有価証券報告書-第129期(2023/04/01-2024/03/31)

【提出】
2024/06/26 15:01
【資料】
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【項目】
156項目
(1)経営成績等の状況の概要
① 経営成績
当連結会計年度における当社グループの経営成績は次のとおりであります。
2024年3月期前連結会計年度比
売上高(百万円)82,105△2.1%
営業利益(百万円)2,942△33.2%
経常利益(百万円)3,066△36.8%
親会社株主に帰属する当期純損失(△)(百万円)△7,092-

当社グループは、2019年にスタートさせた中期経営計画『SAKAINNOVATION 2023』の数値目標達成と持続的成長を目指して取り組んでまいりましたが、最終年度の数値目標は達成することができませんでした。
化学事業は、原燃料価格の高止まり、中国の景気減退等の影響を受けました。成長事業である電子材料は、PC、スマートフォンといった民生品の需要回復が低調に推移し、在庫調整はある程度進んだものの、誘電体、誘電体材料の販売は緩やかな回復にとどまりました。また、他のセグメントにおいても、景気低迷の影響で販売数量が伸びず、製造コストの上昇をもたらしました。
一方の、UVケアおよびメイク関連向けの化粧品材料は、国内向けは回復基調にあるものの、欧米での在庫調整や中国の景気減退の影響を受けました。
また、医薬品原薬・中間体、プラスチックレンズ向け製品などの有機化学品は、景気減退の影響を受けにくく、引き続き堅調に推移しました。
医療事業については、昨年度に続き、新型コロナ感染拡大による行動制限の影響が長引いたことに加え薬価改定の影響も受け、昨年同様の厳しい業績となりました。
加えて、減損の兆候が認められる一部の固定資産の減損処理を行った結果、6,661百万円を減損損失として計上いたしました。
この結果、売上高は前連結会計年度比2.1%減の82,105百万円、営業利益は前連結会計年度比33.2%減の2,942百万円、経常利益は前連結会計年度比36.8%減の3,066百万円、親会社株主に帰属する当期純損失は7,092百万円となりました。
セグメントの業績は以下のとおりです。
なお、各セグメントの営業利益は全社費用等調整前の金額であります。
(化学事業)
売上高は前連結会計年度比2.5%減の74,110百万円となり、営業利益は前連結会計年度比20.2%減の5,083百万円となりました。
電子材料(成長事業)
誘電体材料(高純度炭酸バリウム)と誘電体(チタン酸バリウム)は市況の悪化に伴うMLCCの在庫調整に伴い、売上数量は減少したものの、価格改定の実施効果もあり、売上高については前年並みの水準となりました。
化粧品材料(成長事業)
UVケア化粧品材料の超微粒子酸化亜鉛・酸化チタンは、欧米での在庫調整や中国の景気後退の影響で、売上高・利益ともに減少しました。
酸化チタン・亜鉛製品(効率化検討事業)
酸化チタンは、期初では海外安価品の流入により価格改定が進まなかったことおよび工場設備の火災トラブルなどから、採算性が悪化しました。しかしながら、期中から副産物および二次加工品も含めた値上げを推進し、採算性が改善しました。
亜鉛製品は、一部製品で採算是正を実施しましたが、販売数量の減少、国内亜鉛建値の相場下落により売上高は減少しました。
樹脂添加剤(効率化検討事業)
国内向けにおいては、塩ビ用安定剤のうち、住宅、IT向けが低調で売上高・利益ともに減少しました。原材料高騰に対応すべく価格改定を実施した結果、下期からは収益が改善してきましたが、年間を通しては売上高・利益とも減少しました。
海外においては、中国向け製品は住宅関連の景気低迷で、売上高・利益ともに減少しました。一方、東南アジア向け製品は、市場成長率は鈍化しているものの、新規拡販により出荷量は増加しました。また価格改定実施効果もあり、売上高は前年並みの水準を維持し、利益は増加しました。
衛生材料(安定事業)
日本国内では円安による輸入商材の競争力低下に苦戦し、海外でも物資高騰下のオムツ市況の停滞感によって販売数量は伸び悩んだものの、製造収率の改善や物流コスト削減等により利益は増加しました。
有機化学品(安定事業)
有機イオウ製品については、販売は安定しており、また円安効果から販売価格が上昇し、売上高は微増しました。しかし利益は、原燃料高騰の影響を受け減少しました。有機リン製品については、原燃料価格の高騰分の価格転嫁に取り組みましたが、時期が遅れ、収益を圧迫しました。
