有価証券報告書-第125期(平成31年4月1日-令和2年3月31日)
(1)経営成績等の状況の概要
① 経営成績
当連結会計年度における当社グループの経営成績は次のとおりであります。
当社グループでは、中期経営計画『SAKAINNOVATION 2023』の経営戦略に基づき、当連結会計年度(2020年3月期)は注力分野の一つである電子材料に積極的な投資を行いました。しかしながら、当社の電子材料は米中貿易摩擦に端を発する中国景気減速により販売が低迷したほか、一部開発品においては上市時期の遅れにより減価償却負担が増加したため、利益を悪化させました。また、生産・販売数量の大きい酸化チタン、樹脂添加剤等工業製品用途についても低調に推移し、操業度低下による単位当たりの固定費上昇も利益悪化の要因となりました。
一方、米中貿易摩擦の影響の小さかった化粧品材料が好調に推移し、医療事業が復調したものの、前年並みまで利益を回復させるには至りませんでした。
また、新型コロナウイルス感染症が当連結会計年度における当社グループの経営成績に与える顕著な影響はありませんでした。
この結果、売上高は前連結会計年度比2.6%減の87,177百万円、営業利益は前連結会計年度比8.9%減の4,015百万円、経常利益は前連結会計年度比7.6%減の4,208百万円、親会社株主に帰属する当期純利益は前連結会計年度比29.7%減の2,535百万円となりました。
セグメントごとの経営成績は、以下のとおりです。
(化学事業)
売上高は前連結会計年度比3.3%減の78,555百万円となり、営業利益は前連結会計年度比11.3%減の5,614百万円となりました。
電子材料
5G時代の到来、自動車業界の先進運転支援システム(ADAS)の標準装備化とその先の自動運転の実現による電子部品の需要増加を見越し、積層セラミックコンデンサ向け誘電体(チタン酸バリウム)及び誘電体材料(高純度炭酸バリウム)の設備増強を行いました。しかし、米中貿易摩擦や中国景気減速等を背景とした在庫・生産調整の影響を受けたほか、一部開発品においては上市時期が遅れたことから、当年度の販売計画を大きく下回る結果となり、減価償却負担が増加し、売上・利益ともに減少しました。
酸化チタン・亜鉛製品
酸化チタンは、需給バランスが緩み、工業用途全般で販売が低調に推移しました。操業度低下による単位当たりの固定費が上昇したほか、当年度の修繕計画に対して費用が嵩み、売上・利益ともに減少しました。
一方、化粧品材料の超微粒子酸化チタン・酸化亜鉛は、夏季の日照不足等市場に影響を及ぼす環境変化が著しい中で、先進国に加えて新興国でのUVケア化粧品の需要増加により販売が好調に推移し、売上・利益ともに伸ばしました。
樹脂添加剤
国内においては、主力である塩ビ安定剤は成熟市場であり、管材用途及びIT関連設備用工業板用途への販売が低調に推移するとともに、製造コスト削減の体制整備に遅れも生じ、売上・利益ともに減少しました。
海外においては、当社グループの位置する東南アジアは高い成長率が見込める中で、タイ現地法人の本格稼働の遅れ等により売上は減少しましたが、コスト削減に努め利益は改善しました。
衛生材料
紙おむつ市場の競争が激化する中、売上は前年並みとなりましたが、歩留まり悪化により利益は減少しました。
有機化学品
チオ製品は、高屈折率メガネレンズが各国の経済成長に伴い伸長していることを背景に、プラスチックレンズ用途の販売が好調に推移するとともに、生産の効率化施策の効果も現れ、売上・利益ともに伸ばしました。
医薬品原薬・中間体の生産受託は、収益の大半を支えてきた主力中間体の減少を、2014年以降に立ち上がった複数原薬の伸びと顧客要望に応えたスポット生産・販売でカバーし、売上・利益ともに伸ばしました。
触 媒
ニッケル触媒は、石油樹脂の水素添加用途が供給過多で数量及び価格等厳しい状況が継続する中で、主要顧客の定期修繕に伴う在庫調整が影響するとともに、効率的な生産体制の構築が遅れていることにより、売上・利益ともに減少しました。
脱硝触媒は、国内取替需要や韓国向け新規受注を獲得できましたが、前年度好調であった中国向け販売の大幅な減少を補えず、売上・利益ともに減少しました。
受託加工
加工顔料については、生産の効率化を目的に2019年にマスターバッチ工場棟を建設しました。しかし、新工場での生産品が伸び悩むとともに、浴用剤向けが低調に推移し、生産調整を行ったため、売上・利益ともに減少しました。
焼成、混合、乾燥等の工程受託については、生産工場及び保管倉庫の建設を進めましたが、収益性の高い受託品が減少したことにより、売上・利益ともに減少しました。
(医療事業)
売上高は前連結会計年度比4.1%増の8,621百万円となり、営業利益は前連結会計年度比57.8%増の594百万円となりました。
医療用医薬品
