |
FCF※3 | 年平均2,000億円以上 | 年平均:2,266億円 |
※1 為替一定ベース
※2 調整後とは、事業ポートフォリオの再構築や減損損失など一時的な特殊要因を除いたものです。
※3 FCF=営業CF-投資CF (M&A等の事業再構築を除く)
(注)「主要指標のガイドライン」におけるFCFの金額は、表示単位未満を四捨五入して表示しております。
財務方針のガイドライン
2022年以降のガイドライン | 2023年実績 | |
成長投資・債務削減 | ・FCFは債務削減へ優先的に充当し、成長投資への余力を高める ・Net Debt/EBITDA※1は2024年に3倍程度を目指す (劣後債の50%はNet Debtから除いて算出) | 3.08倍 |
株主還元 | 配当性向※235%程度を目途とした安定的な増配 (配当性向は2025年までに40%を目指す) | 37.0% |
※1 Net Debt/EBITDA(EBITDA純有利子負債倍率)=(金融債務-現預金)/EBITDA
※2 配当性向は、親会社の所有者に帰属する当期利益から事業ポートフォリオ再構築及び減損損失などに係る一時的な損益(税金費用控除後)を控除して算出しております。
(2)キャッシュ・フローの状況
当年度の営業活動によるキャッシュ・フローは、税引前利益が2,418億7千1百万円となりましたが、法人所得税等の支払による減少があった一方で、減価償却費等の非キャッシュ項目による増加や運転資本の効率化により、3,475億4千7百万円(前期比:815億5千6百万円の収入増)の収入となりました。
投資活動によるキャッシュ・フローは、有形固定資産や無形資産の取得に加え条件付対価の決済による支出などにより、1,177億1千3百万円(前期比:485億2千6百万円の支出増)の支出となりました。
財務活動によるキャッシュ・フローは、主に社債発行による収入があった一方で、社債の償還や借入金の返済による支出などがあり、2,267億4千6百万円(前期比:71億8千9百万円の支出増)の支出となりました。
以上の結果、当年度末では、前年度末と比較して現金及び現金同等物の残高は225億7百万円増加し、599億4千5百万円となりました。
(生産、受注及び販売の状況)
(1)生産実績
当年度におけるセグメントごとの生産実績は以下の通りであります。
セグメントの名称 | 金額 | 前期比 | |
日本 | 1,270,559 | 百万円 | 4.8% |
欧州 | 565,090 | 百万円 | 24.0% |
オセアニア | 555,327 | 百万円 | 10.6% |
東南アジア | 46,344 | 百万円 | 4.5% |
(注)1 金額は、販売価額によっております。
2 IFRSに基づく金額を記載しております。
3 日本の生産高には、外部への製造委託を含めております。
(2)受注実績
当社グループでは受注生産はほとんど行っておりません。
(3)販売実績
当年度におけるセグメントごとの販売実績は以下の通りであります。
セグメントの名称 | 金額 | 前期比 | |
日本 | 1,362,850 | 百万円 | 4.7% |
欧州 | 688,725 | 百万円 | 20.0% |
オセアニア | 652,154 | 百万円 | 11.8% |
東南アジア | 57,806 | 百万円 | 11.9% |
その他 | 21,542 | 百万円 | 145.8% |
調整額 | △13,988 | 百万円 | - |
合計 | 2,769,091 | 百万円 | 10.3% |
(注)1 調整額はセグメント間取引であります。
2 主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合については、外部顧客への売上収益のうち、総販売高の10%以上を占める相手先がないため、記載を省略しております。
(経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容)
当年度の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析は以下の通りであります。
(1)重要性がある会計方針及び見積り
当社の連結財務諸表は、IFRSに準拠して作成されております。この連結財務諸表の作成にあたり、見積りが必要となる事項につきましては、合理的な基準に基づき、会計上の見積りを行っております。
