有価証券報告書-第56期(平成26年4月1日-平成27年3月31日)

【提出】
2015/06/26 14:56
【資料】
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【項目】
109項目

財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたりましては「第5経理の状況」の冒頭に記載のとおり、「連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則」(昭和51年大蔵省令第28号)に基づいて作成しております。
重要な会計方針についての詳細および見積りに関する事項につきましては「連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項」に記載のとおりであります。
(2)当連結会計年度の経営成績の分析
当社グループにおける当連結会計年度の業績は、電子売上においては、軽自動車への『マップルナビ』の提供が堅調に推移した反面、PND(簡易型カーナビゲーション)市場が飽和状態となりつつあり売上が急激に減少したことにより、売上高は43億63百万円となり、前連結会計年度に比べ5億61百万円減少することとなりました。また、市販出版物では、期首における消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動による地図の売上減少や、最盛期である夏の天候不順による店頭実売の減少等がある中、新たに雑誌スタイルのことりっぷ『ことりっぷマガジン』、新国内ガイドシリーズ『tabitte(タビッテ)』(全20点)を新刊出版したことにより売上を伸ばしてまいりました。しかし第4四半期に入り新年度版の商品が出版されると、想定を超える旧年度版の商品の返品が発生しました。これは特に地図商品において顕著となっております。これにより市販出版物の売上高は64億72百万円となり、前連結累計期間に比べ8億90百万円の減少となりました。一方で、広告収入におきましては、「ことりっぷブランド」に関する売上を獲得いたしました。これにより売上高合計は前連結会計年度に比べ14億75百万円(10.6%)減少し、123億95百万円となりました。
損益面におきましては、売上高の大幅減少に加え、販売費及び一般管理費での人件費、広告宣伝費、研究開発費の増加、原価における新ガイドシリーズ創刊に伴う原価発生やカーナビ向けデータのメンテナンス費用の増加より、営業損失が9億34百万円となりました(前連結会計年度は、営業利益6億59百万円)。これに伴い、経常損失は8億87百万円となりました(前連結会計年度は、経常利益6億99百万円)。
また、カーナビゲーションの普及に加え、スマートフォンの普及や無料ナビゲーションアプリの提供、PND市場の飽和状態化等、当社グループの事業環境が大きく変化する中、地図出版物の売上減少傾向も急速となるとともに、カーナビ事業での売上も伸び悩む状況となり、当連結会計年度においては多額の営業損失を計上することとなりました。また当社グループにおける事業展開も、従来の地図情報提供を中心とするサービスから、ガイド情報提供による「おでかけサイクル事業」や「訪日観光客向けインバウンド事業」へとシフトしていく方針へと変更してきました。これに伴い「固定資産の減損に係る会計基準」及び「固定資産の減損に係る会計基準の適用指針」に基づき、当社及び連結子会社が保有する固定資産及びのれんについて、将来の回収可能性を検討した結果、特別損失として58億68百万円の減損損失を計上いたしました。減損損失の主な内訳は、データベース33億78百万円、ソフトウェア4億12百万円、土地19億27百万円、のれん1億32百万円となっております。また、それに加えて従来計上していた繰延税金資産についても、その回収可能性を検討した結果、当該繰延税金資産全額を取り崩すこととし、法人税等調整額2億15百万円を計上いたしました。これにより当期純損失は70億42百万円となりました(前連結会計年度は、当期純利益4億33百万円)。
なお、8月には今後の重要な成長事業のひとつとして位置づけてきた、海外から日本を訪れる観光客への情報提供サービスを基盤に広告収入等を獲得する「インバウンド事業」を早期に確立し、訪日旅行者向けサービスの更なる充実を実現すべく、アジア地域において多くの企業とのパイプを有するとともに、多くの事業経験を持つ、株式会社ウィズ・パートナーズと業務提携を行いました。また、9月には、その「インバウンド事業」を積極的に展開するための資金として、転換社債型新株予約権付社債を発行し10億円を調達いたしました。(詳細につきましては、8月15日リリースの「株式会社ウィズ・パートナーズとの業務提携及び第三者割当により発行される第1回無担保転換社債型新株予約権付社債の募集に関するお知らせ」をご覧ください)その成果として9月には中国初の消費者による評価や投稿などを主体とするサイトを運営する会社、Dianping社、11月には旅情報アプリ「オン・ザ・ロード」「タオ・オン・ザ・ロード」を展開する会社、Travo社とのMOU(覚書)締結も実現いたしました。また11月には訪日外国人観光客向け新サービスブランド「DiGJAPAN!(ディグジャパン)」を立ち上げるとともに、5言語(英語、中国語[簡体字、繁体字]、韓国語、タイ語)対応の観光アプリ『DiGJAPAN!』をリリースいたしました。今後も多くの有力海外企業との提携を実現し、「インバウンド事業」を大きく拡大していく予定でおります。
(3)経営成績に重要な影響を与える要因について