バリウム造影剤は、2016年度厚生労働省発出の「がん検診実施のためのガイドライン」による受診間隔の延長及び受診年齢の引き上げ、胃内視鏡検査への移行等厳しい環境のもと、大口検診機関のニーズ対応を強化して市場シェア拡大に努めました。その結果、国内販売の縮小を最小限にとどめるとともに、韓国・台湾への輸出を増加させ、売上・利益ともに前年並みとなりました。
消化性潰瘍・逆流性食道炎治療薬「アルロイドG」は、薬価引き下げの影響はあるものの、後発品メーカーの撤退により需要が戻り、売上・利益ともに伸ばしました。
医療機器
内視鏡洗浄消毒器は、機器本体の販売台数は伸び悩みましたが、メンテナンス契約獲得や消耗品販売が堅調に推移し、売上・利益ともに伸ばしました。
また、新規製品としてアルギン酸ナトリウムを原料とする内視鏡手術用粘膜下注入材「リフタルK」、及び注入材用穿刺針「リフテインニードル」を2019年6月に上市し、売上に一部寄与しました。
一般用医薬品・その他
かぜ薬「改源」等一般用医薬品は、量販店主導の国内市場は伸びが止まった状況である中、組織体制の見直し、不採算品目の整理により、売上は減少しましたが、利益は改善しました。
新規事業として位置付けている美容医療機関向けのサプリ事業は拡大基調であり、2019年3月にリニューアルした紫外線対策サプリメント「ソルプロ」シリーズが好調に推移しました。加えて、12月には、アートネイチャー株式会社向けのミノキシジル製剤(OEM商品)を発売開始したことも、売上に一部寄与しました。
② 財政状態
当連結会計年度における当社グループの財政状態は次のとおりであります。
(資産)
当連結会計年度末における総資産は121,648百万円となり、前連結会計年度末に比べ1,566百万円増加いたしました。
主な増減項目として、流動資産においては、現金及び預金が2,084百万円、受取手形及び売掛金が2,463百万円それぞれ減少し、商品及び製品が1,673百万円、原材料及び貯蔵品が694百万円それぞれ増加いたしました。また、固定資産においては有形固定資産が5,398百万円増加、投資有価証券が1,311百万円減少いたしました。
・現金及び預金の減少の主要因は、グループ内キャッシュマネージメントシステム導入によるグループ内資金の効率的な運用の結果によるものです。
・増加しているたな卸資産水準につきましては、それぞれの事業における適正在庫水準だけでなく新型コロナウイルスの影響による不安定な社会情勢等を考慮しながら、引き続き管理を徹底してまいります。
・有形固定資産の大幅な増加は電子材料事業関連設備増強を中心とした旺盛な設備投資によるものです。
・投資有価証券の減少の主要因は期末時価の下落によるものです。
(負債)
当連結会計年度末における負債合計は40,156百万円となり、前連結会計年度末に比べ365百万円増加いたしました。
主な増減項目は長期及び短期借入金の純増額629百万円となっております。
・純増額の主要因としては、長期借入金の新規借入1,500百万円及び約定弁済を含む返済1,031百万円の差額468百万円です。
(純資産)
当連結会計年度末における純資産合計は81,492百万円となり、前連結会計年度末に比べ1,201百万円増加いたしました。この結果、自己資本比率は64.4%(前連結会計年度末は64.3%)となりました。
主な増減項目として、利益剰余金が1,863百万円増加し、その他有価証券評価差額金が912百万円減少いたしました。
・利益剰余金の増加の要因は、親会社株主に帰属する当期純利益2,535百万円から剰余金の配当672百万円を控除したものです。
・その他投資有価証券評価差額金の減少の主要因は、保有している投資有価証券の期末時価が下落したことによるものであります。
③ キャッシュ・フロー
当連結会計年度における当社グループの財政状態は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度において、営業活動によるキャッシュ・フローは6,454百万円と前連結会計年度に比べ3,698百万円増加いたしました。これは、主に税金等調整前当期純利益が1,239百万円減少したものの、売上債権の増減額による要因で2,446百万円、法人税等の支払額による要因で1,141百万円及びその他の要因で1,701百万円それぞれ増加したことによるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度において、投資活動によるキャッシュ・フローは△8,424百万円と前連結会計年度に比べ2,966百万円減少いたしました。これは、主に有形固定資産取得による要因で1,511百万円、前連結会計年度にあった有形固定資産売却がなくなった要因で1,499百万円それぞれ減少したことによるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度において、財務活動によるキャッシュ・フローは△68百万円と前連結会計年度に比べ132百万円減少しました。これは、主に長期及び短期借入れが減少したことによる要因で2,318百万円減少したものの、前連結会計年度にあった自己株式取得がなくなった要因で2,000百万円増加したことによるものです。