医薬品原薬・中間体の生産受託は、開発品のスポット生産・販売はあったものの、主力中間体の販売量の減少、受託製品の原価率の違いや、原燃料の高騰により、売上高・利益ともに減少しました。
触 媒(効率化検討事業)
水添石油樹脂向けなどで使用されるニッケル触媒は、主要顧客の定期修理の影響もあり出荷数量は減少しましたが、価格改定を進めたこともあり、利益は増加しました。
火力発電所やごみ焼却施設で使用される脱硝触媒は、前年にあった大型の海外のごみ焼却施設向け案件が一服し、出荷数量が減少したため、売上高・利益ともに減少しました。
受託加工(安定事業)
建材用途やOA機器関連の需要減少、浴用剤の販売不振などの影響もありましたが、自動車関連については既存製品が堅調に推移したこと等により、売上高は前年並みの水準を維持しました。
混合、濾過水洗、乾燥、焼成等の工程受託については、大口顧客の販売数量の減少により売上高が減少しましたが、多方面の事業分野の新規受託案件が増加し、収益が回復しました。
(医療事業)
売上高は前連結会計年度比1.6%増の7,995百万円となりましたが、営業利益は前連結会計年度比68.1%減の86百万円となりました。
医療用医薬品
バリウム造影剤は、2016年度厚生労働省発出の「がん検診実施のためのガイドライン」による受診間隔の延長および受診年齢の引き上げ、胃内視鏡検査への移行等厳しい環境のもと、大口検診機関のニーズ対応を強化して市場シェア拡大に努め、国内販売の減少を最小限にとどめるとともに、韓国・台湾への輸出を強化しました。新型コロナウイルスの5類感染症指定後も検診者数は完全には回復せず、また品質問題による他社移行や原材料の高騰により、売上高・利益ともに減少しました。
消化性潰瘍用剤「アルロイドG」は薬価引き下げ、販売数量の減少により売上高が減少、加えて原材料の高騰の影響を受け、利益も減少しました。
医療機器
半導体不足が解消し、機器本体の生産は計画通り推移しました。納入実績はリニューアル機の投入効果もあり、売上高が大きく増加しました。
また内視鏡手術用の粘膜下注入材「リフタルK」は、売上高が増加しました。
一般用医薬品・その他
医療用医薬品の供給不足を受け、一般用医薬品である「改源」を含む咳止め薬等が好調に推移し、売上高・利益ともに増加しました。
新規事業として位置付けている美容医療機関向けのサプリ事業は引き続き好調で、売上高・利益ともに増加しました。
認知症予防の機能性表示食品素材である「タモギ茸エキス(エルゴチオネイン)」の製造受託の売上高は減少しました。
② 財政状態
当連結会計年度における当社グループの財政状態は次のとおりであります。
当連結会計年度末
2024年3月末
前連結会計年度末 増減
総資産(百万円)125,445△2,576
負債合計(百万円)49,9786,674
純資産合計(百万円)75,466△9,251
自己資本比率59.3%△3.6ポイント

(資産)
当連結会計年度末における総資産は125,445百万円となり、前連結会計年度末に比べ2,576百万円減少いたしました。
主な増減項目として、流動資産においては、現金及び預金が4,180百万円、受取手形及び売掛金が2,015百万円、それぞれ増加いたしました。また、固定資産においては機械装置及び運搬具が2,440百万円、建物及び構築物が1,575百万円それぞれ減少いたしました。
・現金及び預金の増加は、運転資金の借入を行ったことによるものです。
・売上債権の増加は、販売不振により前連結会計年度末の売上債権金額が低位であったことや、当連結会計年度末にかけて電子材料市況の回復等により出荷が増えたことによるものです。
・固定資産の減少は、当社および当社の連結子会社において、減損損失を計上したことによるものです。
(負債)
当連結会計年度末における負債合計は49,978百万円となり、前連結会計年度末に比べ6,674百万円増加いたしました。
主な増減項目として、転換社債型新株予約権付社債が3,000百万円、短期借入金が1,933百万円、繰延税金負債が996百万円、長期借入金が462百万円それぞれ増加いたしました。
・転換社債型新株予約権付社債の増加は、2023年6月7日付にてSH1,L.P.との間で、第三者割当にかかる引受契約を締結し、新たに発行したことによるものです。
・短期借入金の増加は、運転資金の借入によるものです。
・繰延税金負債の増加は、その他有価証券評価差額金に係る税効果額が増加したことによるものです。