近年、当社グループにおきましては、従来の主力事業である出版事業では、インターネットやカーナビゲーション等情報提供媒体の多様化により、その売上高は長期下落傾向にあり、厳しい事業環境のもと業績も伸び悩む状況が続いております。今後の当社グループでの業績回復のためには、既に保有するデータベースを活用した電子事業の積極展開と事業の早期拡大が不可欠な状況にあります。しかし一方で、電子事業における事業環境自体も携帯電話からスマートフォン等への普及が急速に拡大するなど劇的に変化しており、このような市場への対応次第では、当社グループにおける今後の業績において大きく異なる結果となる可能性があります。なお、詳細なリスク等につきましては、「第2事業の状況 4 事業等のリスク」に記載しております。
(4)経営戦略の現状と見通し
近年、当社グループにおける従来の主力事業である出版事業では、依然として厳しい事業環境が続いておりますが、一方、電子事業ではスマートフォン等モバイルツールの普及拡大が急速に伸びており、新たなビジネスチャンスも多くなってきております。この様な事業環境の中、出版物連携のアプリケーション『マップルリンク』の更なる機能充実を図り出版物の売上増加を目指すとともに、連携したサービスの提供を進めてまいります。また「ことりっぷ」のブランド展開も積極的に進めてまいります。『マップルナビ』においては、PNDや軽自動車の車載カーナビゲーションへの採用等を実現してまいりました。今後さらに当社独自のガイド情報を活用したナビゲーションシステムを開発し普通車の車載カーナビゲーションへの採用を目指してまいります。また、新規事業である「インバウンド事業」は、今後の事業拡大の可能性が非常に大きい事業であると判断しており、これまでに構築してきた情報、技術をフル活用し、訪日観光客にとって利便性が高く、お得な情報を獲得できるサービスを提供し、有力海外企業と提携しそのサービスを広く普及させていきます。これにより訪日観光客に向けた情報発信を必要とする企業に対し、その機会を提供できる状況を構築します。
一方で、上記記載の新規事業や新規取り組みを積極的に展開していくためには、各種システム開発やデータベースの強化充実等の投資が必要となってきます。また海外企業との提携等も積極的に行っていく必要性もあり、それに係る投資も行っていきます。これら投資に必要となる資金は、当連結会計年度に発行した転換社債型新株予約権付社債により確保しておりますが、今後更なる資金需要が見込まれる場合は、迅速な資金調達も検討してまいります。
次期の業績におきましては、市販出版物における店頭在庫をより厳しく管理することで返品抑制を推進するとともに、上記施策により売上高を伸ばせるものと判断しております。また、新規事業に係るプロモーション費用の増加や退職給付会計における費用負担増加等はありますが、当連結会計年度に実施した減損処理の影響により、データベースの償却費負担が軽減されます。これにより、利益計上が可能となる見込みとなっております。また、中長期的な業績拡大には、当社グループ保有のコンテンツの強化充実や新しいサービスを実現するための技術の研究が重要であり、そのための積極投資は欠かせないものと判断しております。
(5)資本の財源及び資金の流動性についての分析
当連結会計年度における資産、負債、純資産及びキャッシュ・フローの状況は以下のとおりとなっております。
当連結会計年度末における資産合計は283億28百万円となり、前連結会計年度末に比べ56億64百万円(16.7%)減少いたしました。この主な要因は、現金及び預金が19億35百万円、投資有価証券が主に時価評価したことにより4億74百万円増加した一方で、主に減損損失を計上したことでデータベースが39億5百万円、無形固定資産その他(ソフトウェア等)が5億47百万円、土地が19億52百万円減少したことに加え、税効果会計における繰延税金資産を取り崩したことにより繰延税金資産(流動)が2億6百万円減少したことであります。負債合計は63億50百万円となり、前連結会計年度末に比べ13億62百万円(27.3%)増加いたしました。この主な要因は、返品調整引当金が2億8百万円減少した一方で、支払手形及び買掛金が3億7百万円、未払費用が1億34百万円、社債が10億円増加したことであります。純資産においては、利益剰余金が剰余金の配当3億32百万円及び当期純損失70億42百万円等により73億13百万円減少するとともに、その他有価証券評価差額金が4億22百万円増加、退職給付に係る調整累計額が1億35百万円減少いたしました。これにより、純資産合計は70億26百万円(24.2%)減少し、219億78百万円となりました。
この結果、自己資本比率は77.6%と7.7ポイント悪化しております。
当連結会計年度における連結ベースの現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、営業活動によるキャッシュ・フローにおいて12億10百万円の資金を獲得、投資活動によるキャッシュ・フローにおいて5億4百万円の資金を使用、財務活動によるキャッシュ・フローにおいて6億29百万円の資金を獲得した結果、その期末残高は前連結会計年度末に比べ13億35百万円の増加し、117億82百万円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次の通りであります。
営業活動によるキャッシュ・フローでは、12億10百万円の収入となりました。その主な要因は、税金等調整前当期純損失が67億67百万円であったことに加え、退職給付に係る資産の増加額が2億87百万円、返品調整引当金の減少額が2億8百万円、たな卸資産の増加額が1億13百万円であった一方で、減損損失が58億68百万円、減価償却費及びその他の償却費が12億18百万円、売上債権の減少額が10億69百万円、仕入債務の増加額が3億7百万円あったことであります。
投資活動によるキャッシュ・フローでは、5億4百万円の支出となりました。その主な要因は、有形固定資産の取得による支出が64百万円、無形固定資産の取得による支出が4億67百万円あったことであります。
財務活動によるキャッシュ・フローでは、6億29百万円の収入となりました。その主な要因は、配当金の支払額が3億32百万円あった一方で、社債発行による収入が9億91百万円あったことであります。