以上の結果、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は9,148百万円となりました。
④ 生産、受注及び販売の実績
(生産実績)
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注)1 金額は、販売価格によっており、セグメント間の取引については相殺消去しております。
2 セグメント別の生産高を正確に把握することは困難なため、概算値で表示しております。
3 上記金額には、消費税等は含まれておりません。
(受注実績)
当社グループの主要製品については主に見込み生産を行っております。
(販売実績)
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注)1 セグメント間の取引については相殺消去しております。
2 主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は、いずれの相手先についても当該割合が100分の10未満のため記載を省略しております。
3 上記金額には、消費税等は含まれておりません。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
① 経営成績の分析
経営成績の分析については、「(1)経営成績等の状況の概要 ①経営成績」に記載しています。
② 財政状態の分析
財政状態の分析については、「(1)経営成績等の状況の概要 ②財政状態」に記載しています。
③ キャッシュ・フローの状況分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
キャッシュ・フローの状況については、「(1)経営成績等の状況の概要 ③キャッシュ・フロー」に記載しています。
グループの資金調達については堺商事及び一部の借り入れを除き、当社にて一括調達し、グループファイナンスにて関係会社へ必要な資金を供与しています。
調達方法は取引金融機関が組成するシンジケート団によるコミットメントラインからの短期運転資金と個別取引金融機関からの長期設備資金融資の2種類であります。近時は旺盛な設備投資によるキャッシュ・フロー不足分を補うための長期借り入れを増やしており、当面この傾向は続くものと考えます。現時点では、安定的な財務基盤を背景に取引金融機関の当社に対する融資姿勢に変化なく、スムーズな資金調達を実施しております。
一方、本年2月に堺商事及び海外子会社を除く国内関係会社を結んだグループキャッシュマネジメントサービスを導入し、グループ各社の流動預金を当社に集中、グループとしての資金効率アップに取り組んでおります。
また、当連結会計年度末における短期借入金の残高は9,238百万円、長期借入金の残高は8,918百万円、現金及び現金同等物の残高は9,148百万円となっております。
④ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づいて作成しております。この連結財務諸表の作成にあたって、様々な会計上の見積りを行っており、新型コロナウイルスの感染拡大の影響を考慮しております。当該事象はわが国経済に与える影響は大きいものの、当社グループは多様な用途に使用される製品を製造販売しており、また、主要得意先で全面的な営業停止など深刻な事態に陥っている得意先もないことから、当社グループに与える影響は限定的であり、半年から1年程度停滞した後、緩やかに回復すると仮定して、会計上の見積りを行っております。
当社グループの財政状態及び経営成績に重要な影響を与える会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定は以下のとおりです。
1.棚卸資産の評価
当社グループでは棚卸資産の評価に関して、取得原価を基礎としながら、期末における正味売却価額が取得原価よりも下落している場合には、正味売却価額をもって貸借対照表価額としております。正味売却価額は、直近の販売実績による単価が当面継続すると仮定し、販売単価から販売に要する経費を控除した金額として見積もっております。
また、営業循環過程から外れた滞留棚卸資産については、滞留品の処分・販売状況がこれまでと大きく変わらないと仮定し、過去の処分・販売実績をもとに見込まれる損失額を見積もっております。
新型コロナウイルスの影響が想定よりも深刻であった場合でも、随時販売状況を見ながら生産調整を行っておりますので、滞留棚卸資産が急激に増加することはないと考えております。販売単価の下落に関しても、当社グループは多岐にわたる製品を製造販売しており、影響は限定的であると考えております。