・長期借入金の増加は、新規借入を4,700百万円行ったことおよび、3,314百万円の返済および短期借入金へ924百万円振替を行ったことによるものです。
(純資産)
当連結会計年度末における純資産合計は75,466百万円となり、前連結会計年度末に比べ9,251百万円減少いたしました。この結果、自己資本比率は59.3%(前連結会計年度末は62.9%)となりました。
主な増減項目として、利益剰余金が8,148百万円、非支配株主持分が3,155百万円それぞれ減少し、その他有価証券評価差額金が1,086百万円増加いたしました。
・利益剰余金の主な減少は、親会社株主に帰属する当期純損失7,092百万円および剰余金の配当1,053百万円によるものです。
・非支配株主持分の減少は、連結子会社を完全子会社化したことによるものです。
③ キャッシュ・フロー
当連結会計年度における当社グループのキャッシュ・フローの状況は次のとおりであります。
2024年3月期前連結会計年度
増減
営業活動によるキャッシュ・フロー(百万円)6,8666,092
投資活動によるキャッシュ・フロー(百万円)△3,963△1,342
財務活動によるキャッシュ・フロー(百万円)1,259△2,023
現金及び現金同等物の増減額(百万円)4,2862,648

(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度において、営業活動によるキャッシュ・フローの収入は6,866百万円となり、前連結会計年度に比べ6,092百万円増加いたしました。これは、主に税金等調整前当期純利益が8,681百万円減少したことのほか、棚卸資産の増減額が8,335百万円増加し、減損損失が6,621百万円増加したことによるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度において、投資活動によるキャッシュ・フローの支出は3,963百万円となり、前連結会計年度に比べ支出額は1,342百万円増加いたしました。これは、主に有形固定資産取得による支出が1,366百万円増加したことによるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度において、財務活動によるキャッシュ・フローの収入は1,259百万円となり、前連結会計年度に比べ2,023百万円減少いたしました。これは、主に短期借入金の実行による収入が4,672百万円減少したことのほか、連結範囲変更を伴わない子会社株式の追加取得による支出が3,067百万円増加し、社債の発行による収入が3,000百万円増加したことによるものです。
以上の結果、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は16,475百万円となりました。
④ 生産、受注及び販売の実績
(生産実績)
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称金額(百万円)前連結会計年度比(%)
化学56,1843.8
医療5,973△1.2
合計62,1573.3

(注)1 金額は、販売価格によっており、セグメント間の取引については相殺消去しております。
2 セグメント別の生産高を正確に把握することは困難なため、概算値で表示しております。
(受注実績)
当社グループの主要製品については主に見込み生産を行っております。
(販売実績)
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称金額(百万円)前連結会計年度比(%)
化学74,110△2.5
医療7,9951.6
合計82,105△2.1

(注)1 セグメント間の取引については相殺消去しております。
2 主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は、いずれの相手先についても当該割合が100分の10未満のため記載を省略しております。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
① 経営成績の分析
経営成績の分析については、「(1)経営成績等の状況の概要 ①経営成績」に記載しています。
② 財政状態の分析
財政状態の分析については、「(1)経営成績等の状況の概要 ②財政状態」に記載しています。