詳細につきましては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 連結財務諸表注記 6 重要な会計上の見積り及び判断」に記載しております。
(2)当年度の経営成績の分析
① 売上収益
アサヒグループの当年度の売上収益は、前期比10.3%増、2,579億8千2百万円増収の2兆7,690億9千1百万円となりました。日本においては、ビール類の売上が増加した酒類事業を中心に各事業が増収となり、前期比4.7%増の1兆3,628億5千万円となりました。欧州においては、インフレ影響などにより販売数量は減少したものの、各国の主力ブランドやグローバルブランドの販売強化に加えて、価格改定の効果などにより、前期比20.0%増の6,887億2千5百万円となりました。オセアニアにおいては、物流の混乱による影響はあったものの、行動制限の解除に伴う需要回復などにより、前期比11.8%増の6,521億5千4百万円となりました。東南アジアにおいては、マレーシアにおける主力ブランドの販売が好調に推移したことに加え、価格改定の効果や為替変動の影響などにより、前期比11.9%増の578億6百万円となりました。その他においては、前期比145.8%増の215億4千2百万円となりました。
② 事業利益
当年度の事業利益は、前期比8.1%増、198億6千3百万円増益の2,636億8千万円となりました。日本においては、原材料関連費用の増加などの影響はあったものの、増収効果や各種コストの効率化などにより、前期比9.8%増の1,195億3千5百万円となりました。欧州においては、原材料や人件費などの費用増加はあったものの、増収効果や各種コストの効率化、為替変動の影響などにより、前期比11.9%増の850億7千8百万円となりました。オセアニアにおいては、原材料関連の費用増加などの影響はあったものの、ミックスの改善による増収効果や各種コストの効率化、為替変動の影響などにより、前期比3.3%増の1,106億3千2百万円となりました。東南アジアにおいては、原材料関連の費用や輸送費の増加などの影響はあったものの、固定費全般の効率化などを推進したことにより、前期比144.2%増の13億9千8百万円となりました。その他においては、前期比278.1%増の53億2千1百万円となりました。
③ 営業利益
営業利益は、事業利益の増益などにより、前期比12.9%増、279億5千万円増益の2,449億9千9百万円となりました。
④ 税引前利益
当年度の税引前利益は、営業利益の増益に加え、金融収益が前期比156.8%増、86億1千9百万円増加の141億1千8百万円となったことや、金融費用が前期比5.2%増、8億9千9百万円増加の181億2千1百万円となったことなどにより、前期比17.4%増、358億7千8百万円増益の2,418億7千1百万円となりました。
⑤ 親会社の所有者に帰属する当期利益
親会社の所有者に帰属する当期利益は、税引前利益の増益などにより、前期比8.3%増、125億1千8百万円増益の1,640億7千3百万円となりました。
また、基本的1株当たり利益は323.82円(前期299.10円)となり、親会社所有者帰属持分比率は46.5%(前期42.7%)となりました。
また、事業ポートフォリオ再構築など一時的な特殊要因を除いた親会社の所有者に帰属する当期利益を算出に用いた調整後基本的1株当たり利益は326.90円(前期326.48円)となりました。
(3)財政状態の分析
① 総資産
当年度の連結総資産は、為替相場の変動によるのれん及び無形資産を含む外貨建資産の増加等により、総資産は前年度末と比較して4,555億6千9百万円増加し、5兆2,859億1千3百万円となりました。
② 負債
負債は、原材料関連の価格上昇等に伴う営業債務及びその他の債務の増加や、為替相場の変動による外貨建負債の増加、社債及び借入金の減少等により、前年度末と比較して527億3千2百万円増加し、2兆8,201億3千1百万円となりました。
③ 資本
資本は、前年度末に比べ4,028億3千6百万円増加し、2兆4,657億8千1百万円となりました。これは、配当金支出により利益剰余金が減少したものの、親会社の所有者に帰属する当期利益の計上により利益剰余金が増加したこと及び為替相場の変動により在外営業活動体の換算差額が増加したこと等によるものです。
この結果、親会社所有者帰属持分比率は46.5%となりました。