2.固定資産の減損会計
当社グループでは資産又は資産グループの収益性が低下し、帳簿価額が回収不能となるような兆候がある場合に、当該資産又は資産グループの回収可能額(正味売却価額と使用価値のいずれか高い方)を見積り、回収可能額が帳簿価額を下回っていた場合は、減損損失を計上しております。
減損の兆候の有無については、上述した新型コロナウイルスの影響に関する仮定のもとで判断しております。また、回収可能額に関する見積りで、当連結会計年度において重要なものはありませんでした。
新型コロナウイルスの影響が想定よりも深刻であった場合、事業の一部を休止又は廃止するような事態になれば、重要な減損損失が発生する可能性があります。
3.有価証券の減損処理
有価証券の減損にあたっては、回復可能性があると認められる場合を除き、連結会計年度末の時価が取得価額より50%以上下落した場合に行うこととしております。
また、連結会計年度末における時価が取得価額より30%以上50%未満下落した場合にも、対象銘柄の過去の株価推移等を検討し総合的に判断した上で、減損処理を行うこととしております。
回復可能性の判定にあたっては、上述した新型コロナウイルスの影響に関する仮定のもと、急激な景気後退や市況の変動がなく、株価は緩やかに推移すると仮定して判断しております。
新型コロナウイルスの影響が想定よりも深刻であった場合でも、回収可能性の判定を行った有価証券は金額的に重要ではありませんので、当社グループの経営成績に与える影響は限定的であります。
4.退職給付引当金
当社では退職給付引当金は、退職金制度ごとに退職給付債務の期末残高から年金資産の期末残高を控除して計算しております。退職給付債務及び費用は、割引率、退職率、予想昇給率などの計算基礎を見積り、年金数理計算により計算しております。割引率は、期末における優良社債の利回りに基づき決定しております。割引率が低下した場合、退職給付債務が増加しますが、数理計算上の差異として発生の翌連結会計年度から一定の年数(5年)による定額法で費用処理されます。また、退職率、予想昇給率は当社の過去の実績をもとに、今後も同様の推移が継続すると仮定して決定しております。
年金資産は期待運用収益率を見積り、退職給付費用の計算に反映させております。期待運用収益率は、金融市場が比較的安定しており、過去の運用実績が今後も継続すると仮定して決定しております。実際の運用実績が期待運用収益率を下回った場合、割引率の低下と同様、数理計算上の差異が発生しますが、発生の翌連結会計年度から一定の年数(5年)による定額法で費用処理されます。
新型コロナウイルスの影響が想定よりも深刻であった場合でも、上述のとおり数理計算上の差異は5年で費用処理されますので、当社グループの経営成績に与える影響は限定的であります。
5.繰延税金資産の回収可能性
当社グループでは将来減算一時差異及び税務上の繰越欠損金のうち、将来の税金負担額を軽減する可能性が高い部分について繰延税金資産を計上しております。
繰延税金資産の回収可能性の見積りは、毎連結会計年度見直しておりますが、当連結会計年度末においては、上述した新型コロナウイルスの影響に関する仮定のもとで判断しております。将来に関する予測であるため、予期しえない事象が生じた場合は、繰延税金資産を取崩す可能性があります。
新型コロナウイルスの影響が想定よりも深刻であった場合、他の会計上の見積りと相まって繰延税金資産の回収可能性に疑義が生じ、多額の繰延税金資産を取崩すことになれば、当社グループの経営成績に重要な影響を及ぼす可能性があります。
(3)経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当連結会計年度における中期経営計画『SAKAINNOVATION 2023』の達成状況は次のとおりであります。
① 経営成績
当連結会計年度における当社グループの経営成績は次のとおりであります。
2020年3月期 | 前期比 | |
売上高(百万円) | 87,177 | △2.6% |
営業利益(百万円) | 4,015 | △8.9% |
経常利益(百万円) | 4,208 | △7.6% |
親会社株主に帰属する当期純利益(百万円) | 2,535 | △29.7% |
当社グループでは、中期経営計画『SAKAINNOVATION 2023』の経営戦略に基づき、当連結会計年度(2020年3月期)は注力分野の一つである電子材料に積極的な投資を行いました。しかしながら、当社の電子材料は米中貿易摩擦に端を発する中国景気減速により販売が低迷したほか、一部開発品においては上市時期の遅れにより減価償却負担が増加したため、利益を悪化させました。また、生産・販売数量の大きい酸化チタン、樹脂添加剤等工業製品用途についても低調に推移し、操業度低下による単位当たりの固定費上昇も利益悪化の要因となりました。