③ キャッシュ・フローの状況分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
キャッシュ・フローの状況については、「(1)経営成績等の状況の概要 ③キャッシュ・フロー」に記載しています。
グループの資金調達については堺商事及び一部の借り入れを除き、当社にて一括調達し、グループファイナンスにて関係会社へ必要な資金を供与しています。
調達方法は取引金融機関が組成するシンジケート団によるコミットメントラインからの短期運転資金と個別取引金融機関からの長期設備資金融資の2種類であります。近時は旺盛な設備投資によるキャッシュ・フロー不足分を補うための長期借り入れを増やしており、当面この傾向は続くものと考えます。現時点では、安定的な財務基盤を背景に取引金融機関の当社に対する融資姿勢に変化なく、スムーズな資金調達を実施しております。
一方、堺商事及び海外子会社を除く国内関係会社を結んだキャッシュ・マネジメント・システムを導入し、グループ各社の流動預金を当社に集中、グループとしての資金効率アップに取り組んでおります。
また、当連結会計年度末における短期借入金の残高は15,108百万円、長期借入金の残高は8,930百万円、現金及び現金同等物の残高は16,475百万円となっております。
④ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、第5 経理の状況 1連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)に記載のとおりであります。
1.棚卸資産の評価
当社グループでは棚卸資産の評価に関して、取得原価を基礎としながら、期末における正味売却価額が取得原価よりも下落している場合には、正味売却価額をもって貸借対照表価額としております。正味売却価額は、直近の販売実績による単価が当面継続すると仮定し、販売単価から販売に要する経費を控除した金額として見積もっております。
また、営業循環過程から外れた滞留棚卸資産については、滞留品の処分・販売状況がこれまでと大きく変わらないと仮定し、過去の処分・販売実績をもとに見込まれる損失額を見積もっております。
随時販売状況を見ながら生産調整を行っておりますので、滞留棚卸資産が急激に増加することはないと考えております。販売単価の下落に関しても、当社グループは多岐にわたる製品を製造販売しており、影響は限定的であると考えております。
2.固定資産の減損会計
当社グループでは資産又は資産グループの収益性が低下し、帳簿価額が回収不能となるような兆候がある場合に、当該資産又は資産グループの回収可能価額(正味売却価額と使用価値のいずれか高い方)を見積り、回収可能価額が帳簿価額を下回っていた場合は、減損損失を計上しております。
回収可能価額は、事業計画や市場環境の変化により、その見積り金額の前提とした条件や仮定に変更が生じ減少した場合、追加の減損処理が必要になる可能性があります。
3.退職給付引当金
当社では退職給付引当金は、退職金制度ごとに退職給付債務の期末残高から年金資産の期末残高を控除して計算しております。退職給付債務及び費用は、割引率、退職率、予想昇給率などの計算基礎を見積り、年金数理計算により計算しております。割引率は、期末における優良社債の利回りに基づき決定しております。割引率が低下した場合、退職給付債務が増加しますが、数理計算上の差異として発生の翌連結会計年度から一定の年数(5年)による定額法で費用処理されます。また、退職率、予想昇給率は当社の過去の実績をもとに、今後も同様の推移が継続すると仮定して決定しております。
年金資産は期待運用収益率を見積り、退職給付費用の計算に反映させております。期待運用収益率は、金融市場が比較的安定しており、過去の運用実績が今後も継続すると仮定して決定しております。実際の運用実績が期待運用収益率を下回った場合、割引率の低下と同様、数理計算上の差異が発生しますが、発生の翌連結会計年度から一定の年数(5年)による定額法で費用処理されます。
(3)経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当連結会計年度における中期経営計画『SAKAINNOVATION 2023』の達成状況は次のとおりであります。
2020年3月期2021年3月期2022年3月期2023年3月期2024年3月期
営業利益(百万円)4,0154,3047,4944,4072,942
ROE(%)3.3△3.68.72.9△9.2