また、事業ポートフォリオ再構築や為替変動など一時的な特殊要因を除いた「親会社の所有者に帰属する当期利益」及び「親会社の所有者に帰属する持分合計」を算出に用いた調整後親会社所有者帰属持分当期利益率は10.3%(前期11.1%)となりました。
(4)資本の財源及び資金の流動性についての分析
① キャッシュ・フロー分析
キャッシュ・フローの状況につきましては、「(業績等の概要) (2)キャッシュ・フローの状況」に記載の通りであります。
また、キャッシュ・フロー指標のトレンドは、以下の通りであります。
前年度 | 当年度 | |
親会社所有者帰属持分比率(%) | 42.7 | 46.5 |
時価ベースの親会社所有者帰属 持分比率(%) | 43.2 | 50.4 |
キャッシュ・フロー対有利子 負債比率(年) | 6.1 | 6.2 |
インタレスト・カバレッジ・ レシオ(倍) | 24.5 | 27.5 |
(注)親会社所有者帰属持分比率:親会社の所有者に帰属する持分/総資産
時価ベースの親会社所有者帰属持分比率:株式時価総額/総資産
キャッシュ・フロー対有利子負債比率:有利子負債/キャッシュ・フロー
インタレスト・カバレッジ・レシオ:キャッシュ・フロー/利払い
※ 各指標はいずれも連結ベースの財務数値により算出しております。
※ 株式時価総額は自己株式を除く発行済株式数をベースに計算しております。
※ キャッシュ・フローは営業キャッシュ・フローを使用しております。
② 資金の調達
アサヒグループの資金の源泉は、主として営業活動からのキャッシュ・フローと金融機関からの借入、社債の発行からなります。当社は経営方針として、有利子負債残高の圧縮を基本として掲げておりますが、「事業基盤強化・効率化を目指した設備投資」及び「M&Aを含む戦略的事業投資」については資金需要に応じて金融債務を柔軟に活用することとしております。一方、運転資金需要については、短期借入金及びコマーシャル・ペーパーでまかなうことを基本としております。
③ 資金の流動性
当社及び主要な連結子会社はCMS(キャッシュマネジメントシステム)を導入しており、各社における余剰資金を当社へ集中し、一元管理を行うことにより、資金効率の向上と金融費用の極小化を図っております。
(5)戦略的現状と見通し
2024年度は、コスト全般の高止まりやインフレなどによる経済減速リスクが懸念されますが、引き続き『中長期経営方針』に基づいて、各地域におけるプレミアム戦略の推進などによる事業ポートフォリオの強靭化に取り組みます。更に、サステナビリティと経営の統合をはじめとしたコア戦略の一層の推進に加えて、真のグローバル化に向けた人的資本の高度化やグループガバナンスの強化により、長期戦略を支える経営基盤を強化していきます。
日本においては、酒類、飲料、食品事業の主力ブランドに経営資源を投下するとともに、新たな価値提案の強化などにより、成長基盤の拡大に取り組みます。また、各事業の枠を超えたシナジー創出に加えて、人的資本や組織機能の高度化、サステナビリティへの取り組み推進などにより、日本全体の経営基盤を強化します。
欧州においては、各国のプレミアム戦略に基づく競争優位性の向上に加えて、『Asahi Super Dry』や『Peroni Nastro Azzurro』を軸とした世界的なパートナーシップの活用などにより、グローバルブランドの認知度向上を図ります。また、「環境」や「コミュニティ」を中心としたサステナビリティへの取り組みを強化することなどにより、成長基盤を更に拡大します。
オセアニアにおいては、『Great Northern』など主力ブランドを中心とした持続的な成長に加え、酒類と飲料事業の強みを活かしたマルチビバレッジ戦略により、商品ポートフォリオの強化を図ります。また、各種オペレーションの最適化などによる収益構造改革やサステナビリティを重視した新価値提案などにより、事業基盤を一層強化します。
東南アジアにおいては、自社ブランドを中心とした主力ブランドへの投資強化や販売チャネルの最適化を推進し、マレーシアなど展開国における収益性向上を図ります。また、健康需要の取り込みやDX投資、人材育成などの強化を通じて、成長基盤の拡大を図ります。
(6)経営者の問題認識と今後の方針について
経営者の問題認識と今後の方針につきましては、この文中に記載したほか、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載の通りであります。
(7)経営成績に重要な影響を与える要因について
経営成績に重要な影響を与える要因につきましては、「3 事業等のリスク」に記載の通りであります。