一方、米中貿易摩擦の影響の小さかった化粧品材料が好調に推移し、医療事業が復調したものの、前年並みまで利益を回復させるには至りませんでした。
また、新型コロナウイルス感染症が当連結会計年度における当社グループの経営成績に与える顕著な影響はありませんでした。
この結果、売上高は前連結会計年度比2.6%減の87,177百万円、営業利益は前連結会計年度比8.9%減の4,015百万円、経常利益は前連結会計年度比7.6%減の4,208百万円、親会社株主に帰属する当期純利益は前連結会計年度比29.7%減の2,535百万円となりました。
セグメントごとの経営成績は、以下のとおりです。
(化学事業)
売上高は前連結会計年度比3.3%減の78,555百万円となり、営業利益は前連結会計年度比11.3%減の5,614百万円となりました。
電子材料
5G時代の到来、自動車業界の先進運転支援システム(ADAS)の標準装備化とその先の自動運転の実現による電子部品の需要増加を見越し、積層セラミックコンデンサ向け誘電体(チタン酸バリウム)及び誘電体材料(高純度炭酸バリウム)の設備増強を行いました。しかし、米中貿易摩擦や中国景気減速等を背景とした在庫・生産調整の影響を受けたほか、一部開発品においては上市時期が遅れたことから、当年度の販売計画を大きく下回る結果となり、減価償却負担が増加し、売上・利益ともに減少しました。
酸化チタン・亜鉛製品
酸化チタンは、需給バランスが緩み、工業用途全般で販売が低調に推移しました。操業度低下による単位当たりの固定費が上昇したほか、当年度の修繕計画に対して費用が嵩み、売上・利益ともに減少しました。
一方、化粧品材料の超微粒子酸化チタン・酸化亜鉛は、夏季の日照不足等市場に影響を及ぼす環境変化が著しい中で、先進国に加えて新興国でのUVケア化粧品の需要増加により販売が好調に推移し、売上・利益ともに伸ばしました。
樹脂添加剤
国内においては、主力である塩ビ安定剤は成熟市場であり、管材用途及びIT関連設備用工業板用途への販売が低調に推移するとともに、製造コスト削減の体制整備に遅れも生じ、売上・利益ともに減少しました。
海外においては、当社グループの位置する東南アジアは高い成長率が見込める中で、タイ現地法人の本格稼働の遅れ等により売上は減少しましたが、コスト削減に努め利益は改善しました。
衛生材料
紙おむつ市場の競争が激化する中、売上は前年並みとなりましたが、歩留まり悪化により利益は減少しました。
有機化学品
チオ製品は、高屈折率メガネレンズが各国の経済成長に伴い伸長していることを背景に、プラスチックレンズ用途の販売が好調に推移するとともに、生産の効率化施策の効果も現れ、売上・利益ともに伸ばしました。
医薬品原薬・中間体の生産受託は、収益の大半を支えてきた主力中間体の減少を、2014年以降に立ち上がった複数原薬の伸びと顧客要望に応えたスポット生産・販売でカバーし、売上・利益ともに伸ばしました。
触 媒
ニッケル触媒は、石油樹脂の水素添加用途が供給過多で数量及び価格等厳しい状況が継続する中で、主要顧客の定期修繕に伴う在庫調整が影響するとともに、効率的な生産体制の構築が遅れていることにより、売上・利益ともに減少しました。
脱硝触媒は、国内取替需要や韓国向け新規受注を獲得できましたが、前年度好調であった中国向け販売の大幅な減少を補えず、売上・利益ともに減少しました。
受託加工
加工顔料については、生産の効率化を目的に2019年にマスターバッチ工場棟を建設しました。しかし、新工場での生産品が伸び悩むとともに、浴用剤向けが低調に推移し、生産調整を行ったため、売上・利益ともに減少しました。
焼成、混合、乾燥等の工程受託については、生産工場及び保管倉庫の建設を進めましたが、収益性の高い受託品が減少したことにより、売上・利益ともに減少しました。
(医療事業)
売上高は前連結会計年度比4.1%増の8,621百万円となり、営業利益は前連結会計年度比57.8%増の594百万円となりました。
医療用医薬品
バリウム造影剤は、2016年度厚生労働省発出の「がん検診実施のためのガイドライン」による受診間隔の延長及び受診年齢の引き上げ、胃内視鏡検査への移行等厳しい環境のもと、大口検診機関のニーズ対応を強化して市場シェア拡大に努めました。その結果、国内販売の縮小を最小限にとどめるとともに、韓国・台湾への輸出を増加させ、売上・利益ともに前年並みとなりました。
消化性潰瘍・逆流性食道炎治療薬「アルロイドG」は、薬価引き下げの影響はあるものの、後発品メーカーの撤退により需要が戻り、売上・利益ともに伸ばしました。
医療機器
内視鏡洗浄消毒器は、機器本体の販売台数は伸び悩みましたが、メンテナンス契約獲得や消耗品販売が堅調に推移し、売上・利益ともに伸ばしました。
また、新規製品としてアルギン酸ナトリウムを原料とする内視鏡手術用粘膜下注入材「リフタルK」、及び注入材用穿刺針「リフテインニードル」を2019年6月に上市し、売上に一部寄与しました。
一般用医薬品・その他
かぜ薬「改源」等一般用医薬品は、量販店主導の国内市場は伸びが止まった状況である中、組織体制の見直し、不採算品目の整理により、売上は減少しましたが、利益は改善しました。
新規事業として位置付けている美容医療機関向けのサプリ事業は拡大基調であり、2019年3月にリニューアルした紫外線対策サプリメント「ソルプロ」シリーズが好調に推移しました。加えて、12月には、アートネイチャー株式会社向けのミノキシジル製剤(OEM商品)を発売開始したことも、売上に一部寄与しました。
② 財政状態
当連結会計年度における当社グループの財政状態は次のとおりであります。
当連結会計年度末 2020年3月末 | 前連結会計年度末 増減 | |
総資産(百万円) | 121,648 | 1,566 |
負債合計(百万円) | 40,156 | 365 |
純資産合計(百万円) | 81,492 | 1,201 |
自己資本比率 | 64.4% | 0.1ポイント |
(資産)
当連結会計年度末における総資産は121,648百万円となり、前連結会計年度末に比べ1,566百万円増加いたしました。
主な増減項目として、流動資産においては、現金及び預金が2,084百万円、受取手形及び売掛金が2,463百万円それぞれ減少し、商品及び製品が1,673百万円、原材料及び貯蔵品が694百万円それぞれ増加いたしました。また、固定資産においては有形固定資産が5,398百万円増加、投資有価証券が1,311百万円減少いたしました。
・現金及び預金の減少の主要因は、グループ内キャッシュマネージメントシステム導入によるグループ内資金の効率的な運用の結果によるものです。
・増加しているたな卸資産水準につきましては、それぞれの事業における適正在庫水準だけでなく新型コロナウイルスの影響による不安定な社会情勢等を考慮しながら、引き続き管理を徹底してまいります。
・有形固定資産の大幅な増加は電子材料事業関連設備増強を中心とした旺盛な設備投資によるものです。
・投資有価証券の減少の主要因は期末時価の下落によるものです。
(負債)
当連結会計年度末における負債合計は40,156百万円となり、前連結会計年度末に比べ365百万円増加いたしました。
主な増減項目は長期及び短期借入金の純増額629百万円となっております。
・純増額の主要因としては、長期借入金の新規借入1,500百万円及び約定弁済を含む返済1,031百万円の差額468百万円です。
(純資産)
当連結会計年度末における純資産合計は81,492百万円となり、前連結会計年度末に比べ1,201百万円増加いたしました。この結果、自己資本比率は64.4%(前連結会計年度末は64.3%)となりました。
主な増減項目として、利益剰余金が1,863百万円増加し、その他有価証券評価差額金が912百万円減少いたしました。
・利益剰余金の増加の要因は、親会社株主に帰属する当期純利益2,535百万円から剰余金の配当672百万円を控除したものです。
・その他投資有価証券評価差額金の減少の主要因は、保有している投資有価証券の期末時価が下落したことによるものであります。
③ キャッシュ・フロー
当連結会計年度における当社グループの財政状態は次のとおりであります。
2020年3月期 | 前期増減 | |
営業活動によるキャッシュ・フロー(百万円) | 6,454 | 3,698 |
投資活動によるキャッシュ・フロー(百万円) | △8,424 | △2,966 |
財務活動によるキャッシュ・フロー(百万円) | △68 | △132 |
現金及び現金同等物の増減額(百万円) | △2,026 | 646 |
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度において、営業活動によるキャッシュ・フローは6,454百万円と前連結会計年度に比べ3,698百万円増加いたしました。これは、主に税金等調整前当期純利益が1,239百万円減少したものの、売上債権の増減額による要因で2,446百万円、法人税等の支払額による要因で1,141百万円及びその他の要因で1,701百万円それぞれ増加したことによるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度において、投資活動によるキャッシュ・フローは△8,424百万円と前連結会計年度に比べ2,966百万円減少いたしました。これは、主に有形固定資産取得による要因で1,511百万円、前連結会計年度にあった有形固定資産売却がなくなった要因で1,499百万円それぞれ減少したことによるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度において、財務活動によるキャッシュ・フローは△68百万円と前連結会計年度に比べ132百万円減少しました。これは、主に長期及び短期借入れが減少したことによる要因で2,318百万円減少したものの、前連結会計年度にあった自己株式取得がなくなった要因で2,000百万円増加したことによるものです。
以上の結果、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は9,148百万円となりました。
④ 生産、受注及び販売の実績
(生産実績)
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称 | 金額(百万円) | 前連結会計年度比(%) |
化学 | 50,743 | △4.0 |
医療 | 3,611 | △8.8 |
合計 | 54,354 | △4.3 |
(注)1 金額は、販売価格によっており、セグメント間の取引については相殺消去しております。
2 セグメント別の生産高を正確に把握することは困難なため、概算値で表示しております。
3 上記金額には、消費税等は含まれておりません。
(受注実績)
当社グループの主要製品については主に見込み生産を行っております。
(販売実績)
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称 | 金額(百万円) | 前連結会計年度比(%) |
化学 | 78,555 | △3.3 |
医療 | 8,621 | 4.1 |
合計 | 87,177 | △2.6 |
(注)1 セグメント間の取引については相殺消去しております。
2 主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は、いずれの相手先についても当該割合が100分の10未満のため記載を省略しております。
3 上記金額には、消費税等は含まれておりません。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
① 経営成績の分析
経営成績の分析については、「(1)経営成績等の状況の概要 ①経営成績」に記載しています。
② 財政状態の分析
財政状態の分析については、「(1)経営成績等の状況の概要 ②財政状態」に記載しています。
③ キャッシュ・フローの状況分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
キャッシュ・フローの状況については、「(1)経営成績等の状況の概要 ③キャッシュ・フロー」に記載しています。
グループの資金調達については堺商事及び一部の借り入れを除き、当社にて一括調達し、グループファイナンスにて関係会社へ必要な資金を供与しています。
調達方法は取引金融機関が組成するシンジケート団によるコミットメントラインからの短期運転資金と個別取引金融機関からの長期設備資金融資の2種類であります。近時は旺盛な設備投資によるキャッシュ・フロー不足分を補うための長期借り入れを増やしており、当面この傾向は続くものと考えます。現時点では、安定的な財務基盤を背景に取引金融機関の当社に対する融資姿勢に変化なく、スムーズな資金調達を実施しております。
一方、本年2月に堺商事及び海外子会社を除く国内関係会社を結んだグループキャッシュマネジメントサービスを導入し、グループ各社の流動預金を当社に集中、グループとしての資金効率アップに取り組んでおります。
また、当連結会計年度末における短期借入金の残高は9,238百万円、長期借入金の残高は8,918百万円、現金及び現金同等物の残高は9,148百万円となっております。
④ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づいて作成しております。この連結財務諸表の作成にあたって、様々な会計上の見積りを行っており、新型コロナウイルスの感染拡大の影響を考慮しております。当該事象はわが国経済に与える影響は大きいものの、当社グループは多様な用途に使用される製品を製造販売しており、また、主要得意先で全面的な営業停止など深刻な事態に陥っている得意先もないことから、当社グループに与える影響は限定的であり、半年から1年程度停滞した後、緩やかに回復すると仮定して、会計上の見積りを行っております。
当社グループの財政状態及び経営成績に重要な影響を与える会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定は以下のとおりです。
1.棚卸資産の評価
当社グループでは棚卸資産の評価に関して、取得原価を基礎としながら、期末における正味売却価額が取得原価よりも下落している場合には、正味売却価額をもって貸借対照表価額としております。正味売却価額は、直近の販売実績による単価が当面継続すると仮定し、販売単価から販売に要する経費を控除した金額として見積もっております。
また、営業循環過程から外れた滞留棚卸資産については、滞留品の処分・販売状況がこれまでと大きく変わらないと仮定し、過去の処分・販売実績をもとに見込まれる損失額を見積もっております。
新型コロナウイルスの影響が想定よりも深刻であった場合でも、随時販売状況を見ながら生産調整を行っておりますので、滞留棚卸資産が急激に増加することはないと考えております。販売単価の下落に関しても、当社グループは多岐にわたる製品を製造販売しており、影響は限定的であると考えております。
2.固定資産の減損会計
当社グループでは資産又は資産グループの収益性が低下し、帳簿価額が回収不能となるような兆候がある場合に、当該資産又は資産グループの回収可能額(正味売却価額と使用価値のいずれか高い方)を見積り、回収可能額が帳簿価額を下回っていた場合は、減損損失を計上しております。
減損の兆候の有無については、上述した新型コロナウイルスの影響に関する仮定のもとで判断しております。また、回収可能額に関する見積りで、当連結会計年度において重要なものはありませんでした。
新型コロナウイルスの影響が想定よりも深刻であった場合、事業の一部を休止又は廃止するような事態になれば、重要な減損損失が発生する可能性があります。
3.有価証券の減損処理
有価証券の減損にあたっては、回復可能性があると認められる場合を除き、連結会計年度末の時価が取得価額より50%以上下落した場合に行うこととしております。
また、連結会計年度末における時価が取得価額より30%以上50%未満下落した場合にも、対象銘柄の過去の株価推移等を検討し総合的に判断した上で、減損処理を行うこととしております。
回復可能性の判定にあたっては、上述した新型コロナウイルスの影響に関する仮定のもと、急激な景気後退や市況の変動がなく、株価は緩やかに推移すると仮定して判断しております。
新型コロナウイルスの影響が想定よりも深刻であった場合でも、回収可能性の判定を行った有価証券は金額的に重要ではありませんので、当社グループの経営成績に与える影響は限定的であります。
4.退職給付引当金
当社では退職給付引当金は、退職金制度ごとに退職給付債務の期末残高から年金資産の期末残高を控除して計算しております。退職給付債務及び費用は、割引率、退職率、予想昇給率などの計算基礎を見積り、年金数理計算により計算しております。割引率は、期末における優良社債の利回りに基づき決定しております。割引率が低下した場合、退職給付債務が増加しますが、数理計算上の差異として発生の翌連結会計年度から一定の年数(5年)による定額法で費用処理されます。また、退職率、予想昇給率は当社の過去の実績をもとに、今後も同様の推移が継続すると仮定して決定しております。
年金資産は期待運用収益率を見積り、退職給付費用の計算に反映させております。期待運用収益率は、金融市場が比較的安定しており、過去の運用実績が今後も継続すると仮定して決定しております。実際の運用実績が期待運用収益率を下回った場合、割引率の低下と同様、数理計算上の差異が発生しますが、発生の翌連結会計年度から一定の年数(5年)による定額法で費用処理されます。
新型コロナウイルスの影響が想定よりも深刻であった場合でも、上述のとおり数理計算上の差異は5年で費用処理されますので、当社グループの経営成績に与える影響は限定的であります。
5.繰延税金資産の回収可能性
当社グループでは将来減算一時差異及び税務上の繰越欠損金のうち、将来の税金負担額を軽減する可能性が高い部分について繰延税金資産を計上しております。
繰延税金資産の回収可能性の見積りは、毎連結会計年度見直しておりますが、当連結会計年度末においては、上述した新型コロナウイルスの影響に関する仮定のもとで判断しております。将来に関する予測であるため、予期しえない事象が生じた場合は、繰延税金資産を取崩す可能性があります。
新型コロナウイルスの影響が想定よりも深刻であった場合、他の会計上の見積りと相まって繰延税金資産の回収可能性に疑義が生じ、多額の繰延税金資産を取崩すことになれば、当社グループの経営成績に重要な影響を及ぼす可能性があります。
(3)経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当連結会計年度における中期経営計画『SAKAINNOVATION 2023』の達成状況は次のとおりであります。
第121期 | 第122期 | 第123期 | 第124期 | 第125期 | |
営業利益(百万円) | 4,615 | 4,551 | 4,690 | 4,404 | 4,015 |
営業利益率(%) | 5.4 | 5.4 | 5.4 | 4.9 | 4.6 |
ROE(%) | 3.0 | 2.6 | 3.0 | 4.6 | 3.3 |